著者
中本 敦
出版者
岡山理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は機能的絶滅の閾値を明らかにすることを目的としている。琉球列島の58島について、種子散布者としてのオオコウモリと餌植物の密度推定を行った。また植物に関しては文献調査も行った。クビワオオコウモリの分布は基本的にはオオコウモリ類の本来の分布域である熱帯から離れるにしたがって、分布が飛び石状になる傾向が見られた。オオコウモリと強い共生関係にあることが予想される大型のFicus属の種やイルカンダとの分布の一致度は低く、明確な関係は見いだせなかった。モモタマナとリュウキュウガキでは、オオコウモリの分布との一致度が高く、種子散布をオオコウモリに強く依存している可能性が示唆された。
著者
橋本 鉱市
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.61-67, 2020-03-30

This paper gives an overview of research trends and issues in Europe and the United States regarding mission statement research of higher education institutions, which have been accumulating in recent years. The purpose of this study is to analyze the contents of mission statement of universities in Japan and to examine the possibility of research on institutional logic and organizational identity from an organizational sociological perspective.
著者
井所 拓哉 臼田 滋
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1476, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】体幹はヒトの機能的動作における姿勢制御に大きな役割を果たしている。脳卒中後の運動機能障害は四肢と同様に体幹においても生じており,近年の脳卒中患者を対象としたランダム化比較試験において体幹機能障害への課題特異的介入により,その改善効果は立位バランス能力や移動能力へも転移することが報告されている(Saeys et al., 2012)。脳卒中後の体幹機能障害は歩行速度やTimed Up and Go(TUG)といった移動能力の時間因子と関連することが報告されているが(Verheyden et al., 2006),歩行の質との関係については不明である。本研究の目的は脳卒中片麻痺患者における体幹機能障害と3軸加速度計を用いた歩行指標との関連性について検討することである。【方法】対象は脳卒中片麻痺患者12名(年齢62.4±6.1歳,男性8名,女性4名,脳梗塞8名,脳出血4名,発症後10.5±3.6日)とした。評価項目として,体幹機能はTrunk Impairment Scale(TIS)で評価し,その他に下肢筋力は徒手筋力計(μ-tas F-1,アニマ)を使用して麻痺側,非麻痺側の膝関節屈曲,伸展,足関節背屈,底屈の等尺性筋力を測定し,立位バランス能力はShort Form Berg Balance Scale(SF-BBS),移動能力はTUGと10m歩行テストをそれぞれ測定した。さらに腰部に3軸加速度計(WAA-006,ATR-promotions,sampling rate 200Hz)を装着し,10m歩行テスト中の体幹加速度を計測した。体幹加速度から得られる定量的な歩行指標として,10m歩行中の中央5歩行周期分の加速度信号データを用いて前後成分の特徴的な波形から歩行周期を同定し,歩行変動性の指標として歩行周期時間の変動係数と1平均歩行周期時間シフトした波形との自己相関係数を3軸方向で算出した。さらに歩行の円滑性の指標として周波数解析により得られるharmonic ratio(HR)を3軸方向で算出した。統計学的解析として,TIS合計点および下位項目の静的座位バランス項目,動的座位バランス項目,協調運動項目,麻痺側,非麻痺側の下肢筋力合計値,SF-BBS,TUG,歩行速度と体幹加速度から得られた歩行指標間でのPearsonの相関係数またはSpearmanの順位相関係数を求めた。統計学的解析の有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は研究実施施設における臨床研究倫理委員会の承認を得て実施した。対象者に対しては書面および口頭にて研究内容を説明し,署名にて同意を得た。【結果】各指標の測定結果は平均±標準偏差,TISおよびSF-BBSは中央値(第一四分位数,第三四分位数)で表した。TIS合計点16(14,20)点,下肢筋力は麻痺側3.03±1.28Nm/kg,非麻痺側3.83±1.23Nm/kg,SF-BBS 20(17,25)点,TUG 15.8±8.3秒,歩行速度0.71±0.27m/sであった。体幹加速度から得られた歩行指標は,歩行周期時間変動3.6±1.8%,自己相関係数は前後成分0.66±0.17,側方成分0.47±0.20,鉛直成分0.54±0.24,HRは前後成分2.20±1.25,側方成分2.02±0.75,鉛直成分2.63±1.72であった。体幹加速度から得られた歩行指標との関連性において,TIS協調運動項目は歩行周期時間変動および3軸全ての自己相関係数とHRとの間に有意な相関を認めた(|r|=0.584-0.822,P<0.05)。TUGは歩行周期時間変動,鉛直成分の自己相関係数,前後成分のHRとの間に有意な相関を認めた(|r|=0.626-0.733,P<0.05)。歩行速度は歩行周期時間変動,3軸全ての自己相関係数,前後成分と鉛直成分のHRとの間に有意な相関を認めた(|r|=0.609-0.915,P<0.05)。麻痺側,非麻痺側下肢筋力,SF-BBSは体幹加速度から得られる歩行指標との間に有意な相関を認めなかった。【考察】本研究の結果より,脳卒中後の体幹機能障害や移動能力の時間因子が歩行の変動性や円滑性と有意な相関関係を示したのに対して,立位バランス能力や従来,歩行の時間因子と関連性が報告されている下肢筋力は,歩行の変動性や円滑性と有意な関連を示さなかった。これは脳卒中後の体幹機能の改善が歩行安定性の獲得に寄与し,さらには移動の時間的パフォーマンス向上へとつながり得る可能性を示唆している。本研究の限界として,研究デザインは横断的研究であり,対象は発症後早期に歩行可能な比較的,軽症の不全片麻痺者に限られていた。今後は重症例も含めた縦断的な調査により因果関係を検証する必要がある。【理学療法学研究としての意義】本研究から脳卒中患者における歩行の変動性や円滑性に体幹機能障害が影響していることが示された。これは脳卒中後の歩行機能障害への介入の糸口を検討する上で,臨床的に有用な情報を示したと考えられる。
著者
塚原 康子
出版者
神道文化会
雑誌
神道文化
巻号頁・発行日
no.19, pp.75-88, 2007-12-01
著者
能宗 伸輔 池上 博司
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.82-84, 2014-02-28 (Released:2014-03-11)
参考文献数
7
被引用文献数
2
著者
フランク ビョーン エルバス トッリコ ボリス 圓川 隆夫
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.201-209, 2013-01-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
17

グローバルな競争が加速される中,ホフステードによる国の文化次元とそのスコアによる消費者態度への影響の研究が多くある.日本人の文化的特徴として不確実性回避が高く,それがCS(顧客満足度)等の品質評価について厳しい態度に結びついていることが知られている.しかしながら,それは国の平均値としての傾向であり,消費者個人の文化性向としての不確実性回避の影響については必ずしも明確な結論は得られていない.そこで,本研究では,10の製品・サービスを対象とした消費者のCSおよびその先行要因指標(知覚品質,知覚価値,企業イメージ)と不確実性回避の文化性向を測定することによって,不確実性回避の消費者態度の影響メカニズムの解明を目指すものである.その結果,不確実性回避は直接CSに影響を与えるよりも知覚品質等の先行要因指標を通して間接的に負の影響を与える,さらにその傾向はサービスよりも製品で顕著であることを示した.このような結果は,個人の文化性向が市場セグメント変数として有効であるとの新たな知見を与えるものである.
著者
藤田 晋吾
出版者
流通経済大学
雑誌
流通経済大学論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.415-436, 2008-03
著者
西岡 清 向井 秀樹 上村 仁夫 堀内 保宏 伊藤 篤 野口 俊彦 西山 茂夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.98, no.9, pp.873, 1988 (Released:2014-08-08)

重症成人型アトピー性皮膚炎患者64例にアンケートならびに面接調査を行い以下の結果を得た.①39.1%の症例が生後6ヵ月以内,28.1%が1~4歳に発症し,10歳迄に発症した症例は75%であった.②アトピー背景として2親等内に本症の発生あるいは気道アレルギーの発生の両者あるいはその一方を病歴に持つ症例が86.7%にみられた.③いずれの症例も教科書的皮膚症状の分布を示しながら全身への皮膚症状の拡大を示し,93.8%の症例が思春期もしくは成人期に全身への皮膚症状の拡大を示した.④1例を除いて血中IgE値は200U/ml以上を示し,気道アレルギーを合併する症例では血中IgE値がより高値を示す傾向がみられた.気道アレルギーを合併しない症例の血中IgE値は,皮膚症状罹患後10年を経て著明な高値を示す傾向がみられた.ダニ抗原に対するRASTも血中IgE値同様,本症罹患10年以上の症例に高スコアーがみられた.⑤18.8%の症例に発症後寛解期間が見られ,これらはいずれも5歳以前の発症者であった.これらの症例では気道アレルギーを合併するか血中IgE高値がみられた.以上より,重症成人型アトピー性皮膚炎患者は一般の本症患者に比しアトピー背景が強く,また,IgE産生機構の昻進が著明で,アトピー性皮膚炎全体の中で1つのサブグループとして解析されるべき集団であると考えられた.
著者
Tinsley Elizabeth N.
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1284-1287, 2010

この論文において,『遍明院大師明神御託宣記』(以下『託宣記』と称す)の制作過程を検討する.同テキストは,建長3年(1251年)にあった託宣の記録として,高野山中院流道範(1184年-1252年)によって記されたと伝えられる.道範は1249年に配所から帰山した.現存する写本には,託宣自体とともに仁治3年(1242年)に起きた金剛峯寺と大伝法院の間の紛争と,仁治4年(1243年)にあった道範を含めて金剛峯寺僧侶の配流についての叙述の部分もある.『託宣記』が作成された時期は,仁治3年の紛争の時期に近く,事件についての情報源も詳しく,貴重な史料であるにもかかわらず,この事件に関する先行研究では『託宣記』との関係については,ほとんど無視されていた.道範が高野山へ帰山が許されたのは1249年であり,大伝法院の再建を条件とするものであったと史料上に示唆されている.しかしながら,『託宣記』には,大伝法院の再建・僧侶の帰山にたいする記述が見られない.それどころか,配流のすぐ後に著されたテキストのように見える.高野山中院流学侶宥快(1345-1416)の著書(『阿互川草薬中記』(1413頃著)など)によると,この託宣自体は,配流以前に下されたものとして理解されている.この宥快による理解は,従来考えられていた『託宣記』の作成時期,作成背景,構造と著者について再考を提示するものであり,テキストの解釈を見直す必要があると思われる.
著者
Elizabeth N. TINSLEY
出版者
Japanese Association of Indian and Buddhist Studies
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1284-1287, 2010-03-25 (Released:2017-09-01)

この論文において,『遍明院大師明神御託宣記』(以下『託宣記』と称す)の制作過程を検討する.同テキストは,建長3年(1251年)にあった託宣の記録として,高野山中院流道範(1184年-1252年)によって記されたと伝えられる.道範は1249年に配所から帰山した.現存する写本には,託宣自体とともに仁治3年(1242年)に起きた金剛峯寺と大伝法院の間の紛争と,仁治4年(1243年)にあった道範を含めて金剛峯寺僧侶の配流についての叙述の部分もある.『託宣記』が作成された時期は,仁治3年の紛争の時期に近く,事件についての情報源も詳しく,貴重な史料であるにもかかわらず,この事件に関する先行研究では『託宣記』との関係については,ほとんど無視されていた.道範が高野山へ帰山が許されたのは1249年であり,大伝法院の再建を条件とするものであったと史料上に示唆されている.しかしながら,『託宣記』には,大伝法院の再建・僧侶の帰山にたいする記述が見られない.それどころか,配流のすぐ後に著されたテキストのように見える.高野山中院流学侶宥快(1345-1416)の著書(『阿互川草薬中記』(1413頃著)など)によると,この託宣自体は,配流以前に下されたものとして理解されている.この宥快による理解は,従来考えられていた『託宣記』の作成時期,作成背景,構造と著者について再考を提示するものであり,テキストの解釈を見直す必要があると思われる.