著者
望月 久 金子 誠喜
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.205-213, 2009 (Released:2009-05-28)
参考文献数
17
被引用文献数
10 2

[目的]パフォーマンスに基づく臨床的なバランス能力評価指標開発のための実施したアンケート調査の結果を報告する。[対象]バランスに関する研究報告がある理学療法士23名より回答を得た。[方法]郵送法にてアンケート調査を実施した。質問項目はバランスの定義,バランス能力測定の枠組み,臨床的なバランス能力測定法に必要な条件,バランス能力測定の現状などとした。[結果]バランスの定義やバランス能力測定の枠組みは理学療法士間での意見の違いがあった。臨床的なバランス能力評価指標としては,測定時間の短いこと,結果の客観性,結果の臨床的意味などが重視されていた。また,現在使用されている評価指標についても,測定の簡便性や結果の臨床的な有用性など,実用性の面では種々の問題があることが確認できた。[結語]今回の結果を参考に,より実用的な臨床的バランス能力評価指標を考案したいと考えている。
著者
中野 愛美 宇谷 知紘 中島 美里 村尾 昌信 中嶋 正明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0970, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】ヒトの体幹筋は,動的活動時における主動筋としての作用のみならず,常に抗重力位に晒される脊柱の安定化筋としての作用も有する。体幹筋は,機能や構造などの違いから,ローカル筋とグローバル筋とに大別される。ローカル筋は個々の腰椎に分節的に付着し,分節的な動きの制御において重要な役割を持つ体幹深層筋である。一方,グローバル筋は原則的に腰椎をまたいで付着し,大きなトルクを発生させる体幹浅層筋である。通常ローカル筋とグローバル筋は互いに協調し,脊柱の安定性を維持・調節していると報告されている。一方,高齢者や腰痛患者に多く認められるグローバル筋の過活動は,ローカル筋が担う脊柱の分節的安定性を阻害する因子となりうる。しかしながら,随意的に分節的な脊柱の運動を得ることは難しく,ローカル筋とグローバル筋の協調性を再教育させるための有効な運動療法の報告はほとんどない。我々は,ピラティスの体幹のコアマッスルの活動を刺激するとされる「ショルダーブリッジ」というエクササイズに着目した。ショルダーブリッジによってローカル筋の活動が賦活されれば,不要な代償活動から解放されたグローバル筋のスティフネスが抑制され,結果的に脊柱の可動性が高まる可能性がある。本研究の目的は,ショルダーブリッジが,グローバル筋のスティフネスに与える影響を明らかにすることである。【方法】対象:腰部および下肢に整形外科的既往のない大学生17名を対象とした。運動課題:通常のブリッジ(以下,N-Bridge)と脊柱を分節的に動かすショルダーブリッジ(以下,S-Bridge)を運動課題とした。各運動課題の開始肢位は,セミファーラー肢位とした(膝屈曲120°)。N-Bridgeは,脊柱を直線状に保持した状態で臀部を挙上・下制するものとし,挙上・下制は各々1秒で行わせた。S-Bridgeは,脊柱を分節的に動かすことを意識させたブリッジ動作とし,挙上・下制ともに各8秒間かけて行わせた。挙上は,先ず骨盤を後傾させ,下部腰椎から上部頚椎に向けて椎体を順に床からはがしていくようにして臀部を挙上させた。下制は,逆に上部頚椎から下部腰椎に向けて椎体を順に床に降ろしていき,最後に骨盤をニュートラル肢位にさせる。両課題は挙上・下制を1セットとし,8セット行わせた。評価課題:脊柱柔軟性の評価は,指床間距離(Finger Floor Distance:FFD),胸椎および腰椎の前屈可動域とし,胸椎および腰椎の前屈可動域の計測にはスパイナルマウス(Index Co, Ltd)を用いた。測定は直立位,前屈位にて行った。胸椎後弯角および腰椎前弯角について,それぞれ前屈位と直立位における角度の差【前屈-直立(°)】を求め,胸椎および腰椎の前屈可動域の指標とした。統計処理:N-Bridge群とS-Bridge群との比較にはMann-Whitney U testを用いた。統計処理にはStatView 5.0を用い,検定の有意水準は5%とした。【結果】FFDは,運動課題実施前でN-Bridge群3.8±7.2cm(Mean±SD),S-Bridge群1.0±5.4cm(N.S.:no significant),運動課題実施後でN-Bridge群4.5±7.5cm,S-Bridge群3.0±6.4cmとなった(N.S.)。胸椎前屈可動域は,運動課題実施前にN-Bridge群39.1±23.9°,S-Bridge群30.0±25.3°で,運動課題実施後にN-Bridge群41.8±18.9°,S-Bridge群16.8±8.9°となりS-Bridge群で有意に大きい値を示した(P=0.0033)。腰椎前屈可動域は,運動課題実施前にN-Bridge群69.4±12.9°,S-Bridge群66.6±13.4°となった(N.S.)。運動課題実施後にN-Bridge群69.3±13.5°,S-Bridge群69.3±14.2°となった(N.S.)。【考察】本結果から,脊柱を分節的にコントロールするS-Bridgeを行うことにより胸椎前屈可動域が増加することが明らかとなった。FFDにおいて両群間に差が見られなかったのは,FFDが胸腰椎の前屈可動性の因子に加えてハムストリングスの伸張性因子を含んでいることによると考える。胸椎前屈可動域に差はあったが腰椎前屈可動域に差がなかったのは,S-Bridgeにおいて腰椎よりも胸椎の動きが大きいことによると考える。随意的に脊柱の分節的コントロールを最大限に要求される運動を行うことで体幹のグローバル筋とローカル筋の協調的制御能が賦活されグローバル筋の過緊張が修正されたのではないかと考える。【理学療法学研究としての意義】脊柱の分節的運動による筋緊張調整効果が明らかとなれば腰痛や頸部捻挫における筋緊張亢進に対する新たなアプローチ方法の開発につながる。
著者
Kazutaka YAMADA Takahito TOYOTOME Naoya MATSUMOTO Megumi ITOH
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.19-0431, (Released:2020-01-24)
被引用文献数
9

Autopsy imaging (Ai) was performed for a King Penguin. Ai–computed tomography (CT) revealed air sac membrane thickening, multiple nodules in the cranial air sac, suspected abscess, lung infiltration, and air sac contraction. Based on these findings, respiratory disorder was concerned. Aspergillosis, which is the highly observed in penguins, was considered as the primary differential diagnosis. The cultured sample showed characteristic conidial head of Aspergillus spp., the DNA of which was 100% identical to that of A. fumigatus. The cause of death was determined to respiratory failure due to aspergillosis. Ai–CT findings facilitated the dissection workflow and alerted the pathologist to potential hazards during the autopsy. Ai is useful to determine the cause of death and for readiness and safe pathological dissection.
著者
岸 功
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.120, pp.91-115, 2010

まず、2100年までの社会保障給付費を六つの部門(医療・年金・介護・雇用労災・生活保護社会福祉・児童手当)別に推計する。それに基いて社会保障の国庫負担合計(社会保障関係費)を求める。また、経済成長率の前提からGDPを得て、国税の税収を求める。一般歳出合計、国債費等を求め、基礎的財政収支と一般会計の歳入余剰を求める。そして、一定の算式により国債残高純増を計算する。こうして国債の残高の推移を求めることができる。財政論的には「国債残高の対GDP比」の収束により財政の持続可能性を判断するが、わが国の場合、経済成長が続けば持続可能であるが、子孫には大きなツケがまわされる可能性がある。国債償還計画をたてた上で、財政再建と成長戦略を実行することが必要である。
著者
國田 祥子 山本 あゆみ
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.13, pp.131-140, 2013-06-16

子どもの問題行動の背景には,自己表現力や自己抑制力の欠如があると言われている。本研究では,この2者の関係について検討した。保育者および小学校教諭を対象に,担任している子どもについての質問紙調査を行った。回収した質問紙を学年によって幼児,低学年,中学年,高学年に分類し,適切な自己表現であるアサーティブな自己表現および不適切な自己表現であるノンアサーティブ,アグレッシブな自己表現の生起頻度について平均得点を算出した。さらに,自己抑制を構成する行動の抑制,注意の移行,注意の焦点化の3因子についても平均得点を算出した。自己表現に関する得点を説明変数,自己抑制に関する得点を従属変数とする重回帰分析を行ったところ,アサーティブ得点から自己抑制の3因子に対して概ね負のパスが見られた。このことから,適切な自己表現を行っている子どもほど自己抑制ができないと捉えられていることが示唆された。保育現場や教育現場においては,本来独立しているはずの自己表現と自己抑制が,対照的なものと捉えられているのかもしれない。保育者や小学校教諭は,子どもの自己表現をより肯定的に捉えられるよう,配慮していく必要があるだろう。
著者
中江 秀雄
出版者
公益社団法人 日本鋳造工学会
雑誌
鋳造工学 (ISSN:13420429)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.386-391, 2013-06-25 (Released:2018-01-01)
参考文献数
22
著者
友田 清彦
出版者
東京農業大学農業経済学会→食料・農業・農村経済学会 (121号-)
巻号頁・発行日
no.106, pp.1-12, 2008 (Released:2011-01-27)

近代日本における勧農政策の本格的な展開は、明治6年(1873)11月における内務省の創設、および明治7年(1874)7月における同省勧業寮の設置をもって開始される。内務省期における勧農政策展開の担い手となった農政実務官僚のうち、最上層部を形成する官僚の多くは、明治4年(1871)から同6年(1873)にかけて行われた岩倉使節団の米欧回覧、および明治6年に開催されたオーストリアのウィーン万国博覧会に直接関係を有する人々であった。岩山敬義、田中芳男、佐々木長淳、池田謙蔵、関沢明清、前田正名、井上省三などであり、彼らの人的なネットワークこそが、内務省期における勧農政策展開の推進力となったのである。本稿では、彼ら内務省の農政実務官僚に焦点をあて、彼らによって勧農政策がどのように展開されていったのかについて明らかにした。
著者
大島 丈志
出版者
千葉大学大学院社会文化科学研究科
雑誌
千葉大学社会文化科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
no.120, pp.12-21,

千葉大学社会文化科学研究科研究プロジェクト報告書第120集『日本近代文学と宗教』所収
著者
内山 紀美子 佐々木 伸子
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.14, no.27, pp.281-286, 2008-06-20 (Released:2009-02-13)
参考文献数
11
被引用文献数
4 3

The Concept of the universal design is necessary in the design of pedestrian space. The pedestrian space is repaired in structural design, but the resting place of a side walk is not fully ensured. The aim of this paper is to discuss how to improve resting place from the results of investigation. As the contents of investigation, the benches of the sidewalk on the outskirts of a station are investigated and the investigated benches were divided into 5 groups. As the results, it is cleared that the plan of establishment of bench by the citizens should be reconsider.
著者
浅野 敏彦 湯浅 一博 近藤 亮子 伊勢 直躬 竹縄 誠之 飯野 久和
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-9, 1997 (Released:2010-06-28)
参考文献数
20
被引用文献数
2

便秘傾向の成人女性を対象にしてグルコン酸カルシウム (GCA) の便性および菌叢に及ぼす影響について検討した.GCA摂取期間はGCAを含有するオレンジジュースを飲用し, 対照期間にはGCAを含有しない同じ組成のジュースを飲用させた.最初の試験として, GCAを1日6.0g (グルコン酸の重量として) 摂取した場合の糞便内菌叢, 有機酸および腐敗物質の分析を9名で, 排便に関するアンケート調査を107名で実施した.その結果, GCA摂取期間中のBifidobacteriumの菌数および排便回数は有意に増加したが, 水分含量, pH, 有機酸, 腐敗物質では顕著な変化は見られなかった.次に最小有効摂取量を求めるため, 糞便内菌叢については1日の摂取量を1.5g, 2.0g, 3.0gの順に設定して15名で, 排便に関するアンケート調査は1.5gおよび3.0gの順に摂取する群と, 2.0gおよび4.0gの順に摂取する群の各37名の2群に分けて実施した.その結果, 2.0g摂取以上でBifidobacteriumの菌数の有意な増加が見られ, 1.5g以上の摂取で排便回数は有意に増加し, 便の形状, 色でも一部で有意差が見られた.