著者
長束 勇 小林 範之 石井 将幸 上野 和広 長谷川 雄基 佐藤 周之 佐藤 嘉展
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

初年度(2017年度)の成果を踏まえ,本年度は日本国内で実施する実験・解析の課題について取り組むこととした。一方,ブータン王国側のカウンターパートである農林省農業局(DOA)との共同研究の推進(とくにVisa取得,計測機器や資材のブータン王国内への搬入)に,日本の大学との関係の明文化が求められたことに加え,ブータン王国の国政選挙から政権交代(2018年12月)があり,現地調査等の進行を止めざるを得なかった。その中で,佐藤が2018年6月に単独で渡航し,DOAのチーフエンジニアと面談をし,現地実証実験のフィールドの確認と今後の工程を確認している。本研究課題のゴールは,開発途上国で容易に応用可能で経済性に優れ,耐震を含めた安定性を有する小規模ため池の工法開発である。本年度は,各研究分担者によって,実験室内レベルで設定した研究課題をそれぞれ進めた。根幹となるため池築造技術に関する研究としては,ベントナイトを利用する研究を進めた。ベントナイト混合土によるため池堤体内の遮水層構築は,理論的には可能である。しかし,ベントナイトの膨潤特性の管理や強度特性など,安定した貯水施設の利用には課題が残っている。本年度は,ベントナイトの種類,ベントナイト混合土を室内試験にて一定の条件で確認するための母材,ベントナイト添加率と物理的・力学的特性の評価を行った。本実験で確認した条件下でのベントナイト混合土に対して,透水性の評価までを行い,十分に実用に耐える配合条件を確保できることを確認した。今後,最終年度には,耐震性および浸透特性の解析を国内で進めながら,ブータン王国内における現地実証試験の具体化を進める予定である。具体的には,現地で確保できるベントナイトならびに母材を用いたベントナイト混合土の特性評価,ならびにため池堤体の建造技術への応用を進める予定である。
著者
ASKEW David
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

リバタリアニズムとは、現代正義論を語る際に無視することのできない思想的立場であると同時に、民営化・規制緩和政策などを推進する「小さな政府」論の理論的基礎を提供する政治哲学でもある。これまで筆者は、個人の自由を非妥協的に擁護し、私有財産制度や自由競争市場を最大限尊重するリバタリアニズムの自由主義哲学を概観し、殊にリバタリアニズム陣営内の論争に着眼して、最小国家論と無政府資本主義との間の対立について論じてきた。今回の研究プロジェクトでは、近代国民国家の衰退と共に、戦争も含めて、かつて国家の正常な守備範囲内と目されてきた機能を果たすため、市場メカニズムをはじめ公共部門以外の部門が積極的に活用されるようになったことに着眼し、環境問題に取り組む市場メカニズムを分析することとした。市場原理の導入で公共財などの財やサーヴィス供給の改善や効率化、合理化がはかられている中で、環境問題や絶滅の危機に瀕している動植物の保護など、市場があたかも公共部門によって解決することのできない多種多様な問題を解決する万能薬と看做すことができるかどうかを検討してきた。そのためにも、従来注目されてきたエコ・ツーリズムなどといった事例ではなく、国立公園の民営化および絶滅の危機に瀕する植物の繁殖・販売を請け負う民間企業のような事例を取り上げることとした。研究の結果は、リバタリアニズム理論という理論枠組を更に展開する形で研究論文としてまとめられてきた。近刊のものを含めて、今年、来年に数本の学術論文が公になる予定である。
著者
水本 正晴
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2020年度の国際会議Cross-Linguistic Disagreement の計画を、研究協力者と共に議論し、会議の要旨を作成した。それをもとに、会議の基調講演をColiva Annalisa (University of California, Irvine)、Jennifer Lackey (Northwestern University)、John MacFarlane (University of California, Berkeley)に依頼し、幸い3人とも引き受けてもらえた。また、その会議の理論的基礎となる論文集Epistemology for the Rest of the World をオックスフォード大学出版から出版した他、その続編となる論文集Ethno-Epistemologyを編集、世界的な出版社と出版について交渉し、現在査読中である。すでに非常に好意的なレビューが一つ返ってきている。また、ニュージーランドで開催された実験哲学の会議では、「知っている」と「分かっている」についてのさらなる詳しい研究を発表し、両者の使用の判断についての大きな違いを報告すると共に、それらが異なる知識概念を表しているという水本の従来の主張を補強した。さらに、他者の感情についての判断について日本人、中国人、アメリカ人の間で極めて興味深い違いがあることを発見し、それをオーストラリアで開催された心理学の哲学の会議で報告した。これらはcross-linguistic disagreement を具体的に考察するためのさらなる具体例を与えることになる。
著者
西藤 清秀
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究は、紛争、開発、自然災害により消滅した有形文化財(以下文化財)・建造物を3次元画像として再現することである。紛争や自然災害は、多くの重要な文化財や建造物の破壊を招き、また昭和の高度経済成長期の宅地開発や社会インフラ整備は、多くの遺跡を消滅させた。これら対して本研究は、2点に焦点を当て実施する。第1点はISに爆破されたシリア・パルミラ遺跡ベル神殿の3次元画像をもとにした再現、第2点は宅地開発等で消えた古墳群・古墳の過去の写真による3次元的再現である。第1点のベル神殿の3次元画像の再現は、ドイツ考古学研究所の画像の提供により、一昨年より僅かに進展した。第2点の過去の写真を活用しての古墳群・古墳の3次元画像の再現は、住宅開発で消滅した奈良県御所市石光山古墳群、同市西松本古墳群、さらに長年の耕作地利用と学校建設によって墳丘の姿を変えていった明日香村小山田古墳において実施した。これらの古墳群・古墳の3次元的再現には戦後直後、1940年代後半に米軍によって撮影された空中写真を利用した。その結果、石光山古墳群では、一基一基の古墳の位置を明確に確認できた。西松本古墳群では、過去に調査された古墳の位置が報告文だけであったが、今回の画像から調査された古墳の位置を検証することができた。明日香村小山田古墳では、学校建設によって外観的にはほとんど消滅した古墳の墳丘を学校建設前の1948年の姿に甦らせることができた。本研究において過去の画像を現代的に活用し3次元化した結果、消失する前の古墳・古墳群とその周辺地形の新たな姿を再現することができた。今後、古墳群や古墳の歴史的立地環境を考える上で絶好の材料を提供することができ、新たな研究への窓口を開くために大いに貢献できると考えている。
著者
神武 直彦 中島 円 小高 暁
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

発展途上国の農村地域では低所得者層である小規模農家が公式の金融サービスにアクセスできない金融廃除が深刻な問題となっている。借用履歴など記入期間が貸付判断をする際に必要な小規模農家の信用情報の欠如が主な要因だが、これまでに構築された金融機関からの貸付を促進するための小規模農家の信用評価モデルは限定的である。そこで本研究では衛星データやモバイルデータ等の地上データを駆使し、情報の信頼性検証方法等を明らかにすることで、借用履歴に代わるデータ駆動型の信用評価モデル構築を目指す。また、小規模農家の金融廃除経験に貢献するため、モデル構築のみならずアプリケーションとしての信用評価モデルの運用方法を構築する。
著者
細井 裕司 添田 喜治 西村 忠己 下倉 良太 松井 淑恵 中川 誠司 高木 悠哉
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

我々人間の聴覚では 20 kHz 以上の超音波領域の音は聞こえないが、超音波振動として骨導に与えると音知覚が得られる(骨導超音波)。さらにこの骨導超音波は、音が全く聞こえない最重度難聴者でも聴取可能である。この現象を利用し、我々は最重度難聴者に音知覚を与える骨導超音波補聴器の開発を行っている。本研究では(1)未だ知られていない超音波聴覚メカニズムの解明、(2)骨導超音波補聴器の実用化研究という二つの課題に取り組んできた。そしてその研究成果から、骨導超音波の末梢の知覚器官は蝸牛の基底回転に存在すること、またそれは変調された可聴音ではなく超音波自体を聴取していること、その際外有毛細胞が関与している可能性は低いことなど、聴覚路上の末梢・中枢での超音波聴覚メカニズムが明らかになってきた。また語音で変調した骨導超音波のプロソディ(抑揚)が弁別可能であること、リハビリテーションによって言葉の聞き取りが改善されることなどの実用化研究も大きく進展した。
著者
黒川 昌彦 渡辺 渡 清水 寛美
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

インフルエンザ感染は局所感染であるが、なぜ発熱、頭痛、脳炎などの全身症状が誘発されるかについては未だ明らかにされていない。このため、全身症状の誘発機序が明らかになれば、新たな視点からインフルエンザ感染に対する新薬の開発が可能となると考えられる。これまでのマウスのインフルエンザ感染病態の解析から、感染早期の気道内でIL-12の産生増強が、インフルエンザ感染症の軽症化を導くことを明らかにした。IL-12はインフルエンザ感染における自然免疫から獲得免疫系への一連の感染防御システム、また感染症状誘発の鍵となる因子である。そこで、インフルエンザ感染マウスを用いて気道感染後のIL-12産生様相を明らかにすることを目的とした。感染1-4日後のマウス肺洗浄液中のウイルス量は、感染3日目で最大となり以後減少した。また、サイトカイン産生(IL-12、IL-18、IFN-γ、TNF-α、IFN-α、IFN-β)は、感染2-3日目に最大になりその後減少傾向を示した。しかし、感染1日目において唯一IL-12産生濃度がmock感染マウスより有意に高く、感染にともないIL-12産生が他の5種のサイトカインより先に誘導された。感染1日目の肺の免疫組織学的検討では、ウイルス抗原は気管支上皮やその内部に局部的に認められ、マクロファージは、気管支平滑筋層の下部や細気管支部位に点在していた。IL-12は、気管支平滑筋層の下部に点在して観察された。また、IL-12 transcriptsは、マクロファージ様細胞に検出された。これらの結果、感染初期にIL-12抗原は、インフルエンザウイルス抗原やマクロファージと同様に、感染気管支上皮近傍の気管支平滑筋層の近辺に点在していることが明らかとなった。また、その分布は、マクロファージの分布と類似しており、IL-12がマクロファージ様細胞から産生されていることが示唆された。したがってインフルエンザウイルス感染初期気道内で、IL-12が自然免疫から獲得免疫系への一連の感染防御に重要な役割を演じていることが確認できた。
著者
小川 正樹
出版者
函館ラ・サール高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では、北海道における華僑社会の形成と発展について、その概略をまとめた。幕末開港以来、函館に海産商が移住し、現在ではほぼ全道で華僑が生活している。しかし、道内への移住経緯やその後の華僑社会の推移についても不明なところが多い。北海道は明治維新後「内地」に編入されながらも、「外地」としての性格ももつ、国内でも異質な地域であり、1910年から1941年までの間に、華僑人口が88人から299人に増加し、居住地域も函館、札幌、旭川、浦河から、ほぼ北海道全域へと拡大した。道内主要都市の華僑の出身地を調査すると、福建省福清県出身者が中心であり、職業も呉服行商のほか、料理人や商店員、毛皮商などであった。非常に小規模ではあるが、しかし、確実に華僑社会は北海道に形成されていったことがわかる。道内の都市を比較してみると、各都市はそれぞれ異なる性格を有している。函館は幕末以来の外国人居留地や貿易港として発展した。函館華僑は、幕末には、広東省出身者が中心であつたが、明治初期には、三江地方出身者が主流となり、日清戦争の勃発により海産商が帰国し始めると、福建省出身者の移住が本格化し、函館を拠点に呉服行商として道内各地に移住していった。札幌は道都として開発が進み、開拓使に雇われたお雇外国人の中に10名の中国人農夫が含まれていた。こうして札幌華僑は農業移民から始まり、戦前の一時期、函館や旭川をおさえて華僑人口が全道最大となった。しかし、戦後になると、北大の留学生が中心となって北海道札幌華僑総会が設立されるなど、戦前と戦後に大きな断絶が存在する。旭川は、1899年に内地開放されてから外国人が居住するようになり、この時期に道内に移住してきた福建省出身者が中心となって華僑総会を設立し、旭川華僑は現在まで続いている。この三都市の華僑は移住開始時期、性格も異なり、一つとしてまとめることは不可能である。福建省出身者以外に、札幌と小樽では山東省出身者の存在が確認でき、この華僑の進出の経緯は未だ明らかにされていない。この山東省出身者のネットワークについて、今後は中国東北地方や沿海地方との関連についても検討していく必要がある。北海道華僑を日本国内の華僑だけではなく、北東アジア全域の華僑の動きと関連して考えていくことが今後の大きな課題である。
著者
渡会 勝義 新村 聡 小峯 敦 石井 穣 江里口 拓
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

経済学の歴史において、人口は国民の貧困や福祉に重大な影響を与える要因として、常に注目されていた。本研究ではこの視点を各国比較の参照枠として捉え、フランス、イタリア、インドなどを具体的に取りあげた。その結果、現在の経済学では所与と捉えがちな人口という条件が、人々の生活(つまり貧困や福祉)にいかに影響を与え続けてきたか、という歴史的な教訓を再確認することができた。科研費メンバーはそれぞれ、リヨン(フランス)、サレント(イタリア)など各地に赴き、現地の研究者と交流することで、今後、この論題を発展する手がかりをつかむこともできた。
著者
扇谷 昌宏
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

・ヒト末梢血単球からミクログリア様細胞を作製する手法を確立した。・精神疾患を含むミクログリア病において、細胞機能の異常が見られた。・本技術は今後のミクログリア研究に有益なものとなる可能性が示唆された。
著者
西村 秀樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

明治・大正期には、八百長の流行が新聞を通して公示され続け、協会は八百長に対する処罰を給金や番付に反映させた。八百長を生み出す契機は角界の組織風土に求められる。すると、八百長は、身分制度下での昇進・降格を巡るもの、部屋・一門の紐帯が生み出すもの、情宜- 人情・友愛 - から生まれるもの、協会の商策によるものに分類できた。当時は「引き分け」八百長が多く、「兵法」としての引き分けとの区別が微妙であったので、八百長をおこなった廉でバサバサと処分できない状況にあった。八百長が擁護されるのは、相手の体面のために譲歩する、興行の利益に資する、相手が病身・負傷にある、昇進・陥落がかかっている場合であった。
著者
名波 正義
出版者
兵庫医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

糖尿病性腎症(DN)の尿細管間質病変は腎予後と深く関連している。本研究ではDNの尿細管障害過程における細胞内鉄代謝の関与を検討した。2型DNモデルマウス(db/db)の近位尿細管において、鉄取り込み蛋白であるトランスフェリン受容体1(TfR1)、二価金属イオン輸送体1(DMT1)の発現亢進、ミトコンドリアにおける鉄シャペロン蛋白であるフラタキシンの発現抑制およびマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)活性の低下が認められた。以上の結果から、DNでの近位尿細管における細胞内鉄輸送異常とミトコンドリアでの鉄代謝および酸化ストレス制御障害が尿細管障害過程に関与している可能性が示唆された。
著者
空田 朋子
出版者
山口県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、保育園における医療的ケア必要児の保育実態を明らかにすることである。医療的ケア必要児の保育実態調査の結果、医療的ケア必要児の医療への依存度の高さや看護師の雇用形態によって、看護師と保育士の保育における役割の割合に違いはあるが、どの保育園においても看護師と保育士が連携しながら、医療的ケア必要児の保育を行っていることが分かった。保育園で医療的ケア必要児の保育を行うには、保育園で働く保育士が安心して保育が行えるように、訪問看護の活用も取り入れた看護師確保方法を検討し、保育士が医療的ケア研修を受けられるような保育現場の体制を整備する必要が示唆された。
著者
大島 堅一 上園 昌武 木村 啓二 歌川 学 稲田 義久 林 大祐 竹濱 朝美 安田 陽 高村 ゆかり 金森 絵里 高橋 洋
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1.システム改革と市場設計に関する研究:電力システム改革の背景にあるエネルギー転換や世界的なエネルギー政策の構造改革について調査し、日本の状況との比較検討を行った。また、エネルギー転換の一環として世界的に盛り上がる国際連系線について、電力システム改革の観点から研究した。2.地域分散型エネルギーの普及、省エネルギーの促進政策研究:地域分散型エネルギーの普及については、特に欧州の国際連系線の潮流分析や市場取引状況について定量的評価を行なった。また国内の系統連系問題に関して主に不適切なリスク転嫁の観点から、参入障壁について分析を行った。 省エネルギーの促進政策の研究については、対策技術種類と可能性、対策の地域経済効果、技術普及の際の専門的知見活用法について検討した。3.新しいビジネスと電力会社の経営への影響に関する研究:電力の小売全面自由化の影響にいて整理・分析し、その研究成果の一部を「会計面からみた小売電気事業者の動向」として学会報告した。加えて2020年4月からの発送電分離と小売部門における規制料金の撤廃の電力会社の経営面に与える影響について制度面ならびに国際比較の観点から分析を行った。4.エネルギーコストに関する研究:昨年度の研究成果を踏まえて、風力発電事業者複数社等への追加ヒアリング調査を行い、疑問点の解決を図った。加えて、原子力のコストについて、現時点での新たな知見に基づく再計算と、電力システム改革下における原子力支援策についての分析を行った。5.経済的インパクトに関する研究: 2005年版福島県産業連関表を拡張し、再生可能エネルギー発電部門を明示化する作業を行い、拡張産業連関表の「雛形」を完成させた。これを福島県の実情を反映したものにするための準備作業として、風力、太陽光、小水力、バイオマス、地熱の業界団体・専門家に対してヒアリングを行った。
著者
中野 知子
出版者
名古屋大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

周産期医療が発達しているにも関わらず、早産の合併症による新生児死亡や脳性麻痺の発生率も改善していない。早産の病態に炎症が関与すること、さらに酸化ストレスや炎症性サイトカインが児の予後に影響することが報告されている。今回我々は近年抗酸化作用や抗炎症作用があるといわれている分子状水素に着目し、炎症性早産モデルマウスにおける効果について検討した。その結果受傷前に50%飽和水素水を母獣に投与した群では妊娠期間の延長を認め、また子宮組織の炎症性サイトカインなどの早産に関わる因子の発現を有意差を持って抑制した。また50%飽和水素水母獣投与による胎仔催奇形性は認めず、安全に母体へ投与できることを証明した。
著者
佐藤 政則 永廣 顕 神山 恒雄
出版者
麗澤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、1930年代を中心に戦前日本における日本銀行引受国債発行の全貌を検討した。そのさい、これまでの研究が開拓した大蔵省(発行サイド)、日本銀行(引受サイド)からの分析に加えて、主要な購入者である国債引受シンジケート銀行(購入サイド)の行動に着目し、それと大蔵省、日本銀行との三位一体的考察により検討した。これによって1910年のシ団結成から1942年の金融統制会結成までの金融財政ガバナンスの構造と機能がおおむね明らかとなり、戦後との連結を図ることも可能となった。
著者
水野 さや
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

「中国・韓国・日本における八部衆像の研究」と題し、平成13年度から15年度にわたり研究を行ってきた。その過程で、八部衆(阿修羅、竜、迦楼羅などで構成される)という護法神の枠組みは中国で成立したものであることを明らかにしてきた。もちろん、八部衆を構成する阿修羅などの尊像は、インド、東南アジアにおいても確認され、中国で八部衆像としてグループ化される以前から信仰されてきた神々である。本年度は、このような単独で信仰されてきた阿修羅(アシュラ)、竜(ナーガ)、迦楼羅(ガルダ)などの作例を視野に入れ、これらの神々が単独で造られ、信仰されている場合の図像と、八部衆像として造られた場合の図像とでは違いがあるのかないのか、あるのであればどのような違いなのか、考察を広げてみた。阿修羅像については、八部衆における阿修羅像は日・月、曲尺、天秤などの持物を執ることが、本研究者のこれまでの研究により明らかになっている。河南省竜門石窟賓陽北洞(7世紀中頃)などの中国の初期の作例から、慶尚北道慶州昌林寺址三層石塔(8世紀後半)など、韓国の統一新羅後期から高麗前期に至る作例など、いずれの八部衆における阿修羅像にも必ず確認できる持物である。一方、八部衆ではない単独の阿修羅像には見いだせないものが多い。日・月などの持物も、中央アジアから中国において付加された持物と思われる。それには、阿修羅像が仏教に取り入れるまでの重層的な流れが反映されている。一つは西アジアにおける最高神アフラ・マズダーの一性格としてのアスラである。最高神であり司法神であるアスラが中央アジア経由で中国に直接もたらされ、天秤・鋏・墨壺を持つことが多い中国古来の天地創造の神々のイメージと重なり、阿修羅の図像が形成されたと考えられる。その一方で、西アジアのアスラはインドにおいて軍神インドラに敵対するアシュラとなり、ヴューダ聖典、仏教経典において、インドラに調伏される荒ぶる神々として認識されるようになる。中国、韓国、日本にみられる、怒りのイメージを思わせる赤の身色、荒々しい表情をもつ阿修羅は、ここに起因する。このように、東アジア以外において単独で信仰されている神々の図像との比較により、八部衆に取り入れられた各尊像が、その形成過程でどのようなイメージを強く受け、どのような役割を期待されて組み込まれたのか、その一端を考察する資料となった。
著者
松本 欣三 Suresh Awale 藤原 博典 堀 悦郎
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

ADHAを含む発達障害(DD)と病因と症状が類似する隔離飼育マウスをエピジェネティック発達障害モデルとして用い,発症機構と漢方薬(抑肝散,桂枝湯)による治療及び予防を検討した。抑肝散のみが注意様行動,一部の症状に対して治療効果を示した。一方,抑肝散や桂枝湯の投与を発達初期から開始した場合,DD様症状が抑制されたことから,両漢方薬はDDの予防軽減に有用と推測された。また隔離飼育動物では神経ステロイドのアロプレグナノロン (ALLO)の生合成が障害されている点に着目し,脳内ALLO量を低下させた結果,社会性行動の障害が誘導されたことから,ALLO産生障害がDDの発症に関与する可能性が示唆された。
著者
舘野 隆之輔 小林 和也
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-07-17

本研究は、針葉樹一斉造林地を有用広葉樹からなる広葉樹林へ誘導する際にどのような樹種の組み合わせを選定すれば、木材生産、地力維持、養分流出抑制など生態系の持つさまざまな機能を多面的に発揮できるのかを明らかにし、実用化に向けた課題を抽出することを目指す。本研究では、現存する発達した天然林における樹種の成長や動態を明らかにするとともに、生物群集の多様性と生態系機能との関係を明らかにする。また種子、実生、成木など様々な生育段階において、樹木の成長パラメータや植物と微生物間の相互作用、土壌養分や養分流出が、樹種の組み合わせでどのように変化するかを野外調査やポット実験、モデルなどを用いて明らかにする。
著者
村上 勝三 宮崎 隆 小泉 義之 香川 知晶 西村 哲一 安藤 正人 佐々木 周 持田 辰郎
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、デカルト研究の世界的な仕事の一部を担い、その新しい質を提示するとともに、すべての哲学研究に新たな基礎を提供すべく、『省察』の「反論と答弁」について共同研究を行うことであった。このことを遂行するために、平成7年度から9年度までの三年間の研究の総纏めとして、今年度は、すべての個別研究を完成させるとともに、研究成果報告書を作成した。その概要は以下の通りである。1.「第一反論・答弁」および「第二反論・答弁」の校訂版を作成した。1641年の初版、AT版との異同を明らかにしながら1642年第二版を再現したものであり、世界的に見ても始めての試みである。これらは、TOKORO Takefumi, Les textes des 《Meditationes》, Chuo University Press, 1994に準拠している。2.『省察』「反論・答弁」をめぐる諸問題のテクスト的典拠を挙げ、諸家の伝統になっている、あるいはなりつつある解釈について論じる問題論的研究を完成させた。その目次的概要は次の通りである。(1)「順序・論証方式・叙述様式」(2)「デカルトの懐疑について」(3)「『省察』「反論・答弁」と「永遠真理創造」説」(4)「『省察』「反論と答弁」における「意志」を巡る議論」(5)「神に至るもう一つの道」(6)「デカルトにおける神学と哲学」(7)「反論と答弁」における「観念」について3.「第七反論・答弁」の翻訳を完成させた。これは本邦初訳である。夏の合宿への他領域の研究者、若手研究者の参加は、本研究の成果のいっそうの充実に寄与するところ大であった。