著者
元井 沙織 小野寺 敦子
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro Journal of Psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.15, pp.53-64, 2019-03-31

本稿では,日本における片づけについて先行研究を概観し,片づけにおける研究の課題について考察する。保育・家政学の分野における片づけ,発達障害・精神疾患と片づけの関連,情報処理における片づけ支援の観点から,それぞれの先行研究について概観した上で,今後の片づけに関する研究の展望を論じた。全体を概観して捉えられる研究の動向の特徴としては,まず一つ目として,片づけを促すための方策や支援を提案した研究がどの観点においても見られることである。「どうすれば片づけられるのか」という視点は,片づけの研究において中核をなすものだといえるだろう。二つ目は,片づけを,個人を理解するための指標として活用できる可能性を示唆する研究が見受けられることである。子どもの発達の状態を理解するために,片づけは指標となると考えられる。現状として,片づけに関する研究は保育における研究が多い。今後は,幼児期以降の片づけに関する研究が進められることが望まれる。

1 0 0 0 OA 諸家稜々志

出版者
商工重宝社
巻号頁・発行日
1915
著者
長井 圓
出版者
中央ロー・ジャーナル編集委員会
雑誌
中央ロー・ジャーナル (ISSN:13496239)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.3-68, 2017-09-30

Death occurs inevitably whenever whole-brain failure is irreversible. In the conventional process of human death, brain death occurs 4-10minutes after the reversible arrest of cardiorespiratory functions. The irreversible loss of beating and breathing leads to a lack of blood circulation. However, other organs and tissue remain alive for different periods of time. In the case of brain death with cardiopulmonary functions, homeostasis is maintained by a respirator and integrated care unit. This homeostasis is neither real nor indicative of a vital organism. It is just mechanical, not spontaneous. Physicians, of course, must treat patients with respirators whenever possible and effective after cardiorespiratory arrest. We can never return to the traditional cardiorespiratory definition of death. How could we make the definition dependent on the death of all cells in the entire organism? The criteria of brain death were developed as a means of making the decision to discontinue treatment in terminally ill patients, when further efforts would offer no benefit. Inflicting only pain is illegal, a cruel abuse of the technology.
著者
岡部 信彦
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.10-16, 2016-02-15 (Released:2016-07-01)
参考文献数
10

人類は感染症に対して,かなりの克服をしてきたが,近年感染症に関する話題が多い.WHO(世界保健機関)は,1990 年代より新興再興感染症(emerging/re-emerging infectious disease)という概念を導入し,感染症に対する強化を図り始めた.感染症が再び我々にとって身近な問題として戻って来た大きな要因として,人口の増加と都市化,集団生活機会の増加,食習慣・生活習慣の急速な変化,自然環境の破壊,人の住居地の拡大による人と野生動物の距離の接近など,多くのものが挙げられる.そして交通機関の発達による人と物の大量なしかも短時間での移動は,病原体の移動をも容易にした.本稿では,最近話題になった,鳥インフルエンザ,デング熱,エボラ,MERS などの現状と課題について述べた.
著者
横川 俊哉 上山 智 真田 篤志
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、従来実現されていないテラヘルツ帯の電磁波の発生を可能とする真空チャンネルトランジスタの開発を目的とする。テラヘルツ波は高速無線通信やイメージング、医療の分析など多くの応用が期待される。しかし数THzの高出力電磁波発生には課題が多い。窒化物半導体であるAlGaNは負の電子親和力を有しており、低駆動電圧が期待される。AlGaN半導体を用いた真空チャンネルトランジスタを新たに提案した。AlGaN半導体の基礎物性や電子放出機構を系統的に調べ、そのデータベースよるデバイス最適構造設計を行うことで、真空チャンネルトランジスタを実現し、低電圧駆動(低消費電力)を実証することが計画であった。今年度の研究実績としてAlGaN半導体を用いた真空チャンネルトランジスタの低電圧駆動でのデバイス動作を確認した。AlGaN系半導体の負の電子親和力を示すバンド構造、電子放出機構や基礎物性を系統的な実験によって調べ、デバイス設計のためのパラメータが得られたため、このデータベースを用いて真空チャンネルトランジスタのデバイス最適構造設計に取り組んだ。エミッタ部がAlGaN半導体で形成されたデバイスとなる。MOCVD法によりGaN基板上にAlGaN膜の成長を行った。そしてエミッターに使用可能な高品質のAlGaN結晶が実現できた。その後、AlGaN膜をドライエッチング加工し、エミッタ―とコレクターを対面するように形成した。その後、AlGaN膜上にゲート絶縁膜とゲート電極を形成した。これによりAlGaNエミッタ―を用いた真空チャンネルトランジスタを形成し、低駆動電圧を実現した。またAlGaNに形成したカーボンナノチューブ電極の効果も確認した。さらにデバイスシミュレーションによるプロセス設計ならびに最適構造設計も行った。
著者
津田 彰 堀内 聡 金 ウィ淵 鄧 科 森田 徹 岡村 尚昌 矢島 潤平 尾形 尚子 河野 愛生 田中 芳幸 外川 あゆみ 津田 茂子 Shigeko Tsuda
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.77-88, 2010-03-31

ストレスへの対応といった受身的な対策を越えて,よりよく生きるための健康開発につながる効果的なストレスマネジメント行動変容を促すプログラムが求められている。とくに対費用効果を考えた場合には,集団戦略として,大勢の人たちを対象にしながら個々人の行動変容に対する準備性に応じたアプローチが必要となる。これらのニーズに応える行動科学的視点に立つ理論と実践モデルとして,行動変容ステージ別に行動変容のためのやり方(変容のプロセスと称する)を教示し,動機づけを高める意思決定のバランスに働きかけながら,行動変容に対する自己効力感を高め,行動変容のステージを上げていく多理論統合モデル(transtheoretical model, TTM)にもとづくアプローチが注目されている。筆者らは,TTM にもとづくインターネットによるストレスマネジメント行動変容の介入研究において,対象者が自ら効果的なストレスマネジメント行動に取り組むためのセルフヘルプ型のワークブックを作成し,その有効性を検証している。本稿では,効果的なストレスマネジメント行動を促すために,これらのワークブックをより有効に活用するための実践ガイドについて解説を加える。
著者
佐々木 政治 石井 良則
出版者
首都大学東京小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-20, 2016-05-31

母島沖村出身の佐々木政治(図1)は、昭和19 年(1944 年)の全島民強制疎開の際に志願して母島に残留し、義勇隊防空監視哨員として他の島民軍属とともに船木山に詰め陸軍の作戦に参加した。敗戦までの約1 年間にわたる時期に起きた様々な出来事について、佐々木が回想し口述した談話記録を公開する。
著者
荒木 一視
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2010年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.74, 2010 (Released:2010-06-10)

1.目的と方法 今日の食料供給体系は高度に複雑化しており,その全貌が明らかになることはない。本報告ではこうした供給体系の持つ食の安全上の問題点を,2008年秋に発生した事故米の不正転売事件(いわゆる三笠フーズ事件)を事例として検討する。具体的な手順としては,第1に農林水産省が発表した資料を手がかりとして,わが国の米及び米加工品の流通実態を明らかにする。すなわち,特定の業者から出荷された米がどのような経路をたどって,加工や小売業者に流れたのかを地図化し,事故米穀が拡散していく過程を空間的に再現する。次に,農林水産省が転売先として公表した業者を対象にしたアンケート調査から,今般の事件から教訓とすべき食の安全上の問題点について考察を加える。なお,アンケートは公表された391の業者(118の給食業者は同一経営体と見なしたため実質274業者)から所在の確認できた266業者に対して郵送し,48の業者から回答を得た(2009年11月実施)。 2. 事故米の不正規流通 三笠フーズによる不正規流通は残留農薬米(メタミドホス,中国産もち米)800トンと同(アセタミプリド,ベトナム産)598トン,カビ米(アフラトキシン,中国・ベトナム・米国産)9.5トンの3ルートがある。メタミドホスの場合はうち123トンが市場流通し近畿地方の23社,九州地方の20社を含む51社の中間流通業者を経て最終的に317社の製造・販売会社に流れ,消費者に渡った。317社のうち近畿地方が166社(118の給食業者を同一経営体と見なすと49社),九州地方が109社である。アセタミプリドは447トンが市場流通し,中間流通業者は,東京,大阪,福岡,鹿児島格1社の合計3社で,いずれも東京2社,福岡1社,熊本3社,鹿児島3社の酒造業者に出荷された。カビ米は2.8トンが市場流通し,2社の中間流通業者から鹿児島県の酒造業者3社に渡った。 3. 食の安全上の脆弱性 業者に対するアンケート結果からは,悲痛な叫びともいえる訴えが多く寄せられた。本来これらの業者は事故米と知らずに使用,販売していたにもかかわらず,農林水産省による公表によって,加害者扱いされかねない状況を被ったからでもある。回答を得られた48業者のうちわけは,菓子・和菓子の卸,製造,販売にかかわるものが34,食材・食品卸が5,米穀販売4,酒造2,食品製造1,給食1,飼料卸1であった。従業員数は1000人を越える2社(給食と酒造)を除くといずれもが100人以下であり,10人未満の零細な規模の業者が26社にのぼる。以下,10人台が8社,20人台が4社,30人台が3社,40,50,80,90人台が各1社であった(無回答1)。また,主たる販売先も29業者が自市町村やその周辺としており,販路を都道府県外としたものは5社であった。業者リスト公表以後の業績の落ち込みについては,半数の24業者が1年以上を経た今日でもなお,公表以前の水準を回復できていないとしている。 以上のようにわずか百トン余の原料米が,和菓子製造業者などの使用量の少ない小規模の業者に広範に流通したことがうかがえる。このような流通経路を持つ食品に関しては,風評被害の発生を避けるためにも,きめ細かな情報の開示と管理が必要であるとともに,損害補償ではなく開示措置に対する補償も十分に検討債いく必要がある。
著者
村山 七郎
出版者
国語学会
雑誌
国語学 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
no.124, pp.p112-104, 1981-03
著者
金本 めぐみ 横沢 民男 金本 益男
出版者
上智大学
雑誌
上智大学体育 (ISSN:02870568)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.1-9, 2005-03-01
被引用文献数
1 5

本研究は思春期女性の自己の身体に対する意識と食行動の相互関連について分析検討することを目的とした。欠損値のあるデータは分析から除外し、最終的に250名を対象に分析検討がなされた。1.思春期女性の身体に対する意識構造は「さらなる痩身願望」を特徴とするものであることが明らかとなった。2.自己の身体に対して不満足な人ほど痩身願望が強いことが明らかとなった。3.痩身に対するメリット感、現体型に対するデメリット感と身体満足度の関係においては自己の身体に対して不満を感じている人ほど痩せれば何かいいことがあると感じている。また、現在の体型ではいいことがないと感じていることが示された。4.ダイエットをするなら健康を重視するダイエット方法をするか、効果を重視するダイエット方法をするかというダイエット志向性と身体満足度に関しては、自己の身体に対して不満を抱いている人ほど効果を重視するダイエット方法を志向する傾向にあることが確認された。5.食習慣と身体満足度に関しては、身体に対して不満足な人ほど普段の食行動においてダイエット行動を頻繁にしていることが明らかとなった。
著者
富永 真琴
出版者
山形大学
雑誌
山形医学 (ISSN:0288030X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-10, 2009-02

抄録 臨床医学はまぎれもなくサイエンスであるが、医療はアートも大きい部分を占める。筆者は「臨床の知とは何か」について中村雄二郎先生の哲学的思索に触れてみることを勧めたい。厳密物理・精密化学の進歩が万人の幸せに繋がると信じる知の在り方は、中村先生によれば「北型の知」であって、医学も含めたサイエンスの一面に過ぎない。これに対比できるのが「南型の知」で人間や自然本来の複雑性と多義性をそのまま、認めるという知の在り方である。中村先生は「臨床の知」は「南型の知」に似る、としている。一方、長い間、「ヒポクラティスの誓い」に代表される倫理観の下に医療が行われてきたが、その特徴はパターナリズムと矛盾はしなかったことである。近年の医師・患者関係の成熟により、1970年代から患者の人格を尊重する原理および医療資源の公平な配分という原理が導入されている。医療行為がサイエンスに基づく判断の下、患者に対し善行かつ無危害であったとしても、それが患者個人に関わる様々な状況にまったく配慮しない医師の独善的な判断ならば、倫理上も問題とされる。臨床医学が生身の人間を対象としている以上、サイエンスとともに、患者の人格を尊重し思いやるアートの部分も大事である。サイエンスとしての臨床医学が対象とするのは肉体であって,人格ではない。これに対して、アートとしての臨床医学が対象とするのが患者の人格であって,それは複雑性・多義性に満ちている。類型化は可能だとしても二人として全く同じ人格などあり得ない。生身の人間である患者を目の前にした時、「人は自己の存在の理由を求めている。」と斎藤武先生が述べたことを深く理解したい。医師および医療従事者は、複雑性・多義性に満ちたさまざまな患者さんに対し、鋭い洞察力、豊かな想像力そして個々の患者の人格に関する深い理解をもって、適切な医療行為を提供できるようになるため、生涯をかけ、サイエンスとアートの両方の部分に研鑽を積むことが求められている。
著者
嶺 輝子
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.41-51, 2019 (Released:2019-04-04)
参考文献数
9

このたび,ICD-11において複雑性PTSDが正式な診断基準として採択された.これにより,これまで正しい診断・治療を受けられなかった患者たちが適切な治療を受けられるような基盤が整ったわけだが,今後はその治療をどのように行っていくかが重要課題になるだろう.複雑性PTSDとは,傷を受けやすい幼年期の発達段階において,養育責任を担っている者の加害や放棄による重度のストレス要因に継続的あるいは長期間さらされた結果引き起こされる心的外傷であるが(Courtois et al., 2009),それは長期にわたるストレスだけでなく,単回のトラウマが,その後の不適切なケアや対応によって重症化するケースも含まれうる.小児の精神神経の専門家として,このような複雑性PTSDへの変調を防ぎ,トラウマから回復させるには何が必要なのかを論じたうえで,論者が考案したホログラフィートークという心理療法を子どものケアにどのように利用しうるのかを紹介してみたい.
著者
鈴木 千里
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第40回, no.基礎理論及び基礎技術, pp.82-83, 1990-03-14

非線形積分方程式であるHammerstein方程式(1.1)u(x)=∫^1_<-1>K(x,s)f(s,u(s))ds+h(x) (x∈I=[-1,1])に対してLobatto積分則を用いる古典的Nystrom法は(1.2)u_i=Σ^n__<j=1>K_<ij>W_jf_j+h_i(i=1,2,..,n)の離散近似方程式系を導く.ここでW_iはLobatto積分則の重み係数,x_jはその分点,u_iは方程式(1.1)の解u(x)のx_i上の近似値,K_<ij>=K(x_i,x_j),f_j=(x_j,u_j),h_i=h(x_i).しかし,積分核k(x,s)やf(s,z),h(x)が十分滑らかな場合,もう少し精密に離散化を図ると,つぎのような離散近似方程式系が得られる.(1.3)u_i=Σ^n__<j=1>K_<ij>w_jf_j+Σ^n__<j=1>Σ^n__<k=1>K_<ij>e_<jk>f_k+h_iここでe_<jk>は,p_<n-1>(x)をLegendre多項式とし,(1.4)e_<jk>=-2/((2n-1)n(n-1)p<n-1>(x_i)p_<n-1>(x_j))本予稿では,(1.3)の離散近似方程式系を導く近似スキムを提案し,古典的Nystrom法との精度的な比較を行う.また数値結果に基づく比較も行う.