著者
矢口 勝彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.8-15, 2021

<p>TRC(図書館流通センター)の電子図書館サービスは,2011年1月に1号館として堺市立図書館(大阪府)に導入して以降,公共図書館において昨年度までで75自治体,年間平均8~9自治体のペースで採用されてきた。ところが,今年度になってコロナ禍における緊急事態宣言下の臨時休校,臨時休館時の読書,学習支援ツールとして注目され,2波,3波に備えるべく急激に採用が増えており今年度1年間の採用数が,昨年度までの導入数とほぼ同程度になることが予想されている。本稿では,TRCの電子図書館サービスを例にとり,電子図書館の概要,特長,導入メリット,課題,電子図書館を取り巻く環境,学校連携,教育現場での電子図書館の活用事例を紹介する。</p>
著者
櫻井 成昭
出版者
大分県立先哲史料館
雑誌
史料館研究紀要 (ISSN:13419838)
巻号頁・発行日
no.25, pp.巻頭1p,24-41, 2020-10
著者
橋本 基弘
出版者
法学新報編集委員会
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.122, no.11, pp.31-67, 2016-03

自己の身体に入れ墨を彫る行為は、明示的に禁止されているわけではない。では、入れ墨をしていることを他者から強制的に探知されることはどうか。入れ墨をしているかいなかの調査に対して回答を拒否したことが懲戒処分の理由となった事件がある。本論文では、自己決定の帰結としての入れ墨行為と、入れ墨の事実を秘匿する権利の関係について論じることにしたい。大阪市入れ墨調査事件をめぐる二つの裁判を素材にして、地裁判決、高裁判決を分析し、消極的な表現の自由の一つとして、情報開示拒否権が認められるべきことを論じる。
著者
越中 康治
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.279-286, 2018

本研究の目的は,教育学部生の道徳教育に対する考え方と権威主義的伝統主義及びDark Triad との関連について,性差を含めて探索的に検討を行うことであった。予備的な質問紙調査の結果から,大きくわけて以下の3点が確認された。第₁に,権威主義的伝統主義傾向の強い者ほど,教育は集団のためであると認識し,道徳教育において価値や美徳を伝えることと行動の習慣化を重視する傾向にあった。第₂に,Dark Triad 傾向の強い者ほど,道徳は外から与えられるものであり,道徳教育においては価値や美徳を伝えるべきと認識する傾向にあった。ただし,Dark Triad に関しては,権威主義的伝統主義に比して,道徳教育観との関連は明確には示されなかった。第3に,道徳教育観には性差が認められ,女性に比べて男性は,人間の本質は悪であり,道徳は外から与えられるものであり,道徳は社会によって異なると認識するとともに,道徳教育においては価値や美徳を伝えることを重視する傾向にあった。本研究は予備的な検討に過ぎないが,道徳教育観とパーソナリティとの関連については,今後,性差を十分に考慮した上で研究を蓄積していく必要があることが示唆された。
著者
奥田 益美 安田 晃 津本 周作
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.169-177, 2017 (Released:2018-08-31)
参考文献数
29
被引用文献数
1

米国患者満足度調査のHCAHPS調査項目を基に,距離を使う解析により患者満足度の構造のモデル化に必要な解析を試みた.外傷を扱う高度急性期医療提供病院では,コミュニケーション2項目と全体的な評価2項目,「疼痛管理」「清潔さ」の高評価クラスタと,「静かさ」「薬剤情報説明」「スタッフ対応の早さ」の低評価クラスタを示した.その他の病院はコミュニケーション2項目の高評価クラスタとその他項目の低評価クラスタを示した.属性に関わらず対応分析,MDSではコミュニケーション項目は高評価,「静かさ」は中評価,「薬剤情報説明」は低評価が多く,他項目との非類似性を示した.患者満足度の構造は提供医療の特徴により異なっていた.患者満足度研究の多くは全体的な評価への影響要因に焦点を当てているが,項目間の類似性に注目すれば,病院サービスを包括的に捉えることでより患者に近い視点での分析が可能となり,患者中心の医療に繋がると考える.
著者
児玉 聡
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.172-176, 2019-03-15

はじめに 近年,公衆衛生の分野では,公衆衛生の倫理に関する実践と研究の重要性がうたわれるようになっている.本稿では公衆衛生の倫理学の動向を概観する.最初に,公衆衛生の射程の問題を説明する.次に,なぜ今,公衆衛生の倫理学が問題となっているのか,そして,主要な倫理的課題にはどのようなものがあるのか,主要な倫理的アプローチはどのようなものかについて論じる.
著者
河野 英昭 大月 匠 中司 賢一 中藤 良久
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会大会講演論文集 32 (ISSN:13451510)
巻号頁・発行日
pp.B3-3, 2019-11-23 (Released:2021-02-01)

This study aimed to evaluate the effectiveness of an exercise on the people with autism spectrum disorder using the NeuCube spiking neural network (SNN) architecture. We collected EEG patterns during perception and imitation of facial expressions for each emotion. Comparing the collected data in perceiving and mimicking facial expressions, EEG patterns of typically developed person were very similar. This fact suggest that it seems that there are mirror neurons on facial expression in the human brain. Recently, some studies have been reported that mirror neuron system does not work well in the case of subjects with brain disorders. In this paper, we observed mirror neurons during normal perception and imitation of facial expressions in typically developed subjects (TP), ASD subjects who exercise regularly (ASDe), and ASD subjects who don't exercise regularly (ASDn). As a result of experiments, we confirmed the mirror neuron activities of ASDe subjects tend to be close to ones of TP subjects compared to ones of ASDn subjects. The results in the experiments imply the effects of regular exercise on autism spectrum disorder.
著者
岡田 安樹浩
出版者
日本音楽学会
雑誌
音楽学 (ISSN:00302597)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.31-45, 2016 (Released:2017-10-15)

ワーグナーは、ドレスデンで《タンホイザー》を初演(1845年)してからパリでの上演のために改変(1860から61年)を行なうまでの間に、すでに4つの新しい舞台作品(すなわち《ローエングリン》から《トリスタン》まで)を完成していたが、若干の例外を除いて、当時彼はそれらの響きを実際に聴いたことはなかった。彼のパリでの改変の目的は、第1幕の最初の2場面を改めることと、いくつかのオーケストラ部分を加筆修正することであり、本論文ではこの点に着目し、パリで改変された《タンホイザー》の管弦楽法を他の総譜と比較しつつ分析を行ない、以下の特徴を明らかにした。 1. 特にバレエ場面においては、激しく揺動する弦楽器のパッセージがつねに木管楽器やホルンによって重複されている。すでに《トリスタン》にも見られたこの技法は、彼の後期作品に典型的な特徴でもある。 2. 改訂された第2場の音楽は、「網目技法」や音色を漸次的に変化させる技法によって特徴づけられている。この技法は、ヴェ―ヌスの音楽のためだけでなく《マイスタージンガー》や《パルジファル》といった後の楽劇にも用いられている。また〈ヴェーヌスのアリア〉では、ソロ・ヴィオラとソロ・チェロのフラジョレット奏法による保持音と弦のトレモロ音形との組み合わせによる一風変わった響きが鳴り響くが、これは《ジークフリート》第2幕で再現されることになった。 3. 《指環》の最初の2つの総譜において試みられていた実験的な楽器の取り扱いや特別な音響効果を意図した管弦楽法が、バレエ場面と幕切れに再現されている。こうしたことは、ワーグナーがパリでの《タンホイザー》の上演を、《トリスタン》までに発展させた実験的な管弦楽法を、実際の音響として現実化するための好機と考えていたことを暗示している。そしてさらに、パリでの《タンホイザー》の経験は、彼の後期の創作に大きく作用をすることになったのである。
著者
埴淵 知哉
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の流行下では、人混みを避けて人との距離を保つこと(Social distancing)が必要とされ、移動や外出の自粛も求められる。この状況が長期化する中で、人との対面接触を基本とする従来型の社会調査あるいは地域調査は、事実上、実施不可能な状態が続いている。国が実施する統計調査にも影響は及んでおり、2020年国民生活基礎調査は中止となった。その一方、Covid-19をめぐる人々の外出状況や予防行動の把握に対しては、スマートフォンの位置情報やLINEアプリを利用したサーベイ(「新型コロナ対策のための全国調査」)など、新たな技術・方法も活用されている。</p><p></p><p>このようなCovid-19の社会/地域調査に対する影響は、良くも悪くも、インターネット調査の学術利用に関する議論を活発化させる方向に働く。これが距離を保ちながら人々から情報を得ることができる、数少ない有用な調査法だからである。インターネット調査の強みはその迅速性と廉価性にあり、紙の調査票では不可能であった画像データなどの収集も可能である。標本の代表性や測定の精度に課題を抱えつつも、総調査誤差の観点から従来型調査を補完することが期待されている(埴淵・村中 2018)。</p><p></p><p>本発表では、Covid-19流行下で実施されたインターネット調査の事例を紹介するとともに、量的調査だけでなく、フィールドワークやインタビュー調査のオンラインでの実施可能性についても若干の考察を行うこととしたい。</p><p></p><p>一つ目の事例は、緊急事態宣言下における外出行動の把握を目的としたインターネット調査である(2020年5月実施、n=1,200、東北大学)。同調査では、過去三カ月の外出状況について、レトロスペクティブな自己申告データと、iPhoneに自動記録されている歩数の画像データが同時に収集された。注目すべきイベント(この場合は緊急事態宣言)の発生後、短期間のうちにイベント前に遡及したデータ収集を行うこの方法は、従来型調査では不可能なインターネット調査の迅速性を生かしたものといえる。</p><p></p><p>二つ目の事例は、Covid-19流行下における地域住民の予防行動に関するインターネット調査である(Machida et al. 2020、ベースライン調査:n=2,400、東京医科大学)。ここでは2020年2月から7月の間に4回のインターネット調査が実施されており、短期間で繰り返し追跡調査(同一の参加者による回答)を行っている点に特徴がある。刻々と変化する流行状況とそれに対する人々の行動変化(例えば手洗い実施率の推移など)を詳細に把握しうるこの方法も、インターネット調査の迅速性を有効に活用したものといえる。</p><p></p><p>とはいえ、すべての社会/地域調査がオンライン化できるわけではなく、調査手法間には差がみられるであろう。インタビュー調査に代表される質的調査や、現地を訪問して行うフィールドワークがどの程度オンライン環境で実施可能なのか、また翻って考えると、従来型の調査にはどういった方法上の価値があったのかなど、議論すべき課題は多い。「現場の雰囲気」を掴みにくいオンライン調査では、思いがけない偶発的な発見が生じにくいことなどは当然予想される。これらを実証的に探ることが、今後の社会/地域調査法において重要な検討課題になると考えられる。</p><p></p><p> </p><p></p><p>埴淵知哉・村中亮夫 2018. 地域と統計—「調査困難時代」のインターネット調査. ナカニシヤ出版.</p><p></p><p>Machida M, Nakamura I, Saito R, et al. 2020. Adoption of personal protective measures by ordinary citizens during the COVID-19 outbreak in Japan. <i>Int J Infect Dis</i>. 94: 139-144.</p><p></p><p>*本研究はJSPS科研費(17H00947)の助成を受けたものです。</p>