著者
細野 美幸
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.62-72, 2009-03-30 (Released:2012-02-22)
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

本研究は, 子どもは関係類似性を手がかりに類推のベースを想起するか否か, 関係類似性を手がかりに類推のベースを想起する場合いつ頃から可能か, について検討した。子どもにとって新しい概念(ターゲット)となじみのある概念(ベース)からなるアナロジーを用意し, 5歳前半から7歳後半の子ども184名に対して提示した。その際, ターゲットのみ提示するベース非明示条件と, ベースを提示してからターゲットを提示するベース明示条件を設けた。両条件ともに4つ組みのカード選択課題を行い, カード選択にあたっての理由づけを求めた。課題成績および理由づけ分析の結果から, ベースを明示されていれば6歳前半から関係類似性を手がかりに類推するようになるが, ベースを明示されていないと幼児にとっては難しく, 7歳前半頃から関係類似性を手がかりに類推のベースを思い出して類推するようになることが示された。このような発達的変化は, 抽象化された関係知識の獲得と関連するものと考えられる。
著者
桑野 由紀
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.328-332, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
14

ストレス関連疾患の発症や病態には環境要因と遺伝子が相互に関与し, ストレス時に生じる遺伝子発現調節の破綻もその一因となる. マイクロRNA (miRNA) は, 遺伝子発現の転写後調節を担う20~25塩基ほどの小さな非コードRNA分子であり, 生体が外部環境から受けるストレス刺激に応答し, 恒常性の維持に関与することが報告されている. マイクロRNAはさまざまな組織に特異的に発現し, 唾液や血液などの体液中に安定して存在することから, がんや組織障害などの新たな疾患バイオマーカーとして注目されている. 中枢神経系においても, 神経新生やシナプス可塑性に必要な遺伝子の発現調節機構にかかわっていることが報告されている. したがって, ストレス反応やうつ病・統合失調症などの精神疾患の病態にも関与することが十分に考えられる. 本稿では, 近年明らかになってきた, マイクロRNAの作用機序と臨床医学への応用について解説する.
著者
AZIZ K.
雑誌
Applied Science Publishers
巻号頁・発行日
vol.476, 1979
被引用文献数
1
著者
福岡 健吾 佐藤 中 長瀬 勇人 菅原 宏文 成田 知宏 水野 豊
出版者
南江堂
雑誌
臨床雑誌外科 (ISSN:0016593X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.876-879, 2019-07-01

直腸異物はしばしば救急外来で遭遇するが,異物の種類や形状,異物の位置などにより状況は多岐にわたる.したがって,定型的な対処法というものはなく,症例ごとの対処が必要となる.摘出困難例では開腹手術を余儀なくされることがあるが,工夫により経肛門的な摘出が可能となる場合がある.今回われわれは,経肛門的に挿入された異物の2例に対し児頭吸引器を用いた.本法に関して文献的考察を加えて報告する.
出版者
東京朝日新聞社
巻号頁・発行日
vol.下巻, 1939
著者
曽根 涼子 山崎 文夫 藤井 宣晴 鍋倉 賢治 池上 晴夫
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.465-474, 1993-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1

激運動後における迷走神経活動の回復過程を呼吸性心周期変動の大きさの変化から検討することおよび呼吸性心周期変動の位相の変化を明らかにし1その変化の発生機構について検討することを目的として, 健康な男子大学生6名を被検者としてトレッドミルによるexhaustive走を行なわせ, 心周期および血圧の呼吸性変動の大きさおよび位相の変化を運動後5時間にわたって追跡調査した.呼吸周期および一回換気量は, それぞれ全測定を通して6秒および21に規制した.1) 呼吸性心周期変動の大きさはexhaustive走によって著しく減少するが, 運動後約2時間で前値に復した.呼吸運動を基準とした呼吸性心周期変動の位相は運動によって有意に遅れた.そして運動後2時間は急速に, それ以後は徐々に回復する傾向を示した.2) 呼吸性SBPの大きさおよび位相には運動後に顕著な変化は認められなかった.以上の結果から, 激運動によって抑制された迷走神経活動は運動終了から約2時間で回復すると考えられる.また, 運動後には呼吸性心周期変動の位相は明らかに遅れた.これは迷走神経の活動度の低下を反映している可能性がある.
著者
諸岡 英雄
出版者
日本シルク学会
雑誌
日本シルク学会誌 (ISSN:18808204)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.68-69, 2008 (Released:2009-03-05)
参考文献数
5
著者
石井 大祐 渡辺 裕
雑誌
研究報告 オーディオビジュアル複合情報処理(AVM)
巻号頁・発行日
vol.2012-AVM-76, no.1, pp.1-5, 2012-02-16

近年画像特徴量を用いた画像認識技術の発展は顕著である.これまで画像認識では,主に自然画像を対象とした特徴抽出,記述および解析が行われてきた.一方,電子書籍および電子コンテンツの領域では,電子化されたマンガが一般的になりつつある.電子コンテンツの利便性を高める上で,マンガにおける内容理解技術は重要である.本稿ではマンガを対象としたキャラクターの検出手法について検討し,HOG 特徴量および SVM を利用したキャラクターが存在箇所の検出を試みた.結果としてキャラクターの瞳部分を学習に使用した際に顔全体の画像を学習に使用した場合と比較して,誤検出を抑えつつキャラクターの顔位置が検出されることを確認した.
著者
小原 丈明 天野 太郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.107, 2007

<BR>I はじめに<BR>1.背景と目的<BR> 1990年代以降,社会経済情勢の変化(バブル経済の崩壊,少子化)や法制度の改正(「工業(場)等制限法」の改正・廃止等の規制緩和)など大学を取り巻く環境は著しく変わってきた。そのような環境の変化は,大学院重点化や国公立大学の法人化,専門職大学院の設置,大学の統合といった大学の再編をもたらしつつある。そこで本研究では,大学再編に伴う変化を主として空間的な側面から分析・考察することを目的とする。今回の発表では,その予備的考察として,大学に関する基礎的なデータの分析や,大学の立地の変化についての分析を中心に行う。<BR> 大学立地に関しては,これまでに教育学(教育政策学,教育社会学)を中心に地理学や都市計画学等の分野で研究が行われてきた。既往研究の内容は,(1)法制度の影響,(2)立地のシミュレーション,(3)大学設立・移転のプロセス,(4)地域社会への影響に大別できる。立地自体を扱うのは(1)~(3)の研究であるが,それらの多くは1990年頃までを分析の対象としている(例えば,矢野・小林(1989)など『大学研究』第4号所収の諸論文)。それ以降について体系的に扱っているのは羽田(2002)などわずかであり,近年の大学再編が空間的に明らかにされているとはいいがたい。<BR>2.研究の対象と方法<BR> 分析の資料として,各年度版の『全国大学一覧』(財団法人文教協会)および『全国短期大学・高等専門学校一覧』(同協会),文部科学省のHP,各大学のHPを使用した。それら資料(主として『全国大学一覧』)から,大学ごとの学部数や学生数,キャンパスの所在地,設立年次,設立母体等の項目を抽出してデータベースを作成し,GISを用いて地図化および分析を行った。<BR> 1990年代以降の動向を分析することが中心ではあるが,それ以前の動向と比較して考察する必要から,第2次世界大戦以後を幾つかの期間に区分し,各期間の動向も併せて分析している。<BR> <BR>II 分析および考察<BR> 終戦直後や1960年代後半と並び,1990年代後半から2000年代にかけて大学数が急増している。国立大学は大学間の合併により微減となっているが,公立と私立大学は,短期大学が四年制大学へと改組した分を受けて大幅に増加している。<BR> 専門職大学院の所在地(2006年4月現在144箇所)は首都圏と京阪神圏に多い。特に東京都区部には全体の1/3強が集中し,アクセスの良い場所にサテライト・キャンパスが志向されていることが分かる。<BR> 当日の発表では様々な指標を基に詳細な分析を行う。なお,今回の発表を踏まえ,今後はキャンパス移転の動向や大学間の連携について空間的な分析を行う予定である。<BR><BR>付 記 本研究は平成18年度同志社女子大学学術研究助成金の一部を使用した。<BR><BR>文 献<BR>羽田貴史 2002.縮減期の高等教育政策―大学統合・再編に関する一考察.北海道大学大学院教育学研究科紀要85:99-115.<BR>矢野眞和・小林信一 1989.大学立地の分析―偏在性と階層性.大学研究(筑波大学)4:129-164.
著者
駒田 聡子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.13, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】家庭科は,「日常生活に必要な基礎的知識および技術を身につける」ことを目的としているが,大学生の様子を見ると「缶切りが使えない」「(青菜ゆで)お湯の沸騰が分からない」「親指を使って桂むきができない」など,小学校から始まる家庭科で学ぶべき内容が定着していないと感じる場面が多い。そこで将来小学校教員となる教育学部学生を対象にアンケートを採り,これまでの学びの中で食に関わる基礎的・基本的知識がどの程度身についているのかを知り,そこから課題をみいだし教科教育に活かすことを目的とした。【方法】二大学の教育学部学生を対象として家庭科教育の初回授業時に,衣食住に関わる基礎的知識を問うアンケートを実施した。回答者数202名。【結果および考察】各項目の正解率は,1カップの容量 43%,大さじ1 55%,小さじ1 64%,水からゆでる食材 40%,食品群 約55%,1合 9%,消費・賞味期限 92%,食糧自給率語句の意味 54%・数値 11%,密度の違い 63%,廃棄率計算 36%だった。この結果より,実生活に必要な各教科での学びが知識として定着していないことが示唆できた。今後は各教科での学びを「実生活の具体的などの場面にどう活かすのか」,「どう活かせるのか」をより実感を伴って理解されるように教え,小学校での教科教育に活かせる教員養成を行っていく必要性を強く感じた。
著者
杤尾 安伸
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.649-656, 2019-08-25 (Released:2019-08-25)
参考文献数
15

本論では,日本型雇用に関する二つの理論的課題を提示する.この理論的課題とは,1 技能概念に関わる課題,2 日本の独自性に関わる課題,である.本論では,1 技能概念に関わる課題については,技能と技・知識・技術との関係に注目している.2 日本の独自性に関わる課題については,日本の二重構造の問題と,産業政策との関わりに注目している.
著者
木村 彰男
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.945-949, 1992-09-10

筋再教育・筋力増強訓練の1つの方法として,最近のリハビリテーション医療の分野でしばしば用いられる方法として筋電図(EMG)バイオフィードバック療法がある. バイオフィードバックとは,通常では人が意識することができない生体内で起こるさまざまな生理的現象を,なんらかの手段を用いて知覚できる信号に変換することにより,その情報を再び生体内に戻し,生理的現象の随意的操作がある程度可能になることと定義される,この定義に従えば,本来不随意的に行われている自律神経系の機能を意識下にコントロール可能にすることが,もともとのバイオフィードバックの意味であるといえるが,一般的には物をつかむような際の触覚や視覚を用いた随意運動の調御もバイオフィードバックとして広く捕えられている.
著者
有光 興記
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.77-87, 1999-03-30 (Released:2017-07-24)

本研究は, スポーツを行う前の"心構え"の実態を明らかにするために行われた. 予備調査では, 大学の運動部に所属する選手を対象に, 普段から行っている"心構え"を調査し, その結果より96項目からなるスポーツにおける心構え尺度 (PPIS) を作成した. 研究1では, PPISを大学の運動部員に対して調査し, 因子分析の結果, 積極性, "平常心", "コンディション", "ルール準拠", "気分高揚"の5因子構造からなることを示し, 簡便に回答ができる24項目版のPPIS (BPPIS) を作成した. 研究2では, BPPISの因子的信頼性を確かめ, さらに"心構え"が運動能力により変化するかを明らかにするために行われた. その結果, "気分高揚"が"積極性"因子に負荷することから, BPPISは4因子が妥当であること, "ルール準拠"以外で運動能力の高い選手が有意に高い得点を示した. 研究3では, 運動選手の"心構え"が-般の大学生やサークルに所属している大学生よりも高い評定値を示すのかどうか確かめるために行われた. その結果, いずれの因子でも運動選手の得点は運動選手でない大学生に比べて高く, "心構え"の必要性が示唆された.
著者
村上 惇 松下 裕臣 吉識 忠継 新保 正樹
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.34, no.384, pp.1099-1104, 1985-09-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

The morphology of phase-separation and the mechanical properties of amine cured rubber-modified epoxy resins were investigated.The results of the dynamic mechanical properties and the microscopic observations indicated that the epoxy-rich matrix phase was plasticized by the dissolved rubber and the rubber-rich domains were dispersed homogeneously in the epoxy-rich matrix.The rubber-modification of epoxy resins enhanced the fracture toughness against crack initiation and caused the crack arrest. The size of the plastic-deformed region at the crack tip was correlated well with the fracture toughness against crack initiation according to Dugdal's equation.From the fatigue crack propagation (FCP) tests at a low frequency it has been shown that the presence of rubber domains introduces the interfacial debonding between the domain and the matrix as the result of stress response, which promotes the FCP at the low stress intensity factor range.
著者
山本 祥正
出版者
THE SOCIRETY OF RUBBER SCIENCE AND TECHNOLOGYY, JAPAN
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.443-449, 2009 (Released:2010-08-25)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

The present review describes chemical modification of natural rubber, consisting of cis-1,4-polyisoprene, to introduce functional group. Natural rubber was first purified with urea in latex stage to remove proteins which inhibit precision control of the chemical modification. The resulting purified natural rubber was subjected to radical and ionic chemical reaction. Introduction of hydroxyl group, carbonyl group or functional polymer at allylic position of cis-1,4 isoprene unit was achieved with radical initiator to prepare liquid natural rubber and graft-copolymer, while it was reacted with hydrogen, peroxycarboxylic acid, carbon dioxide, water and polylactide to introduce hydrogen, epoxide, carbonate, hydroxy group and tetrahydrofuran, and ester at olefinic position, respectively.
著者
梶 龍兒 佐藤 健太 佐光 亘 後藤 恵
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.844-847, 2008 (Released:2009-01-15)
参考文献数
9

Diagnosis of dystonia is not difficult by recognizing the pattern of clinical presentation. Dopa-responsive dystonia (DRD) and Wilson disease are important in differential diagnosis because of their specific treatment. The most common are the focal dystonias, including blepharospasm and spasmodic torticollis. Dystonia comprises mobile involuntary movements and abnormal postures, the latter is better described as hypokinetic disorder. The pathogenesis of dystonia is now being clarified, and includes abnormal neuroplasticity caused by the relative excess of dopamine in the matrix compartment of the striatum, the possible primary lesion being the striosome. In a dopa-responsive dystonia model, dopaminergic projection is more deficient to the striosome than to the matrix, which could produce imbalance between the direct versus. indirect pathway activities. The treatment options include trihexyphenidyl, minor tranquilizers, botulinum toxin injection, and deep brain stimulation.