出版者
日経BP社
雑誌
日経メカニカル (ISSN:03863638)
巻号頁・発行日
no.566, pp.37-40, 2001-11

2001年6月に日産自動車が発売した新型「スカイライン」。これまで同車種の象徴だった丸型のテールランプや直列6気筒エンジンをかなぐり捨てて注目を浴びた。しかし,そうした表に見える変化以上に自動車業界の関係者の関心をさらったのは,日本で初めて本格的な欧米型のモジュール生産を導入したことだった。
著者
渡邊 洋
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

路面雪氷正常予測モデルの改良について、数値計算また、補足的な室内実験により検討を進めた1 単一層路面雪氷状態モデルの課題抽出(1) 雪氷厚および質量含氷率の計算誤差が、雪氷厚の増大に伴って、雪氷厚20mmを境に急増する。(2) 単一層路面雪氷状態モデルの適用範囲は、雪氷厚20mm以下が望ましい。2 多層路面雪氷状態モデルへ改良し、適切な雪氷分割要素厚により、計算精度の向上に努めた。(1) 多層路面雪氷状態モデルの方が、先出の単一層路面雪氷状態モデルより高く、雪氷厚が20mm以下であれば、計算精度は無次元計算誤差0.06以下(雪氷厚の計算誤差1.2mm以内)となる。(2) 多層路面雪氷状態モデルでの雪氷分割要素厚は初期雪氷厚の2割程度で良い。3 路面薄雪氷層に入射するアルベドと透過率を考慮したモデル改良を行った(1) アルベドは、雪氷密度および質量含氷率で規定され、厚さ0.04m以下の薄雪氷層では融解に伴うアルベドの低下は著しい。(2) 透過率は、雪氷厚の増加とともに指数関数的に低下し、その低下率は湿潤、シャーベット、乾燥雪の順で大きくなる。(3) 透過率は、雪氷厚と水、氷および空気の体積割合で表現できる。4 雪氷層と路面との間の接触熱抵抗の考慮した改良を実施した(1) 雪密度が増加するにつれて、乾燥積雪路面の接触熱抵抗は指数関数的に減少する。(2) シャーベット路面の接触熱抵抗は、質量含氷率が0.6以下では湿潤路面の値(1.1×10-3m^2K/W)と変わらないが、0.6以上になると非線形的に増加する。(3) 雪氷状態に係らず、接触熱抵抗は体積含空率の増加に伴って指数関数的に増大する。今後は、凍結防止剤の散布に伴う雪氷性状の変化を取り入れたモデル改良が必要である。
著者
岡村 良久 原田 征行 工藤 正育 津田 英一 小野 睦
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.102-106, 2003 (Released:2008-06-30)
参考文献数
10

腰椎椎間板ヘルニアの保存的治療法には,薬物療法,理学療法,各種ブロック療法などがあるが,その効果が明らかに証明されているものは少ないものの,長期自然経過は良好とされている.しかし,スポーツ選手,特に若年者の場合には時間的制約もあり,速やかに腰下肢痛を改善させて競技復帰をめざすことが大切である.1997 ∼ 2002年までの5年間に治療した男性43名,女性12名,計55名のスポーツ選手の腰椎椎間板ヘルニアの治療結果から保存的治療成績について検討した.仙骨裂孔ブロック,神経根ブロック,ストレッチを中心とした3週間の運動療法で29例,52.7%に運動時痛の改善を認めた.さらに,体幹の筋力訓練を継続して平均15.6カ月の経過観察では45例,81.8%がスポーツ復帰,継続可能であった.3週間で症状が全く改善しないもの,6週間でも運動時痛がとれない症例には治療法を再検討して,最終的には4例に手術を施行した.
著者
内山 吉隆
出版者
金沢大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

0℃付近における氷上のゴムの摩擦係数は著しく低い。そのため、実用の自動車用タイヤにおいては重大な問題である。この0℃付近での摩擦係数を増大させるために、摩擦の掘り起こしの頃を利用したスパイクタイヤが実用化されている。しかし、このスパイクタイヤは路面の摩耗を生じさせるため、その改善が望まれている。スパイクピンの作用力が0℃よりも高い温度で弱まり、0℃以下の温度では通常の作用力を示す温度順応性スパイクタイヤの基礎実験を行い、すべり摩擦時の路面損傷を軽減できることがわかった。現在ではスパイクタイヤの製造禁止が行われるため、スタッドレスタイヤの基礎研究として氷とゴムとの摩擦が重要となってきた。そしてゴムと氷との摩擦係数に及ぼす温度、接触圧力、摩擦速度及びゴム材質の影響について研究を行い、以下の結果を得た。1.氷とゴムとの摩擦係数に及ぼす温度及び接触圧力の影響各ゴム試料とも-20℃及び-15℃では比較的高い摩擦係数を示すが、-10℃においては摩擦係数は著しく低下し、-5℃から0℃においては0.2以下という低い値を示した。さらに接触圧力の増大とともに摩擦係数は減少し、天然ゴム試料では0.8MPaのときの値は0.2MPaのときの約半分の摩擦係数である。2.氷とゴムとの摩擦係数に及ぼすゴム材質の影響天然ゴム及びブタジエンゴムと氷との摩擦を行ったところ、ブダジエンゴムに比べ天然ゴムの方が-20℃から-15℃にかけて摩擦係数は約2倍高い値を示したが、-5℃から0℃にかけてはあまり大きな差はみられず低い値を示した。この摩擦係数の違いは接触面におけるせん断強さの違いによるものと考えられる。
著者
花北 順哉
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.10, pp.674-681, 1997-10-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
35
被引用文献数
1 1

腰椎椎間板ヘルニアの740症例に対する, microsurgical discectomyの経験をもとに,この病態におけるいくつかの問題点につき論じた.まず,腰椎椎間板ヘルニアの治療の原則は保存的療法であること,MRIにより脱出した椎間板へルニア塊が縮小,あるいは消失する症例が,かなり報告されるようになってきていることについて述べた.ついで,これらの知見を踏まえたうえでの手術適応につき述べた.腰椎椎間板ヘルニア摘出術については,まず,麻酔法につき述べ,ついで,下位腰椎椎間板ヘルニアに対する基本的手術操作のポイントにつき述べた.特殊な術式として,transdural approach,高位腰椎椎間板ヘルニアに対する手術法,外側型ヘルニアに対する術式のポイントにつき述べ,最後に再手術につき考察した.
著者
松山和史 生天目章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.20, pp.97-102, 2008-03-07
参考文献数
9

カスケード現象は,多くの人が他人の行動を模倣した意思決定をすることで,自分の選好とは反する行動をとってしまう現象であり,社会科学では重要なテーマである.また,インターネット上でのランキングシステムや協調フィルタリングの普及により情報工学でも重要なテーマになりつつある[1].本研究では,多数のエージェントによる逐次的な意思決定をモデル化する.そして,意思決定の際に重要な二つの要求である個人選好の強さと社会的圧力の強さとの関係から,カスケード現象が生じるメカニズムを明らかにする.また,多数派とは反対の行動をとる天の邪鬼的な意思決定をするエージェントを導入し,カスケード現象が起きる条件やカスケードの大きさ等を求める.The cascades phenomenon is an important theme in the social sciences. It is the phenomenon that the people act contrary to one's own preference. It is the reason why many people make decision that imitated others behavior. It is becoming more and more important in information technology because of ranking-system on the internet or diffusion of collaborative filtering. In this research, we make the modeling sequential decision making by many agents. And we reveal mechanism that the cascades phenomena is happen from relationship strength of the social pressure and individual preference. These two things is important factor when people make decision. We obtain conditions which the cascades phenomenon is happen and the size of it by innovating agent which decision making like contrary persons.
著者
永野 潤
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.51, pp.259-267, 2000

<<Est-ce que les machines peuvent penser ?>>. demande Alan Turing dans son article sur <<la machine comptante>>. En proposant <<l'examen de Turing>> (le jeu d'imitation), il affirme que l'on peut consid&eacute;rer la machine comme intelligente dans le cas o&ugrave; elle serait capable d'imiter l'homme.<BR>Or Sartre parie de <<l'homme comptant>> dans <I>l'Etre et le neant</I>. Selon lui, pour compter, il fault avoir conscience de compter, -conscience (non-thetique) de soi. Et pourtant la r&eacute;alit&eacute; humaine se d&eacute;finit par le jeu.<BR>Nous montrons que la conscience de soi, chez Sartre, est le jeu d'imitation et que, dans cesens, sa philosophie surmonte l'humanisme.
著者
サイエンスウィンドウ編集部
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
サイエンスウィンドウ (ISSN:18817807)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.1-38, 2019

<p><b>目次</b></p><p><b>特集 交わるアートとサイエンス</b></p><p>p.04 テクノロジーで広がるアートの可能性</p><p>p.06 デジタルとアナログの融合で時空を超えて甦るクローン文化財</p><p>p.11 映画の感動をすべての人に</p><p>p.13 みんなで音を楽しもう♪</p><p>p.15 VRで新しいアニメの表現を</p><p>p.17 バイオアートで見えてくる 自然界の営み</p><p>p.20 AIが創作をサポート アートがもっと楽しくなる!</p><p>p.23 AI研究者とクリエイターが考える 「AIがアートをつくる未来」とは</p><p><b>連載</b></p><p>p.29 カガクのめばえ 第3回 細野 秀雄さん 東京工業大学フロンティア材料研究所教授、同元素戦略研究センター長</p><p>p.33 観察法のイロハのイ 自然がつくった神秘の空間 鍾乳洞 後藤聡 日本洞窟学会会長</p><p>p.36 Open the Window ~サイエンスウィンドウと子どもたち~ イラスト図解でヒトと動物の関係を理解する 大阪市立滝川小学校4年生</p>
著者
笹岡 利安 恒枝 宏史 和田 努
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

エストロゲン(E2)は性周期や妊娠の制御に加えて糖脂質代謝にも関与する。本研究では、E2が制御性T細胞(Treg)を介して慢性炎症を制御することで糖代謝に関わる可能性を検討した。雄性マウスでは、高脂肪食負荷により内臓脂肪組織のTregは減少するのに対し、雌性マウスではTregは増加し、卵巣摘出によりTregの増加は消失した。また、雌性では高脂肪食負荷による慢性炎症が抑制されるのに対し、卵巣摘出により雄性の高脂肪食負荷マウスと同程度の慢性炎症を認めた。以上より、雌性マウスのE2はTregの内臓脂肪組織への局在と機能を高めることで、肥満に伴う代謝障害に対して防御的に作用する可能性が示された。
著者
樋口 慶郎 井上 亜希子 坪井 知則 本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.253-259, 1999-02-05
参考文献数
15
被引用文献数
4 13

ガス透過分離におけるガス透過の長期間の安定性と高効率化, 更にガス透過効率の長期間の再現性を向上させた, 新しいオンラインガス透過システムを構築した. このシステムでは新しく設計・製作したガス透過ユニットを組み込み, ユニット中を溶液が下方から上方に流れるようにし, 気泡の発生を防ぐ工夫がほどこされ, 更に測定後にガス透過ユニット内に滞留する溶液を排除するために2個の六方切り替えバルブを内蔵させている. ガスの安定的透過のために温度制御できる小型恒温槽を装着した. この装置中にガス透過ユニット, アンモニウムイオン定量用の反応コイルなどを組み入れ, 精密測定の向上を目指した. ガス透過ユニットは, 多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブとガラス管からなり, 接続には樹脂製フェラル及びO-リングを用い, 組み立てを容易にし, デッドボリュームも小さくした. ガス透過ユニット, 反応コイル及び試料注入器などを恒温槽の中で一定温度に保つことにより, 安定した再現性の良い測定が可能となった. ガス透過ユニット内に滞留する溶液を簡単かつ迅速に強制排除する機能も備えており, 測定後はガス透過ユニット中の溶液を除いておくことにより, 多孔質チューブの透過性能が長期間維持され, 再活性化の操作をすることなく, 高いガス透過効率を維持することができた. 本システムを用いると, 検量線は0〜10, 0〜1.0ppmの範囲で良好な直線性を示し, 1時間当たり80試料の分析が可能となった. 実際に, 河川水中のアンモニウムイオンの定量を行ったところ, インドフェノール誘導体/FIA/吸光光度法による定量値と良く一致し, 試料に対する相対標準偏差は0.51, 0.83%で, 回収率は97〜98%と良好であった.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ヘルスケア (ISSN:18815707)
巻号頁・発行日
no.244, pp.32-37, 2010-02

仕事にまじめに取り組まない、遅刻を繰り返すなど、職員の勤務態度に関するトラブルも管理者にとっては頭痛のタネだ。本誌アンケートにはこのほか、集団退職や金品の窃盗、不合理な労働基準監督署への通報など、深刻なトラブル事例も数多く寄せられた。 よく言えば自由奔放、悪く言えばモラルを欠いた言動を繰り返す。周りの迷惑を顧みず、わが物顔をしている──。
著者
宮島 江里子 角田 正史 押田 小百合 五十嵐 敬子 三枝 陽一 美原 静香 吉田 宗紀 野田 吉和 大井田 正人
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.378-386, 2017

【目的】我が国の喫煙率は最近5年は約20%前後と横ばい状態であり、30~40代の労働年代が他の年代に比べて高い。本研究では、禁煙指導や受動喫煙防止のための参考資料を得ることを目的に、喫煙労働者の禁煙無関心者の特徴、非喫煙者への配慮状況、非喫煙労働者の嫌煙意識を調査した。<br>【対象と方法】某2事業所(A, B)の製造業労働者に質問紙票調査を行い、回答に欠損のない815人分を解析した。調査項目は、基本事項(年齢、性別、事業所)、喫煙状況(現在/過去・非喫煙)、喫煙影響の考え方3項目(喫煙者の健康影響、周囲の健康影響、周囲の迷惑)、喫煙者には1日の喫煙本数、禁煙への関心、非喫煙者への配慮、受動喫煙の害の知識、禁煙・減煙の理由、非喫煙者には嫌煙意識(苦痛・気になる/気にならない)を尋ねた。喫煙者の禁煙関心と配慮の有無について、基本事項、喫煙影響3項目、喫煙本数、受動喫煙の知識の有無との関連を、&chi;<sup>2</sup> 検定又はFisherの直接確率法で検討した。<br>【結果】喫煙率は44.3%で、喫煙者の48.5%が禁煙無関心者であり、B事業所、1日21本以上喫煙、喫煙者への健康影響意識が低い群に有意に多かった。禁煙・減煙の理由は「健康に悪い」「お金がかかる」「吸いにくい環境」が多かった。非喫煙者へ無配慮は40.7%であり、受動喫煙の知識無の群に有意に多かった。非喫煙者の嫌煙「気になる・苦痛」は91.4%であった。<br>【考察】喫煙率の高い労働年代が多い製造業職場での喫煙率は高く対策が必要である。禁煙無関心者には健康影響の指導が関心を引き出すために有効である。関心者には、健康指導に加え、金銭的メリットや環境整備及び禁煙外来についての情報提供が禁煙に繋がる可能性がある。非喫煙者の殆どに嫌煙意識があり、喫煙者が配慮するようになるためには受動喫煙の害の啓発が有効と考える。
著者
Eigen Manfred
出版者
日経サイエンス
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.68-77, 2002-01
被引用文献数
1

ドイツで最初に狂牛病の症例が見つかって以来このかた,「BSE」の三文字が有力雑誌の表紙に踊り,ドイツ国民は不安にさいなまれてきた。BSEはウシ海綿状脳症を意味する英名,bovine spongiform encephalopathyの略だ。
著者
横山 真男 斉藤 勇也
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.22, pp.1-6, 2015-02-23

1980 年代から 2000 年にヒットした邦楽の楽曲構造を分析し可視化を行った.対象として,オリコンランキングの 1980 年から 2007 年の各年で Top10 に入る楽曲について調査した.本研究では,曲のサビに注目し,コード進行の頻度やパターン,シンコペーションの数,動機のパターンを取り上げ,年毎にその特徴を分析した.We analyzed and visualized the music structures of the Japanese pop music that made the hit from the 1980s to 2000s. The musical pieces investigated here are that the music ranked in Top10 at each year of the Oricon ranking from 1980 to 2007. In this study, we focused on sabi (chorus) of the music and investigated the characteristic of the chord progression, the number of syncopation and the pattern of the motive.
著者
有竹 浩介 鎌内 慎也 丸山 敏彦 星川 有美子 早石 修 永田 奈々恵
出版者
(財)大阪バイオサイエンス研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

チューリヒッヒ大学睡眠研究グループと共同で、睡眠障害患者の脳脊髄液および血液中の睡眠覚醒調節に関与する物質を分析し、健常人と比較した。ナルコレプシー患者では脳脊髄液中のリポカリン型PGD合成酵素濃度が有意に減少していること、パーキンソン病患者では有意に増加していることが判明した。更に、ヒスタミンやアデシンの濃度を調べたところ、脳脊髄液中のヒスタミン濃度は、多発性硬化症患者で増加し、イノシン濃度は、全ての睡眠障害患者で高い値を示した。これらの結果から、脳脊髄液中のL-PGDS、ヒスタミン、イノシン濃度の測定と比較が睡眠障害の新たな診断マーカーになることを見出した。
著者
藤本 潔
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.110, 2009

<B>はじめに</B> 海水準変動は海岸地域の地形形成や環境変化に多大な影響を及ぼす重要な因子のひとつである.1970年代以降、テクトニックには安定地域と考えられる地域間での最高海水準の時期や高度の相違は,アイソスタシー理論である程度説明できることが明らかになる。しかし,微変動に関しては,アイソスタシーによる沈降域では顕著な現象として見出されていないことから,未だに統一された見解が得られていないのが現状である.本発表では,氷河性アイソスタシーの影響で沈降傾向にあり,現在を最高海水準とする平滑曲線が描かれてきた典型地域のひとつとして知られる北海南部大陸沿岸域において, <SUP>14</SUP>C年代測定法導入以降の完新世海水準変動研究史,および海面変化に関わる沿岸低地の地形地質を紹介すると共に,それらデータの信頼性を評価することで,特に完新世中期以降の海水準微変動について考察することを目的とする.<BR><B>微変動の可能性</B> 本地域で海水準微変動の検出を目的とした研究は,オランダ西部のVan de Plassche(1982),北西ドイツのBehre(2003)のみである.Van de Plassche(1982)は,基底泥炭基部から得られたデータから7000~2800 cal BPの間に数回の地下水位上昇速度の変化を見出し,海水準変動との関係について考察した.Behre(2003)は数回の海面低下を伴う9700 cal BP以降の海水準変動曲線を描いた.しかし,使用されたデータには圧密の影響を伴うもの、泥炭層や文化層形成期から間接的に推定されたものを含むため,変動のタイミングは議論し得るものの,振幅や高度の信頼性は必ずしも高くない.両者を比較すると,5200~4500 cal BPに海面上昇の停滞もしくは海面低下が起こった可能性が高い.4500~4100 cal BPの上昇速度の加速にも同時性が認められる.3900~3400 cal BPの間には北西ドイツでややタイミングが遅れるものの,両地域で上昇速度の加速が見られる.一方、3300~2900 cal BPの間に北西ドイツでは急激な海面低下が推定されているのに対し,オランダ西部ではほぼ停滞している.この間オランダでは塩性湿地の淡水化や泥炭地の海側への拡大は見られないことから,急激な海面低下は圧密に伴う見かけの現象である可能性が高い.2350~1900 cal BPの間にはオランダ全域の塩生湿地で一時的な離水現象が起こったことから,この間の海面低下とその後の再上昇の可能性が指摘される.これらの変動傾向は,5200 cal BPの上昇速度の減速に先立つ相対的な急上昇を除き,アジア・太平洋地域の変動とタイミングがほぼ一致する.<BR><B>手法的問題と今後の課題</B> オランダで復元された海水準変動曲線のほとんどは,泥炭層や粘土層の圧密沈下の影響を排除するため更新世堆積物や砂丘堆積物を覆う基底泥炭基部から得られた<SUP>14</SUP>C年代値に基づく地下水位変動曲線から間接的に推定されたものである.この手法で海水準微変動を検出するためには,河川勾配効果,氾濫原効果,海岸砂丘による開閉の影響,基盤斜面の微地形の影響を考慮しつつ,地下水位との関係が明確な泥炭試料を一連の斜面上から高密度に採取することが求められる.しかし,たとえこれらの条件が克服できたとしても,一時的な海面低下の証拠を見出すことは難しい.なぜなら,海面低下は表層泥炭の分解を引き起こし,その後の海面上昇に伴いその上に新たな泥炭層が重なって形成される.その結果,見かけ上,海面上昇速度の低下もしくは停滞現象として見出される. オランダではこれまで一方的な海面上昇を示す平滑曲線が受け入れられてきた.その主要な根拠は"カレー・ダンケルク堆積物"と呼ばれてきた海進堆積物には広域的同時性が認められないという認識にある.しかし,オランダ西部と北部ではかなりの部分で同時性が認められる上,北西ドイツにおける海面変化傾向はオランダ北部の海進海退時期とタイミングがよく一致する.これまで一般に受け入れられてきた平滑曲線は,上記の手法的問題を含む概略的な傾向曲線に過ぎない.今後は海岸砂丘による開閉の影響を受けていないオランダ北部地域で,圧密沈下の影響を評価した上で,海進海退堆積物の形成時期と高度を示すより精度の高いデータの蓄積が求められる.