著者
タン グラディス Tang Gladys
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育研究会(MHB研究会)
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究 = Studies in mother tongue, heritage language, and bilingual education (ISSN:21868379)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.38-54, 2019-05

招待論文この論文では、手話言語学研究の最新の知見、とりわけ手話言語と音声言の同時獲得―バイモーダル・バイリンガリズムに関わる研究などのもたらす知見に照らしてバイリンガルろう教育の概念を考察する。この研究は現在進行中であるが、すでに学校環境におけるバイモーダル・バイリンガル習得を支援する最適条件を明らかにし始めている。本稿では、ろう者であれ聴者であれ、参加者である生徒も教員も、互いに支え合い、また学び合う教学環境がそうした最適条件の一つであると論じている。そして、香港におけるろうバイリンガル・コエンロールメント教育プログラムを例にとり、教室における香港手話と広東語のインプットがどのようにろう児と聴児、そして聴者教員のバイモーダル・バイリンガル習得に貢献するか、そしてそれによっていかにバリアフリーな教育環境を達成しているのか報告する。
著者
堤 一昭
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.p322-357, 1992-05

個人情報保護のため削除部分あり一三世紀後半におけるモンゴル帝国〜元朝の南宋征服戦は、その歴史的重要性から、戦争経過については研究がなされているが、戦争を実行した軍団については研究が手薄である。本稿は、華北戦線に参加したモンゴル軍国を対象とし、軍団長の家系を探り、その歴代の人物の歴史をたどった。探し得た家系はウリャンカン部族スベエテイ家、ジャイラル部族ブジェク家、ナイマン部族マチャ家、タングト部族チャガン家、マングト部族ボロゴン家、フウシン部族タガチャル家、ジャライル部族チョルカン家の七家である。彼らが長となった軍団の軍府名は「蒙古軍都元帥府」「山東河北蒙古軍大都督府」「河南淮北蒙古軍都萬戸府」である。彼らの家系はトルコ・モンゴル系であるが、有力部族長の家ではない。多くはチンギス・ハンとの個人的な繋がりを持つ者を祖先に持つ。オゴデイ・カアン時代の金朝征服戦、対南宋戦を華北への駐屯の始まりとする。軍団長の職を世襲するとともに、行省・行台の高官を務め江南支配に関与した。彼らは、本拠地の所在・所領・官職・行動等からみて、王族や有力部族長の家系に次ぐ層を構成していたと考える。Because of its historical importance, large numbers of studies have been made on the process of the war between the Mongol Empire-Yuan dynasty and the Southern Song. But only a few studies have been made on the army which carried out the war. The author, concerned with the analysis of the Mongolian army which fought at the front in North China, traced the family-lines of the generals of the army from historical sources, and inquired into the personal histories of these families. The seven families which can be found are the Sube'etei family of the Uriangqan tribe, the Bujeg family of the Jalair tribe, the Maca family of the Naiman tribe, the Caɣan family of the Tangɣud tribe, the Boroɣon family of the Mangɣud tribe, the Taɣacar family of the Hu'usin tribe and the Coruqan family of the Jalair tribe. Generals from these families had become the chiefs of the "Supreme Marshal Office of the Mongol Army", the "Chief Military Command of the Mongol Armies in Shandong and Hebei", and the "Supreme Myriarchy Office of the Mongol Armies in Henan and Huaibei". These families were of Turkish or Mongolian descent, but they did not belong to the families of the chief of the main tribe. Many of them had an ancestor who had a personal relationship to Cinggis qan. During the Ogodei era, they were first stationed in North China, in order to fight against the Jin and the Southern Song. They held the rank of general of the army in their family for generations, assumed high official posts of Branch Secretariat and Branch Censorate, and took part in the rule of South China. Judging from the location of their bases, their domain, government posts and actions the author concludes that they comprised the stratum under the royal family and the families of the chief of the main tribe.
著者
藤井 保和 久須美 俊一 福谷 隆宏 岩井中 篤史
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.124, no.10, pp.1073-1079, 2004 (Released:2005-01-01)
参考文献数
22

This paper proposes an arc contact loss rate estimating method for Shinkansen trains with pantographs connected to bus cables. For the speedup of Shinkansen, it is necessary to judge whether the contact loss rate exceeds its standard value. As the standard of contact loss rate is provided from the viewpoint of contact strip wear caused by arcs, it is important to measure the amount of arc. The optical type contact loss measuring method which detects the contact loss by arcs is suitable for this purpose. It is difficult, however, to measure contact loss by this method in the daytime, because of the influence of outdoor light. To solve the above problem, we have developed an arc contact loss rate estimating method by using a contact loss simulation program on the basis of the complete contact loss rate measured by the current type contact loss measuring method which is effective in the daytime. Furthermore, we measured the contact loss rate simultaneously by the current and optical type contact loss measuring methods in the running tests of Shinkansen trains, and confirmed the validity of this estimation through a comparison of measured and simulated results.
著者
首藤 若菜
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.152-164, 2013-10-30 (Released:2018-02-01)

本稿では,男女がともに仕事と生活を両立させながら職業生涯を通じて働き続けられる社会をどう構築できるかについて,3つの文献を取り上げて議論する。日本で男女の経済格差がなかなか縮小しない要因は,企業,家庭,社会経済制度が女性の就労継続を妨げる方向で,相互依存的に存在しているためである。本稿では,この問題意識のもと,まず家庭内性別分業と女性の働き方の変化を国際比較した研究と日本の社会制度を男性稼ぎ主モデルの視角から分析した研究を紹介する。両文献から,女性の就労を妨げることが,いかなる社会問題を生み出すのかを把握する。そのうえで,性に中立的な雇用のあり方として,同一価値労働同一賃金制度を提起した文献を取り上げる。いわゆる職務給型の雇用システムへの変更が,男女の賃金格差縮小や女性の就労継続を促進しうるかどうかを論じ,その可能性を探る。
著者
谷口 彌三郎
出版者
日本民族衛生学会
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.477-541, 1960 (Released:2010-11-19)
被引用文献数
1 1

1 0 0 0 OA 流の暁

著者
快楽亭ブラック 講演
出版者
三友舎
巻号頁・発行日
1891
著者
西原 賢 久保田 章仁 井上 和久 田口 孝行 丸岡 弘 植松 光俊 藤縄 理 原 和彦 中山 彰一 溝呂木 忠 江原 晧吉 細田 多穂 山口 明 熊井 初穂 二見 俊郎
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.39-45, 2001

筋線維伝導速度(MFCV)をなるべく多くの筋線維から詳細に調べる目的で、計算機プログラムによる筋電図のパルス検出と平均法を開発した。この報告では、パルス検出の原理について説明をし、実際に健常成人男女2人の左等尺性肘屈曲運動時の上腕二頭筋表面電極筋電図を双極アレイ電極で記録し、アナログデジタル変換後計算機に取り込んだデータからMFCVを算出した。その結果、MFCVは先行研究で報告された範囲内に分布し、神経終板付近や腱付近からのMFCVは筋の中心部からのMFCVより早かった。取込開始から時間の経過と共にMFCVの一定の減少が見られた。算出した平均パルス波形は、雑音による平均波形とは明らかに異なる特徴を持っていた。これらのことから、このパルス検出と平均法は今後臨床で有効に活用できる可能性があることが考えられる。
著者
高槻 成紀 立脇 隆文
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.167-177, 2012 (Released:2013-02-06)
参考文献数
38
被引用文献数
7

我が国における中型食肉目の食性分析は頻度法を用いてきたが,頻度法は食物の組成を評価する上で過大か過少になる問題がある.組成を表現する重量や容積の評価は非常に時間がかかるが,ポイント枠法は時間をかけずに組成の量的評価が可能であり,頻度も出せる利点がある.そこで中型食肉目の食性分析におけるポイント枠法の適用性を検討するために,タヌキとハクビシンの夏と冬の胃内容物4群54試料を分析し,方法上の特徴を検討した.各試料群全体では,200カウントで98カテゴリーが,300カウントで102カテゴリーが検出されたが,試料ごとの検出カテゴリー数は少なく,200カウントで6~10(最少1,最多19)であった.検出されたカテゴリー数はカウント数の増加とともに増加したがしだいに頭打ちになり,200カウント以上はほとんど増加しなくなった.また,300カウントでの検出数の90%に達した試料数は150カウントでは53試料中31(58.5%)であったが,200カウントでは52(98.1%)になった.さらに,各試料群において300カウントでの占有率(胃内容物組成に対する百分率組成)が最大であったカテゴリーがその占有率の±10%の範囲に入るのに要するカウント数は150~170カウント(ただしハクビシン夏のみ221カウント)であり,150カウントでは36試料中16試料(44.4%)が,200カウントでは28試料(77.8%)がこの範囲に入った.これらから,食物の検出と,その量的評価のためには200カウントするのが妥当であると判断した.ポイント枠法と乾燥重量測定法の分析所要時間の平均値(n=20)は,ポイント枠法が25.9分,重量法が70.6分で,前者が後者の36.7%であった.頻度百分率と「出現占有率」(その食物を含んでいた試料の平均占有率)の関係を見ることで,食物の供給状態や動物の採食について多面的な理解が可能であることを示した.ポイント枠法による各カテゴリーの頻度と占有率の相関は高くなかった.代表的な食物についてポイント数と乾燥重量の関係を調べたところ,ベリー(多肉果実)に比べて,肉(筋肉や内臓),種子などはポイント数の割に重く(ポイント枠法は過少評価),体毛,葉,花などは軽い(ポイント枠法は過大評価)ことがわかった.ポイント枠法をおこなう上での留意点などをまとめた.
出版者
日本情報ディレクトリ学会
雑誌
日本情報ディレクトリ学会誌 (ISSN:18829252)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.10-15, 2021 (Released:2021-08-16)

2020年は世界的にコロナ禍に見舞われ、ライブ・エンタテインメントの業界は、大きな打撃を受け、インターネットを用いたライブ配信を行う動きが広がった。本論文では、ライブ配信ビジネスを行うために必要な、有料ライブ配信プラットフォームのビジネスモデルについて、ケースメソッドを用いて検討するとともに、定額制動画配信サービスのビジネスモデルとの比較により吟味した。 結果、有料ライブ配信プラットフォームのビジネスモデルにおいて、著作者との関係は、著作者が主であり、その主体的な著作者に対して、多様なサービスを提供していることがわかった。さらに、有料ライブ配信プラットフォームにおいては、大規模な配信を実現するという共通の目標に向けて、複数の有料ライブ配信プラットフォームによる協調的ビジネスモデルが選択されていることがわかった。
著者
武田 尚子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.393-408, 1999

本稿はマニラへの漁業移民を送出した明治30年代の漁業部落を取り上げ, 部落内の社会構造が移民送出を継続する方向に再編成され, 地域のアイデンティティが形成されていく過程を明らかにする。従来分析されてきた漁業集落は定置漁業を営んでいる場合が多く, 村落内の機能組織を核として, 村落の再編成が進んだことが明らかにされている。しかし, この事例で分析した部落は沖合化の傾向を持っているため, そのような経過はたどらなかった。機能組織 (漁業組合) が形成されて間もないこの時期, 県レベルと村落レベルの機能組織には乖離がみられた。マニラへの移民送出は県レベルの機能組織の動きと関連していた。この部落のリーダーの保有するネットワークの性格が, 県レベルと村落レベルの機能組織の乖離を敏感にキャッチすることを可能にし, 移民送出の端緒を開くことにつながったのである。また, 村内の他部落と漁業におけるイニシアティブを争う動きもみられたが, これも漁業関係の機能組織の二元的な構成と関連している。機能組織の二元的な構成は国や県の施策の影響を受けたものであった。部落が歴史的に培ってきた漁業の伝統はこのような国や県の漁業方針と連動して独特の展開を遂げ, 地域社会を再編成するダイナミズムを生みだし, 個性的な地域社会が形成されていったのである。