著者
阿部 進
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.29-37, 2014-03-07 (Released:2017-07-20)
被引用文献数
2

ミミズ(Oligochaeta)やシロアリ(Isoptera)のような土壌無脊椎動物は土壌生態系改変者と呼ばれ,土壌物理環境を改変・撹乱することによって他の生物への資源の有効性に影響を及ぼしている.土壌生成過程における物理学的,化学的,生物学的な影響に対する関心が高いのに対して,生態系改変者が土壌鉱物の風化において直接的および間接的に重要な影響を及ぼしていることはあまり認識されていない.その直接的な影響は鉱物粒子の物理的破壊であり,分泌物質による化学的変質である.一方,土壌無脊椎動物の共生微生物によって生成される有機酸やキレート成分による鉱物の溶解など間接的な影響もある.本稿では,土壌生態系改変者が土壌鉱物の風化に及ぼす影響に関する既往の文献を総括し,このトピックにおける研究課題と将来の展望について議論する.

1 0 0 0 OA 近江蒲生郡志

著者
滋賀県蒲生郡 編
出版者
蒲生郡
巻号頁・発行日
vol.巻6, 1922
著者
竹下 正哲 中西 一弘 高橋 丈博 蓑原 隆 前山 利幸 戸祭 克 益満 ひろみ 後藤 元
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.183-194, 2018 (Released:2019-06-20)
参考文献数
50
被引用文献数
2

ドリップ灌漑はヨーロッパ,イスラエルなどを中心に世界に普及しているが,日本では全灌漑地の2%でしか使用されていない.その理由は,日本は四季を通じて十分な降雨があるため,露地栽培でドリップ灌漑は必須ではないとみなされてきたためと考えられる.本研究では,降雨が十分にある日本の露地において,ドリップ灌漑を導入することで,ピーマンの単位面積あたり収量を増加させることができるのではないかという仮説を検証した.「ドリップ灌漑の有無」「固形肥料・液体肥料の違い」の2要因を設定し,そのどちらが影響しているか,あるいは交互作用があるかを検証するために,ピーマンを用い,二元配置の分散分析実験を行った.結果は,「固形肥料・液体肥料の違い」に関わらず,ドリップ灌漑をした試験区の方が,ドリップ灌漑をしなかった試験区(天水のみ区)より収量(生重量),乾燥重量,着果数が増加した.とくに収穫量が落ちてくる9,10月の収量が,ドリップ灌漑区で多くなっていた.その差の要因は多頻度灌水にあると考えられ,日本の露地のように十分な降雨がある耕地においても,ドリップ灌漑により毎日定期的に灌水することで,ピーマンの着果数を増やし,収量を増加させることができることが示唆された.
著者
増田 稔
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.22-24, 2005 (Released:2006-02-24)
参考文献数
20
被引用文献数
5 2
著者
中宿 伸哉 林 典雄 赤羽根 良和 山崎 雅美 吉田 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.C0982, 2005

【はじめに】梨状筋症候群とは、梨状筋をはじめとする股関節外旋筋と坐骨神経との間で生じる絞扼性神経障害である。殿部痛と共に坐骨神経症状を呈するため、腰部椎間板ヘルニアと混同されやすい。一部には仙腸関節炎や椎間関節障害を基盤に発症するとの報告はあるものの、その発症機転を含めてまとまった報告はない。我々は、当院で扱った梨状筋症候群の初診時理学所見を検討し、その発症機転についてタイプ分類を試みたので報告する。<BR>【対象】平成14年4月から平成16年9月まで当院を受診し、最後までfollow upが可能であった86例87肢、右側40肢、左側47肢、男性34名、女性52名、平均年齢55.6±15.1歳を対象とした。なお、来院までの期間は平均10.7週であり、明らかな股関節疾患、梨状筋ブロックにて疼痛の消失が得られた症例は除外した。<BR>【理学所見】殿部痛があるものは86肢、下肢痛があるものは60肢、腰痛があるものは30肢であった。平均SLRは、68.6°、内旋SLRに伴う疼痛の増強は56肢に認められた。圧痛は梨状筋に83肢、双子筋に30肢、大腿方形筋に20肢、多裂筋に41肢、仙腸関節に68肢認められた。Freiberg testは75肢に陽性で、骨盤固定下では14肢に疼痛の軽減を認めた。Patric testは27肢に陽性で、骨盤固定下では全例に疼痛の軽減ないし消失を認めた。<BR>【考察】我々は梨状筋症候群の発症機転について、大きく3つに分類した。1つ目は仙腸関節由来の梨状筋症候群である。仙腸関節における圧痛を約8割に認めた。仲川らによると、仙腸関節の前方はL4・L5・S1神経前枝が支配し、後方はL5・S1・S2神経後枝外側枝が支配すると述べている。仙腸関節に生じた何らかの侵害刺激は、L5・S1・S2に支配される梨状筋、双子筋、大腿方形筋に反射性攣縮を生じさせたと推察した。また、同時に同神経により支配される仙腸関節を支持する多裂筋の反射性攣縮の増強は、仙腸関節自体の感受性を高め、一層梨状筋の反射サイクルを助長していると考えられた。梨状筋症候群の大部分はこのタイプに区分されると考えられる。2つ目は椎間関節由来の梨状筋症候群である。椎間関節は脊髄神経後枝内側枝に支配される。内側枝の第1枝は、隣接する椎間関節包の下部を支配する。第2枝は多裂筋を支配し、第3枝は、1つ下位の椎間関節包上部を支配する。L5・S1の椎間関節に生じた何らかの侵害刺激はL5内側枝を介して、外旋筋群に反射性攣縮を生じさせたと推察した。また、同神経に支配される多裂筋にも反射性攣縮が生じたと思われた。腰椎の合併例で、かつ仙腸関節の圧痛がないものは、このタイプが多いと推察した。<BR> 3つ目は梨状筋単独の梨状筋症候群である。この場合、ブロック注射もしくは梨状筋のリラクゼーションのみで疼痛が消失すると考える。
著者
伊黒 浩二
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.261-265, 2016-03-15

はじめに 経皮的電気刺激治療(transcutaneous electrical nerve stimulation:TENS)は非侵襲的で副作用の少ない鎮痛手段であり,変形性膝関節症[膝osteoarthritis(OA)]の疼痛管理に推奨されている.しかしながら標準化されたプロトコルは存在せず,実施パラメーターについても一貫していない.TENSによって得られる鎮痛のメカニズムにはゲートコントロール理論や内因性オピオイドなどが複雑に関係していると考えられている.高い鎮痛効果を得るためには,こうした鎮痛メカニズムを考慮したパラメーター設定が重要である. 本稿ではTENSと膝OAとの関係と,ゲートコントロール理論を考慮した電極設置部位の有効性について述べる.
著者
芳田 なおみ 宮本 忠司 大串 幹 水田 博志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0490, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】鎮痛目的の電気刺激療法には脊髄電気刺激療法,脳深部刺激療法,大脳皮質運動野刺激療法など様々な治療方法があるが,非侵襲かつ簡便さにおいては臨床では経皮的電気刺激(transcutaneous electrical nerve stimulation:以下TENS)が頻用されている。TENS使用の際には周波数や波形,パルス持続時間,強度や治療時間などのパラメーターや電極位置が効果に影響すると言われ,強度によりAβ線維やAδ線維の活性化,周波数により内因性オピオイド放出に関与すると報告されている。一方,電極位置に関しての報告はまだ少ない。また伝統的に疼痛部位に電極を直接貼付することが多いが,創外固定器や熱傷などの創部状態や幻肢痛などにより直接的なアプローチが困難な場合がある。我々は予備実験として疼痛部位と関連のある遠隔部位に電極貼付することにより疼痛が軽減することを認めた。今回は,同様に疼痛部位に関連した遠隔部位に電極を貼付し,疼痛の種類により効果の発現に違いがでるかを検証した。【方法】対象は当院リハビリテーション部を受診し疼痛を有する患者21名,26部位を対象とした。電極位置は疼痛部位に関連のある経穴もしくはデルマトームおよびスクレロトームとし,対象者ごとにランダムに選択した(経穴群9名12部位,デルマトーム群12名14部位)。また痛みの病態により侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛とに分類した。TENSは低周波治療器(伊藤超短波社製,Trio 300)を用いた。刺激はパルス幅50μsec,周波数10Hz及び100Hzにて2つのチャンネルにより電気刺激を20分間与えた。電流は対象者が心地よいと感じるところまでとし刺激強度として記録した。疼痛評価は日本語版Short-Form McGill Pain Questionnaire(以下SF-MPQ)及びVisual Analog Scale(以下VAS)を用いた。SF-MPQは治療開始および一週間ごとに経時的に評価し,各治療前後で即時効果としてVASを評価した。得られたデータは経穴群とデルマトーム群にて病態分類別に治療前後で比較し,また刺激強度についても比較検討をした。【結果】経穴群のうち侵害受容性疼痛は7部位,神経障害性疼痛は5部位であった。一方,デルマトーム群では侵害受容性疼痛は10部位,神経障害性疼痛は4部位であった。治療開始時および終了時のSF-MPQは経穴群の侵害受容性疼痛にて13.0から4.2へ,神経障害性疼痛も10.4から6へ減少した。デルマトーム群においては侵害受容性疼痛が14.1から7.3,神経障害性疼痛は20.3から19.7にとどまった。各治療前後のVASにおいて,経穴群では侵害受容性疼痛は21.4から10.9へと減少し,神経障害性疼痛でも26.4から19.2へと減少した。デルマトーム群においても,侵害受容性疼痛は35.3から19.4と減少し,神経障害性疼痛も43.4から36.9へと減少を認めた。刺激強度については,10Hzで経穴群は28.2mA,デルマトーム群は41.7mAで,100Hzでは経穴群で19.0mA,デルマトーム群では29.4mAでいずれも経穴群が小さかった。【考察】疼痛部位ではない遠隔部位へのTENSは経穴およびデルマトーム両群において疼痛を即時的にも経時的にも軽減させた。侵害受容性疼痛はAδ線維やC線維の終末に存在する侵害受容器を興奮させて生じる痛みであるため,TENSにてそれらを抑制するAβ線維の活性化することにより,疼痛を軽減させたと考えた。さらに,神経障害性疼痛への効果が低かった原因としては,TENSによって生じた内因性オピオイドの放出やAβ線維の活性化が,末梢性や中枢性の神経系の損傷や機能異常がある部位への抑制刺激としてはまだ不十分だった可能性がある。また経穴は少ない強度でも十分な疼痛軽減効果が得ることができたのは,トリガーポイントやモーターポイントと類似した電気を通しやすい部位であるためと考えた。【理学療法学研究としての意義】疼痛部位に直接的なアプローチが困難な場合でも,関連のある遠隔部位へのTENSにより疼痛が軽減することを認めた。選択的なTENSの施行により効果的に疼痛を軽減し患者のQOL向上につながることが期待される。
著者
瀧口 述弘 庄本 康治
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.343-348, 2017 (Released:2017-05-02)
参考文献数
29
被引用文献数
2 1

〔目的〕大腿骨近位部骨折術後2症例に対して,経皮的電気刺激(TENS)を患側肢に実施する患側TENSと両側肢に実施する両側TENSの効果を評価すること.〔対象と方法〕症例1は大腿骨転子部骨折固定術後症例,症例2は大腿骨頚部骨折固定術後症例であった.症例1は,術後1~3日目に30分間の患側,両側TENSを実施し,症例2は,術後1日目には1時間患側TENSのみ実施し,2,3日目は1時間の患側,両側TENSを実施した.アウトカムは運動時のNRSを測定した.〔結果〕2症例とも患側,両側TENS後のNRSが低下し,症例2では患側TENSと比べ両側TENSの方が1低下した.〔結語〕患側,両側TENSともにNRSが低下したが,今後はプラセボなども実施し,患側,両側TENSの効果を明らかにする必要がある.
著者
赤堀 雅幸
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.165-168, 2009-09-30 (Released:2014-03-31)
被引用文献数
1 1
著者
田崎 民和 西村 治夫 薬師寺 道明 松村 隆 東島 博 森崎 秀富
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.353-359, 1990
被引用文献数
3

特異的な卵巣間質の増殖で特徴づけられるKrukenberg腫瘍の腫瘍形成までの過程を明らかにする目的で, ほとんど卵巣の腫大を認めない10例のKrukenberg腫瘍を転移の初期病巣と考えて病理組織学的に検討し, 以下の結論を得た. 1) 初期転移巣の組織形態としては, リンパ管侵襲のみの像, 充実性胞巣像, びまん性浸潤像の3種の基本形態に分類された. 2) 全例に卵巣門部のリンパ管侵襲がみられた. 3) びまん性浸潤型では, 印環細胞がリンパ管を介して卵巣門部より皮質に向かって, びまん性放射状に広がる像がみられ, さらに末梢においてリンパ管より間質に腫瘍細胞が漏出し浸潤していく所見が確認された. この時期では卵巣間質の反応は比較的軽度で, 浸潤の末端部において印環細胞がより豊富に存在していた. 4) 充実性胞巣を示すものでも, 充実性胞巣の中に間質の介在がみられ, 腫瘍の未分化な性格が示唆された. 5) 対側の腫大卵巣の組織形態は, 著明な卵巣間質の増生を伴う肉腫様像, 硬性癌像を呈するものがほとんどであった. 6) ABC法によるCEA染色では, 一見腫瘍細胞の存在が不明瞭な, 増生した間質の中にもCEA陽性の腫瘍細胞が多数存在していた. 以上の結果からKrukenberg腫瘍の腫瘍形成過程を考察すると, 転移経路は卵巣門部より侵入するリンパ行性転移であり, 門部から均等に卵巣全体への腫瘍細胞の浸潤がまずおこり, その後印環細胞の破綻による粘液の間質内漏出が引金となって間質の浮腫と増生が始まると考えられた. 卵巣腫大の大きな因子はこの卵巣間質の増生と浮腫であり, 卵巣間質のsarcomatousな変化は, そこに埋もれるように存在する未分化で上皮性性格に乏しい腫瘍細胞と, 増殖した卵巣間質によって形成されると考えられた.
著者
Stéren Chabert Jorge Verdu Gamaliel Huerta Cristian Montalba Pablo Cox Rodrigo Riveros Sergio Uribe Rodrigo Salas Alejandro Veloz
出版者
Japanese Society for Magnetic Resonance in Medicine
雑誌
Magnetic Resonance in Medical Sciences (ISSN:13473182)
巻号頁・発行日
pp.mp.2019-0061, (Released:2019-10-15)
参考文献数
44
被引用文献数
12

Purpose: Intravoxel incoherent motion (IVIM) analysis has attracted the interest of the clinical community due to its close relationship with microperfusion. Nevertheless, there is no clear reference protocol for its implementation; one of the questions being which b-value distribution to use. This study aimed to stress the importance of the sampling scheme and to show that an optimized b-value distribution decreases the variance associated with IVIM parameters in the brain with respect to a regular distribution in healthy volunteers.Methods: Ten volunteers were included in this study; images were acquired on a 1.5T MR scanner. Two distributions of 16 b-values were used: one considered ‘regular’ due to its close association with that used in other studies, and the other considered ‘optimized’ according to previous studies. IVIM parameters were adjusted according to the bi-exponential model, using two-step method. Analysis was undertaken in ROI defined using in the Automated Anatomical Labeling atlas, and parameters distributions were compared in a total of 832 ROI.Results: Maps with fewer speckles were obtained with the ‘optimized’ distribution. Coefficients of variation did not change significantly for the estimation of the diffusion coefficient D but decreased by approximately 39% for the pseudo-diffusion coefficient estimation and by 21% for the perfusion fraction. Distributions of adjusted parameters were found significantly different in 50% of the cases for the perfusion fraction, in 80% of the cases for the pseudo-diffusion coefficient and 17% of the cases for the diffusion coefficient. Observations across brain areas show that the range of average values for IVIM parameters is smaller in the ‘optimized’ case.Conclusion: Using an optimized distribution, data are sampled in a way that the IVIM signal decay is better described and less variance is obtained in the fitted parameters. The increased precision gained could help to detect small variations in IVIM parameters.
著者
Manabu NEMOTO Toru KANNO Hiroshi BANNAI Koji TSUJIMURA Takashi YAMANAKA Hiroshi KOKADO
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1889-1891, 2017 (Released:2017-11-17)
参考文献数
17
被引用文献数
17

A vaccine for equine coronavirus (ECoV) is so far unavailable. Bovine coronavirus (BCoV) is antigenically related to ECoV; it is therefore possible that BCoV vaccine will induce antibodies against ECoV in horses. This study investigated antibody response to ECoV in horses inoculated with BCoV vaccine. Virus neutralization tests showed that antibody titers against ECoV increased in all six horses tested at 14 days post inoculation, although the antibody titers were lower against ECoV than against BCoV. This study showed that BCoV vaccine provides horses with antibodies against ECoV to some extent. It is unclear whether antibodies provided by BCoV vaccine are effective against ECoV, and therefore ECoV challenge studies are needed to evaluate efficacy of the vaccine in the future.
著者
車 源日 玄 丞烋 筏 義人
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.425-430, 1991-07-25 (Released:2010-11-22)
参考文献数
14
被引用文献数
3 5

透明及び不透明ポリビニルアルコール (PVA) ハイドロゲルに対する種々のタンパク質の吸着量を比較した. タンパク質としてはクロラミン-T法で125Iラベル化した免疫グロブリンG (IgG), 牛血清アルブミン (BAS) 及びりゾチームを用い, 125Iの放射能を測定することにより吸着量を求めた. 透明PVAハイドロゲルに対するタンパク質の吸着量は不透明PVAハイドロゲルとポリ (2-ヒドロキシエチルメタクリレート) (PHEMA) ハイドロゲルより少なく, その値は1/2~1/30であった. また, 透明PVAハイドロゲルにおいてはIgGとBSAの吸着量がPVAハイドロゲルの含水率に関係なく一定の値を示したが, 分子量が14,600と低いリゾチームではPVAハイドロゲルの含水率に依存し, 含水率が低くなるにつれて低下した.
著者
河合 輝久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.289-303, 2019-12-30 (Released:2020-01-24)
参考文献数
38
被引用文献数
2

本研究の目的は,身近な友人の抑うつ症状への情緒的巻き込まれの恐れが当該友人に対する楽観的見通し,深刻度評価,専門家への援助要請の必要性に及ぼす影響を検討することであった。大学生1,000名(有効回答者866名)を対象に質問紙調査を実施した。その結果,「直面化回避志向」と「共鳴懸念」の2因子から成る身近な友人の抑うつ症状への情緒的巻き込まれの恐れ尺度を作成し,その信頼性と妥当性の一部が確認された。また,直面化回避志向および共鳴懸念が,原因帰属や楽観的見通しを介して,深刻度評価および専門家への援助要請の必要性に及ぼす影響を検討した。共分散構造分析の結果,うつ病事例に対する認知の可否にかかわらず,直面化回避志向は,抑うつ症状を示す友人に対する楽観的見通しと有意な正の関連を,当該友人に対する深刻度評価と有意な負の関連を示していた。一方,共鳴懸念は,抑うつ症状を示す友人に対する深刻度評価と有意な正の関連を示していた。身近な友人の抑うつ症状に対する評価において,身近な友人の抑うつ症状への情緒的巻き込まれの恐れのうち,直面化回避志向は深刻視を妨げ,共鳴懸念は深刻視を促すことが示唆された。
著者
永井 智
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.278-288, 2019-12-30 (Released:2020-01-24)
参考文献数
52
被引用文献数
6

本研究の目的は,援助要請自立型,援助要請過剰型,援助要請回避型がそれぞれどのような特徴を有するのかを明らかにすることである。大学生を対象に2つの質問紙調査を実施した。研究1では悩み,抑うつ,ソーシャルサポート,利益・コストの予期を尋ね,研究2では悩みの体験,親和動機,自律性を尋ねた。その結果,援助要請過剰型は,サポート資源は多いが抑うつや拒否不安なども高いこと,援助要請回避型は独立性は高いものの,ソーシャルサポートや自己決定性が低く,抑うつが高いことが明らかになった。そのため,過剰型と回避型は,自立型に比べ何らかの支援ニーズを有している可能性が考えられる。