著者
西垣 順子
出版者
大阪市立大学大学教育研究センター
雑誌
大学教育 (ISSN:13492152)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.10-14, 2017-10

2017年1月に開催されたAAC&Uの年次大会で展示・配布されていた4つの資料をもとに、AAC&Uの活動のキーワードとして浮上していると「公正」について、その意味と注目されるに至る背景を調査した。LEAPプロジェクトが遂行される中で、「インクルーシブな卓越性」の実現が課題となった。人種や家庭の所得格差によって、大学教育の学修成果の達成に困難をきたす学生がいることが明らかになってきた。このような不均衡は、学生個人の責任に帰すことはできないものであるとの認識から、キャンパスをすべての学生が公正な条件で学ぶことができるようにし、本当の意味での教育機会の均等を実現するためのガイドラインの提案が行われている。
著者
清水 啓典 中島 真志 小川 英治 地主 敏樹 淵田 康之 三隅 隆司 小西 大
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究プロジェクトでは、平成15年度から18年度の4年度にわたって研究を進めてきた。その研究成果は、海外協力研究者その他(Tyler Shumway (University of Michigan and Stanford University)、Luchia Christova (Bank for International Settlements)、Jennifer Corbett (Australian National University)、Inchul Kim (Sung Kyun Kwan University)等)を招聘して、平成17年3月18日と平成19年2月20日に一橋大学で開催された国際コンファレンスにおいて発表され、内外の研究者よりコメントをいただき、客観的にも優れたものとなっている。これらのコンファレンスで報告された論文の研究成果により、IT革命が金融サービス業およびそれを取り巻く環境に与える影響を様々な観点から明らかにし、あるべき金融システムのアーキテクチャー(設計思想)を考察した。具体的には、IT化の進展が(1)日本の金融業を取り巻く環境、(2)消費者行動・企業行動および金融機関の行動、(3)政策当局の対応策に与える影響を、理論および実証の観点からより解明した。金融業を取り巻く環境への影響は、IT化の進展により金融商品の多様化とともに情報伝達スピードの加速化が見られている。また、投資家としての家計、資金調達者としての企業、及び金融仲介者として金融機関の行動にもこれらの金融商品の多様化と情報伝達スピードの加速化がより効率的な金融取引へと導いている。しかし、一方で行動ファイナンスで取り扱われているように、非経済学的金融行動についても着目する必要があることを指摘した。もちろん、情報伝達スピードの加速化と効率的金融市場において金融政策のあり方は市場ベースの政策運営が必要であることも指摘している。
著者
湯 立 外山 美樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.182-185, 2019-11-01 (Released:2019-11-03)
参考文献数
11

Based on the main theories of motivation, Miele and Scholer (2017) provided a comprehensive taxonomy of motivational regulation strategies for different types of motivation. The present study aimed to develop a new scale for assessing motivational regulation strategies from a theoretical perspective suggested by Miele and Scholer (2017), and to examine its reliability and validity. Using exploratory factor analysis, five motivational regulation strategies were extracted. Reliability was assessed using Cronbach’s α. Significant relationships between academic-learning motivation, regulatory focus, self-efficacy, and different types of regulation strategies provided evidence for the construct validity.
著者
Ammar Ebrahimi Pejman Abbasi Magali Cucchiarini
出版者
The Japanese Society of Strategies for Cancer Research and Therapy
雑誌
Annals of Cancer Research and Therapy (ISSN:13446835)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.3-8, 2020-01-21 (Released:2020-01-21)
参考文献数
54
被引用文献数
3

Tumors comprise two types of non-cancerous cells, first recruited cells such as stem cells and macrophages, and second, tissue-steady cells that are part of the tissue including adipose cells, fibroblasts, and steady macrophage-derived cells, all having a significant impact on tumor progression. This review addresses some effects of stem cells on cancer advancement as the predominant outcome of stem cell therapy on cancer cell lines revealed controversial results. In addition, this review will address some reasons of distinct cancer responses and hypotheses the notion of unfolded protein response as a key switch in cancer development.
著者
山下 伸夫
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.182-190, 2011 (Released:2011-11-10)
参考文献数
63
被引用文献数
6 1
著者
ダラール Y. M. パンジヤ G. T.
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.83-90, 1973-12-31 (Released:2018-01-31)

アシヒダナメクジの足腺から分泌される粘液の組織化学的研究を行ない又, 生活史の間における変化を見た。アシヒダナメクジの粘液腺は足の後端背側にあり, 腺は柱状の上皮細胞からなりこれから粘液を分泌する。成熟個体ではこの粘液は用いられたすべての組織化学的染色法によってよく染まったが, 幼若個体では染色反応は微弱であった。反応は性的成熟に伴い強さを増し, 成熟すると最大となる。粘液の成分は酸性粘液多糖と, 中性の粘液物質とサルファミュシンであった。これらの粘液物質の濃度は生活史中種々に変化をすることが判った。
著者
坪井 宏仁 近藤 克則 金子 宏 山本 纊子
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-7, 2011 (Released:2014-07-03)
参考文献数
46

心疾患は、本邦では悪性新生物に次ぐ死因の第2位を占め、その多くが「冠動脈疾患(coronary heart disease, CHD)」である。CHDのリスクファクターとして、高血圧・高脂血症・糖尿病など生活習慣に基づくものが一般に知られているが、心理的・社会的・経済的因子も無視できない。多くの欧米諸国では長年にわたり心疾患が死因の第1位であるため、その原因と予防に関する研究も多く、CHDと心理的社会的因子や社会経済的因子に関する研究結果が多く得られている。わが国でもライフスタイルの変化により動脈硬化病変がさらに増加し、CHD罹患率やそれによる死亡率の上昇することが予測される。その予防において、個人の生活習慣以外にCHDの重要なリスクファクターである社会経済的要因を把握することも重要であろう。わが国は、高度成長時代を経て平等と言われる社会を築いてきたが、1990年代後半以降は個人間の社会経済的格差が広がっている。その変化の長短は視点によって異なるところであろうが、社会経済的格差が健康に影響を及ぼすのであれば、格差の変革が疾病予防にもつながるはずである。そこで本稿では、CHDと社会経済的状況(socioeconomic status, SES)の関係について、まず両者の関係を述べ、次に両者をつなぐメカニズムを主に心理社会的側面から触れ、最後にCHD予防の可能性を社会的側面から考察した。CHDは、冠動脈壁に経年的に形成される内膜の肥厚病変とその破裂により発生し、原因は酸化・炎症や交感神経系の亢進などである。一方、SESは収入・教育歴・職業(職の有無、職場での立場も含む)などから成り、さまざまな経路でCHDに影響すると考えられる。健康行動はSESによって差があり、高SES層ほど健康によい行動を取る傾向にある。その差が、健康増進資源・医療へのアクセスの違いにつながり、CHDの発症および予後に影響する。次に、心理社会的経路であるが、この経路では、心理的・社会的特性の差異が自律神経・内分泌・免疫系を介してCHDの成因に影響する。低SES層には、慢性ストレスやライフイベントが多く、抑うつ傾向・怒り・攻撃性・社会的孤立などが認められる一方、高SES層ではコントロール感や自己実現感が高い。このような差違が、視床下部-下垂体-副腎皮質(hypothalamic-pituitary-adrenal, HPA)系または交感神経-副腎髄質(sympathetic-adrenal-medullar, SAM)系を介し、炎症・酸化・血糖の上昇・交感神経系の亢進に影響し、長年の間にCHDイベントのリスクが高まる。また、両親および幼少期のSESが、HPA系およびSAM系の反応を脆弱にしたり、成人後の行動的・心理社会的リスクファクター(喫煙・運動不足・攻撃性・職場での緊張・不健康な心理状態など)に影響を与え、CHDに影響を及ぼす可能性も示唆されている。さて、CHDの予防は、生活習慣予防として特定健康診査・特定保健指導により個人および職場レベルで2008年より行われている。しかしSESとCHDの関連性を考慮すると、社会レベルでの予防策も必要であろう。WHOは、健康を決定する社会的要因として「社会経済環境」「物理環境」「個人の特性と行動」を挙げている。このうち、社会経済環境を整備することがCHD予防につがなる可能性を示した。教育による介入、社会保障制度の整備、人生の節目でのサポートなどが有効であろうことが海外の研究で示されている。SESを改善しCHDを予防する戦略には、エビデンスに基づいた社会疫学的研究が必要であろう。
著者
三村 將
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.368-375, 2016-09-30 (Released:2017-10-05)
参考文献数
24

前頭側頭葉変性症, 特に行動異常型前頭側頭型認知症 behavioral variant frontotemporal dementia (bvFTD) においては, 一般に多彩な人格変化や常同行為, 固執傾向, 情動障害, 行動異常や精神症状を呈する。bvFTD の鑑別にあたっては, 当然ながら他の一次性認知症性疾患や, 他の器質疾患をきちんと除外していく必要があるが, 日常診療においてbvFTD と鑑別を要する頻度が高いのはむしろ精神疾患である。  もともとbvFTD では, 発動性低下と生気感情の喪失が人格変化の前景に立つ場合, うつ病との鑑別が難しいことはよく知られていた。特に, うつ病の類縁疾患のなかで, 遅発緊張病は初老期以降にうつ状態や意欲低下で発症し, その後, 緊張病性興奮や昏迷, さらに著しい拒絶症やステレオタイプ, 対人接触障害を認めるために, bvFTD と誤診されることが多い。また, bvFTD を疑わせる社会的逸脱行動や精神症状が, 実は双極性障害の躁状態に起因していることもあるし, 統合失調症や強迫性障害もしばしば bvFTD と症候学的に鑑別対象となる。  近年, bvFTD との鑑別で注目に値する病態は発達障害圏である。「成人の発達障害」の重要性はすでに共通認識となっているが, ここで問題にするのは「初老期以降の発達障害」である。これらの症例では, 画像上 bvFTD を疑わせる所見はなく, 生活歴でもともと発達障害傾向を有していた人が, 高齢になって, おそらくは加齢による脱抑制が関与して行動異常や固執傾向が顕在化したものと考えられる。一方, 最近は発達障害と bvFTD の遺伝的, 生物学的共通性にも関心がもたれている。
著者
豊田 秀樹 中村 健太郎 大橋 洸太郎 秋山 隆
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.304-316, 2019-12-30 (Released:2020-01-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究では,大学における授業評価アンケートについて,学生が授業において最重要視する知見は何かを明らかにする方法として,一問一答形式を用いた自由記述による意見収集に着目した。 ここでの一問一答形式とは,全員がそれぞれ最初に1つ挙げる評価,印象に焦点を当て,これを知見と呼び,自由記述型授業評価データにおいて得られる主要な知見を得る方式を指している。この際における知見の得られ方の寡占的(支配的)な程度を,ジップ分布の母数によって表現した。また,ジップ分布から算出される累積確率を用いて,観測された印象の飽和度について,特定の飽和度を達成するために必要な異なる要素(評価,印象)の数と併せて結果を示した。分析には,教授者が想定しないような意見の回答に対応するため,要素数を無限とする場合と,あらかじめ決まった要素から回答するそれぞれの場合に対応したジップ分布を用いた計算結果を示した。実際の講義の評価データの分析を通じ,本方法によって,自由記述による授業評価で得られる知見に対し,少ない特定の知見が全体の中で支配的であるのか,それとも印象,評価が定まらず,多様な知見が散見されているのかについて,客観的な指標に基づく考察が可能となることが示された。