著者
京谷 栄二
出版者
長野大学
雑誌
長野大学紀要 (ISSN:02875438)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-28, 2011-07
著者
山田 信行 ヤマダ ノブユキ Yamada Nobuyuki
出版者
駒澤大学文学部社会学科
雑誌
駒澤社会学研究 (ISSN:03899918)
巻号頁・発行日
no.53, pp.129-153, 2019-10

グローバル化という長期的趨勢の結果、資本主義というシステムは世界の「普遍」を担うものとなった。グローバル化のもとで、様々な社会問題が引き起こされていることを考慮に入れるとき、なぜ資本主義が世界の「普遍」を担うことになったのかをあらためて問い直す必要があろう。本稿は、資本主義の生成に際して、人々が資本主義を選好する原因を解明する作業にほかならない。本稿においては、資本主義形成の重要なメルクマールである「自由な賃労働」という種差的構造の生成に照準を当てることによって、単なる強制や暴力によるだけではない構造の形成のあり方を概念的に把握することを試みる。この作業を通じて、資本主義への構造転換あるいは移行は、移行によって解体されることになる前資本主義的な社会関係が存続していることによって、かえって容易になる可能性があることを指摘したい。加えて、本稿においては、資本主義とは異質な社会関係の将来的帰趨について展望するとともに、そうした社会関係が世界システムから失われた場合に想定される事態についても考察を試みる。この考察は、資本主義以後の社会、すなわちポスト資本主義社会に求められる要件を明らかにし、期待される制度のあり方についても、一定の回答を提示することになる。
著者
小川 さやか
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

本発表では、香港・中国広州市在住のアフリカ系居住者たちが、出身国や言語、宗教(宗派)および「アフリカ(性)」を基盤に重層的にアジア諸国とアフリカ諸国をつなぐ組合を結成していることを明らかにし、彼らの組合運営の論理と実践を市民社会論と認知資本主義をめぐる議論の接点から探る。それを通じて「信頼」や「互酬性」に対する期待を伴わない市民社会組織活動のあり方を提示する。
著者
小川 さやか
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.172-190, 2019

<p>インターネットとスマートフォンが普及し、人類学者が調査している社会の成員みずからが様々な情報を発信するようになった。本稿では、香港在住のタンザニア人と彼らの友人や顧客などが複数のSNSに投稿した記事や「つぶやき」、写真、動画、音楽、絵文字などの多様な発信を「オートエスノグラフィ」の「断片」とみなし、断片と断片が交錯して紡ぎだされる自己/自社会の物語を「彼らのオートエスノグラフィ」と捉え、その特徴を明らかにする。香港のタンザニア人たちは、SNSを利用して商品情報や買い手情報を共有し、アフリカ諸国の人々と直接的につながり、オークションを展開する仕組みを形成している。彼らはそこで一時的な信用を立ち上げ、多数の顧客と取引するために、好ましい自己イメージにつながりうる断片的情報を投稿する。彼らが投稿した多種多様な断片的な情報は、他のユーザーとの間で共有されることによって価値を持つ。また異なる媒体に投稿された断片的な情報は、インターネット上で他者の欲望や願望と交錯し、偶発的に継ぎはぎされ、いまだ実現していない個人の可能性を示す物語となっていく。本稿ではこのような形で生成する被調査者の多声的なオートエスノグラフィの特徴について認知資本主義論を手がかりにして明らかにする。それを通じて人類学者によるエスノグラフィの特徴を逆照射し、ICTを活用したエスノグラフィの新たな方法を模索することを目的とする。</p>
著者
長野 壮一
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.126, no.12, pp.1-37, 2017

フランス革命後における中間団体をめぐる政治文化を考える際の基本概念に「団結」と「結社」がある。団結と結社は従来の研究において関連付けて論じられることが多かったが、両概念の連関は必ずしも自明ではない。なぜなら、そもそも刑法典において団結と結社はそれぞれ別の項目で記載されており、また団結と結社のいずれか片方にしか言及していない研究も散見されるためである。先行研究の多くが団結と結社を関連付けて論じた要因として、刑法典における団結禁止規定(第414~416条)の改正について論じる際に従来の研究が主として依拠した史料(立法院委員会による法案趣旨説明)において、結社権への言及が多く見られたという点が指摘できる。そこで本論文は、法案によって示された中間団体認識が同時代における言説体系の中でどのような位置付けにあったのかを解明するため、委員会による趣旨説明にとどまらず、法改正に関連する史料を網羅的に分析した。<br>その結果として明らかとなったのは次の事実である。法案審議の過程においては、公序の観点から家族的結社を推奨し団結権を否認する立場と、労働の自由の延長として結社権と団結権を肯定する立場が併存していた。しかしながら、最終的に成立した法案はいずれの立場とも完全には相容れず、結社は個々人の利害の集合である団結とは異なり団体としての利害を持つとする認識、並びに団結権は結社権に至る通過点であるとする認識からなる折衷的な立場を取った。法案は時代の趨勢に反し、立法者独自の中間団体認識に立脚していたのである。こうした立法者の戦略は団結権法認を成功へと導くには有効であったが、その一方で結社の法的立場は曖昧なまま残された。団結法改正の過程で示された中間団体認識はその後、第三共和政初期の社会政策において常に問い直される帰結となるだろう。
著者
野口勝可 中山兼徳 潘釆敦
巻号頁・発行日
no.22, pp.179-202, 1975 (Released:2011-09-30)
著者
檜作 進 伊藤 恵子 前田 巌 二国 二郎
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
澱粉科学 (ISSN:00215406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.70-75, 1972-09-15 (Released:2011-07-01)
参考文献数
5
被引用文献数
6 6

1)玉蜀黍,小麦,馬鈴薯,甘藷,糯玉蜀黍,糯米の5%でんぷん糊を,0~70℃ の定温(10℃ ごと)に1時間保存し,老化の温度依存性を調べた。糊化度は,グルコアミラーゼによる消化法(A法)と電流滴定による結合ヨード量の測定(I法)で行なった。でんぷん糊は,5%のでんぷん懸濁液を100℃ に5分および30分間加熱して調製した。 2)調製時の糊の糊化度は,甘藷や馬鈴薯でんぷんでは,糊化時間の長短,測定方法にかかわらず完全糊化(糊化度97%以上)と判定された。小麦や玉蜀黍でんぷんは,30分の糊化で,A法では完全に糊化しているとみられたが,I法では90%程度の糊化度を示し,アミロース分子の糊化が十分でないことが示唆された。玉蜀黍でんぷんの5分糊化の糊では糊化度はさらに悪く,82%であった。 3)いずれのでんぷんも,5分加熱の糊のほうが30分加熱の糊よりも老化しやすく,低温ほど老化が速やかで,0℃ が最も老化しやすかった。 4)糯質のでんぷんは最も老化し難く,0℃ においても老化は感知されなかった。ついで甘藷でんぷんが老化し難く,30分加熱の糊では0℃ においてもほとんど老化を起こさなかったが,5分加熱の糊では0~10℃ でわずかであるが老化がみられた。馬鈴薯でんぷんも甘藷でんぷんと同様な結果を示したが,甘藷よりは少し変化を起こしやすい性質が認められた。小麦でんぷんは,いも類でんぷんよりもはるかに老化しやすく,40~50℃以下の温度で老化が速やかになった。玉蜀黍でんぷんは小麦でんぷんと優劣をつけ難いが,50~60℃ 以下の温度で老化が速やかであった。 5)いずれの場合も,老化によってI法による糊化度の低下が顕著で,アミロース分子が老化を主導していることが示唆され,でんぷんの種類により,アミロース分子の老化の温度依存性に明らかな特徴がみられた。
著者
端 信行
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.11-17, 1999-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
10

本稿は、中央省庁再編関連法の成立にともなって、文化庁の下部組織である国立美術館・博物館が2001年より独立行政法人への移行が決まったことを受けて、あらためて美術館・博物館の抱える今日的課題を明らかにしておこうとするものである。とりわけ今日の美術館・博物館における運営上の〈独立性〉の欠如がすべての今日的課題の根元にあるとの認識に立って、〈独立性〉をいかに実現するかをめぐって議論を展開した。
著者
ブドン ジュリアン 石井 三記 BOUDON Julien ISHII Mitsuki
出版者
名古屋大学大学院法学研究科
雑誌
名古屋大学法政論集 (ISSN:04395905)
巻号頁・発行日
no.281, pp.333-355, 2019-03-25

石井三記(訳).本講演会には、本年度科学研究費補助金基盤研究(C)課題番号16K03259の補助を受けた。
著者
蓮見 惠司
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.190-196, 2018-02-20 (Released:2019-02-20)
参考文献数
28
被引用文献数
1

ガードナー国際賞(2017年),ラスカー臨床医学研究賞(2008年),日本国際賞(2006年)など数々の国際賞を受賞した遠藤 章博士のスタチンの発見は,虚血性心疾患(動脈硬化とそれに起因する血栓による動脈閉塞が原因)の予防と治療の新たな扉を開いた.筆者らは,血栓溶解を促進する生理活性物質の探索の過程で多くの化合物を同定し,糸状菌Stachybotrys microsporaが生産するtriprenyl phenol化合物群SMTPの医薬開発を進めている.SMTPは血栓溶解促進作用と抗炎症作用を併せ持ち,脳梗塞(血栓による脳虚血に伴う病態)の改善に著効を示す.本稿では,SMTPの発見から医薬開発までの道のりを,遠藤博士とのエピソードを交えて紹介する.
著者
Suolinga Suolinga Heejin Kim
出版者
Global Business Research Center
雑誌
Annals of Business Administrative Science (ISSN:13474464)
巻号頁・発行日
pp.0200804a, (Released:2020-09-03)
参考文献数
29

This paper intends to understand the overseas business expansion of a Japanese SME that is facilitated by strategic management of technical interns (TIs), a type of foreign migrant labor in Japan. We challenge the current prejudices and narrow view on the role of TIs by introducing a unique case wherein a rural SME utilized TIs as strategic human resources. Furthermore, we highlighted the positive influence of TIs on the gradual insiderization in foreign markets and development of new business opportunities.
著者
大森 慈子 廣川 空美 千秋 紀子 立平 起子
出版者
仁愛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、泣くことや涙に対する一般的な認識を捉えた上で、泣きと涙の定量化を試み、涙を流すことによる心身状態の変動を明らかにするものである。研究の結果、感動映画に対する泣きの程度に、内容の知識や以前に視聴した経験は大きく影響しなかった。また、他者の涙を見た際、笑顔や他の表情とは異なる感情反応が示された。綿糸、濾紙、綿球を使うことによって涙液量測定の可能性が得られた。さらに、泣くことに伴う唾液中コルチゾール値や心拍、瞬目といった生理的反応の変化が明らかになった。