著者
淺沼 由美子 北原 里恵 林田 優季 青山 裕美
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.10, pp.2165-2172, 2019-09-20 (Released:2019-09-20)
参考文献数
15

本邦では,医療費削減政策と,ヒトでの有効性評価が必須でないため,ジェネリック外用剤の市場占有率が増大している.我々はヘパリン類似物質含有保湿クリーム(水中油型)が基礎発汗を誘導し角層水分量を増加させることを見いだした.そこでヘパリン類似物質含有保湿クリーム後発品の保湿効果をimpression mold法で基礎発汗能を含めて先発品と比較した.後発品は角層水分量が増加せず,基礎発汗が同等に増加しなかった.保湿外用剤後発品の薬効評価は,角層水分量,基礎発汗誘導能などヒトでの複数の生物学的同等性試験で評価する必要があると考える.
著者
Keiko OTAKE Satoshi SHIMAI
出版者
Japanese Association for Behavioral and Cognitive Therapies( JABCT )
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.25-36, 2003-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、中学生を対象に喫煙獲得ステージに基づいた予防的介入研究、すなわち、中学生が喫煙行動を獲得する前に防止するための働きかけを行い、6か月後の追跡調査からその介入効果について検討することであった。対象者は、合計288名(男子131名、女子157名)の中学生であり、質問内容は、現在の喫煙ステージ、喫煙に関する知識とスキルであった。本喫煙防止教育プログラムでは、4つの喫煙獲得ステージ(喫煙無関心期、喫煙関心期、喫煙準備期、喫煙実行期)の特徴を生かして喫煙獲得ステージごとに行動目標を設定し、独自に開発したリーフレットと携帯用カードを用いて教育を行った。その際、対象者の知識を高めるだけではなく、ロールプレイを通して行動的、認知的スキルを高めることをめざした。介入から6か月後の追跡調査の結果から、ベースライン調査時期に比べて喫煙無関心期の人数が有意に増加し、一方、喫煙関心期と喫煙実行期の人数が減少していることが明らかにされた。また、喫煙に関する知識やスキル得点が介入後に増加していることが示された。これらの結果から、本研究で行った喫煙獲得行動におけるステージに基づいた介入研究は、中学生の喫煙行動の進行を防止する教育として非常に効果的であり、特に、喫煙関心期と喫煙実行期の行動変容が顕著にみとめられたと考えられた。
著者
髙栁 ふくえ 福内 友子 山岡 法子 安田 誠 馬渡 健一 奥 直人 金子 希代子
出版者
一般社団法人 日本痛風・尿酸核酸学会
雑誌
痛風と尿酸・核酸 (ISSN:24350095)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.177-185, 2020-12-20 (Released:2020-12-20)

本邦における「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」では,患者が食事から摂取するプリン体摂取目標値が400mg/日以下とされている.著者らは,これまで,発酵食品に着目し,酒粕に魚を浸漬すると,魚のプリン体が減少することを報告した.本研究では異なる発酵食品で,和食の定番である西京味噌漬けを検討した.めかじきを同量の西京味噌に1日間と3日間浸漬した.食品中のプリン体は,当研究室で開発された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた2つの方法で測定した.方法1では,試料を酸加水分解し,プリン塩基にまで分解したものを測定し,総プリン体量を求めた.方法2では,酸加水分解は行わず,遊離プリン体を分子種別に一斉分析する方法を用いて測定した.方法1で測定した総プリン体の結果は,めかじき(1日)は149.7mg/100gで,プリン塩基別ではヒポキサンチン(HX)類の割合が最も多かった.めかじき(漬け3日)では,めかじき(3日)と比較してHXが有意に減少した.一方,西京味噌(1日)では,総プリン体量は40.9mg/100gで,西京味噌(漬け1日)のHXが有意に増加していた.方法2で測定した,めかじき(1日)および(3日)には,遊離プリン体として存在するイノシン酸(IMP),イノシン(Ino),HXが多く見られた.めかじき(漬け3日)のInoが減少し,西京味噌(漬け3日)のInoが増加した.さらに,西京味噌(1日)および(3日)と,西京味噌(漬け1日)および(漬け3日)を固液分離した結果,西京味噌(漬け1日)および西京味噌(漬け3日)の液体側にInoが存在していた.これらの結果より,西京漬けは,めかじきに多く含まれるHX類であるInoを減少させたこと,その多くが西京味噌の液体側に移行したことが示された.西京漬けは魚の調理法として,高尿酸血症・痛風患者の食事療法に提案したい献立の一つと考えた.
著者
横山 友里 吉﨑 貴大 多田 由紀 岡田 恵美子 竹林 純 瀧本 秀美 石見 佳子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.162-173, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
48
被引用文献数
1

【目的】食品の栄養価を総合的に判断できるよう,特定の栄養素等の含有量で食品を区分またはランク付けする「栄養プロファイルモデル(以下,NPモデル)」が諸外国の栄養政策で活用されている。本研究では,諸外国のNPモデルを調査し,日本版NPモデル策定のための基礎資料の作成および課題整理を行うことを目的とした。【方法】第41回コーデックス委員会栄養・特殊用途食品部会の議題「NPモデル策定のための一般ガイドライン」で共有された既存のNPモデル(97件)の一覧表を用い,対象モデルを抽出した。【結果】採択条件に該当しないモデル(計75件)を除き,調査対象のモデル22件の開発国の内訳は,中南米(1件),北米(5件),欧州(5件),中東(1件),大洋州(2件),アジア(6件),国際機関(WHOの地域事務所)(2件)であった。食品の包装前面の表示(11件),ヘルスクレーム付与に対する制限(5件)を目的としたモデルは一般集団が対象であり,広告規制を目的としたモデル(6件)は子供が対象であった。モデルタイプは閾値モデルが16件,スコアリングモデルが5件,混合モデルが1件で,多くのモデルで摂取を制限すべき栄養素等として,熱量,脂質,飽和脂肪酸,トランス脂肪酸,糖類,ナトリウムを設定していた。【結論】日本版NPモデルの策定にむけた検討課題として,対象栄養素,食品のカテゴリー分類,モデルタイプの設定等が示された。
著者
安藤 大成 下田 和孝 竹内 勝巳 飯嶋 亜内 卜部 浩一 神力 義仁 中嶋 正道
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.487-493, 2019-09-15 (Released:2019-09-28)
参考文献数
36
被引用文献数
1

サクラマスの脊椎骨数を人工種苗と野生魚で比較した。また,人工種苗が放流されてきた河川のサクラマス野生魚の脊椎骨数を調べた。人工種苗の脊椎骨数は野生魚よりも少ない値を示し,この差異は,発生時の水温の違いにより生じていると考えられた。長期間,種苗放流が行われてきた河川のサクラマス野生魚の脊椎骨数は,近隣河川の野生魚に比べて少ない傾向を示した。これより,種苗放流は野生魚の脊椎骨数に遺伝的な影響を及ぼす可能性が示唆された。
著者
熊田 那央 藤岡 正博 本山 裕樹
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.23-32, 2014 (Released:2014-05-09)
参考文献数
44
被引用文献数
5 3

カワウPhalacrocorax carboのねぐらやコロニーの分布にアユPlecoglossus altivelisの放流が与える影響を明らかにするために,2006年から2008年の関東地域のカワウのねぐら・コロニーサイズと,その周囲20 kmの採食範囲でのアユ放流量の関係を調べた. 3月のカワウの総個体数は約14,000個体であった.アユ放流量は約120,000 kgで,これは,カワウ1個体あたり1日500 g 採食するとした場合の約17日分の資源量であった.このことからアユがカワウにとってある程度重要な食物資源になりうると考えられた.3月のねぐら・コロニーサイズを前年のアユ放流量で説明する一般化線形混合モデルを作成したところ,両者には関係がみられなかった.一方,3月から7月のねぐら・コロニーサイズの変化率と,ねぐらやコロニー毎の1個体あたりのアユ放流量との関係を説明するモデルを作成したところ,アユ放流量が多いねぐらやコロニーほどサイズが有意に増加した.以上の結果から,カワウはアユ放流量が多かった地域をねぐらやコロニー場所として選択しているわけではないが,繁殖期間中に周囲で多量のアユが放流されたねぐらやコロニーでは繁殖成績が向上したり移入個体が増加したりすることが示唆された.
著者
木村 謙仁 柴田 智文 松尾 雄司 村上 朋子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.15-26, 2022 (Released:2022-02-15)
参考文献数
20

In this study, we perform model analyses assuming the Japanese power supply portfolio in 2050 to evaluate the economic efficiency of nuclear power generation under mass introduction of variable renewable energy (VRE) ― such as solar PV and wind ― and of hydrogen power generation in 2050. As a result, this study shows that even if the unit cost of VRE falls significantly by 2050, not only existing nuclear power plants, but also new construction, will have economic efficiency. Its benefit would become much larger when 100% carbon-free generation is mandated, but in that case, the role of nuclear energy as the base load power generation would be changed. On the other hand, in the case where hydrogen power generation will be deployed, the nuclear energy would be smaller than those in other 100% carbon-free cases, but its base load operation would be maintained.
著者
坂上 桂子
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.56-69, 1982-09-30 (Released:2017-05-22)

De nombreux historiens de l'Art essayent de voir dans le "Pointillisme" de Seurat des elements exterieurs a sa creation picturale qui expliquerait l'origine de ce procede novateur. Mais la raison veritable lui permettant d'acceder a la formation de cette technique parait plutot resider dans l'evolution artistique du peintre lui-meme. Si l'on suit l'evolution de ses oeuvres du debut de sa carriere comme peintre jusqu'a 1887, annee ou est concu le "Pointillisme", nous pouvons constater deux choses qui depuis toujours dirigent la peinture de Seurat : 1° le rapport etroit etabli au cours des annees 1880-1884 entre la touche et le motif, comme celui entre les touches entrecroisees et l'herbe, entre la tache imprecise et la feuille, entre la touche a la fois ample et lisse et la figure humaine, enfin entre les touches paralleles et l'eau, rapport qui persiste meme dans la peinture pointilliste ou les touches sont mises en apparence de maniere homogene et "scientifique", 2° la representation de la lumiere, flottant en l'air ainsi que les particules delicatement eparpilles sous le soleil, qui reussit a donner d'excellents effets lumineux surtout dans sa peinture de l'epoque pointilliste. Ainsi, le "Pointillisme" de Seurat, fruit de ses experiences et ses recherches, peut etre considere plutot comme un aboutissment de sa propre conception artistique qu'une simple methode inventee sous l'influence des elements exterieurs.
著者
平塚 延幸
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.245, 2013 (Released:2013-09-04)

【調査目的と問題意識】谷川岳一の倉沢にモレーンが存在するとして、氷期に氷河が存在したと推定されている(小疇・2002)。侵食営力・運搬作用と堆積物は整合性があり、侵食地形の実態から下流部の堆積物の性格も明らかになる。本地域での雪渓消長後、基盤上の侵食作用の状態を観察調査した。【調査および調査地域の概要】谷川岳一の倉沢本谷の堆雪域は3地域に分類できる。①本谷滝沢下部②本谷二の沢合流部③テールリッジ末端周辺。調査地域は③を対象とした。一の倉沢に氷体が存在したとするならば③の地域はその影響があると考えた。【調査結果】(a)烏帽子スラブ及び衝立スラブはアバランチシュートであり全層雪崩により形成される(下川・1980)。各スラブはシーティング(金子・1972)が明瞭で条痕は見られない。衝立スラブと衝立沢間のリッジ末端は全層雪崩・積雪グライドの影響による鈍頂山稜がある。(b)衝立スラブと衝立沢合流部は地形変換点を形成し雪崩堆積場となる。河床にはいくつかのポットホールが存在する。河床には研磨痕はみられない。(c)テールリッジ末端はシーティングが見られ、雪渓(残雪)グライドが卓越するスカート状の露岩斜面が広がり本谷に接する。本谷には滝壺上部が水流侵食で深掘りされた変形ポットホールがみられ、雪渓(残雪)滑りと圧力による水流変換と高圧水流が考えられる。(d)本谷縦断形は急斜面が垂壁で河床へつながる場合と、急斜面が水流研磨面に移行する場合とに大別出来る。河床に節理に制約されたポットホールが存在し、水流研磨平滑面を形成する。水流研磨面に擦痕はない。(e)平滑斜面を作った水流は、右岸からの小リッジをけずり込み滝窪を作る。リッジ下流側は水流と雪渓グライド両営力により磨かれた羊群岩状地形を形成する。(f)V字状に狭まった場所に滝中腹が水流で岩盤が丸く削り込まれて、水流が空中に舞う滝がある。同様な微地形がいくつか存在し水流の落ち込み位置が変化することがわかる【調査結果のまとめ】(1)アバランチシュートは、シーティングの影響を受け、全層雪崩および水流による研磨が卓越し、三日月型などの氷食痕(岩田・2011)は見られない。(2)アバランチシュートに挟まれたリッジは平坦化作用を受けているが、現在でも全層雪崩や積雪グライドの影響化にある。(3)雪渓消長時期に対応した雪渓グライド作用が斜面に見られる。(4)本谷の縦断形は、雪渓グライド影響下の斜面→岩屑剥離が卓越した岩角の目立つ垂壁→水流研磨による河床という変化と、斜面から河床への移行という二つの形態をとる。水流研磨斜面や雪渓グライド卓越斜面には、氷河研磨痕や氷河擦痕などは確認できなかった。(5)水流は節理に影響されて曲流し、またポットホールを作る。水流研磨によるスプーンカット状微地形が見られる。これらは雪渓・積雪の圧力による水路変換・高水圧を受けた結果と考えられる。 谷川岳主稜線には化石周氷河性平滑斜面・化石雪窪が広がり、16000年以前には、それらは標高1300-1400mに位置していた(高田・1986)。周氷河性地形の標高低下は標高1000m付近の谷地形に影響を及ぼしたに違いない。一方、日本の多雪化は12000年以降に始まり7000年には完了した(小泉・1982)と言われる。今回の調査では、一の倉本谷には顕著な氷河侵食の作用は見られない。これらをどのように解釈するか、上流部の調査を含めて課題が残されている。

2 0 0 0 OA 2.ICD, CRT-D

著者
久嵜 香 夛田 浩
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.253-258, 2017-02-10 (Released:2018-02-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

植込み型除細動器(implantable cardioverter-defibrillator:ICD)は,致死性不整脈を治療し,心臓突然死を予防するデバイスである.また,慢性心不全では,心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy:CRT)が重要な治療の選択肢であるが,心不全自体が突然死のリスクとなるため,両者の機能を併せもつ両室ペーシング機能付き心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy defibrillator:CRT-D)の適応を判断することが重要である.
著者
野田 浩資
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.53-69,157, 1990-05-31 (Released:2017-02-15)

Everett C. Hughes is one of the most important sociologists in the Chicago school and in symbolic interactionism. Though there have been criticisms that symbolic interactionism cannot deal with macro social sturucture, the structural side of the Chicago school of sociologists, represented by W. I. Thomas, R. E. Park, and Hughes, were interested in social structure and organization. Hughs developed his occupational sociology both at the micro and macro levels. At the micro level people suffer from “dirty wor” and develop “social psycholgical defensive devices” individually and collectively. At the macro level each occupation enters the “moral division of labor”, and “licence and mandate” are distributed to each of them. According to Hughes, professions suffer from “guilty knowledge” and develop “esoteric knowledge”. From his point of view they are not separated from more humble occupations, but they are only relatively high positions. Hughes combined ecological perspective and symbolic interactionism in the “conception”, which composes the “institution”. While the “institution” adapts to the ecological environment passively, it reacts symbolically and strategically through generating “conception”. “Conception” performs similar functions at the macro level as performed by “self” at the micro level. His theory also has covergences with system theory. Both theories emphasize emergencies and imformational constraints. To develop macro symbolic interactionism we have to pay more attention to an ecological perspective and system theory and to the tradition of the structural side of the Chicago School of interactionism.
著者
金子 一夫
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.179-191, 2017 (Released:2019-09-03)
参考文献数
36

著者は今日の美術教育学研究における問題点を指摘し,その解決のため贈与交換論による美術教育学の再定義を提案した。論述を以下の三段階で行った。1.美術教育学の発生から現在に至る過程 2.美術教育学が本来備えるべき要件 3.美術教育学の問題とその解決方法の検討 1.で美術教育学の困難の外部的・内部的要因を指摘し,2.で美術教育学の要件は厳密な概念による美術教育現象の記述とした。3.で美術教育学の問題点として,主要な言説に1理論上の表現と学習と教育の区別がないこと,2理論上に表現者だけ存在し,教育内容,教師が存在しない不備を指摘した。その解決のため,教育,美術,美術教育を贈与交換の過程と再定義して,表現と学習と教育の区別,教育内容と教師の理論的再生を試みた。そして美術教育は教師,被教育者,教育内容・教材各々を下位要素システムとして交感するシステムと捉えられるとした。
著者
山口 覚
出版者
学校法人 関西学院大学先端社会研究所
雑誌
関西学院大学先端社会研究所紀要 (ISSN:18837042)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.115-131, 2012 (Released:2021-05-15)

後期資本主義の時代における脱工業化の進展の中で、関西の産業界は厳しい状況に置かれている。また、資本や人のグローバルな移動によって「世界都市」としての東京の位置づけが強まっている。関西の衰退と東京一極集中という空間の再編成のもとで、もともと移動性が低かったはずの関西の私鉄系不動産資本による首都圏への進出という現象が確認される。1970年頃における近鉄不動産の先行例もあるが、2000年以降には京阪電鉄不動産、そして本稿で扱う阪急不動産が新たに首都圏への進出を開始した。鉄道沿線開発というビジネスモデルないし「阪急文化」を重視してきたはずの阪急不動産がなぜ、いかに首都圏進出を進めてきたかを明らかにする。