著者
松本 健吾 加藤 内藏進 大谷 和男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

梅雨最盛期の東日本では,50 mm/日を超えるような「大雨日」の出現頻度は西日本ほど高くはないが,梅雨降水の将来予測などの際には,東日本のように大雨の少ない地域についても知見を整理する必要がある。また,長期間の「気候システムの平均像」としての「広いパラメータレンジでの種々の現象の振れ方」の把握の足がかりともなると考え,40年間の梅雨最盛期と盛夏期の東京を例とする東日本の大雨日について,解析を行ってきた。本講演では,降水特性や大気場について,降水域の南北の広がりも参照しながら吟味した。<br> ミニチュア版天気図が手元にある1971 ~2010年の6月16日~7月15日(梅雨最盛期)の東京での「大雨日」の日数は計31回であった(長崎よりかなり少ない)。これらの各事例における気圧配置の違いをパターン毎に分類した。 東日本では,梅雨最盛期の「大雨日」の約半分は台風が直接関連した事例(パターンA,B)であり,また,西日本の集中豪雨と違い,10 mm/h未満の「普通の雨」が持続することにより大雨日となる事例(パターンB,C)が少なくなかった。<br>&nbsp; パターンAでは,暖気移流の大きい領域が北海道東方までのびていたが,まとまった降水域はその南西方の暖気移流の小さい領域(宇都宮~八丈島,約380 km)だった。さらに,そこでの10 mm/h以上の強雨の寄与率は大きかった。パターンBでは大きい暖気移流域の中で多降水域は南北に広く分布していた(宇都宮~八丈島)。その南半分(館山以南)では10 mm/h以上の寄与率も大きかったが,北半分(横浜以北)では10 mm/h未満の「普通の雨」の寄与率が大きかった。<br> パターンA,Bの双方で高温多湿な空気が台風の東側の南風により北方へ侵入してくるが,下層を通過するパターンAに対し,梅雨前線の存在するパターンBでは関東付近で傾圧性が強い場に流入してくる。このような大気場の違いが降水特性の違いに影響しているのではないかと考える。<br> 盛夏期(8月1日~31日)でも東京について,同様に大雨日を抽出した結果,2/3以上が台風に関わる事例であった。梅雨最盛期の東京での大雨日のうち半数近くは,10 mm/h未満の「普通の雨」によるものだったが,盛夏期の東京の大雨日では全体的に,10 mm/h 以上の降水による寄与が非常に大きかった。この結果は,梅雨最盛期から盛夏期への季節経過の中,オホーツク海気団の張り出し方の変化に伴い,梅雨最盛期のパターンBのような状況の出現頻度が少なくなることを含めて影響していると考える。
著者
千野原靖方編著
出版者
崙書房出版
巻号頁・発行日
2009
著者
渡邉 泰彦
出版者
京都産業大学法学会
雑誌
産大法学 (ISSN:02863782)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.363-425, 2017-07

はじめに第1章ドイツⅠ 養子法の概略 1 養親となることができる者 2 転縁組の禁止 3 生活パートナーシップ法Ⅱ 連れ子養子縁組 1 バイエルン州による規範統制の訴え 2 連邦憲法裁判所2009年8月10日決定Ⅲ 養親の生活パートナーと養子の縁組(交差縁組) 1 原審 2 連邦憲法裁判所2013年2月19日判決 3 2013年2月27日連邦議会(以上47巻3・4 号) 4 2014年改正法 5 小活Ⅳ 共同縁組の議論の経緯 1 概説 2 2001年生活パートナーシップ法制定の前後 3 2004年10月18日法務委員会公聴会 4 2008年6月18日法務委員会公聴会 5 バンベルク大学家族調査国立研究所報告書 6 2008年から2010年までの状況 7 2011年6月6日法務委員会公聴会 8 連邦憲法裁判所2014年1月23日決定 9 2014年5月5日法務委員会公聴会 10 小活(以上48巻1・2号)Ⅴ 共同縁組に関する法務委員会公聴会 1 両公聴会の概要 2 共同縁組と交差縁組の共通性または相違 3 子の福祉 4 社会学的調査 5 縁組手続 6 外国の状況 7 共同縁組賛成説の理論構成 8 共同縁組反対説の理論構成 9 小活(以上49巻1・2号)Ⅵ 同性カップルと生殖補助医療(概説)Ⅶ 女性カップルと生殖補助医療 1 概説 2 出生登録簿への登録 1 ) 分娩者の卵子による懐胎 2 ) 生活パートナーによる卵子提供 3 ) 外国で認証された親子関係の登録 3 精子提供者との関係 1 ) 精子提供者による父性取消し 2 ) 精子提供者による縁組への同意の要否 3 ) 精子提供者による情報請求 4 縁組手続 1 ) 匿名精子提供の場合の継親子縁組許可 2 ) 試験監護期間 5 小活Ⅷ 男性カップルと代理懐胎 1 概説 2 事実関係 3 第一審 4 抗告審 5 連邦通常裁判所2014年12月10日決定 6 凍結保存されている胚の認知 7 小活Ⅸ 性別変更による男性の出産(以上、49巻4号)第2章オーストリアⅠ 概説Ⅱ 同性カップルによる継親子縁組 1 事実関係 2 憲法裁判所2005年6月14日決定 3 最高裁2006年9月27日判決 1 ) 第一審 2 ) 第二審 3 ) 上告理由 4 ) 最高裁判所2006年9月27日判決 4 ヨーロッパ人権裁判所2013年2月19日判決 1 ) 当事者の主張 ( 1 ) 原告の主張 ( 2 ) 被告オーストリア政府の主張 2 ) 判決の要旨 ( 1 ) ヨーロッパ人権条約8条との関連における14条 ( 2 ) 非婚の異性カップルとの比較 ( 3 ) 正当な目的と比例性 3 ) 反対意見 5 民法改正Ⅲ 共同縁組 1 事実関係 2 憲法裁判所2014年12月11日判決 1 ) 申立理由 2 ) 判決理由Ⅳ 生殖補助医療 1 2015年改正前の状況 2 憲法裁判所2012年10月2日決定 1 ) 事実関係 2 ) 最高裁判所2011年3月22日決定 3 ) 憲法裁判所2012年10月2日決定 ( 1 ) 申立人らの主張 ( 2 ) 決定の要旨 3 報告書「生殖医療法の改革」 1 ) バイオ倫理委員会 2 ) 10の理由 3 ) バイオ倫理委員会の提言 4 ) 少数意見 4 最高裁判所2012年12月19日決定 5 憲法裁判所2013年12月10日判決 1 ) 申立人の主張 2 ) 判決の要旨 6 2015年生殖医療改正法 1 ) 概説 2 ) 改正法の内容Ⅴ 二人目の母 1 概説 2 規定の内容 3 実親子関係の推定 4 認知 5 裁判上の確認Ⅵ 小活 1 ドイツとの比較 2 オランダとの比較 3 婚姻と登録パートナーシップの境界(以上、本号)第3章スイスおわりに
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.459, pp.193-195, 1998-12-21

11月4日水曜の深夜12時前後。国際電話に割引料金が適用され"ピーク・タイム"となるこの時間帯,国際電信電話(KDD)のコール・センターには顧客から「国際電話がかけられない」という苦情の電話が何本も飛び込んできた。 トラブルを訴えた顧客はいずれも「0055」で始まるクレジット・カードやプリペイド・カード通話の利用者。
著者
Yusuke Seino Takumi Nakamura Mie Hirohata Takeshi Kawarabayashi Toshimi Okushima Mikio Shoji
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.855-859, 2019-03-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
11
被引用文献数
1

We report the case of a 53-year-old woman with severe chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy (CIDP) who developed progressive tetraplegia with respiratory failure despite receiving a standard dose of intravenous immunoglobulin therapy (IVIg), steroid pulse therapy, plasma exchange, and cyclosporine. We administered high-dose IVIg (3 g/kg; 0.6 g/kg/day for 5 consecutive days at monthly intervals). The patient's muscle weakness gradually improved after IVIg. She recovered completely 2 years after the onset of symptoms. The effects of IVIg treatment in individuals with CIDP may vary in each patient. In patients with refractory CIDP receiving standard-dose IVIg, repeated high-dose IVIg treatment can be considered.
著者
宮崎 玲 土橋 宜典 西田友是
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.33(2002-CG-107), pp.43-48, 2002-04-19

雲などの自然現象のシミュレーションはCGにおいて重要な研究分野の一つである。とりわけ雲は景観画像の作成において重要な役割を果たす。雲は大気流体を可視化したものと言えるので、リアルな雲を作成するには、流体シミュレーションに基づく手法が有効である。本稿では、乱流の渦による特徴的な形態の積雲・積乱雲のアニメーションを作成するために、大気流体をモデル化し、偏微分方程式の数値解析をベースとしたシミュレーション手法を提案する。
著者
吉川 需
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.7-20, 1950-03-31 (Released:2011-04-13)
参考文献数
17
著者
石塚 智子 藤森 いづみ 吉ヶ江 泰志 久保田 一石 Veronika ROZEHNAL 村山 宣之 泉 高司
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.41, pp.S20-3, 2014

活性を有する親化合物の化学修飾によりADME特性の改善や毒性の軽減を可能とするプロドラッグ化では、活性体を生成する代謝活性化酵素の理解がプロドラッグの薬効や安全な臨床使用に重要な意味を持つ。代謝活性化酵素の個体差や薬物間相互作用による活性低下は薬効の減弱あるいは欠落を招き、さらにはプロドラッグ体の曝露上昇による予期せぬ毒性発現を引き起こす可能性がある。<br>演者らは、プロドラッグタイプのアンジオテンシン受容体拮抗薬であるオルメサルタンメドキソミル(OM)の代謝活性化酵素として、当時機能未知であったヒト加水分解酵素カルボキシメチレンブテノリダーゼ(CMBL)を同定した(Ishizuka et al., J Biol Chem 285:11892-11902, 2010)。哺乳類細胞に発現させたヒトCMBLは、代表的な加水分解酵素であるカルボキシルエステラーゼやコリンエステラーゼと異なる基質特異性や阻害剤感受性を示した。本発表では、CMBLのヒト肝臓および小腸中の個体差や非臨床試験動物の選択に重要な種差など、基礎的な酵素特性を併せて紹介する(Ishizuka et al., Drug Metab Dispos 41:1156-1162, 2013; 41:1888-1895, 2013)。ヒト小腸サイトソルのin vitro代謝クリアランスから、経口投与されたOMは吸収過程でそのほとんどが小腸CMBLにより活性体に変換されると考えられる。小腸で代謝活性化を受けるプロドラッグには、代謝活性化の副産物であるプロドラッグフラグメント(OMではジアセチル及びその代謝物が生成する)の循環血中での不要な曝露を避けられるという利点がある。加えて、ヒト血漿中の酵素パラオキソナーゼ1も非常に高いOM加水分解活性を有しており、このプロドラッグの完全な代謝活性化に寄与している。複数の酵素の関与により、いずれかの酵素に活性変動があったとしてもOMの代謝活性化は大きく影響を受けないものと考えられた。
著者
Goudie R. Ian Ryan Pierre C.
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-8, 1991
被引用文献数
11

1982年から88年にかけてニューファウンドランド沿岸で冬期に採集した5種の海鴨(ホンケワタガモ,ケワタガモ,クロガモ,コオリガモ,シノリガモ)の食性と消化器官(砂嚢重量,小腸&bull;盲腸の長さ)を調査した。5種類ともほとんど動物質の餌を食べていたが,ホンケワタガモ,ケワタガモ,クロガモが貝類とウニ類を高い割合で食べていたのに対し,コオリガモとシノリガモは等脚類と端脚類を比較的多く食べていた。消化器官の計測値は体の大きさに関係なく,食性の違いによって種間での差異がみられた。
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.923, pp.110-115, 2006-04-10

日本から見て地球のほぼ裏側。ブラジルのサンパウロ空港に降り立つと,南半球では秋に差し掛かる3月というのに,じっとりと湿気のある盛夏の空気が待ち受けていた。街に出ると道路沿いには携帯電話事業者の広告看板が立ち並び,家電量販店には消費者があふれている(図27)。 この地で松下電器産業は,2006年夏にもPDPテレビの量産と販売に乗り出す。
著者
Yue Chen Shouling Wu Wenyu Li Binhao Wang Haichen Lv Xiaolei Yang Bin Waleed Khalid Xiaomeng Yin Yunlong Xia
出版者
International Heart Journal Association
雑誌
International Heart Journal (ISSN:13492365)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.1246-1252, 2018-11-30 (Released:2018-11-28)
参考文献数
44
被引用文献数
2

In this study, we aim to investigate the association of serum uric acid (SUA) with the prevalence of premature ventricular contraction (PVC). The relationship between SUA and the prevalence of PVC in 98,965 subjects (79,034 male subjects, mean age: 51.9 ± 12.6 years old) in the Kailuan cohort study (n = 101,510, age range: 18-98 years) from June 2006 to October 2007 was investigated. These subjects were divided into five groups on the basis of their SUA levels. A multivariate logistic regression model was constructed to evaluate the association between SUA and the prevalence of PVC. The prevalence of PVC was 1.1% in all subjects, 1.1% in male subjects, and 1.0% in female subjects. Compared with the first quintile of SUA, the odds ratio (OR) and 95% confidence interval (95% CI) of other quintiles were 1.33 (1.05-1.69), 1.14 (0.90-1.46), 1.37 (1.08-1.74), and 1.63 (1.30-2.06) in male subjects; 1.12 (0.68-1.87), 1.27 (0.77-2.09), 1.45 (0.90-2.36), and 1.33 (0.81-2.18) in female subjects; and 1.30 (1.04-1.61), 1.20 (0.96-1.50), 1.33 (1.07-1.66), and 1.57 (1.26-1.95) for all subjects. The correlation between SUA and the prevalence of PVC was significant in all subjects and in male subjects, but not in female subjects. We demonstrated that SUA was apparently associated with the prevalence of PVC. The significant relationship between SUA and PVC identified in male subjects suggests the potential involvement of a gender-specific mechanism. Prospective studies are needed to further corroborate our results.
著者
西谷 俊昭 Toshiaki Nishitani
雑誌
人文論究 (ISSN:02866773)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.118-136, 2007-12-10
著者
渡辺 友美 吉冨 友恭 萱場 祐一
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.73-85, 2017-09-28 (Released:2018-01-15)
参考文献数
23
被引用文献数
4 3

自然再生事業や生物多様性保全の取り組みでは,市民や行政に自然環境の現状や課題を的確に伝える技術が必要とされている.映像は見えにくい河川生態を分かりやすく伝えるツールとして環境教育や展示の場で活用され,効果が報告されてきた.しかしながら,河川生態の映像化そのものに関する研究は多くなく,映像開発の参考となる知見が不足している.そこで本稿では,著者が制作に関わった水環境の映像展示事例から制作上の留意点と技術を抽出し,河川生態の映像化について体系的な整理を試みた.
著者
高波 千代子
出版者
北海道大学公共政策大学院
雑誌
年報 公共政策学
巻号頁・発行日
vol.7, pp.291-307, 2013-05-17

People in Japan can benefit from the healthcare based on a universal public insurance system, while the average length of hospital stay is the longest in advanced countries. Most patients in the long-term care hospitals are the bedridden elderly living on tube feedings. Not only do the majority of the elderly have dementia; they generally have little chance of expressing their own words when they are offered life-prolonging treatments. The elderly may require a terminal care with a palliative approach when they are dying due to the ageing process, that is, not only as a consequence of an incurable disease.