出版者
Знание
巻号頁・発行日
0000
著者
芝田 耕太郎 岩田 智
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.17-26, 2004-09-30

長期的地価動向によれば、バブル経済崩壊以降13年間、大都市(政令指定都市以上の都市)と地方都市(人口50万人以下、中でも人口20万人以下の都市)との地価は、力格差 ^<(1)>を反映し、住宅地、商業地ともその格差が拡大している。また、東京と地方都市を比較すると、東京では、中心部ほど商業地地価が回復しているのに対し、地方都市ではむしろ中心部の方が地価下落が激しい。地方都市は東京に比較して、景気回復が遅れているだけでなく、中心部の空洞化という共通の構造的問題を抱えている。バブル経済崩壊後の大幅な地価下落を経て、現在の不動産市場は、投機需要から実需^<(2)>中心の市場へ構造的に変化した。この結果、利便生や収益性の差により、地価形成され、商業地では特に土地利用による収益力を反映し地価形成される。したがって、今日、不動産投資の主体であるREIT^<(3)>やグローバル化による外国資本は、まさにキャッシュフローによる収益性、利回りで投資判断する。東京などの大都市圏の収益性の高い物件中心に投資が行われ今後、東京とその他の大都市、さらに地方都市との地価格差は、ますます拡大しよう。 規制緩和をより促進する方向と地方への権限移譲の方向性は大いに歓迎すべきであるが、一方・経済効果のある大都市、中でも東京中心の政府の都市施策は、今一度再検討すべきであるといえる。
著者
塩見 一雄
出版者
東京水産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

1.ヤツメウナギの体表粘液および卵巣中にタンパク毒を発見した。体表粘液および卵巣1gでそれぞれ体重20gのマウスを70匹、215-800匹殺し得ると見積られた。両毒は赤血球凝集活性、溶血活性を示さず、また卵巣毒には抗菌活性も認められなかった。2.体表粘液毒はきわめて不安定で精製には至らなかったが、50%グリセリンによる安定化効果が見いだされたので、今後の精製ならびに性状解明が期待される。3.卵巣毒はCM-celluloseクロマト、ヒドロキシアパタイトクロマトおよびFPLC(Mono S)により、natiive-PAGEで単一バンドを与える精製毒を得た。精製毒の毒性は強く、マウス静脈投与によるLD_<50>は33μg/kgと求められた。毒は低温貯蔵、pH変化に対して安定であるが加熱には不安定な塩基性タンパク質で、分子量は還元剤非存在下のSDS-PAGEにより40,000と測定された。還元剤存在下のSDS-PAGE分析により、毒はS-S結合を介した分子量30,000と10,000の2種類のサブユニットで構成されていることが判明した。アミノ酸組成では含硫アミノ酸の乏しいことが特徴であった。サブユニットの分離を達成できなかったためアミノ酸配列に関する知見は得られなかったが、今後に残された重要課題である。4.体表粘液毒は調べた54種魚類中9種に検出された。特に3種ウナギ目魚類(ウナギ、ヨーロッパウナギ、ハモ)の毒性が高かったが、クロマト挙動などから毒の性状はお互いに類似しており、いずれも分子量約400,000の酸性タンパク質と判断された。スフィンゴシンおよびガングリオシドにより毒性が阻害されることが注目された。5.卵巣毒は20種魚類について検索したが、すべて陰性であった。
著者
西澤 千恵子
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学大学院紀要 = Bulletin of Beppu University Graduate School (ISSN:13450530)
巻号頁・発行日
no.17, pp.59-66, 2015-03

大分県の代表的郷土料理であるだんご汁の喫食状況と、だんご汁成立の背景を調査した。だんご汁は対象者全員が知っており、父母が手作りしたものを食べていた。様々なだしにみそで味付けがされ、ひも状のだんごが入っていた。具材はあらゆる食品が使われ、作り方は父母から子に伝えられていた。小麦粉で作ったものを汁に入れて煮込んだ料理は全国的に見られるが、ひも状に手延べされたものとなると、稀である。一つの考え方として、大友宗麟の時代から存在したといわれる「ほうちょう」の存在が製造方法に影響を及ぼして、全国に例のないような現在のだんご汁の形ができた可能性が推測された。
著者
東山 哲也
出版者
日本植物形態学会
雑誌
PLANT MORPHOLOGY (ISSN:09189726)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.57-64, 2010 (Released:2011-04-08)
参考文献数
25
被引用文献数
1

花粉管ガイダンス分子(誘引物質)の存在が19 世紀後半に提唱され始めて以来,多くの植物学者がその同定を目指してきた.今回我々のグループは,胚嚢が胚珠組織の外に裸出するユニークな植物トレニアを用いて,助細胞特異的に高発現するシステインに富むペプチド(ポリぺプチド)が花粉管誘引物質であることを発見した(Okuda et al. 2009 ).そのペプチドは,少なくとも2 つ存在し,LURE1 およびLURE2 と名付けた.LURE は,ディフェンシン類似のペプチドであり,助細胞の基部側(花粉管が進入する側)に分泌される.適切に折りたたまれた組換えタンパク質は強い花粉管誘引活性をもつ.その誘引活性の特徴は,花柱を通過していない花粉管は誘引しない,異種の花粉管は誘引しないなど,助細胞で見られる誘引活性の特徴と一致した.また,独自に開発したレーザーインジェクター装置により,遺伝子発現を抑えるモルフォリノアンチセンスを胚嚢に導入すると,花粉管の誘引が阻害された.これらの結果は,LURE が花粉管誘引物質であることを示している.本総説では,LURE の発見の経緯と,その発見がもたらすインパクトについて概説する.
著者
間淵 洋子 小木曽 智信
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.125-130, 2015-12-12

国立国語研究所では現在,形態論情報を付与した『太陽コーパス』を構築している.文語から口語への文体移行期に刊行された総合雑誌『太陽』には,文語と口語という性質の大きく異なる複数の文体が混在する文章が多く含まれるため,文語文用解析辞書と旧仮名遣いの口語文用解析辞書のいずれかを指定して用いる従来の形態素解析手法では,精度を保つことが困難である.そこで,本コーパスの構築にあたっては,テキストが有する文体情報を利用し,複数の辞書を切り替えて,部分ごとに適応する辞書によって解析する手法を試みた.この手法の有用性を確認するため,評価用のデータを作成し,従来手法との解析精度を比較した結果,提案する複数辞書切り替え手法によって,解析精度が向上することを確認できた.
著者
高橋 恵利子 畑佐 由紀子 山元 啓史 前川 眞一 畑佐 一味
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.59-64, 2015-12-12

本研究は日本語学習者の発音の自動評価システムの開発を目的としている.そのための基礎調査と して,中国人日本語学習者の音声データと,それに対する母語話者の一対比較評価データから,課題 文及び評価方法の妥当性について検討した. 評価者の属性に関わらず母語話者の評価はほぼ一致して いたことから,一対比較による評価方法を用いれば,評価者の属性に関わらず,妥当な評価値が得ら れる可能性が指摘できる.今後,さらに評価対象とする音声データを増やして今回の結果を検証する 必要がある.また,一対比較による膨大な評価作業における評価者の負担を軽減するため,一般母語 話者を対象としたクラウドソーシングを採用することの意義と課題について言及する.
著者
山田 明義 久我 ゆかり 小倉 健夫 増野 和彦
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

1.マツタケ菌根合成系にエビオス(窒素源)を添加することで,苗の生育不良を回避できることを明らかにした.2.新たに開発した二層培養法により大量調製したマツタケとショウロの土壌接種源を野外の自然土壌条件下でアカマツ実生に接種した結果,ショウロでは外生菌根の形成に成功し本技術が実用的側面を有することを明らかにした.3.アミタケ,ショウロ,シモフリシメジ,ホンシメジの菌根苗を直接野外条件下に大量に植え付けた結果,菌株によっては十分な菌根の増殖が見られ,菌根苗定着の実用的な技術になりうる事を明らかにした.4.マツタケ類、イグチ類、チチタケ類を含む39種64菌株について菌根苗をポット培養し順化した結果,シモフリシメジ,ミネシメジ,クマシメジ,スミゾメシメジの4種で子実体発生に成功した.5.マツタケ,アミガサタケ,チャナメツムタケで複数の菌株を確立し培養特性を把握した.このうちマツタケでは,チョウセンゴヨウ,ヒメコマツ,ならびにドイツトウヒとも菌根形成する事を明らかにした.6.ハルシメジがウメの実生根系にも菌根を形成することを明らかにし,また,ウメ苗木根系に胞子散布することで菌根形成させうる事も明らかにした.これにより,ウメ苗木とハルシメジ胞子を用いた実用的な菌根苗作出が可能なことを明らかにした.7.マツタケのシロに接してアクリルチューブを埋設し,ミニリゾトロンを用いて継続観察した結果,チューブ近傍でのシロの回復は必ずしも速やかではなく,他の菌根菌が散発的に増殖しうることを明らかにした.8.ミニリゾトロンを用いてクリタケの土壌中での動態を長期継続観察した結果,菌糸束の発達,分枝,分解と再形成といった動的挙動があり,菌糸束が地中での菌糸体拡散において重要な役割を果たしうることを明らかにした.発達した菌糸束の顕微鏡観察により,主に外層と内層からなる二重構造が形成されることを明らかにした.
著者
川西 泰夫 田村 雅人 香川 征
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.8, pp.1284-1293, 1992-08-20
被引用文献数
3

インポテンスの症例,70例に対して深陰茎背静脈結紮術を施行した.手術によってDICC検査における勃起発現流量,勃起維持流量とも低値となりDICC検査上の改善を認めた、自覚的には70例のうち39例が性交可能となり,塩酸パパベリンによる勃起機能検査では61例で完全な勃起が得られるようになった.しかし,観察期間が長くなるとともにインポテンスが再発し有効率は低下した.インポテンスの再発はDICC検査の推移から他の静脈からのvenous leakageが増大することによるものと考えられた.術後の成績をKaplan-Meier法に準じて累積有効率で評価した.一旦性交可能となった症例も1年以内に約50%が性交不能に陥り,残りの約50%の症例はその後3年目までは性交可能な状態がつづき,50ヵ月では約30%の症例で有効性が保たれた. 深陰茎背静脈結紮術は静脈性インポテンスを完治させるものではなく再発率の高い治療方法である.しかし,重大な副作用を伴わないこと,外来通院で施行可能であること,その手術成績が広範囲な静脈を結紮する手術方法と比較し,遜色がないことから深陰茎背静脈結紮術は静脈性インポテンスに対する第一選択の手術法であると考える.
著者
古田 芳一
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.383-389, 2015 (Released:2015-12-03)
参考文献数
44
被引用文献数
1

ピロリ菌(Helicobacter pylori)はヒトの胃に感染し, 胃がん等の疾患の原因となる。そのゲノム配列は多様性が高く, 地域特異的に進化したことが知られている。日本人患者由来のピロリ菌のゲノムを解読し, 他地域由来のピロリ菌ゲノム配列と比較した結果, 遺伝子のレパートリーだけでなく, ゲノム構造や, エピゲノム修飾の一種であるDNAメチル化についても様々なメカニズムにより多様化していることが明らかとなった。ゲノム中の逆位は地域特異的に分布しており, ゲノム中の逆位とリンクして遺伝子重複が起きる現象を発見した。ゲノム中のDNAメチル化部位は, メチル化酵素遺伝子の有無だけでなく, メチル化認識配列を決定するドメイン配列が移動することによっても多様化することが示唆され, オーミクス解析により, 実際にドメイン配列の移動によってメチル化認識配列が多様化すること, さらにトランスクリプトームも多様化することを明らかにした。これらの多様なメカニズムにより, ピロリ菌の適応進化が起こることが示唆された。