著者
山西 倫太郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.764-771, 2009-11-01 (Released:2011-07-28)
参考文献数
52

国民の健康志向とともに,食品に対する免疫調節への期待は高まっている.そして,近年は衛生仮説やToll-like receptorを介した自然免疫系の研究の進展を背景に,プロバイオティクスによる免疫調節の研究が盛んであり,知識の集積が進んでいる.一方,β-カロテンなどのカロテノイドによる免疫系への作用の研究も比較的古くから行なわれており,報告されている作用の種類も多岐にわたっている.ここでは,免疫に関するカロテノイド研究のこれまでを振り返り,その中から β-カロテンが抗原呈示細胞に及ぼす影響に関する研究についてその背景・現況を紹介するとともに,カロテノイド研究の今後の課題に言及する.
著者
飯渕 良平 莅戸 立夫 水野 皓司 水野 皓司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.370, pp.25-30, 2003-10-21

スリット型プローブを用いたミリ波帯走査型近接場顕微鏡において,検査対象の異方性を考慮した新たな画像再構成法を提案し,その妥当性の検証を行った。提案した画像再構成法により,表面内において異方性を有するワイヤーグリッド等の異方性の画像化に成功した。
著者
浜野 哲子 縫村 修次 渡辺 文夫 莅戸 立夫 〓 鐘石 水野 皓司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MW, マイクロ波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.366, pp.1-6, 2000-10-13
参考文献数
6

ミリ波帯走査型近接場顕微鏡は, 波長以下の高い空間分解能によるの非破壊材料検査等の利用が期待されている.本近接場顕微鏡システムでは, 物体からの反射係数がコントラストとして画像化される.そのため, 例えば比誘電率などの, 直接反射係数に変化を与える物体の物性定数を, コントラストから評価することが可能である.本発表では, コントラストの定量評価実現に向けた検討として, 以下の2点について報告する.1)測定値の誤差を与える原因は有限サイズの平板誘電体にあることを突きとめ, 平板誘電体の表面波伝搬が低減されるようにシステム構造の改善を行なった.その結果, 10%以上あった測定不確定率が5%以内に低減された.2)コントラストの定量評価には, 物性定数と反射係数との相関関係を理論予測する必要がある.そこで, スリット型プローブを有する本近接場顕微鏡システムの等価回路を新たに構成し, その妥当性を実験的に確認した.
著者
蕭 〓偉 城所 哲夫 瀬田 史彦 全 泓奎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.245-252, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2

旧同和地区では、同和対策関連事業の施行により、独自な福祉機能と施策が実施されてきた。2002年特別措置法の失効に伴い財源の停止、同和対策関連事業も終焉を迎えた。地域主体の自主的な供給等課題が浮き彫りになり、各地区それぞれの自助努力が問われている。今日大阪の旧同和地区においては、「社会福祉事業」を中心とする自立に向けたまちづくりヶ取り組まれている。大阪市12地区の中において、3地区の活発な活動実態が認められ、同市においての重要性が高いと言える。3地区の考察を通して把握される特徴や課題は、今後他地域において自立に向けたまちづくりのための参考となり得る。本稿の研究目的を下記の通りに要約する:(1)地域福祉諸機能に関する分析:まず3地区においての過去の地域福祉諸機能を把握する。更に各「地域団体とその機能」の現状、並びに「社会福祉事業」に焦点を当てその実態を把握しながら、地域横断の比較分析、評価を試みる。(2)地域福祉諸施設に関する分析:過去に同和対策関連事業によって整備された「地域福祉諸施設」(表-1)の現状を把握し、地域横断の分析を行う。
著者
大橋 聖和 小林 健太 間嶋 寛紀
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.8, pp.426-431, 2008-08-15 (Released:2009-03-25)
参考文献数
8
被引用文献数
3 1

To make thin sections or polished slubs of the brittle fault rocks like fault gouge and fault breccia without volume loss, is pretty difficult because of its fragility and softness. In general, the reinforcement by resin is performed in such specimens, but it's not so effective for the brittle fault rocks that contain swelling clay minerals. Additionally, detailed and through instructions about how to make thin sections of these rocks have not been published. Therefore, we introduce the grinding method which does not use the water for brittle fault rocks and altered rocks containing swelling clay minerals. With this method, we can make the thin sections, polished slubs, even sections specially prepared for SEM, TEM, EPMA analyses of noncohesive fault rocks containing swelling clay minerals without volume loss.
著者
蒔田 覚 加藤 済仁
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.713-718, 2006-09-30 (Released:2010-09-24)
参考文献数
7
被引用文献数
1

救急医療の特徴として, (1) 説明のための時間的余裕がないこと, (2) 患者が意識障害を伴っている場合も多いこと, (3) 患者との間に基礎となる信頼が構築されていないこと, などがあげられる。インフォームドコンセントの重要性は論を待たないが, 救急医療において最も重視されるべきは「患者の生命」である。紛争を恐れるあまり, 適切な治療の機会を失うことがあってはならない。医師として判断に迷う場合には, 医療水準に則った治療を心がけることが肝心である。
著者
安藤 淑子
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
no.46, pp.1-18, 2018-03-01

古代バラモン思想においてkamaは「欲する」という心の働きを意味し、これが人間の行為の根本的動因と見なされていた。一方、原始仏教におけるkamaはこれとは異なる語義・用法を有していた。すなわち、原始仏教では最古層の経典よりすでにkamaは単なる心の働きではなく、認識と感受によって変貌した外的事物それ自体をも意味していた。言うなれば、「対象」と「心の働き」が一体となった具体的な諸現象を、kamaという語によって指し示していたのである。このような語義の特徴を反映して、原始仏教経典におけるkamaはほとんどの場合複数形で用いられている。原始仏教心の働き対象複数形
著者
藤原 香織 渡辺 澄夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J91-D, no.4, pp.889-896, 2008-04-01

仮説検定とは,データが帰無仮説から発生していると考えることに無理があるかどうかを統計的に判断することである.仮説検定のアルゴリズムを作るためには,帰無仮説が真であると仮定したもとで,帰無仮説と対立仮説の対数ゆう度比の確率的な挙動を理論的に導出する必要があるが,特異モデルにおいては,フィッシャー情報行列が正則行列でなく,最ゆう推定量は存在する場合においても漸近的に正規分布に従わず,対数ゆう度は χ2 分布に法則収束しない.このため従来の統計的正則モデルで用いられている仮説検定手法を特異モデルに適用することはできないことが知られている.仮説検定において,帰無仮説と対立仮説がともに確率分布で与えられる場合には,ベイズ対数ゆう度比を用いた検定によって,同じ危険率のもとで検出力が最大になる.そこで,本研究では特異モデルのベイズ検定においてベイズ対数ゆう度比を用いる方法を考察し,特異モデルにおいてもベイズゆう度比の漸近挙動の導出が可能であることを明らかにする.また具体的な応用例として時系列変化問題を扱う場合における理論解析を行う. 実験により,本仮説検定法を用いた変化検出法が,適切に変化を検出し,雑音に強い変化検出法であることを明らかにする.
著者
大森 隆子
雑誌
教育学部紀要 (ISSN:18838626)
巻号頁・発行日
no.8, pp.231-238, 2015
著者
五十嵐 裕子 イガラシ ユウコ Yuko Igarashi
雑誌
浦和論叢
巻号頁・発行日
no.46, pp.45-68, 2012-02

日本の折り紙のはじまりは神事や贈答儀礼に用いられる「儀礼折り紙」であった。江戸時代になると、折り紙は礼法や決まりから離れ、折り方そのものを楽しむ「遊戯折り紙」がおとなの遊びとして広まった。江戸時代中期には、それまで祖母や母から女子の躾として伝承されていた折り紙が、「子どもの遊び」となり普及していくようになる。一方西欧では、フレーベルが子どもの創造的活動衝動を自由に表現するための「作業具」の1つとして、折り紙を位置づけた。フレーベルの教育理論を導入した日本の幼稚園でも折り紙は保育教材として採用されたが、フレーベルが折り紙に込めた教育的意図は理解されないまま、折り紙はやがて保育教材・教具から放逐されていった。しかし折り紙遊びはその後も現代に至るまで家庭や幼稚園、保育園で子どもたちに親しまれている。折り紙あそびの普遍的魅力を再考し、折り紙の教材的価値や折り紙遊びにおける子どもへの適切な援助に関する研究が望まれる。
著者
KwangYong Park KyoChul Seo
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.26, no.10, pp.1571-1574, 2014 (Released:2014-10-28)
参考文献数
33
被引用文献数
5 11

[Purpose] The purpose of this study was to determine whether exercises using proprioceptive neuromuscular facilitation (PNF) scapular and pelvic patterns might decrease the pain index and increase the lumbar flexibility of obese patients with low back pain. [Subjects and Methods] Thirty obese patients with low back pain were randomly assigned to an experimetal group (n=15) and a control group (n=15). The exercise program of the experimental group consisted of scapular patterns (anterior depression − posterior elevation) and pelvic patterns (anterior elevation − posterior depression). The control group performed neutral back muscle strengthening exercises. Over the course of four weeks, the groups participated in PNF or performed strengthening exercises for 30 minutes, three times per week. Subjects were assessed a pre-test and post-test using measurements of pain and lumbar flexibility. [Results] The results show that lumbar flexion and lumbar extension significantly improved in the experimental group, had significant improvement and that the Oswestry Disability index (ODI) significantly decreased. However, there were no significant changes in the control group. The experimental group also showed significant differences in the pain index and lumbar flexibility from the control group. [Conclusion] This study showed that PNF can be used to improve pain index rating and lumbar flexibility. The findings indicate that the experimental group experienced greater improvement than the control group by participating in the PNF lumbar stabilization program.
著者
増田 幸宏 堀 英祐 川合 廣樹 佐土原 聡 中嶋 浩三 尾島 俊雄
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.15, no.31, pp.833-838, 2009-10-20 (Released:2009-10-26)
参考文献数
14

One example of the evaluation of Japanese cities from the viewpoint of a foreign country is “A natural hazard index for megacities” published by Munich Re Group, one of the world’s major reinsurance companies.Among 50 large cities from around the world that were evaluated, Tokyo and Yokohama showed an exceptionally high score by the index. It is necessary to consider such a report as a warning regarding the safety measures in Japan, to behave responsibly as the world’s second leading economic power. However, it should be noted that the content of the evaluation is limited.
著者
田宗 秀隆
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.126-129, 2019 (Released:2019-12-28)
参考文献数
8

精神科医にとって,臨床経験の充実と基礎研究へ取り組む時間配分は課題である。ライフステージ変化も加わることも多い時期に,プロフェッショナルとしての立脚点が定まらない不安も抱え,何を優先するか迷うに違いない。筆者がキャリアパスを考えたきっかけは医学部時代のMD研究者育成プログラムである。卒業生は半数以上が基礎系大学院に所属しており,現況を報告する。 臨床で病の軌跡(Illness Trajectory)を知ることは研究のアイデアになりえ,研究の成果は臨床への還元が期待できる。異なる哲学・ルールを体験することも成長につながるだろう。 筆者は専門医と精神保健指定医を取得し,外的基準としての専門性を身につけたうえで大学院に進学した。前方視的に最適配分を決めるのは難しいが,自分なりの価値観(=内的基準)を確立できるようにトレーニング期間を過ごすことが重要だと思う。筆者の周囲では,折り合いをつけて選んだ道を歩んでいる精神科医が多く,多様性を認め合う文化を筆者もありがたく享受している。
著者
野口敦弘 高橋雅隆 納富一宏 斎藤恵一
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.641-642, 2012-03-06

近年,暗証番号やパスワードの不正利用による犯罪が横行している.特に,普及が著しいスマートフォンやタブレットPCなどのロック解除を行う際に,覗き見によるパスワードの盗難に遭うことから,暗証番号での認証はセキュリティ上,問題があるといえる.そこで,本研究では,暗証番号をなくし,タッチスクリーンを用いたバイオメトリクス認証手法について提案する.利点として,タッチするだけで認証が行える点であり,ユーザの煩わしさを軽減できると考える.また,番号がないため,背後から覗き見されても入力情報が盗難されづらくなると推測する.本稿では,静電容量タッチスクリーンを用いたリズム認証手法の有用性について考察する.
著者
井上 清子
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.97-105, 2015-03-01

親および教師からの褒められ経験 ・ 叱られ経験と自尊感情の関連について明らかにする目的で、大学生252名を対象に、質問紙調査を行った。自尊感情高群と低群において、褒められた経験・叱られた経験の頻度に差があるかを調べるためにt検定を行った。褒められた経験では、父親 ・ 母親 ・ 教師いずれに対しても有意差がみられ (p<.01)、自尊感情高群の方が低群よりも、児童期によくほめられたと感じていた。叱られた経験では、母親 ・ 父親 ・ 教師いずれに対しても有意差はみられなかった。また、母親では、「礼儀 ・ 思いやり」(p<.01) 「性格・態度」 (p<.05)、父親では、「学業」、(p<.05) 「礼儀 ・ 思いやり」 (p<.05) 「習い事 ・ スポーツ」 (p<.01) 「課題達成」 (p<.05)、教師では「礼儀・思いやり」 (p<.01) 「習い事・スポーツ」 (p<.01) で有意差がみられ、すべて自尊感情得点高群の方が褒められた経験が多いことが分かった。
著者
武田 憲文 平田 恭信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.94, no.2, pp.270-275, 2005-02-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

心臓が内分泌器官として注目されている.心房性ナトリウム利尿ホルモンは血管拡張作用や利尿作用を有し,心不全や虚血性心疾患などの過度の心負荷に対して心房から代償性に分泌される.心血管リモデリングの進展に関与する,賦活したレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系や交感神経系,エンドセリンなどにも拮抗することが知られ,心不全治療をはじめ,臓器保護(心臓・腎臓)や周術期管理での臨床応用が益々期待されている.