著者
宮野 真生子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度、私は、日常を生きるうえで、いかにして「偶然」とかかわるかという観点から、九鬼周造の倫理的可能性を問う作業をおこなった。その作業は具体的には、二つの方向からおこなわれた。(1)和辻哲郎が提示する「間柄」に基づく必然性重視の倫理観との比較。(2)田辺元が晩年の『マラルメ覚書』で提示した「行為の偶然性」というアイデアを媒介として、九鬼の偶然性概念を発展させること。(1)和辻の『倫理学』において、分析の基礎となるのは、「日常の事実」である。間柄を分析し、倫理を析出する和辻は、徹底して「日常の事実」に立つ。だが、日常がつねに私たちとともにあるからと言って、それを即座に「自明の前提」として無批判に受け入れることができるのだろうか。その前に私たちはまず、なぜ日常を当たり前の事実、自明の前提として受け入れてしまうのかを問い、この自明性を成立させる「日常性」のメカニズムについて考えることが必要ではないのか。「日常の事実」に立つ思索は、そのときはじめて広い射程を有することができる。以上のような問題意識を出発点として、和辻と九鬼の「日常」観の相違を分析した。(2)九鬼哲学では、「偶然性」は「存在」の問題として扱われてきたが、これに対し、田辺元は『マラルメ覚書』において「行為における偶然性」について論じている。九鬼周造の哲学を「倫理」として展開するためには、「行為」の次元を考えることが不可欠であり、その部分を補うのが、田辺の『マラルメ覚書』である。彼はここで、行為の当否は常に偶然に委ねられており、その偶然を生きることこそが「倫理」であると論じている。つまり、一般に「倫理」とは「必然」を説くものと考えられがちだが、それにたいし、田辺は「偶然」にこそ「倫理」を見た。それは、必然によって自己と他者、あるいは未来を縛る固定的な倫理ではなく、より自由な倫理的関係を可能にするものであると言える。
著者
吉本 秀之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.372-375, 2017

<p>アリストテレスの四元素説(火は,水,土,空気とならび四元素の1つであった),パラケルスス派の三原質(エン,スイギン,イオウの3つのうち,イオウは可燃性を担う原質と位置づけられていた)という17世紀までの元素説・原質説の基本をまず紹介しよう。そして,こうした背景に対し,ベッヒャーとシュタールのフロギストン説は,一体何であったのかを解説しよう。</p>
著者
小川 博司
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.17-30, 1980-12-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
42
被引用文献数
1

匿名性は、社会と個人の問題を、根源的に提示する概念である。何故ならば、社会とは、固有名をもった個人が、匿名的な存在となるところに存立すると考えられるからである。A・シュッツの匿名性の概念は、この問題を考える際に、示唆に富んでいる。シュッツは匿名性の様々な程度を照射する虚の光源としてわれわれ関係を想定する。われわれ関係は、相互的な汝志向を基盤とし、そこでは他者は、時間・空間の直接性のうちに経験される。シュッツによれば、他者を間接的に経験すればするほど、他者の匿名性の程度はより高くなるとされる。尚、時間・空間の直接性は、われわれ関係の成立のための必要条件ではあるが、十分条件ではない。シュッツの匿名性の概念は、次の諸相に分節化される- (1) 機能的類型として匿名性、 (2) 「知られていない」という意味の匿名性、 (3) 社会的世界の構成原理としての匿名性、 (4) 所与の社会構造のもつ匿名性。(1) (2) は、個人としての他者の経験に関連する。 (3) (4) は、社会制度、言語、道具など、匿名性の高い領域に関連する。それらは、一方では匿名化による構成物であり、他方ではわれわれ関係の舞台に配置されている諸要素でもある。シュッツの理論では、 (3) と (4) は、匿名性とわれわれ関係という二つの鍵概念により結合されている。以上の匿名性の分節化は、社会の存立の考察、また現代社会の諸問題の考察に有用であろう。匿名性 (anonymity) という概念は、社会学においては、従来、主に大衆社会論的文脈の中で、都市社会やマス・コミュニケーションにおける人間関係の特徴を表わすものとして用いられてきた (1) 。しかし、匿名性は、社会と個人、もしくは類と個の問題を、より根源的に提示する概念であるように思われる。何故ならば、社会とは、固有名をもった人間個体が匿名的な存在となるところに存立すると考えられるからである。本論文は、主にA・シュッツの匿名性の概念の検討を通して、現代社会において、個人と社会とが絡み合う諸相を解き明かすための視角を提出しようとする試みである (2) 。以下、具体的には、シュッツが匿名性の程度を示すためにあげた例示の検討を通して、順次、匿名性の諸相を抽出し、検討していくことにする。
著者
人見 佳枝
出版者
近畿大学臨床心理センター
雑誌
近畿大学臨床心理センター紀要 = Bulletin of Center for Clinical Psychology, Kinki University (ISSN:21868921)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.31-43, 2011

[要約] 臨死体験に関する記述やモチーフは、古くから洋の東西を問わず、文学作品や絵画などに散見される。しかしオカルトの類と関連づけられやすく、長い問、これらが研究の対象となることはなかった。キューブラー・ロスが1975年に出版した『死ぬ瞬聞』は世界中でベストセラーとなった。これ以後、さまざまな臨死体験に関連する書籍が出版され、臨死体験を含む「死」についてもオープンに語られるようになった。典型的な臨死体験の内容はほぼ共通している。そのうちのある部分は、その人の属する文化、宗教観などに影響を受ける。しかしながら核となる体験においてはほぼ共通した特徴が認められ、従って臨死体験は個人的な内容と、普遍的な内容との二重構造になっているといえる。臨死体験後、体験者に起こる変化も興味深い。臨死体験後には「宗教的というよりスピリチュアルになる」「特定の宗教にとらわれなくなり、自分の内なる神を信じるようになる」などといった変化が起こることが報告されており、これは体験者の文化や宗教の違いを問わない。分析心理学の創始者であるC.GJungは最も有名な臨死体験者のうちの一人である。臨死体験はその後の彼の人生に強い影響を与えており、それが彼に人聞の本質についてのより深い洞察をもたらし、新しい世界観(dieWeltanschauung)を与えたことが推察される。このように、臨死体験は分析心理学において極めて興味深いテーマであり、論ずるべき内容を多く含んでいる。分析心理学においては夢やイメージなどを無意識からのマテリアルとして重要視するが、臨死体験も同様の見地から考察することが可能であると考えられる。 [Abstract] Description and motifs of near death experience (NDE) can be seen ancient literatures and paintings but it was not an object of research for long time. This theme was never talked openly because everyone was afraid that they were regarded as psychotic or occultist. "On Death and Dying ″ was published by Kubler Roth in 1975. This book triggered a tendency that NDE can be discussed openly. After "On Death and Dying ", a lot of books about NDE were published and researches were also started from various field. There are a lot of interesting contents in NDE. Some of these contents depend on each culture, race and religion. However, core contents are quite common among the whole human beings. So NDE has dual contents, personal and universal. It is also interesting what will happen to people after NDE. Generally, it is known that people become more spiritual rather than religious. They come to feel inner God, but they are not prepossessed with particular religion any more. Jung had NDE when he was 69 years old. It is tremendous dynamic experience and it changed the rest of his life dramatically. That is to say, he got deeper insight of essential human beings and new worldview. Thus NDE includes quite important essence for religion and analytical psychology. Although NDE and dream are discriminated, it is possible to discuss on the same ground. Even if pattern of experience is different, both of them come from unconscious.
著者
橋本 修二 福富 和夫 市川 誠一 松山 裕 中村 好一 木原 正博
出版者
日本エイズ学会
雑誌
日本エイズ学会誌 = The journal of AIDS research (ISSN:13449478)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.35-42, 2000-02-20
参考文献数
13
被引用文献数
4

緒言: 日本におけるHIV/AIDSの将来予測を行った。なお、凝固因子製剤によるHIV感染は検討の対象外とした。<BR>対象及び方法: 1998年末までのエイズサーベイランス報告、HIV感染報告の捕捉率、新しい抗HIV治療の受療者割合、AIDS発病の潜伏期間を基礎資料として, HIV感染者時点有病数とAIDS患者累積数を2003年末まで予測した。<BR>結果: HIV感染者時点有病数は日本国籍では1998年末で7,300人と推計され、2003年末で15,400人と予測された。外国国籍では1993年以降一定という仮定の下で700人と予測された。AIDS患者累積数は日本国籍では1998年末で925人と報告されており、2003年末では3,300人と予測された。外国国籍では1998年末で361人と報告されており、2003年末では900人と予測された<BR>。結論: HIV/AIDSの2003年末までの将来予測値を示した。
著者
山下 正純 戸井田 秀基 本田 克久
出版者
一般社団法人 日本環境化学会
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.537-541, 2009 (Released:2010-06-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

In this study, we examined the utilization of washing by ultrasonic waves for reduction of four pesticide residues on surface of strawberry and grape in order to reduce a risk on pesticide residues to consumer. The removal rates was high in the order of acetamiprid, diethofencarb, chlorfenapyr and pyridalyl according to solubility in water. In particular, it was found that appending powderly activated carbon in proper quantity was effective on improvement of removal rate of pyridalyl which is water-insoluble.
著者
後藤 政幸 佐藤 千恵 間中 友美 中島 肇 Masayuki GOTO Chie SATO Yumi MANAKA Hadjime NAKAJIMA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.127-133, 2015-03-31

りんごに5種ピレスロイド系農薬(ビフェントリン、ペルメトリン、シペルメトリン、フェンバレレート、デルタメトリン)を低濃度(残留基準濃度;0.5ppm)塗布後、室温・明所下で7日間保存した。保存1日後、4日後、7日後に可食部について残留農薬濃度を分析した。結果、Ⅰ型ピレスロイド(ビフェントリン、ペルメトリン)は保存1、4、7日後にそれぞれ0.26、0.12、0.06ppm、Ⅱ型ピレスロイド(シペルメトリン、フェンバレレート、デルタメトリン)は0.44、0.37、0.35ppmに減少した。1日間および7日間保存のりんごについて、果皮および果肉に分けて残留農薬の分析を行った結果、果肉は7日間保存の試料にだけⅡ型農薬(シペルメトリン、フェンバレレート、デルタメトリン)が微量検出され、果肉中農薬量/果皮中農薬量の割合は3.0~4.9%であった。 次いで、りんご果皮に付着している農薬の除去法について検討した。りんごに同様の低濃度農薬を塗布して、水洗およびふきとり操作を行った。可食部について農薬分析を行った結果、水洗操作では5種ピレスロイド系農薬の残留率は93~99%、ふきとり操作では22%~42%であり、水洗による農薬除去は期待できなかったが、ふきとりは農薬除去に有効であった。
出版者
日経BP社
雑誌
日経Internet solutions (ISSN:13476580)
巻号頁・発行日
no.75, pp.33-36, 2003-10

「アクセス増大の急場をしのげ」——。ネット証券各社は,取引増加に伴い,トラフィック急増への対応に追われている。他のEC(電子商取引)サイトでも,突発的なアクセスの集中に悩む例は少なくない。システム・ダウンやレスポンスの低下は,ビジネス上の機会損失に直結する。サイト運用の担当者は今日も頭を痛めている。
著者
Neisei Hayashi Yosuke Mizuno Heeyoung Lee Kentaro Nakamura Sze Yun Set Shinji Yamashita
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE Electronics Express (ISSN:13492543)
巻号頁・発行日
vol.17, no.12, pp.20200139, 2020-06-25 (Released:2020-06-25)
参考文献数
39
被引用文献数
2 5

We present a method for generating cascaded forward Brillouin scattering (CFBS) on the basis of a counter-propagated pump-probe technique with backward stimulated Brillouin scattering used as its seed. The CFBS, induced by forward stimulated Brillouin scattering (FSBS), is generated via the energy transfer from the probe light to other acoustic resonance frequencies. The CFBS spectrum generated in a 390-m-long highly nonlinear fiber exhibits a high signal-to-noise ratio (SNR), and the center frequencies of its acoustic resonance peaks agree with theoretical values. In addition, the SNR dependence on pump/probe powers and the CFBS frequency shift dependence on temperature are investigated.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ニューメディア (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1595, 2018-02-05

周波数、通信政策 総務省の電波有効利用成長戦略懇談会は2018年1月30日に第3回会合を開催した(p.2に関連記事)。この日は、MVNOの3社に加えて、NECとYRP研究開発推進協会も参加した。<オークション反対なら明確な根拠提示を> オークション制度の導入については…
著者
田中 英一郎 池原 忠明 瀬戸口 隼 森 崇 三枝 省三 弓削 類
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
機素潤滑設計部門講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.43-46, 2012

We developed a new whole body motion support type mobile suit. This suit can be used separately for supporting the upper and/or lower limbs, for assisting ADL (Activities of Daily Living). We also developed a mobile lifter system which can bear both the equipped person and the suit. This suit and the lifter can be used by motor palsy patients suffering from stroke, spinal-cord-injury, and central nerve disorders. Using this device, these patients can recover normal gait with no risk of falling. In this paper, the brain activity during walking using the suit and normal gait without the suit are compared. According to multiple trials with the suit, the activity of the premotor area decreased. In addition, by walking while swinging bilateral arms (even though these arms were assisted by the suit), the activity in the supplementary motor area increased (this area of the brain is related with memory of motion). Finally, the brain activity during walking on the treadmill and in the sightly long corridor are compared. From the result of this experiment, it is effective for gait training to walk with locomotion, because of the improvement the motivation for training. We can conclude that this suit is suitable to assist patients in walking. Therefore it is important for patients to swing their arms during gait training in rehabilitation.
著者
森田 沙斗武 西 克治 古川 智之 一杉 正仁
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.38-43, 2016

近年、わが国では高齢化が大きな社会問題となっており、65歳以上が人口の25.0%を占める。さらに、近年一人暮らし世帯の割合が著明に増加しており、一人暮らし高齢者は4,577,000人と高齢者人口の15.6%を占める。孤立死についての確固たる定義はないが、内閣府の高齢社会白書には「誰にも看取られることなく息を引き取り、その後、相当期間放置されるような悲惨な孤立死(孤独死)」と表現されている。これまでの報告では「独居の在宅死」を孤立死として取り扱っていることが多いが、孤独死の本質的な問題点は社会からの孤立である。我々は社会からの孤立の程度は、死後から発見までの時間を指標にできると考えた。すなわち、これまでの報告が「誰にも看取られることなく息を引き取る」ことに注目していたのに対し、我々は「相当期間放置される」ことに注目し高齢者の孤立死に対する調査を行った。2010年4月から2012年3月の3年間に大阪府監察医事務所で行われた死体検案例のうち、筆者らが実務を遂行した症例から自殺症例を除外した65歳以上の高齢者448例について、死後発見時間にフォーカスを当て、性別、同居・独居の別、年齢、死亡から発見までの時間、最終通院から死亡までの時間、発見に至った経緯、死因に関して検討を行った。また、その中で通院歴が明らかとなった242例について最終通院から死亡までの時間を抽出し、評価を行った。その結果、高齢者は若年者に比べて必ずしも孤立死が増加しているのではないことが明らかとなった。孤立死の危険因子としては、男性、無職、独居が挙げられ、また、医療機関を頻回に受診すると死後発見時間が短くなる傾向が判明した。現代において高齢者の一人暮らし世帯の増加は不可避であり、我々は孤立死を減少させる取り組みの本質は死後発見時間の短縮であると考える。その上で、高齢者に就労の場、かかりつけ医制度の充実、ヘルパーの積極的な訪問などの対策を提唱する。
著者
小川 正巳 猪谷 富雄
出版者
県立広島大学
雑誌
生命環境学術誌 (ISSN:1883650X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.57-71, 2011-03

わが国の陸稲(おかぼ/りくとう) の文化史の考察の一つとして陸稲という作物名の別名(地方名/方言/俗語) について文献学的調査を行った。今日の陸稲という呼称に対して、中世以降多くの別名が全国各地で使用されてきた。江戸時代の陸稲の主な呼称には3種類あり、関東中心のオカボ系、九州中心のノイネ系そして北陸地方をはじめ全国的にハタケイネ系があった。近年に採録された陸稲の地方名(方言) には野稲・畑稲(畠稲)・岡穂・岡稲・旱稲・イギリス・けしね・とうぼし・はいもんなど多数の名称が確認できた。それらの地方名の背景には当該地の歴史などが深く刻み込まれているものがあった。
著者
林 久男
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.40, no.8, pp.427-435, 1999-08-25 (Released:2010-02-22)
参考文献数
41

IFN無効例を含めC型慢性肝炎には貯蔵鉄があり, 鉄依存性ラジカル産生に基づく細胞障害は肝炎活動性の一端を担う. それを排除する工夫は大切であり, 瀉血により潜在的鉄欠乏状態を維持するのが簡単で経済的でもある. 造血能が悪く貧血になりやすい症例では, 補助手段として, エリスロポエチンの併用, 鉄の豊富な食品を避ける食事療法, 消化管での鉄吸収阻害を計る薬物治療などが必要となる. これら補助療法を含め, 総合的な鉄の肝毒性対策の確立と普及が望まれる.
著者
植村 和美
出版者
大阪教育大学附属高等学校池田校舎
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
no.45, pp.17-82, 2012-11-20

平成25年度より高等学校新学習指導要領が実施され、また、時を同じく平成25年、OECD国際成人力調査PIAAC(成人が持っている日常生活や職場で必要とされる技能)に基づく社会における「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」の国際報告書が提出され、学校教育がより社会と連動し「生きる力」をはぐくむ基盤となることが期待されている。これまでもOECDの掲げる三つのキー一・コンピテンシー「(1)社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力」、「(2)多様な集団における人間関係形成能力」、「(3)自立的に行動する能力」に基づくPISA型学力を見据え、自分・他者・社会という三つの関わりを意識した学習活動を進めてきたが、今後いっそう新学習指導要領の掲げる「言語活動の充実」とりわけ「批評、論述、討論など」「伝統や文化に関する教育の充実」が国語教育の重要課題となる。 PISA、PIAACともに提唱する問題解決力・思考型学力の育成を模索しつつ、人間の根本的欲求である表現活動を言語活動と一体化させ、日本の古典文学や伝統文化を理解し自らの生き方への考察を深めるべく、中学・高校を連続する成長過程と捉え、池田地区中高連携学習活動を行った。