著者
田中 圭介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.90-96, 2009-02-01

特定領域研究「新世代の計算限界-その解明と打破-」(領域代表者:岩間一雄)の主な対象である計算理論における重要な応用分野として暗号理論がある.この暗号理論において,公開鍵暗号や署名などに対して,個人のプライバシーを対象とした匿名性と呼ばれる性質が考察されている.公開鍵暗号が匿名性を満たすとは,暗号文を見ても,それがどの受信者へのものであるか(だれの公開鍵で暗号化されたか)見分けがつかないときをいう.また,署名方式が匿名性を満たすとは,メッセージと署名のペアを見ても,それがどの署名者が作成したペアであるか見分けがつかないときをいう.ここでは,RSAベースの方式に対して,このような匿名性を得るために用いられる主要なアルゴリズムテクニックについて紹介する.
著者
渡邊 祐紀 赤林 朗 池田 智子 富田 真紀子 渡辺 直紀 甲斐 一郎
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.111-119, 2000-09-13
被引用文献数
3

高齢化社会を迎えつつある現在、医療現場における高齢者の治療法決定への参加のあり方は、早急に検討するべき課題となっている。本研究では、心肺蘇生法(CPR)を取り上げ、寿命があと2、3ヵ月の末期癌の入院患者において、CPR施行の決定者、CPR施行の希望、患者本人の意向と家族や周囲の者の意見が異なった際の対応等について、中・高齢者(50歳以上)を対象に面接による意識調査を行い、CPR施行について意思決定の過程を考察した。調査は1999年5月〜6月に都内A寺において行われ、110名より有効回答が得られた。解析の結果、患者自身による治療法決定の考え方(自己決定)が中・高齢者の間に浸透していることが明らかになり、CPR施行を希望しないという回答者が多数を占めた。また、決定者間で意見に不一致が見られた場合には、必ずしも患者本人の意向を優先しなくてもよいとする傾向や、おかれた状況が患者本人か家族であるかによって、回答内容が変化する傾向も明らかになった。
著者
有吉 範高
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.61-76, 2013-02-10 (Released:2014-02-10)
参考文献数
39

Utilization of genetic information to achieve more appropriate use of drugs has not yet progressed, although a number of studies on the association between genetic polymorphisms and responses to drugs have been performed. Comparison among groups possessing different genotypes may give a significant difference in median responses to drugs, but little answer to the wide variation of drug response in patients sharing the same genotype. In fact, genetic information alone cannot accurately predict response to drugs in each individual.However, application of genetic information is often extremely useful to correct drug therapy to a more appropriate form in certain cases. Since pharmacists have to take responsibility for drug therapy in each patient, they should use all tools available including genotyping that may achieve better treatment. Nevertheless, since genetic information alone is insufficient to design better drug therapy in most cases at present, it is important to clarify factors, which should be considered together with genetic information. Clinical researches are indispensable to identify these factors.A simple genotyping method is a powerful tool to solve problems of drug therapy encountered at hospitals and/or to provide evidence through clinical studies on usefulness to apply genetic information to improve current drug therapy. The increase in the number of pharmacists, who are interested in not only drugs but also the genetic character of patients, is expected to contribute to better drug therapy in the future.
著者
荒井 弘和
出版者
Japan Society of Sports Industry
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_165-2_175, 2013

The present studies focused on collective efficacy (CE) among Japanese athletes. The purpose of study I was to compare psychological performance CE between individual and team sports, or whether or not athletes had a rival on their team. The aims of study II were to collect, organize, and consolidate enhancement strategies for psychological performance CE. In study I, data were analyzed from 251 athletes who responded to an Internet-based cross-sectional survey. Based on t-testing, no significant difference in psychological performance CE was observed between individual and team sports; however, based on ANCOVA, significant differences were observed regarding whether or not there was a rival on the team. In study II, fifty participants were recruited to participate and a bottom-up approach was adopted by categorizing the types of CE enhancement strategies collected from the participants. The strategies to enhance psychological performance CE were collected through open-ended questionnaires and semi-structured interviewing. The strategies reported by the participants were categorized via arrangement and adjustment by four workers using the KJ method. The data were classified into 10 to 18 strategies for each psychological performance CE item. This study may provide valuable information for enhancing psychological performance CE among athletes.
著者
礒村 宜和 木村 梨絵 高橋 宗良
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.14-21, 2011-03-05 (Released:2011-05-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

大脳皮質や海馬のような脳領域における局所回路内の信号処理の仕組みを調べるためには,複数の電極をもちいて多数の神経細胞の発火活動を同時に検出できるマルチニューロン記録法が有効である.ここでは同記録法の簡単な具体例を中心にして,動物の手術から,多点電極,プリアンプ,メインアンプ,記録装置,オフラインでの自動スパイク·ソーティングとスパイク·クラスターの修正と選択までの各段階を,順を追って詳細に解説する.
著者
大井 篤
出版者
時事通信社
雑誌
世界週報 (ISSN:09110003)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.16-19, 1958-03-22
出版者
朝日新聞出版
巻号頁・発行日
vol.23(4)[(133)], 1937-04

1 0 0 0 OA 唐詩選全釈

著者
平野秀吉 著
出版者
東洋図書刊行会
巻号頁・発行日
1929
著者
桂華 麻希 赤松 喜久
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第IV部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.1-10, 2011-02-28

サッカー専用スタジアムは,多種目複合施設よりもピッチとスタンドとの距離が近いため,観戦者と選手が一体となってサッカーを楽しむことができる。本研究は,サッカー専用スタジアムを使用することが,観戦者の観戦行動にどのような影響を与えるのかを,カテゴリカル回帰分析を用いて検証を行った。量的,質的な分析の結果からは,サッカー専用スタジアムの影響度を明らかにすることはできなかった。しかし,先行研究では,観戦動機の構成要素のうち,観戦者が感じる一体感や臨場感が重要であると報告されていることから,試合を間近で観戦できるサッカー専用スタジアムは,観戦行動に効果があると考えられる。スタジアム全体の臨場感がどのように高まるのかを検証した先行研究は見当たらないが,プロダクトとしてのスポーツ価値に焦点を当てた研究を進めていくためには,一体感や臨場感の理論定義と操作定義を明確にし,信頼性の高い検証結果を示す必要がある。A stadium, which is exclusively used for a soccer game, is much closer between its field and seats than a stadium which is used for many kinds of sports events; accordingly spectators and players could enjoy soccer game as unity. This study aims to analyze by Categorical Regression Analysis what type of effect from use of exclusive soccer stadiums causes to spectators' behavior. As a result of its quantitative and qualitative analysis, we couldn't show the types of effect clear. Since a sense of unity and presence which a part of components of spectators' motivation have been reported as significant factors, it is suggestible the exclusive soccer stadiums that could see the game closer are effective to spectators' behavior. There hasn't been reported the study of presence increases in the stadiums; however, it is necessary to clear the theoretical and the measurable definition of unity and presence, and to show high reliability verification results in order to precede the study focused on the sports value as a product.
著者
藤坂 尚登 倉田 隆之 坂本 政祐 森末 道忠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CAS, 回路とシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.693, pp.49-54, 2000-03-16

シグマ・デルタ変調をアナログ・インターフェースとし, 内部信号形態が1ビットのストリームである信号処理回路を提案する.ナイキスト・サンプリングレートのマルチビット信号処理システムと比較すると, 信号配線領域が小さい, シングルビット / マルチビット変換が不要, 演算・処理回路の構成が簡単という特徴がある.この演算・処理回路はビット・ストリーム信号を直接的に加算または乗算する新規に考案した回路を基本とする.これらの加算および乗算回路とビット・ストリーム信号を積分するためのアップ・ダウンカウンタを用いれば広範な信号処理システムを実現できる.その例としてQPSK信号の復調回路を構成した.
著者
小川 健太 小川 恭孝 大鐘 武雄 西村 寿彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.555, pp.65-68, 2007-02-28
被引用文献数
10

高い周波数帯を使用する無線通信では,バッテリー等により上り回線の送信電力が制限される.そこで,異なる複数の端末が互いに協力し,仮想的な1組のアンテナアレーを構成することで通信容量の向上を図る仮想アンテナアレーによる協調無線が近年注目を浴びている.しかし,仮想アンテナアレーにおいて送信ビーム形成を行う場令,各端末では正確なキャリア周波数の同期をとることが困難であるため,位相オフセット,及び,周波数オフセットの影響を無視することができない可能性がある.本稿では計算機シミュレーションにより各端末で生じるオフセット,及び,チャネル推定誤差が通信特性に及ぼす影響について評価した.結果から,オフセットを含む等価的なチャネルを用いて受信処理を行うことにより伝送特性の劣化を抑えることができること,また,シングルビーム伝送に比べて,マルチビーム伝送はオフセットに対する耐性が低いことが明らかとなった.
著者
君羅 満 赤羽 正之 岸田 典子 沖増 哲
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.295-312, 1983

我々と生活環境を著しく異にする海外移住者の食生活を調査することによって, 食生活の変容プロセスを明らかにしようとする目的で, ブラジルに居住する日系人についての調査を計画し, 第1回目を1978年に南部の Rio Grande de Soul 州で実施した。<br>今回は, 1981年 São Paulo 州ジャカレイ地域の日系移住地である, サクラタカモリ, イタペチ, パラティ・ド・メイオに居住する167世帯を対象として実施した。<br>生活環境, 身体状況および食生活状況調査のうち, 使用食品数および, 入手方法などに視点をあて, 主として世代別・地区別の立場から分析, 検討し, その実態について考察した結果を要約すると次のとおりである。<br>1) 各世帯における1日の使用食品数は, 30~39が最も高い比率を示した。<br>2) 世代間による使用食品数の有意差はみられなかった。<br>3) 各地区間の朝・昼・夕食相互の使用食品数には有意差は認められなかった。<br>4) 昼・夕食の食品数は朝食に比べて, 著しく多く, 食事のウェートが昼・夕食におかれていることを示した。<br>5) 朝食で使用率の高い食品は, 砂糖・コーヒー・パンで, これはブラジルでの朝食の特徴を示す。<br>6) 昼・夕食で使用率の高い食品, また, 低い食品には, ほぼ類似の食品が出現している。このことは, 各世帯間に共通の食パターンの存在しているものと思われた。<br>7) 地区別・朝昼夕食別の食品使用率からみた出現順位間には, いずれも高い正相関関係が認められた。<br>8)"毎日消費する"食品で, I世では主として日本的食品に, II世ではブラジル的食品において有意に高かった。<br>9) 食品の入手状況については, 農業地域でありながら, 一般に購入食品が多く, しかも, 一部の食品を除いて購入率の高い傾向がみられた。これは, 各移住地がジャカレイ市に隣接し, 大市場をもつサンパウロ市の衛星都市圏内に位置していること, 換金作物を中心とした経営, そして, 農業経営がある程度安定し, 経済的にゆとりのある世帯が多いためと思われた。<br>10) 日本の農業地域に比べて, パン・砂糖・油脂・その他の野菜・肉類において摂取量が高く, 味噌・豆類・魚介類において低かった。
著者
杉山 岳巳
出版者
人間・環境学会
雑誌
MERA Journal=人間・環境学会誌 (ISSN:1341500X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-10, 2001-11-10

環境の持続可能性に関する研究はこれまで環境の生物・物理学的特性に注目したものが多く、その社会的側面は無視される傾向にあった。しかしながら、私たちの住む世界は人間によって支配されており、私たちの環境に対する認識や行動が環境の保護や利用に大きな影響を与えることは明白である。つまり、持続可能性の概念は生態学的なシステムだけではなく社会的システムにも大きく関わっているといえる。そこで本研究では環境行動学と環境の持続可能性に関する最近の文献から、持続可能性をめざしたデザインの認識的側面の重要性について議論し、この分野における研究の必要性を説明する。次にこの研究テーマを議論するための新たな概念的モデルを示し、研究を可能にするためのツールとして環境選好(プレファランス)の概念について検討する。プレファランスはある環境に対する個人の好みの度合いを問うものであるが、これまでに景観などの分野において人と環境との相互作用に関して有用な情報を提供してきた。しかし、持続可能性をめざしたデザインのプレファランスに関連する研究はこれまでほとんど行われていない。本研究はプレファランスの概念をもとに持続可能性をめざしたデザインの認識的側面において今後の検討に値するいくつかの研究課題を指摘するものである。
著者
梅田 勇雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.148-151, 1974

しょう油もろみの熟成を検査する場合, まず麹が適当であったかどうかをしらべるとは一見奇異に感ずるが, それほど麹が大切であることを力説している。よい麹なくしてよいしょう油はあり得ない。<BR>熟成度という問題を歴史的に振り返って, その歴史から, 現在のもろみの熟成度は何によってきめるかを説明されている。しょう油関係技術者の見逃すことのできない好読物。