著者
小野崎 隆 八木 雅史 棚瀬 幸司
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.399-405, 2009-10-15

ポットカーネーション42品種の花について、花持ち性、エチレン生成量、エチレン感受性を調査した。ポットカーネーション品種中に、花持ち性やエチレン生成量に関して大きな変異の存在することが明らかになった。'ポラリス'、'カミーユピンク'、'シフォン'、'バンビーノ'、'ニーニャ'は平均花持ち日数9.7日以上と花持ち性に優れていた。これらの花持ち性の優れる品種では、老化時のエチレン生成量が極めて少なく、通常の品種で生じる花弁のインローリング、萎凋を示さずに、花弁の縁から褐変する症状で観賞価値を失った。花持ち性と老化時のエチレン生成量、自己触媒的エチレン生成量との間には有意な負の相関関係が認められた。また、エチレン感受性についても二倍体品種で大きな品種間差異のあることが明らかになったが、エチレン感受性と花持ち日数との間に有意な相関は認められず、エチレン低感受性品種の花持ち性が優れる傾向はみられなかった。倍数性と花持ち性、エチレン感受性との間に関連性は認められなかった。本研究により、ポットカーネーションにおける花持ち性の品種間差異が明らかになり、花持ち性の向上を目指した交雑育種の可能性が示された。
著者
小木曽 一之 串間 敦郎 安井 年文 青山 清英
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.449-462, 1997

The puropose of this study was twofold: (a) to investigate the pattern of change in the sprinting speed that is the final results of the sprinting movements, and (b) to find out whether the characteristics in the sprinting speed change due to the differences in age, sex, sprinting ability and training status. One-hundred thirty male and 123 female ordinary students aged 6 to 18, and 30 male and 23 female sprint runners aged 9, 10, 11 and 18 participated in this study. They were instructed to excute an exhaustive sprinting. Sprinting times ranged from about 20 to 30 sec. The elapsed times were measured every five meters in their sprinting. In the analysis, the polynomial curve fitting from 5th-degree to 9th-degree was used for the predictions of the sprinting distances with respect to the elapsed times every 0.1 sec. From the relations of the distances to times the following speeds were computed: 1) the sprinting speed that was computed by differentiating the sprinting distance, and 2) the average speed form start to the elapsed time every 0.1 sec. The sprinting speed reached the peak speed after about 6to 7 sec from start. The average speed showed the peak speed after about 15 sec from start. These characteristics with respect to time remained unchanged despite the differences in age, sex, sprinting performance and training status. The time at the maximum average speed was particularly stable. The maximum average speed was about 90% of the maximum sprinting speed. This result also remained unchanged despite the differences in age, sex, sprinting performance and training status,respectively. These results indicate that the pattern of change in the sprinting speed with respect to time is rather constant without the distinction of age, sex, sprinting performance and training status. The sprinting performance, however, improved with age and by training. This result was mostly caused by the increase of the maximum sprinting speed with age and by training. These characteristics with respect to time and speed seem to cause the differences in the sprinting distance.

1 0 0 0 OA 強調の種類

著者
川上 蓁
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1957, no.31, pp.63-64, 1957-03-31 (Released:2010-12-22)
参考文献数
3
著者
鳥居 徳敏 Torii Tokutoshi
出版者
神奈川大学
雑誌
麒麟 (ISSN:09186964)
巻号頁・発行日
no.20, pp.80(1)-47(34), 2011-03-31
著者
大西 香代子 中原 純 北岡 和代 中野 正孝 大串 靖子 田中 広美 藤井 博英
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.4_101-4_107, 2012-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
29

倫理的悩みは,倫理的に正しい意思決定をしたが現実的な制約により実行できないときに生じる。本研究は,倫理的悩み尺度精神科版を用いて,人員配置や社会資源が異なる日本とイングランドの精神科看護者の倫理的悩みの程度と頻度を比較し,属性との関連を検討することを目的とする。 有効回答は日本289人,イングランド36人であった。両国の倫理的悩みの程度は,「同僚の非倫理的行為」「少ない職員配置」「権利侵害の黙認」のいずれの下位尺度においても有意差はなかった。一方,倫理的悩みの頻度では,いずれの下位尺度においても両国間で有意な差があり,日本の看護師のほうがより頻繁に倫理的悩みを体験していた。さらに,日本では年齢や経験年数は倫理的悩みに影響していなかったが,イングランドでは年齢や経験年数が高くなると倫理的悩みの程度も頻度も低くなっていた。
著者
久保 泰子 津久江 一朗 加藤 重子 佐々木 秀美
出版者
広島文化学園大学看護学部
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-15, 2011-09

本研究では,A精神科病院一般病棟保護室環境を分析・解釈し,その物理的環境を人権と倫理的医療という側面から,治療と人間の尊厳の問題を検討した。保護室環境の分析・解釈結果では,①患者及び他者の生命を守り安全に医療を提供,②自然の恩恵が受けられず人の精神に不快な感情を刺激し安楽が妨げられる療養環境,③人間の尊厳に関する問題とQOL の低下の3つのカテゴリーが抽出された。これらのカテゴリーを人権と倫理的医療という側面から検討した結果,患者および他者の生命を守るということは,人の生存権の問題である。よって,保護室環境は,安全に医療を提供する場所として構造機能上の質的向上,医療及び保護という観点からは,生命の維持と行動観察がよくできる環境設定と同時に,回復を促進するために,自然の恩恵が受けられ人の精神に不快な感情を刺激しない保護室環境とすること,回復を促進できる保護室環境と行動制限の最小化およびセルフケア能力に応じたケアを提供することによってQOL の低下を引き起こさないことが人間としての尊厳を守ることにつながることが分かった。保護室環境の問題は,治療と人間の尊厳のバランスの重要性を示唆しており,精神看護学領域における最重要課題である。
著者
山﨑 めぐみ 住友 雄資
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.55-69, 2018-02-28

本総説論文は、長期入院の精神障害者に対する退院支援に関する文献レビューを通して、精神科病院の精神保健福祉士が行う退院支援に関する研究課題を提示することである。文献レビューの結果、精神科病院の精神保健福祉士が行う退院支援研究は少なく、しかも精神障害者との関係づくりや退院の意欲喚起に限定されていることが明らかになった。このことから長期入院者の退院を阻む各要因を精神保健福祉士がどのように把握し、その総合的な把握から要因を取り除いていく研究、退院支援の内容やプロセス等を丹念に質的に探究しそれを記述していくという質的研究、長期入院患者と家族の関係を再構築するための具体的な方法を明らかにする家族に関する研究、具体的な社会資源の活用・開発を推進していく研究、精神保健福祉士が地域住民等にどのような実践を積み重ねていけばよいのかという研究、という5点の研究課題を提示した。
著者
海野 剛裕 菅原 正義 中久喜 輝夫 岡田 嚴太郎
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
澱粉科学 (ISSN:00215406)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.21-27, 1993 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
4

β-グルコオリゴ糖のヒト腸内フローラに与える影響について検討した.β-グルコオリゴ糖は,微生物起源のβ-グルコシダーゼの糖転移・縮合反応を有効に利用して製造されたβ-グルコオリゴ糖を主成分とするシラップ(商品名:ゲントース)を用いた.In vitroでの腸内細菌による資化性試験においては,β-グルコオリゴ糖はBifidobacteria, Lactobacilliに選択的に資化された.また資化性試験に用いた4株のClostridium perfringensにはほとんど資化性は認められなかった. さらに,β-グルコオリゴ糖をヒトに投与し,腸内フローラの測定を行った結果では,49/日のβ-グルコオリゴ糖の投与によりBifidobacteriaの菌数が有意(p<0.05)に増加し,その占有率は21.5%にまで増加した.この期間の糞便のpHは投与前後に比較して約0.5pH単位の低下が認められた.また被験者の健康状態については異常なガスの発生および鼓脹感はみられず,約6割の被験者において便通および便の硬さの改善がみられた. 以上の結果からβ-グルコオリゴ糖は49/日の摂取量で有効なBifidobacteriaの増殖因子であること,便性改善効果がある新規な澱粉糖として利用できることが示唆された.
著者
集治 善博 Shuji Yoshihiro
出版者
新潟大学農学部
雑誌
新潟大学農学部研究報告
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.109-113, 2005-03

著者は、これまで牛と人間の関係に関する一連の研究を行ってきた。特に、従来この分野の研究において用いられてきた調査方法は、近づく人間に対する牛の反応すなわち受動的な反応であると考えられる。一方、一般に牛の日常管理に携わる中では、搾乳牛が自発的に人間に接近したり接触したりするのを経験する事も多い。これらの行動は、牛が自発的に人間に関わろうとする性質であると考えられるが、このような観点から牛の人間に対する行動を調査した研究は少ない。さこで、今回は、搾乳牛の人間に対する行動を、能動的なものと受動的なものに分け、同時平行的に調査する研究を実施した。新潟大学農学部村松ステーションの搾乳牛16頭を用いた。牛の能動的対人行動の測定として、ひとりの人間が放牧地の定点に腰をおろし、その間に人間に対して近づく、においを嗅ぐ、鼻で接触する、舐める・擦り付けるなどの行動をビデオカメラで撮影した。一方、受動的対人反応は、同じひとりの人間が放牧地を歩き回り、正面から近づき目前に停止した状態になったときの各個体の反応をビデオカメラに記録した。結果はつぎのとおりである。能動的対人行動としては、直前を通過する、接触可能な距離に近づく、人間のにおいを嗅ぐ、鼻で接触する、舐める・擦り付けるといった行動がみられた。全体としては、通過や近づく割合が大きく、接触をともなう行動の頻度割合は40%程度であった。これを個体ごとにみると、全体の頻度に大きな個体差があるだけでなく、その出現割合にも大きな個体差がみられた。一方の、受動的対人反応としては、少し(手の届かない距離に)逃避する、顔面を背ける(位置の変化はない)、無反応、においを嗅ぐ、鼻で接触する、舐める・擦り付ける等の反応が見られた。みのうち無反応の頻度が最も大きく、全体の約半分を占めた。接触をともなう反応は全体の2割程度に留まった。その頻度や出現割合には個体差が大きかった。また、反すう時や食草時には無反応の割合が多く、佇立休息時には何らかの反応を示す割合が高かった。各個体の能動的対人行動と受動的対人反応を数値化し関係を調べたところ、両者には正の相関関係があるが、必ずしも強いとは言えなかった。そこで、両者に共通して見られた反応である、嗅ぐ、鼻で接触する、舐める・擦り付けるの3つの項目の相関を求めたところ、嗅ぎと鼻での接触では相関が小さく、舐め・擦り付けでは有意な正の相関関係がみられた。このように、搾乳牛の能動的対人行動と受動的対人反応は総じて関連しあっているが、やや異なった意味をもつ性質であるとも考えられた。Cattle are not only passivity to the human, and they act voluntarily. Many researchs of the relations of the cattle and human were only passivity behaviour. So, voluntary behaviour was examined to a human of the milking cows, and relation with the passivity behaviour was studied. Behaviour to one human, like thier nanny, of 16 milking cows of Niigata university Muramatsu Station were examined. The behaviour which cows showed voluntarily was examined to a human being who sat on the pasture. And, the behaviour which cows showed were examined to a human who stood up in thier imminence. Furthermore, relation between the voluntary behaviour and the passivity behaviour of each individual were examined. As a voluntary behaviour, crossing, approaching, smelling, licking and it rubbing to the human were seen. Though various behaviour was done toward the human, it came at all and near, and the individual if it was not was in the active individual, too. And, as a passivity behaviour, avoiding, touching with nose, licking and it rubbing the human were seen. As for the cattle, half of nothing reacted to about at passive opportunity. The correlation of the synthetic evaluation of the voluntary behaviour of each individual and the passivity behaviour wasn't necessarily strong. But, it was rubbing and licking, and well both corresponded well. The nature which avoided the more active nature which acts voluntarily and a human being was extracted as a result of the factor analysis. In other words, a cattle has the nature that let's involve not only passivity but also a human being actively.
著者
Bungo Shirouchi Ryosuke Matsuoka
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
Journal of Oleo Science (ISSN:13458957)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.517-524, 2019 (Released:2019-06-06)
参考文献数
38
被引用文献数
13

Abdominal fat accumulation causes metabolic syndrome, which is a cluster of metabolic abnormalities such as dyslipidemia, glucose intolerance, insulin resistance or hyperinsulinemia, and hypertension, leading to the development of diabetes and cardiovascular disease. Diets are known to contribute to the development or prevention of metabolic syndrome. Several studies have reported that the quality of dietary proteins may be an important modulator of the risk of this syndrome. We investigated the effects of consuming egg white protein (EWP) or lactic-fermented egg white (LE), an easy-to-consume form of egg white, on the development of metabolic syndrome in animal models and humans. In comparison with casein, dietary EWP decreased lymphatic lipid transport in thoracic lymph duct-cannulated rats. In an in vitro experiment, EWP pepsin hydrolysate decreased the cholesterol micellar solubility and cholesterol transfer rate from micelles to oil phase, and increased water-holding capacity, settling volume in water, and relative viscosity compared with casein pepsin hydrolysate. The daily consumption of LE for 8 weeks reduced serum total cholesterol and LDL cholesterol levels in men with mild hypercholesterolemia. Furthermore, dietary EWP reduced the body fat mass of rats by increasing the body protein mass and accelerating hepatic β-oxidation. The daily consumption of LE for 12 weeks reduced the visceral fat area and improved the ratio of the visceral to subcutaneous fat area. Taken together, these results indicated that dietary EWP and LE would be useful for preventing or alleviating metabolic syndrome.
著者
TORII Takashi
出版者
東京昆蟲學會
雑誌
昆蟲
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.354-364, 1988

Antocha (Proantocha) serricauda ALEXANDER, 1924, and Antocha (Proantocha) quadrivittata (ALEXANDER, 1932) are synonymized under Antocha (Proantocha) spinifer ALEXANDER, 1919, on the basis of the observation on the holotypes and 236 males and 186 females of this species collected in various localities of Japan. Male and female of A. (P.) spinifer are redescribed and figured. A. (P.) spinifer is newly recorded from Kyushu.
著者
佐藤 洸一 菊池 健太郎 青戸 等人 外山 芳人
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1_179-1_193, 2015

項書き換えシステム上の帰納的定理の自動証明手法として書き換え帰納法(Reddy, 1989)が提案されている.しかし,書き換え帰納法は末尾再帰による関数定義が含まれると有効に働かない場合が多い.一方,プログラムの自動検証を容易にすることを目的としたプログラム変換法として,文脈移動法および文脈分割法(Giesl, 2000)が提案されている.これらの手法は,末尾再帰プログラムを自動検証に適した単純再帰プログラムへと変換する.本論文では,項書き換えシステムに対する文脈移動法・文脈分割法の正当性を証明し,それらが書き換え帰納法による帰納的定理の証明に有効であることを明らかにする.
著者
松尾 厚
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】近年,加齢に伴い筋量の低下を起こすサルコペニアが注目されている。サルコペニアには加齢のみが原因となる原発性サルコペニアに加え,広義のサルコペニアとして不活動や栄養,疾患に関連した二次性サルコペニアが存在する。二次性サルコペニアは特に入院中の不活動やADL能力が低い要介護高齢者では容易に発症し,悪化しやすい。しかしながら,在宅生活においてその治療介入は難渋することが多い。本研究の目的は二次性サルコペニアを呈した在宅要介護高齢者のホームエクササイズ実施の効果を検討することとした。【対象および方法】対象は要介護認定を有する当院通所リハビリテーション利用者51名の中で平成25年12月時点でサルコペニア診断基準(年齢>65歳・歩行速度<0.8m/sかつSMI:Skeletal Muscle mass Index,男性<7.0kg/m<sup>2</sup>,<女性5.8kg/m<sup>2</sup>)に該当し,立ち上がりが可能な方26名とした。方法は26名を無作為に2群に分け,ホームエクササイズ実施群(13名),非実施群(13名)とし,両群の通所リハビリテーション利用時のプログラムは共通の内容を実施した。両群の研究開始前後のSMIを3か月おきに2回測定した(Inbody s10,Biospace製)。ホームエクササイズ実施群には,自宅で反復起立を行うように指導し,自宅での立ち上がり回数を自主トレーニング用紙に記録させた。自主トレーニング用紙は1ヶ月毎に通所リハビリテーション利用時で配布,回収した。なお,回数や頻度については,各時に設定させた。立ち上がり実施に伴うSMIの変化を,反復測定の二元配置分散分析を用い分析した。また,有意な交互作用が認められた場合には,各群を反復測定の一元配置分散分析で分析した。多重比較にはジェイファーの方法を用いた。統計学的有意水準は5%以下とした。【結果】ホームエクササイズ実施群は,研究途中でドロップアウトしたものが2名いたため,総数11名とした。なおドロップアウトの原因内訳としては入院1名,途中解約1名であった。二元配置分散分析の結果,有意な交互作用が認められた(F=5.36,p=0.017)。ホームエクササイズ実施群ではSMIが有意に向上した(F=10.73,p=0.001)。多重比較において,開始時5.56kg/m<sup>2</sup>と3ヶ月後5.76kg/m<sup>2</sup>では有意な差を認めなかったが(p=0.078),開始時5.56kg/m<sup>2</sup>と6カ月後6.03kg/m<sup>2</sup>(p=0.003),3ヶ月後と6カ月後(p=0.004)との間には有意な向上がみられた。非実施群では有意な向上は認めなかった(F=0.27,p=0.667)。またホームエクササイズ実施群においては11名中5名(45.4%)がサルコペニアの基準を上回り,非実施群では14名中2名(14.2%)がそれを上回った。【考察】サルコペニアに対する治療介入には栄養と運動が必要であるといわれている。本研究では在宅の要介護高齢者に対し,運動に対する介入のみで筋量の向上が認められた。その要因として低栄養状態のものが少なかったことが考えられる。しかしながら二次性のサルコペニア有病者の筋量減少の原因に不活動は大きな割合を占めており,日常的に立ち上がりを行う習慣を付けることでも筋量上昇が認められた。歩行が自立できていない方でも立ち上がりが物的介助を利用しで自立,もしくは介助での実施ができれば,筋量の維持・向上は可能であった。対象には歩行不可能の症例や記録が自己にて難しい症例も含まれており,本人以外の自主トレーニングに対する援助や介助も必要であった。ただし治療期間として3カ月以上の期間を要しており,継続的な他者からのモニタリングと運動の習慣化への働きがけが重要であると考えられる。今後の課題として,本研究では立ち上がり実施回数を対象者本人に自己決定させているため,実施頻度や実施回数にばらつきがみられる。そのため筋量向上に必要な立ち上がり回数は不明瞭である。今後さらなる研究が必要であると考える。また対象が在宅生活であるため,食事の状況や摂取している栄養素の偏りなどは不明である。サルコペニアの治療介入を効果的に行う上で栄養状態やたんぱく質摂取量も考慮すべきである。栄養面に対する地域要介護者に対する援助も同時に行なう事が出来れば,より効率的かつ効果的に筋量上昇が出来るものと考える。【理学療法学研究としての意義】地域要介護者のfrailtyやサルコペニアを予防・改善させることは今後の理学療法や医療の課題である。低負荷で継続的な運動により筋量の向上が認められたことは,二次性サルコペニアに対する介入方法の基礎となり,大変意義深い。