著者
下瀬 良太 只野 ちがや 重田 枝里子 菅原 仁 与那 正栄 内藤 祐子 関 博之 坂本 美喜 松永 篤彦 室 増男
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A2Se2038, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】随意筋収縮における筋力発揮の力-時間曲線は神経筋機能を評価する上で有効な情報を与えてくれる.特に高齢者は若年者に比べ筋力の発生からピークまでの力発達曲線(Rate of Force Development;RFD)が低い傾向にあり,不意の重心移動などに素早く対応できずに,転倒に繋がる事が多いといわれている.高齢者の転倒予防を考える際に,高いRFDの改善に繋がるトレーニングは重要である.RFDを変化させる因子には運動初期の速い運動単位(fast-MUs)の動員,発射頻度とその同期性や,運動単位の二重子的同期性(doublet discharge)が関与している.RFDの増加は高強度トレーニングによる報告が多く,fast-MUsの動員の寄与で起こると考えられている.しかし,高齢者に対して高強度のトレーニングは臨床的に適しておらず,日常動作で負荷が及ぶ筋力レベルの低強度の運動トレーニングが求められる.最近,低強度でfast-MUsの動員を可能にする皮膚冷刺激筋力トレーニング法が提案されているが,皮膚冷刺激がRFDにどのような影響を与えるかについての報告は未だ皆無である.そこで今回我々は,皮膚冷刺激がRFDに与える影響について検討し,高齢者への皮膚冷刺激筋力トレーニングの有効性についての一資料を得る目的である.【方法】本研究の説明を受け,同意の得られた健常成人男女8名(男性5名,女性3名,年齢34±10歳)を対象とした.被験者は椅子に座り,股関節屈曲90度,膝関節屈曲60度の姿勢で,「なるべく早く最大の力で」という指示のもと等尺性膝関節伸展運動を皮膚冷刺激(Skin Cold Stimulation; SCS)と非皮膚冷刺激(CON)の状態で行なった.SCSは冷却したゲルパック(Alcare製)を専用の装着バンドで数分間大腿四頭筋上の皮膚に密着させ,適切な皮膚温であることを確認して試行を行なった.CONも同重量の非冷却ゲルパッドを装着して行なった.試行順はランダムとし,各試行間では十分な休息をとり,皮膚温を確認して各試行を行なった.プロトコール試行中は,筋力出力と筋電図(EMG)を測定した.EMG(電極直径10mm,電極間距離30mm)は外側広筋(VL),内側広筋(VM),大腿直筋(RF)から双極誘導した.測定データはコンピュータに取り込み,後日解析を行なった.データ解析は力曲線の最高値(Fpeak)と微分最大値(dF/dtmax)を解析し,RFDは,0-30,0-50,0-100,0-200msecの区間での平均勾配を算出した.また各試行のFpeakで標準化したRFD(normalized RFD; nRFD)を,0-1/6MVC,0-1/2MVC,0-2/3MVCの区間の平均勾配として算出した.EMG解析は上述の各区間のroot mean square EMG(rmsEMG)を算出した.統計学的処理は各区間でのSCSとCONの値についてWilcoxonの符号付順位和検定を行い,統計学的有意水準は5%未満とした.【説明と同意】本研究を行うにあたり,ヘルシンキ宣言に基づいた東邦大学医学部倫理委員会実験計画承認書を得た上で,本研究の意義と実験に伴う危険性を協力依頼被験者に十分説明し,納得して頂いた上で測定を行なった.【結果】SCSでFpeakとdF/dtmaxは有意に増加した.dF/dtmaxまでの到達時間はSCSで平均9msec短縮したが,有意差は見られなかった.RFDは,0-30msec,0-50msec区間でSCSにより有意な増加が見られた.またnRFDは,0-1/6MVC区間でSCSにより有意な増加が見られ,到達時間もSCSで有意に短縮した.筋活動は,0-30msec区間でRFのrmsEMGが増加し,0-100msecと0-200msecでVLのrmsEMGが増加した.nRFDの区間では,0-1/6MVCにおいてVMとRFのrmsEMGが増加し,0-1/2MVCと0-2/3MVCにおいてVLのrmsEMGが増加した.【考察】皮膚冷刺激によりRFDの増加が見られた.各筋のrmsEMGの増加傾向が見られたことや皮膚冷刺激によってfast-MUsの動員が引き起こされる結果,初動負荷の素早いオーバーカムが可能となり,RFDの増加に繋がったと考えられる.特に筋力出力の初期でRFDの増加が見られ,不意の重心移動に対して素早く対応できる可能性を示唆した.本研究において,皮膚冷刺激により筋活動・RFDは増加し,皮膚冷刺激は高齢者の転倒予防トレーニングに対して有用であることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】本研究において,高齢者の日常動作に類似した低強度でもfast-MUsの動員による筋機能改善の筋力トレーニングが提案でき,高齢者の転倒予防にも繋がる新しい筋力トレーニングとしての可能性を探るデータが得られる.そして,本研究は臨床運動療法の一戦略になり得る可能性を秘めている意味で理学療法研究として意義がある.
著者
大西 文子
出版者
日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 = Journal of Japanese Society of Child Health Nursing (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.30-38, 2006-09-20

本研究の目的は、点頭てんかんを持つ子どもの母親11名を対象に、日常生活における療育体験とその思いを明らかにすることであった。母親の療育体験とその思いは、点頭てんかんの早期確定診断・早期ACTH治療の開始の希望とそれができなかったことへの後悔、病気に対する不十分な告知のために発作が止まって訓練をしたら発達するという思いで必死になって訓練に通った、日常生活における具体的な過ごし方が分からない、などがあり、医師・看護師の不適切な対処への不満があった。母親の希望として、重積発作に対する救急体制整備、入院中の付き添う母親の人権尊重や生活条件の確保、療育体制の改善や情報提供、きょうだいや学校および社会の偏見への改善があった。その他では、母親は24時間ケアが集中する母親のストレスに対するコーピング行動を持っていること、母親の癒しは家庭とこの子の笑顔、この子のおかげで価値観が変わった、があった。

1 0 0 0 OA 天塩日誌

著者
松浦武四郎
出版者
巻号頁・発行日
1861

1 0 0 0 蝦夷日誌

著者
松浦武四郎 著
出版者
時事通信社
巻号頁・発行日
vol.上, 1984
著者
安井 眞奈美
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.259-273, 2014-09

本稿は、筆者が二〇一三年九月に、山口県大島郡周防大島町沖家室島にて譲り受けた一九三〇年代の三枚の古写真を、ハワイ移民関連資料として紹介し、その歴史的な位置付けを行うことを目的としている。 沖家室島からは、近代に数多くの人々が、朝鮮半島や台湾、ハワイへ出稼ぎに向った。特にハワイへの移民の中には、漁業関係の仕事で成功し、財を成したものも少なくはない。彼ら沖家室島出身者たちは、オアフ島ホノルル、ハワイ島ヒロにて、ハワイ沖家室会という同郷会を結成し、協力し合って生活をしていた。また沖家室島では、沖家室惺々会が機関誌『かむろ』を一九一四年に刊行し、一九四〇年までの二十七年間、沖家室島の情報や沖家室島出身の海外在住者の近況を取り上げ、情報を発信し続けた。 本稿で紹介する古写真三枚のうち、一九三〇年に撮影された写真1は、沖家室島出身のハワイ在住者たちが、ワイキキでピクニックをした際の記念写真である。なお本稿の分析により、一九二八年に撮影された同類の写真は、昭和天皇即位大礼記念の記念品としてハワイから沖家室島へ送られたことも明らかとなった。次に写真2は、「ホノルル日本人料理人組合員 大谷松次郎氏 厄払祝宴」と題された料理人たちの写真である。写真3は説明書きはないものの、写真2と同日に撮影されたと考えられることから、ハワイで漁業関連の仕事により大成功を収めた沖家室島出身の大谷松治郎が、一九三一年、四十二歳の厄年に際して、千人以上もの客を招待して盛大に行った祝宴の記念写真と推定できる。 これらの古写真は、近代におけるハワイ移民の生活、同郷者との協力と親睦、故郷とのつながりを具体的に示す貴重な写真である。また本稿の分析により、故郷・沖家室島へのハワイでの記念写真の寄贈が明らかとなったことから、これらの写真はハワイ在住者の故郷観を示す資料としても位置付けられるだろう。 最後に本稿では、貴重な歴史遺産である古写真を、地域で保存活用する方法についても検討した。今後も引き続き沖家室の人々と連携しながら、地域の歴史遺産の展示と活用について具体的な方法を模索していきたい。
著者
五百井 清 村上 綾伸
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.142-148, 2001-01-15 (Released:2010-08-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

This paper deals with the turning motion mechanism of a brush-type micro robot using cyclic centrifugal forces. Many wheeled type robots may turn usually along the tangential velocity generated by the rolling wheels. However, the micro robot proposed here has different turning property from the usual mobile robots. First, we derive a two dimensional rolling model of the brush-type robot accompanied with cyclic centrifugal forces, and indicate the existence of the lateral force toward the robot by the computer simulations and the simple mathematical analysis. Next, to confirm the turning motion mechanism caused by the lateral force, we have experiments of the turning motion using some kinds of prototype, and then acquire some experimental data concerned with circle trajectories. Finally, we conclude the validity of the turning motion mechanism caused by the lateral forces which the cyclic centrifugal force generates.
著者
赤坂 郁美 財城 真寿美 久保田 尚之 松本 淳
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<b>1. </b><b>はじめに</b><br> <br>マニラでは、1865年からスペインのイエズス会士により気象観測が開始され(Udias, 2003)、戦時中を除き現在まで150年近くの気象観測データを得ることができる。20世紀前半以前の気象観測データを時間的・空間的に充分に得ることができない西部北太平洋モンスーン地域において、降水量とモンスーンの関係とその長期変化を明らかにする上で、貴重な観測データであるといえる。そのため、著者らはこれまで19世紀後半~20世紀前半の気象観測資料を収集し、データレスキューを進めてきた(赤坂,2014)。また、データの品質チェックも兼ねて、19世紀後半~20世紀前半の降水量の季節進行とその年々変動に関する解析を行っている(赤坂ほか,2017など)。そこで、本調査では風向の季節変化に関する調査を追加し、マニラにおける19世紀後半の降水量と風向の季節変化及びそれらの年々変動を明らかにすることを目的とした。<br><br> <br><br><b>2. </b><b>使用データ及び解析方法</b><br><br> 19世紀後半のマニラ観測所では、多くの気象要素の観測を時間単位で行っていた。そのため、降水量は日単位であるものの、風向・風速や気圧に関しては時間単位のデータを得ることが出来る。本調査では、日本の気象庁図書室やイギリス気象庁等で収集した気象観測資料(Observatorio Meteorologico de Manila)から、1890年1月~1900年12月の日降水量と風向・風速の1時間値を電子化して使用した。1870年代のデータも入手済みであるが、1870年代は風向・風速が3時間値のため、本稿では風の1時間値が得られる1890年代を対象とした。欠損期間は1891年10月、1893年6月である。<br><br> まず、降水と風向の季節変化を示すために、風向の半旬最多風向、半旬降水量を算出した。また、赤坂ほか(2017)と同様に雨季入りと雨季明けを定義し、半旬最多風向の季節変化との関係を考察した。<br><br> <br><br><b>3. </b><b>結果と考察</b><br><br> 1890~1900年の平均半旬降水量と半旬最多風向を図1に示す。大まかにみると、乾季における最多風向は北よりもしくは東よりの風で、雨季には南西風が持続している。乾季である1~4月(1~23半旬頃)の最多風向をみると、1月は北風であるが、2~4月には貿易風に対応する東~南東の風がみられる。この時期の降水量は特に少ない。5月中旬頃(27半旬)になると、降水量が年平均半旬降水量を超え、雨季に入る。最多風向は5月初旬(26半旬)に南西に変わり、5月下旬(29半旬頃)以降、南西風が持続するようになる。これは南西モンスーンの発達に対応すると考えられる。降水量は、6月中旬(34半旬)に一気に増加し、9月中旬(53半旬)にかけて最も多くなる。この期間の最多風向は南西のままほぼ変化しない。降水量は9月下旬(54半旬)に急激に減少し、その後、変動しながら年末にかけて徐々に減少していく。最多風向は9月下旬にはまだ南西であるが、10月初旬(56半旬)になると急激に北よりに変化し、1月まで北よりの風が持続する。この時期が北東モンスーン期に対応すると考えられる。<br><br> 最多風向の季節変化はかなり明瞭であるが、雨季と乾季の交替時期との間には2~3半旬の遅れがみられる。この時期に関しては最多風向だけでなく、風向の日変化も含めてどのように風向が変化していくのかを把握する必要がある。<br><br> 本稿では1890年代の半旬最多風向と降水量の季節変化について気候学的特徴のみを示したが、発表では19世紀後半の風向と降水量の季節変化における年々変動についても議論する。
著者
新井田 秀一 山下 浩之 笠間 友博
出版者
日本地図学会
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.3_28-3_37, 2011 (Released:2015-11-07)
参考文献数
27

Map is one of the most appropriate and synthetic ways of understanding the features of Hakone volcano: landform, surface formulation processes, distribution of volcanic ejecta, and also geo-historical development. Topographic map can show basic geographic information and is useful to many kinds of professional such as civil engineers, forest scientists, naturalists, and land conservationists. Nowadays, the development of remote sensing and GIS have added further valuable information to classical maps. Bird’s eye view map made by satellite image or shading image gives unique and useful views of landscape. Shadow maps, shape maps, and geologic maps are also useful, but in general they are not popular. Therefore, we have tried map-integration among bird’s eye view map and those maps of other types.
著者
土岐 謙次
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第64回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.216, 2017 (Released:2017-06-29)

(ドラフト)これまで乾漆は非常に高度な技術を要する工芸的な造形手法であった。特に漆の表面を平滑で美しく磨き上げる技術は「呂色(ろいろ)」仕上げと呼ばれ、主に職人によって伝承され、技術の習得には長い年月を要する。また、型には石膏や粘土が使われることが多く、繰り返し複製を作ることが困難である。本論は現代では一般的な塩化ビニル素材を型に利用することで、この呂色仕上げに近い品質の漆表面を、比較的簡単な方法で量産できる技術に関する研究である。塩化ビニルの表面が漆に転写されることで、誰でも簡単に高品質な乾漆を作ることが出来るようになった。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1868, pp.70-72, 2016-11-28

10月下旬のある日曜日。東京・文京にある「野菜倶楽部オトノハカフェ」は、ランチを楽しむ人々でにぎわっていた。カフェの売りは直営農場で採れた新鮮野菜。そのおいしさを引き立てるのが、建物を支える国産スギの柱と梁だ。
著者
許斐 氏元 鈴木 衞 小川 恭生 大塚 康司 萩原 晃 稲垣 太郎 井谷 茂人 斉藤 雄
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.502-511, 2014-12-31 (Released:2015-02-01)
参考文献数
25
被引用文献数
1 15

This study was performed to determine the frequency and degree of sleep disturbance in patients with dizziness using the Pittsburgh Sleep Quality Index, Japanese Version (PSQI-J), and investigate the relationship between dizziness and sleep disturbance. Fifty-two patients (20 male, 32 female) with a chief complaint of dizziness visited the dizziness clinic of the Department of Otolaryngology, Tokyo Medical University, for 3 months in 2013. The patients' age (average ± standard deviation) was 54.4±17.0 years (range, 10-88 years). The average PSQI global score was 7.6±4.2 points, which exceeds the 5.5-point cut-off for insomnia. In total, 67.3% of patients scored >6 points, and 35.8% scored >9 points, indicating definite sleep disturbance. With respect to the demography of disease groups, patients with Meniere's disease scored an average of 7.9 points, those with autonomic imbalance scored 8.8 points, and those with psychogenic dizziness scored 9.7 points; all of these diseases were associated with high PSQI scores. Patients with benign paroxysmal positional vertigo and patients with no abnormal findings showed relatively low scores (6.7 and 5.3 points, respectively). Patients with suspected sleep apnea syndrome, restless leg syndrome, and parasomnias tended to show high scores (>10 points). A high rate and high grade of sleep disturbance were confirmed in patients with dizziness, indicating that sleep quality affects several types of dizziness and vertigo. Understanding sleep disorders is helpful for the diagnosis and treatment of dizziness and provides a new perspective on the etiology of dizziness.
著者
加藤 智弘 伊藤 恭子
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.7-21, 2018 (Released:2018-08-16)
参考文献数
89

近年の大腸がんの高い罹患率により大腸がんによる死亡率も高くなり,現在のところ,がん死亡率でみると,男性では3位,女性では1位となっており,診断・治療とともに,その発見も重要な課題項目といえる.その点で大腸がん検診スクリーニングは大きな役割が期待されている.しかしながら,毎年ある程度の受診件数があるものの,精密検査対象者の受診率は他のがんと比較すると圧倒的に低い.このような背景のもと,本稿では大腸がん検診スクリーニングに関する現状と,関連する多くの検査手段について概観した.すなわち,検診のうち,対策型検診で中心となる便潜血検査法について,また,任意型検診,あるいは対策型検診の精密検査対象者への検査として,従来の検査法に加えて,新たな有力な検査法のいくつかについても概説を行った.これらの検査のメリット・デメリットを十分に理解することで,検診受診者に対しては,その情報を還元することにより,結果として,大腸がんの発見,ひいては死亡率の低下をもたらすことに繋がると思われる.
著者
戴 二彪 Erbiao Dai
雑誌
AGI Working Paper Series
巻号頁・発行日
vol.2014-07, pp.1-30, 2014-03

本研究では,1980年以降の日本の地域別人口規模と年齢構造の変動を考察したうえ,47の都道府県を対象に,10年ごとのパネルデータと固定効果モデルに基づいて,1980~2010年の人口構造の変動による地域経済成長(一人当たり域内総生産GRDP伸び率)への影響を検証した。主な分析結果は次の通りである。(1)出生率の低下と長寿化の影響で,日本では総人口・生産人口(労働年齢人口)伸び率の減速と人口の年齢構造の変化が起きている。日本の人口高齢化は,欧米先進国より遅く開始したが,その進行スピードが非常に速い。2012年に総人口における65歳以上の高齢人口の比率(高齢化率)は24%を超えており,今までどの国も経験していない世界一の高い水準になっている。一方,15~64歳の労働年齢人口の同比率は,1990年のピークの69.5%から2010年の63.3%へと低下しつつある。(2)47の都道府県の間に,労働年齢人口伸び率の地域格差が存在している。2010年の統計データを見ると,雇用機会と所得水準の高い大都市圏や地方圏中核都市の所在県は,若年人口の転入によって,労働年齢人口比率が高くなるが,雇用機会・所得水準の低い地方圏の県は,若年人口の転出によって,労働年齢人口比率が低くなるという地域パターンが確認できる。ただし,労働年齢人口伸び率については,時期によって地域別動向が大きく変わる。1950~80年の期間に,地方圏から三大都市圏への若年人口の純転入規模が非常に大きいので,三大都市圏の労働年齢人口の年平均増加率が地方圏を大きく上回る。同増加率が全国平均を超える地域は,すべて三大都市圏内の都道府県である。これに対して,1980~2010年の期間に,進行しつつある少子化の影響で,全国の労働年齢人口の年平均増加率は1950~80年の1.56%から0.09%へと大きく下落した。地方圏から三大都市圏への若年人口の純転入規模もかなり縮小したので,東京圏1都3県の労働年齢人口の年平均増加率は依然として全国平均を上回っているものの,大阪圏や名古屋圏のほとんどの府・県は全国平均を下回っている。一方,地方圏の一部の県(地方中心都市を持つ福岡・宮城,東京圏に近い茨城・栃木,及び日本本土から離れている沖縄)の同増加率は全国平均を上回っている。(3)実証分析の結果によると,都道府県の一人当たりGRDP(一人当たり域内総生産)伸び率に対して,労働人口伸び率・労働年齢人口伸び率は,いずれも顕著なプラスの影響(即ち同じ方向の影響)を与えている。(4)日本の一人当たりGRDP伸び率は,地域の初期所得水準や地域の生産性に関わる諸要因にも影響されている。具体的に言うと,各期間の最初年の一人当たりGRDPは,都道府県の一人当たりGRDP伸び率に統計的に有意なマイナスの影響を与えるとなっている。また,地域の産業集積の動向も,都道府県の一人当たりGRDP伸び率に対して一定な影響を与えている。そのうち,生産性の低い農業(農林水産業)の集積係数の伸び率は,一人当たりGRDPの伸び率に統計的に有意なマイナスの影響を与えるが,機械類製造業(電子機械,精密機械,輸送機械,その他機械,など4セクター)と通信運輸業の集積係数の伸び率は,統計的に有意な影響を与えていない。上述した分析結果の内,(3)について最も注目すべきである。近年日本のほとんどの都道府県では,生産人口の伸び率はマイナスになっており,それによる一人当たりGRDP伸び率への影響も同じ方向(即ちマイナスの影響)になっていると考えられる。この意味では,日本の地域経済成長そして全国の経済成長をより健全な水準へ取り戻すためには,人口構造の変化によるマイナスの影響およびその対策を真剣に考えなければならない。今後,いかにして,外国人を含む各種専門人材が働きたい・創業したい・住みたい魅力的な都市・地域を作ることが,日本の経済成長を左右する大きな政策課題である。

1 0 0 0 OA 指南車の製作

著者
山崎 次男 川田 良暁 石野 裕二 山田 幸男 塚崎 重多郎
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2004年度精密工学会春季大会
巻号頁・発行日
pp.346, 2004-03-16 (Released:2005-03-01)

指南車の紹介や復元が行われている。指南車に関する歴史的な背景や調査等を行ってきた。従来復元されている、リンク-歯車式、差動歯車式などと異なる機構で復元を試みた。遊星歯車方式と内歯車駆動とを組み合わせることによって完成することが出来た。