著者
橋本 エリ子
出版者
福岡教育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

高齢者に声楽療法を継続的に実践することにより、心身共に健康である状態を維持でき、さらに心のケアや人との交流が円滑となり、その人らしい老いを実現することが可能となることが分かった。また、緩和ケア病棟において日本の唱歌・童謡など昔子供の頃に歌い、また聴いたことのある懐かしいクラシック声楽作品を用いたことにより、これまで食事が喉を通らなかった患者さんが進んで食事を摂るようになるなど、回復が見られ、声楽療法の有効性が明らかとなった。本研究により、音楽という言葉を越える芸術媒体を通して行われる声楽療法の重要性と健康な歌唱を継続することにより、生きる喜びなどの生き甲斐再生や支援となる得ることが実証できた。
著者
中田 喜文 藤本 哲史 三好 博昭 川口 章 安川 文朗 田中 幸子 宮崎 悟
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本の医療人材の現状を、労働市場における状況、医療施設における状況に分けて分析した。医療人材の労働市場においては、労働市場としての需要と供給のミスマッチの回復機能は、賃金水準に対し需給状況が限定的な影響を与えているとの結果が得られた。同時に日本の医療制度の持つ、様々な医療施設のマネジメントに対する影響を通した間接的な影響の存在も確認できた。このことは日本の医療政策の近年の変化が、個別医療施設のマネジメントの有り様に影響を与えることを通して、一義的にはその組織内の労働条件に影響を与え、さらには間接的に医療人材の労働市場にも影響を与えることが分かった。
著者
パント モハン 布野 修司
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.66, no.543, pp.177-185, 2001
被引用文献数
1 2

本稿は、ネパール、カトゥマンズ盆地の都市ティミを対象として、その街区組織のあり方を解明することを目的としている。カトゥマンズ盆地には三つの古都、カトゥマンズ、パタン、バクタプルをはじめとして極めて秩序だった都市、集落の形態を見ることが出来る。特にネワールの人々は古くから都市的集住のかたちを発達させてきたことで知られる。カトゥマンズ、パタン、バクタプルについては様々な研究者が着目してきた。著者も、パタンについてこれまでその原初的街区形態に関して考察を重ねてきている。本稿でティミを取り上げたのは、三つの古都の間にあって、比較的単純な構成をしていることが大きな理由である。すなわち、ティミにおいて、より明快に街区組織の原型が明らかに出来るのではないか、というねらいがある。本稿では、現地調査をもとにして、デシャ、トル、ナニ、チェンというティミの街区組織の段階構成について、その特質について考察した。まず、ティミ全体の空間構造を記述した上で、チャパリ・チェンを例として取り上げ、その構成について考察した。大きな指標としたのはクシェトラパラと呼ばれるナニの入口に置かれる丸石である。そして、テイミ全体に関する調査をもとにナニの形態が三つに類型化されることを明らかにした。さらに続いてティミ全体について各類型の分布を示した。本稿における街区組織の三類型の解明によって、カトマンズ盆地の都市空間構成を原理的に解明する大きな手がかりが得られたと考える。
著者
立浪 澄子
出版者
長野県短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

1876年、日本における最初の幼稚園主任保姆(現在の幼稚園主任教諭)となった松野クララは「結婚のため来日したが、たまたま幼稚園保姆の資格を持っていたため、主任保姆に採用された」というのがこれまでの定説だった。今回の研究によって、クララは、岩倉視察団等の情報により、日本に幼稚園設立の計画があることを察知した婚約者松野ハザマの勧めによって保姆資格を取り、来日した可能性が高いことが判明した。
著者
井上 勝也
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
no.66, pp.88-90, 2004-03

時おり、間違えて学生のいない教室の扉を開けることがある。普段なら開けたとたん、赤青黄-"色の3原色"が目にとびこみ、ザワザワ音を背景にした女子学生の金切り声やムッとする混合臭の中に一条のギョーザの匂い、それに束になった ...
著者
斎藤 亮子 山田 皓子 井上 京子 沼澤 さとみ 嶺岸 秀子 諸田 直実
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

<研究計画>看護基礎教育において「がん看護学」を履修した学生や、履修して卒業した看護師は、がん患者の看護においてがんに対する認知的誤認が少なく、「患者とのコミュニケーションがより容易にとれ、患者の言葉を傾聴でき、患者とともにある」看護ができることを実証したいと考えた。そのために基礎教育用がん看護学を組み立て、講義し、受講した学生のその後のがん看護実践を追跡調査する。また、わが国の4年制看護系大学におけるがん看護学教育の実態調査を行なう。<実施および結果>平成16年度:看護系4年制大学の3年生を対象に、がん看護学20時間のカリキュラムを作成して講義し、教育評価を行なった。評価は概ね良好で期待するものであった。また、わが国の4年制看護系大学におけるがん看護学教育の実態調査を行なった。12%の大学でがん看護学(独立した科目)の講義が行なわれていた。平成17年度:対象学生は4年生になり、成人看護学実習(慢性期)3単位を行った。本実習においてがん患者の看護を体験した学生に対して、認知的誤認が少なく、がん患者とともにあることができる「がん看護学」の成果の判定(第一回調査)を行った。調査の結果は期待する以上のものであった。平成18年度:対象学生は卒業し、一部は医療施設にてがん看護を実践している。職場にある程度適応できた時点で、認知的誤認が少なく、がん患者とともにあることができる「がん看護学」の成果を判定する調査(第二回)を行った。新人看護師のがん看護の取組は期待する以上のものであった。<結論>今日まで、看護基礎教育において、がん看護学教育は高度の知識・技術を必要とするため困難であるとして、体系的には教育されて来なかった。しかし、看護基礎教育におけるがん看護学教育の最大の目的は、学生(若い看護師)のがん看護を困難にしている認知的誤認を軽減することであり、それによって、学生や若い看護師のがん看護実践に大きな変化が生じると考えられた。
著者
三上 訓顯 西口 真也
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

この研究は、日本国民が利用している企業の製品のブランド力を国際的に評価するために行った。そのために、私たちは、アメリカ、イギリス、中国、日本の、四カ国の国民を対象に、企業ブランドが、どれぐらい認識され、どの程度の評価を得ているのかについて調査した。その結果、アメリカのコンピュータ企業やソフトウェア企業が高い評価を獲得した。他方で日本の製造企業は、低い評価となった。そうした要因は、世界的な情報化の傾向をよく反映している。私たちの研究は、従来のブランド認識とは異なる実態を明らかにした。
著者
田中 孝彦
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、科学研究費補助金によって購入および入手が可能になった米国国務省資料に加え、英国外務省および原子力開発庁の機密資料、さらには日本外務省によって部分的にではあるが公開された資料に基づいて、日本政府が核兵器に対しどのような態度をとっていたかについての実証史研究を試みた。本研究で得られた知見は、大きく以下の三点である。(1)岸政権の核実験反対および原子力関連政策は、岸信介の「独立の完成」というナショナリスティックな政策目的のもとに収斂する形で展開していたのであり、核実験反対政策は国内ナショナリズムの動員と吸収のため、そして、国力増進のために小型の戦術核兵器の保有への道をオープンにするという形で、岸のナショナリズムの中では整合性をもって構想されていたといえる。(2)さらに岸政権の核実験反対政策は内実を著しく欠いたものであった。米英への実験実施に対する抗議書は、それが手交される際外務省の上級スタッフによっては、それが国内向けのものであるとの説明がつけられ、時には、外務省内には核兵器保有論者が少なくないことを知らしめるような発言が、米英当局側にむけてなされたりした。これらを一つの原因として、この当時の日本政府および市民による反核実験運動や政策は、Genuineなものではないとの認識を米英政府関係者に植え付けることになったといえる。(3)岸政権においては、日英原子力協定において、民軍両用のCalder Hall型原子炉の日本による購入が決定したが、これは、米国に対する過剰な依存を避けるとともに、プルトニウムを蓄積し将来的に独自の核兵器保有(戦術核)のオプションをオープンにしておくための努力としての意味もあったと考えられる。このような知見に基づき、2002年7月に国内研究会において研究報告を行った。2003年には英国に国際交流基金の助成によって一年間の在外研究を行い、同年12月にはUniversity of London, Institute of Historican Research, International History Seminarにて口頭報告を行った。
著者
片山 伸彦
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.658-665, 2006-09-05
被引用文献数
2

物質を支配する法則と反物質を支配する法則に違いがあれば,元々は物質と反物質が同量だけあった初期宇宙から出発して現在の宇宙に物質のみが残っている事実を説明できる可能性がある.一方,素粒子に働く弱い力が「物質と反物質の物理の対称性」を破っていることが1964年,中性Kメソンを使った実験で発見された.以来40年以上,素粒子物理学者は宇宙創成の謎を解く鍵ともいえるこの対称性の破れの起源を解明するべくさまざまな理論を提案し実験を行ってきたのである.茨城県っくば市にある高エネルギー加速器研究機構(KEK)では,世界最高の輝度を誇る電子・陽電子衝突型加速器(KEKB Bファクトリー)を用いて,2番目に重いクォークであるbクォークを大量に作り出し,bクォークを含む系における「物質と反物質の物理の非対称性」を発見した.これにより,物質と反物質の対称性の破れの起源として,1973年に6クォーク模型を提唱した小林-益川理論の予言が検証されたのである.本解説では,最近のBファクトリー実験の成果を中心に対称性の破れの研究の歴史を振り返り,この分野の将来計画についても概観する.
著者
吉本 則之 渡辺 剛 小金澤 智之 菊池 護 廣沢 一郎
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.190-195, 2014-04-10 (Released:2014-04-22)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Two-dimensional grazing incidence X-ray diffraction (2D-GIXD) is one of the powerful methods to analyze crystal growth and structure of organic thin films. In this report, we show some experimental examples of 2D-GIXD measurements on organic semiconductor thin-films performed at SPring-8. First, polymorphic transformation of pentacene depending on film thickness observed by means of in-situ real-time 2D-GIXD is shown. Secondly, real-time observation of change in structure during thin-film growth of oligothiophenes by means of 2D-GIXD is shown. Finally, a result of crystal structure analysis from 2D-GIXD data of polycrystalline an oligothiophene thin film is reported.
著者
越智 裕之 佐藤 高史 筒井 弘 中村 行宏
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

長寿命なデジタル記憶システムの実現に向け、長期安定性に優れるマスクROMの実装されたシリコンウエハ全体を完全に絶縁層で封止し、非接触で電源供給や相互通信を行うための構成方式の検討を行った。非接触電源供給技術としてオンチップ太陽電池に注目し、ブーストインターリーブ太陽電池を提案した。非接触相互通信技術としてオンチップダイポールアンテナに注目し、低消費電力な送受信回路を提案した。高集積、超低電圧動作が可能なNAND型マスクROMの特性を明らかにした。これらを総合して恒久保存メディアのアーキテクチャ検討を行い、待機時消費電力を極限まで削減する階層的なパワーゲーティング手法の有用性を示した。
著者
Bond Francis 藤田 早苗 橋本 力 笠原 要 成山 重子 Nichols Eric 大谷 朗 田中 貴秋 天野 成昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.1, pp.83-90, 2004-01-13
被引用文献数
1

本稿では、基本語彙知識ベース構築の一環として構築した、ツリーバンク「檜」を紹介する。「檜」は、HPSGで書かれた日本語文法JaCYに基づいて辞書の語義文を解析したものであり、詳細な統語情報と意味情報の両方が付与されている。本稿では、「檜」構築の目的や理論的基盤などについて述べる。 また、「檜」の有効性を示す一例として、知識獲得の予備実験を行なった結果について報告する。In this paper we present the motivation for the construction of the Hinoki treebank. It is a rich and dynamic treebank of dictionary definition sentences parsed using a Japanese HPSG. We show how the treebank is being used to build an ontology, and outline plans for further work.

1 0 0 0 OA 沙漠の魔女

著者
大戸喜一郎 編
出版者
金の星社
巻号頁・発行日
1927
著者
橋本 健夫 川上 昭吾 戸北 凱惟 堀 哲夫 人見 久城 渡邉 重義 磯崎 哲夫
出版者
長崎大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

社会の成熟に伴って多様な価値観が存在するようになった。その中で一般に勝ち組、負け組と言われる二層が存在するようになり、それが教育格差をも生じさせている。また、学校教育においては、いじめ、不登校などの問題が深刻になるとともに、数学や理科における学力の低下という新たな課題も生まれてきている。特に後者は、科学技術創造立国を掲げる日本社会にとって憂慮すべき課題である。本研究は、それらの指摘を踏まえた上で、科学技術創造立国を支える学校教育のあり方を追究したいと考えた。平成17年度は社会が学校に何を期待するかや諸外国の学校事情等を調査し分析した。本年度においては次の調査等を行い、研究テーマに迫りたいと考えた。(1)子ども達の理科に対する意識調査(2)韓国や中国等における自然科学教育の実態調査(3)日本・中国・韓国の研究者を招いてのシンポジウムの開催これらを総合的に討議した結果、自然科学をバックボーンにした従来の理科学習に代わって職業観の育成等を組み込んだ理科学習や、現行の小・中・高の学校制度を見直す時期に来ているとの認識で一致した。この認識の是非を小中学校の教員に尋ねたところ、半数以上の教員が賛同を示した。二年間の研究期間ではあったが、学校教育の中における自然科学教育の課題を浮かび上がらせ、その解決に向けた提案をすることができたと考えている。
著者
西 栄二郎
出版者
横浜国立大学
雑誌
Actinia : bulletin of the Manazuru Marine Laboratory for Science Education, Faculty of Education and Human Sciences, Yokohama National University
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-6, 2003-03-31

A new species of chaetopterid polychaeta, Spiochaetopterus manazuruensis n. sp., is described from sandy mud shallow bottom of Manazuru, Sagami Bay, Pacific coast of Honshu, Japan. This is the fifth species of Spiochaetopterus to be described from Japan. The species is described and figured and differentiated from other species of the genus with which it might be confused. Based on SEM observations and ones in the literature, the specialized A4 (chaetiger 4 of anterior region) chaeteae are compared with those of other 14 named and unnamed species of Spiochaetopterus. In this feature, in its small size, and in having only 2 middle segments, S. manazuruensis n. sp. appeares to be most similar to northern European S. bergensis Gitay, 1969, but differs from it in the presence of a larger, irregular brown pigmentation on each side extending from the prostomium to the peristomium, and in details of the structure of the A4 modified chaetae.