著者
Tohru Shibuya Yukiharu Horiya
出版者
日本環境変異原学会
雑誌
Genes and Environment (ISSN:18807046)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.34-42, 2011 (Released:2011-05-25)
参考文献数
93
被引用文献数
4

Epigenetics (EG) is a highly regulated biochemical mechanism underlying the expression of genes related to development and cellular differentiation that is disrupted by environmental stressors including chemicals and radiation. Studies of these phenomena are known as environmental epigenetics (EEG). Regulation of gene expression by the epigenetic mechanism is deeply involved in the developmental stages of animals and humans. EEG is, therefore, very important in the field of toxicology because it deals with the state of gene expression in all types of somatic and germ cells disrupted by environmental chemicals. We propose here an “Embryo-originated Epigenetic Toxicology Method (EEGT)”. In this method embryonic somatic and germ cells are treated with test substances and various toxicological phenomena in whole bodies are examined. Observations on transgenerational effects are also important in this method. This new method could unite various toxicological phenomena based on EEG.
著者
佐々木 雄大 大澤 雅彦
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.251-256, 2005-10 (Released:2011-03-05)

草原全体として種組成の単純化が認められる兵庫県東お多福山草原であるが、登山道周辺においては草原内部よりも多様で特異な群落構造が見受けられる。そこで、本研究では登山道周辺の群落構造および種多様性に着目し、これらに特異性を与える主要因を利用客による踏みつけによるものと推定し、定量的に分析した。結果から、種組成の単純化が認められる本草原登山道周辺において、踏みつけの影響は必ずしも負の影響をもつとはいえないことがわかった。特に中程度の踏圧(土壌硬度で3.0-7.5kg/cm2)は、多様性を増加させた。整備された登山道を増やすことによって、適度な踏圧のもとで登山道が利用されるように促すことは、本草原登山道周辺における多様な草本植生の生育の場を提供することにつながると示唆される。
著者
境 雄大 伊藤 博之 八木橋 信夫 大澤 忠治 原田 治
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.53-56, 2006

穿通性胸部外傷で手術を要する症例は多くはないが,致死的状況に陥る可能性がある。今回,われわれは胸部刺創による肺穿通性損傷の1救命例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。患者は52歳の女性。口論の末,右側胸部を包丁でさされた。包丁が右胸部に刺入された状態で当院救急外来へ搬入された。来院時,意識清明,右肺音減弱,右側胸部に包丁が刺入され,刺入部から気漏聴取した。周囲に皮下気腫を認めず。血圧142/68mmHg,脈拍94/min,酸素マスク5リットル投与下でSpO<sub>2</sub> 99%であった。来院時のヘモグロビン値は12.9g/dlであった。胸部X線及びCT検査にて包丁は肋骨を切離,右下葉を貫通し,胸椎近傍に達していたが,心大血管損傷は認められなかった。肺損傷の診断にて同日,緊急手術を施行した。分離肺換気下に後側方開胸を行った。包丁は第10肋骨を切離,左下葉を貫通し,第8肋骨の肋骨頚内に達していた。肺門部において血管・気管支を処理後に右下葉切除を行い,包丁を抜去した。術中出血量は1,110gであった。術中及び術後MAP血6単位を輸血したが,術後の病状は安定した。術後は創部の緑膿菌感染を認めた他は良好に経過し,第31病日に退院した。自験例においては心大血管損傷の有無を評価し,早朝に手術を開始する上でCTが有用であった。
著者
Hyun Jin Kim Ah Ram Cho Kyoung Sub Park Yoon Jin Kim
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
pp.OKD-027, (Released:2016-11-11)
被引用文献数
11

To increase the photosynthesis of crop and improve plant quality, we evaluated the effect of elevated CO2 on vegetative growth and flowering in Phalaenopsis Fuller’s Pink Swallow. Plants were exposed to 450 (control), 800, 1600, and 2400 μmol·mol−1 CO2 for 31 weeks. The number of leaves, leaf length, and leaf width displayed greater increases in plants grown under 1600 and 2400 μmol·mol−1 CO2 than in plants grown under 450 and 800 μmol·mol−1 CO2. The times to leaf initiation were reduced to 90.7 and 85.8 days in plants grown under 1600 and 2400 μmol·mol−1 CO2, respectively, compared with that of the control, 177.1 days. The leaf elongation rate was significantly increased in plants grown under 1600 and 2400 μmol·mol−1 CO2 compared to plants grown under 450 and 800 μmol·mol−1 CO2. Plants grown under 1600 μmol·mol−1 CO2 had the highest total number of flower buds among all plants grown under the four tested CO2 concentrations. Leaf injuries were not observed in any plants regardless of CO2 concentration, but flower bud abortion and bud withering were observed in CO2-enriched plants, especially in plants grown under 1600 and 2400 μmol·mol−1 CO2. Plants subjected to long-term CO2 elevation of over 800 μmol·mol−1 displayed increased biomass production despite a concomitant reduction in the number of buds. These results showed that 1600 and 2400 μmol·mol−1 CO2 significantly enhanced the vegetative growth of Phalaenopsis. However, long-term exposure to high CO2 concentrations can adversely affect the flowering of Phalaenopsis, and result in reduced flower production and increased flower bud abortion.
著者
伊藤 直紀 須藤 靖 北山 哲
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.349-357, 2004-06-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
36

Galaxy clusters have been observed mainly in the optical and X-ray regions, and played an important role in probing the universe in addition to the cosmic microwave background (CMB) and the three-dimensional distribution of galaxies. In recent years, another method of observing galaxy clusters in mm and sub-mm bands, the Sunyaev-Zel'dovich (SZ) effect, has made significant progress. This is based on the inverse Compton scattering off the CMB photons due to the high-temperature intracluster gas, which was proposed in early 1970's. This method has a remarkable advantage that the observed flux is independent of the distance to the cluster. Recent significant progress in detectors promises that the SZ effect will indeed lead the cluster observation in this decade. This article presents a summary of the past and the present researches in the SZ effect and discusses the future prospects, with particular emphasis on theoretical and observational achievements in Japan.
著者
古本 英晴
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.70-79, 2005 (Released:2011-07-05)
参考文献数
48

【要約】明確な超皮質性失語を伴わずに反響言語・補完現象を呈した3症例を呈示した。2例は両側前頭葉内側面病変で、検査状況の下でのみ、主治医によってのみ誘発される状況依存性のimitation behavior(IB)とutilization behavior(UB)を伴った。もう1例は右側頭葉・左前頭葉内側面皮質下白質病変で、前2例に比して反響言語・補完現象は軽度であり、IB・UBも軽度で、その傾向を示すに留まった。反響言語・補完現象が失語症状と独立して発現することから、反響言語・補完現象は言語行為におけるIB・UBの表現型であり、単純な自動言語ではないと考えられた。また単なる環境ではなく状況に依存して反響言語・補完現象・IB・UBが変化する点から、意味機能の歪みが反響言語・補完現象を含む全ての反響行為の基礎にあると考えた。反響言語・補完現象が失語症と分離して生じる点は、言語機能が一般的な情報処理過程(制御過程)の集合である可能性を示唆し、また観察された状況依存性と意味機能の歪みは意味の階層構造の一端を示すと考える。

1 0 0 0 OA 日印貿易

出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.7, pp.513-513, 1907-07-15 (Released:2010-12-22)
著者
小沢 浩
出版者
日本原価計算研究学会
雑誌
原価計算研究 (ISSN:13496530)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.28-39, 2002-03

従来,JITは,工程の工夫や部品メーカーの努力に焦点を当てて紹介されてきた。しかし,生産キャパシティは中期的に固定されているため,短期的な需要変動には対応できない。そこで,本稿では販売店にまで視野を広げて考察し,販売店による需要安定化が工程間在庫の低減に貢献していることを指摘した。
著者
井口 治夫
出版者
上智大学
雑誌
アメリカ・カナダ研究 (ISSN:09148035)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.75-105, 2007

エルバート・トーマス(Elbert Thomas)は、1933年から1951年までユタ州選出の連邦上院議員(民主党)であった。当時の連邦議会には中国通のウォルター・ジャッド(Walter Judd)下院議員と元大学教員(東アジア史)のマイク・マンスフィールド(Mike Mansfield)下院議員(のちに上院議員、駐日大使)がいたが、当時の議会では東アジア情勢に詳しい議員はこの3人しかいなかった。彼らのうち、トーマスが最も注目された政治家であり、また、米国の東アジア政策をめぐる議論で足跡を残したのであった。トーマスは、日露戦争直後にモルモン教の宣教師として妻とともに来日し、6年ほどの滞在中に日本社会に溶け込んだのであった。トーマスとその白人の妻は日本で生まれた長女にチヨという日本人名をつけたのであった。トーマスは帰国後、上院議員になるまでの時期の大半をユタ大学で東アジア研究の教授として教鞭をとっていた。本論文は、トーマスの日米関係、太平洋戦争、対日原爆投下、対日占領に対する考えを、太平洋戦争に看護婦として従軍した娘チヨとの書簡、トーマス文書、トーマスの著書、演説そして論評を通じて考察したり、分析を行う。トーマスは、(1)日米関係が悪化していった1930年代前半軍拡競争ではなく日米文化交流の活性化を推進すべきであると提唱したり、(2)対日原爆投下直後に原爆使用の意味を歴史的洞察力に富んだ論文で考察している。こうしたトーマスの考えや行動は、人道主義的であり、また、国際連合と国際法に立脚した世界秩序を支持するリベラルな国際主義を反映していた。彼の日本に対する見方は、彼の滞日経験に基づいた日本社会と文化に対する親近感と、典型的なウィルソン主義的使命感(日本を含めた全世界に米国が提唱する価値と規範を受容させていく考え)が並存していた。トーマスは、その突然の死の直前、40年ぶりに訪日しており、そのさい、靖国神社を参拝していた。
著者
岡本 大輔
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.111-133, 2009-04

資料筆者は2008年,The University of New South Wales = Keio University Exchange Program により,オーストラリア・ニューサウスウェールズ州シドニーに滞在する機会を得,その間,日系企業を数社訪問し,インタビュー調査を行なった。本稿はその現地トップへのインタビューを中心としたケースである。対象企業は,凸版印刷(豪州),豪州新日本石油,キヤノンオーストラリア,みずほコーポレート銀行(シドニー支店),ライオンネイサン,NTT オーストラリア,豪州商船三井,JTB オセアニアである。これらのトップ・インタビューは,故清水龍瑩名誉教授が行なった「社長および各界リーダーのインタビュー・サーベイ」(1987年~2001年『三田商学研究』に連載),筆者の行なった「アメリカ・ニューイングランド地域における日系企業のケース」(1997年)等の続編である。During 2008, the author stayed in Sydney, NSW, Australia, as a visiting professor at The University of New South Wales (UNSW), thanks to the UNSW= Keio Univ. Exchange Program. He visited several Japanese-affiliated companies in Sydney area and conducted interview surveys. In this material, some managerial matters, which Japanese-affiliated companies have when they try to transfer Japanese management system to a company in Australia, will be discussed. Companies dealt in those case studies are as follows: Toppan Printing Co. (Australia) Pty. Ltd., Nippon Oil (Australia) Pty. Limited., Canon Australia Pty Ltd, Mizuho Corporate Bank, Ltd. (Sydney Branch), Lion Nathan Limited, NTT Australia Pty. Ltd., Mitsui O.S.K. Lines (Australia) Pty Ltd., JTB Oceania Pty Ltd.
著者
地井 昭夫 永原 朗子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.599-610, 1996

以上の結果から, 金沢市における高齢者のいる家族の住生活の安定性について, 次のことが指摘できる.<BR>(1) 調査対象期間における住生活の安定性の変化について見ると, 結婚, 未婚, 転勤, 夫婦の高齢化, 就職, 離婚, 転居, 家族関係の不和, 就職・結婚, 子供なしや富山市で見られなかった配偶者の転勤, 高齢者の夫死亡, 子供の死亡, 養子縁組, 転勤・結婚等を契機とする居住地選択によって, 富山市と同様, 安定型, 準安定型, 準不安定型, 不安定型等の多様な住生活タイプを形成しており, 子供の結婚, 就職による他出が大きな転機となっている.<BR>(2) 将来も同居を継続, もしくはその可能性のある安定型の居住関係をとる家族は73家族 (64.6%) であるが, 残りの40家族 (35.4%) は子どもと離れて暮らす不安定型等 (準安定型, 準不安定型, 不安定型) の居住関係を形成しており, 富山市と同様, 安定型以外の居住関係をとる家族が約4割いる.<BR>(3) 今回のサンプル数からは断定出来ないが, 娘と近居にある家族は, 富山市は19家族 (17.1%) であったが金沢市は8家族 (7.1%) しかなく, 両市の家族関係意識の差異を表すものと考えられる.また, 借家, 公営, 社宅等に住む家族は, 富山市で安定型が1家族 (1.7%), 安定型以外が8家族 (15.4%) であったが, 金沢市は安定型が2家族 (2.9%), 安定型以外が1家族 (6.7%) であり, 富山市の場合ほど, 住生活の安定性と住宅事情の問の相関関係は顕著ではないと思われる.<BR>(4) 高齢者の就業は, 無職から有職に変化した人は1人いたが, 有職から無職に変化した48人を含めて現在, 85人 (75.2%) が無職である.しかし, 85人のうち5人は子供のいない高齢者であるため80人が子供から何らかの援助 (含・精神的) を受けていると思われる.なお, 将来において, 同居継続もしくは同居に変化する可能性のある73人は, 子供からの援助がより緊密になると思われる.<BR>以上見てきたことから, 金沢市における高齢者の住生活は, 現在および将来にわたって, 大局的には富山市と似た傾向を示しており, 特に, 将来, 安定型以外の居住関係をとる家族が, 両市共に約4割いることは注目される.<BR>したがって, 今後, 子供の数の減少や扶養意識の変容から, これらの家族に対する支援は不可欠となってくる.<BR>家族, 地域, 行政によるきめ細かな高齢者福祉対策や住宅対策が求められる.<BR>次報では, 一連の調査結果から富山市と金沢市の住生活を総括的に比較すると共に, 住生活の安定性から見た今後の課題を整理するため, 本調査と行政および民間の取組み状況や今後の取組みについて検討し, 第2報で報告した住生活の安定性のタイプと高齢者の心身の自立度レベルのクロスによる家族・地域ケア, 医療・福祉施策および求められる住宅タイプや施策に関する整理と提案を行いたい.
著者
平井 正志 小崎 格 梶浦 一郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.138-146, 1986-06-01
被引用文献数
3

カラタチはカンキツ類の台木として広く利用されているが,今までほとんど系統選抜されることなく用いられてきた.またカラタチは多胚性であり,通常珠心胚によって無性生殖するとされており,無性胚によって得られる遺伝的に均一な実生は台木としての優れた性質のひとつである.しかし,古くからその実生の中に生育の不均一なものがある程度存在することが知られており,その一部,葉の大きいものは4倍体実生であるとされている.しかしその他のものについては原因が解明されていない.本研究ではアイソザイム分析により,カラタチ実生中の交雑実生を識別し,また既存のいくつかの系統について,由来を検討した. カラタチのグルタミン酸オキザロ酢酸アミノ転移酵素(GOT)のアイソザイムをアクリルアミドスラブゲル電気泳動で調べた.ほとんどのカラタチ個体はGot-1およびGot-2の遺伝子座についてそれぞれ3本のバンドを示し,それぞれMPとSMの遺伝子型を示した.しかしその実生の一部ではGot-1,またはGot-2のいずれか一方または両方がホモにたっていた.これらの実生はカラタチ間の交雑により生じた個体であると考えられた.当支場に栽植されている,遺伝子型MP,SMの樹より採取された種子から生じた8ケ月の実生で調査すると,これらアイソザイムで識別できる交雑された実生の平均樹高は19.3cmであったが,その他の実生のそれは23.8cmであった.GOTアイソザイムで識別できたい交雑実生を考慮すると全実生中の交雑実生の割合は19.9%にのぼると推定された.また,苗木商から購入した8ケ月の実生についてもほぼ同様にカラタチ同士の交雑した実生が見いだされた.しかし一方,農家に植栽されている成木のカラタチを調査ではこのようた交雑実生が発見できなかった.以上の結果より普通に見られるGOT遺伝子型がMP,SMのカラタチはその他の遺伝子組み合わせより強勢た組み合わせを持っていて,自然のあるいは人為的た選択により残ってきたと考えられる,交雑実生の一部は他のカラタチよりも早く,3年目の春に開花した.これまで知られている形態的に特異な系統のうち,大花系のWebber-Fawcett,PomeroyおよびU.S.D.A.ならびに小葉系Bだとの系統はこのようた交雑に由来するものと推定された.花粉の形態においても交雑実生のものは無性胚由来のものと比べて若干の差がみられた・
著者
長谷川 武光 鳥居 達生
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.40, pp.80-81, 1990-03-14

有限区間(一般性を失うことなく[-1,1]とおく)上の、滑らかな関数f(t)と特異関数K(t)との積の積分(積型積分)∫^1_<-1>K(t)f(t)dtの近似値を求めることは、通常の積分則では困難である。ここでK(t)として、例えば|t-c|^α(α>-1)、log|t-c|(-1&le;c&le;1)、主値(t-c)^<-1>などの特異関数や激しい振動関数e^<iwt>(ω≫1)である。特異点が積分区間の端点のとき、一般的に有効な積分則があるが、区間内に特異点をもつ積分には個別の扱いが要求される。本論文では、我々が発表してきた一連の積型積分の自動積分法(例えば[2])の続きとして、特にべき型特異関数K(t)=|t-c|^α(α>-1)に対する不定積分Q(x,y,c)=∫^y_x|t-c|^αf(t)dt, -1&le;x,y,c&le;1,(1)の与えられた{(x,y,c)}の組に対する近似値の組{Q_N(x,y,c)}を能率的に計算する。本方法はクレンショー・カーチス則[3]の一般化である。積分(1)のf(t)をチェビシェフ多項式T_k(t)の有限和f(t)~p_N(t)=Σ^^N__<k=0>"a^N_kT_k(t),(2)で近似して、積分の近似値Q_N(x,y,c)はQ(x,y,c)~Q_N(x,y,c)=∫^y_x|t-c|^αp_N(t)dt,(3)となる。もしf(t)が滑らかなら、p_N(2)はNの増大と共に速く収束する。3項漸化式を利用して、近似(3)の積分の値を計算できる(2節参照)。f(z)の解析性を仮定すると、複素積分表示を利用して近似(3)の打ち切り誤差が見積られる(4節参照)。この推定誤差を満足するまで、収束する近似値の列{Q_N}を反復的に作る。この際、従来はNをN=2^n(n=1,2,…)として増大させた。ここでは、我々が既に示したようにN=3×2^n,4×2^n,5×2^n,(n=1,2,…),(4)より緩やかにNを増大させ、誤差推定の機会を増すことにより、無駄な標本数を減らし、自動積分法の能率を高める。チェビシェフ展開係数α^N_k(2)は高速フーリエ変換(FFT)により能率的に計算される。数値例を用いて、滑らかな関数f(t)に対して本方法が有効であることを示す。