著者
戸田 達史
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.21-31, 2019 (Released:2020-05-22)
参考文献数
20

【要旨】認知能力に個人差があるのは自明である。このような個人差を生じさせる因子として、環境的なものばかりでなく遺伝的な要因も大いにあることが、行動遺伝学の研究などにより明らかになってきた。認知機能のその遺伝学的な影響を明らかにしようと、分子遺伝学的、神経科学的、認知科学的な様々な分野が融合し協力して、関連遺伝子の同定を目指した研究が、行われている。本稿では、多くの認知機能に関わる知能についての遺伝子の研究について概説する。
著者
成澤 直規 池田 真有花 竹永 章生
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.114, no.9, pp.550-556, 2019 (Released:2023-12-10)
参考文献数
22

魚醤油は,生産量は醤油の僅か0.2%にも満たないが,国際化が進むにつれて,調理における隠し味として人気を博してきている。今回は海外の魚醤油の中でも,中国の魚醤油 魚露(イールー)について焦点を絞って,その成分の特徴について日本の魚醤油と比較して丁寧に解説いただいた。同じ調味料の仲間として醤油や醸造の研究開発に関わっている関係者の皆様には是非ご一読をお勧めする。
著者
平 英彰 寺西 秀豊 劒田 幸子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.1466-1471, 1992-10-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
3

季節はずれのスギ花粉飛散の現象を明らかにするため, スギ空中花粉の調査を3年間にわたって行うと共に, 10月及び11月におけるスギ雄花の開花条件を検討した. 7月上旬から9月下旬にかけて形成されたスギ雄花から飛散したと考えられる花粉は10月中旬以降認められた. 10月, 11月に採取した雄花を低温処理したあと6℃から20℃の温度条件下で栽培したところ, ごく限られた特定のスギの雄花は, 10℃以上の高温条件下で容易に開花し花粉を飛散させた. 10月から1月にかけての気温を検討すると, 10℃以上の気温の高い日が多かった. 雄花の開花状況は, すべての雄花がいっせいに開花し, 花粉を飛散するのではなく, 全雄花のおよそ1/3程度が開花するだけで, 同じ房の中でも全く開花しない雄花もあり, 枝によっても開花状況が異っていた. したがって, これらの時期に飛散するスギ花粉の濃度は低いが, 豊作年では局所的に高い濃度を示す地域もあると推定され, アレルギー症状を引き起こす場合もあると考える.
著者
堀井 有希 椎名 貴彦 志水 泰武
出版者
低温科学第81巻編集委員会
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.131-139, 2023-03-20

一部の哺乳動物は,冬季に環境温度付近にまで体温を低下させる冬眠を行う.また,数時間の低体温を呈する日内休眠を行う動物種もある.冬眠や日内休眠のメカニズムを解明する手立てとして,実験室内でそれらを再現することは重要である.シリアンハムスターでは低温で暗期の長い環境において冬眠が誘発され,与える栄養素により冬眠誘発までの期間が変化する.また,マウスでは絶食,スンクスでは寒冷環境が日内休眠を誘発する引き金となる.さらに,冬眠しない哺乳動物であるラットは,薬理学的な方法によって冬眠様の低体温へ誘導することが可能である.本稿では,実験室における哺乳動物の冬眠・休眠の誘導についてまとめ,冬眠研究の展望を論じる.
著者
吉見 宏
出版者
北海道大学經濟學部
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.155-167, 1997-12
著者
山田 真裕
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.45-57,205, 2002-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
12
被引用文献数
2

小選挙区比例代表並立制のもとで2回目となる第42回総選挙における棄権を,明るい選挙推進協会の衆院選後調査データ(明推協データ)に基づいて第41回総選挙と対比しつつ分析した。その結果,主に以下のような知見を得た。(1)有権者全体の選挙に対する関心はやや回復したものの,棄権者については関心の低下が見られること,(2)96年選挙では行政改革問題が有権者を動員する効果を持っていたと思われるのに対して,2000年選挙では目立った争点の効果はなく,政党支持と選挙への関心が投票-棄権を決定する大きな要素であったこと,(3)棄権者の政治的信頼は投票者よりも低いこと,(4)政治満足度は前回選挙に比べて低下しており,このことは投票者にも棄権者にも該当すること。
著者
細川 隆雄
出版者
ロシア・東欧学会
雑誌
ソ連・東欧学会年報 (ISSN:03867226)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.21, pp.58-65, 1992 (Released:2010-05-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
西平 重喜
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.30-43, 2015 (Released:2018-03-23)

ドイツの無条件降伏は日本より3カ月ほど前であったが,戦後初めての西ドイツの選挙は日本の1947年4月より2年以上遅れた1949年8月であった。その選挙の準備は占領下で始められたが,選挙の方法について,ドイツの各政党の意見が一致しなかったし,占領国の主張も食い違っていた。したがって統一的,恒久的な選挙法を制定することが困難で,各州を重視する選挙の方法を採用せざるを得ず,並立制が使われた。1957年の第3回選挙からは併用制が続いているが,各党への議席の配分法は4回変更されている。特に2013年の配分法は画期的な点もあるが,ドイツの正式報告書の煩雑な計算を簡単にできる方法についても紹介する。また配分方法がどんな結果をもたらすか比較検討する。
著者
梶本 秀樹 藤村 裕一
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.2, pp.9-16, 2023-07-21 (Released:2023-07-21)

高校生の不適応行動に関する要因は複雑で,改善が困難である.しかし,素手素足のトイレ掃除を行う事によって非認知能力をより効果的に育成する変容要因と非認知能力が育成されていることが明らかとなった.さらに,素手素足のトイレ掃除を繰り返し行う事によって,どのように育成されていくのかを明らかにするために,不適応行動を引き起こす生徒のエピソード記録と半構造化質問紙調査を分析し,その育成要因を構造的に明らかにした.
著者
飯島 毅彦
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.711-718, 2019 (Released:2019-10-15)
参考文献数
25
被引用文献数
1

要約:グリコカリックスは,血管内皮表面を覆う構造物であり,血管の密閉性を保つ役割を果たしている.血管内外の水の流れは臓器ごとに異なるが,基本的には血管内から血管外への漏出圧力がかかっている.これをグリコカリックスが抑制しているので,ひとたびこの構造物が崩壊すると血管内から血管外への水の漏出が一気に加速することになる.大きなタンパク分子も漏出するようになると間質の水の貯留は顕著になる.グリコカリックスは構造物としてだけではなく,様々な生物学的な機能を有している.血管の緊張度の調整も行っており,適切な緊張度が保たれなくなると血管透過性の亢進が起こる.また,内皮細胞表面の受容体に対する作用も調整しており,細胞内シグナリングを介して細胞間隙のtight junction による密閉性の調整に間接的に関与していると考えられる.血管透過性亢進は様々な重要病態の進展に大きく関与しており,グリコカリックスの機能の解明が求められている.