著者
川田 都樹子
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

〈芸術諸学と芸術批評と芸術作品の関わり〉美学の自律性を確立したカント、これを発展的に継承し、純粋視覚の理論を用いて芸術学を美学から独立させる方向を見いだしたフィードラ-、これを受け継いで、美術史を視覚の歴史と定義し、様式史としての美術史を提唱したブェルフリン。独における、ある意味では、フォーマリズムの系譜とも言えるこの芸術諸学の展開を根底に持ちつつ、米20世紀半ばのフォーマリズム批評を代表するC.グリーンバーグは、同時代の芸術諸作品の評価・分析を行う。彼にとって、先駆となる美術批評は、イギリス20世紀初頭のR.フライである。フライのフォーマリズムとは、まさに、仏のフォーマリスティックなモダン・アートが、それまで文学色の濃いラファエロ前派などを主流としていたイギリスに上陸してくる時代に不可欠のものであった。さらにフライが、影響を受けた批評家とは、独のマイヤー・グレーフェ、仏のモ-リス・ドニであるが、前者は独の芸術論に関わりながらも、むしろその観念論の性質を受け継ぎ、フォームの問題に留まるよりむしろ、作者存在に留意するものだった。後者は、自身も仏のモダン・アートの作者であり、極めてフォーマリスティックだが、芸術諸学との関連はうすい。この両者を止揚しつつフォーマリズム批評を成立させたのがフライだったのである。グリーンバーグは、アメリカ抽象表現主義の作品に対する批評において、フライに倣いつつフォーマリズムを見事に適応させたが、しかし、それ以後の現代芸術への適応は不可能であった。というのも、現代において芸術作品も芸術諸学もフォーマリズムから離れていたためである。フォーマリズム超克の試みは、現在、様々になされているが、むしろ独の芸諸学においてフォーマリズム超克に成功したハイデガ-にまで逆上り、芸術存在の本質から問わねばならないだろう。
著者
井上 征矢 山本 早里 三井 秀樹
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.100-112, 2003-06-01
被引用文献数
1

幾何学的抽象絵画において縁辺対比の効果が強く見える主なパターンとしては、「Hermann grid」、「グラデーション」、「色の面積比の変化」、「ストライプにおける色ずれ」などが挙げられる。これらは明度差によって作成した場合に最も強い縁辺対比を生むことが知られており、絵画やデザインなどの視覚表現にも頻繁に応用されているが、色相差、彩度差による効果に関する知見は少ない。そこで本研究では彩度差による縁辺対比に注目し、実験を通じてその特性を探ったところ、以下のような傾向が得られた。1)彩度差による縁辺対比は、「グラデーション」や「色の面積比の変化」では色相に関わらず効果が見えやすいが、「Hermann grid」では比較的効果か弱く、見えにくい。2)各パターンともに色相によって効果の強度に差があり、赤で強く、縁で弱い。3)「Hermann grid」や「ストライプにおける色ずれ」を彩度差で作成する場合、明度差で作成する場合よりも、線幅やストライプ幅をやや広くした方が効果が見えやすい。
著者
水越文和
雑誌
耳鼻臨
巻号頁・発行日
vol.84, pp.1179-1188, 1991
被引用文献数
4
著者
佐竹 徹夫 柴田 和博
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.454-462, 1992-09-05
被引用文献数
6

小胞子の分化から受精に至るまでの発育過程を4段階に分け, それぞれの段階で受精に関係する要素(受精構成要素)を定義し, 受精率を4要素(分化小胞子数, 発育花粉歩合, 受粉歩合および柱頭上花粉の受精効率)の積によって表した. 危険期に冷温処理された穎花の受精率およびそれを構成する要素の大きさには, 品種間に顕著な差が認められた. 耐冷性の異なる19品種を用いて, これら要素の受精率に対する寄与率を重回帰分析法によって評価した. 危険期に冷温処理された穎花の受精率における品種間分散の82%が, 分化小胞子数, 発育花粉歩合および受粉歩合の3要素によって説明された. 第4要素の柱頭上花粉の受精効率(この要素は柱頭上における花粉の発芽歩合と発芽花粉の受精効率より構成される)は本論文では評価されなかった. 染分, 赤毛, キタアケ, 道北糯18号, 中母42号, はやゆき等は小胞子分化数が大きく, 染分, ハマアサヒ, キタアケ, トドロキワセ, はやゆき, コチミノリ等は花粉発育歩合が大きく, そらち, 中母42号, はやゆき, キタアケ等は受粉歩合が大きく, それぞれの要素の供与親として注目された. 受精構成要素の概念は, 耐冷性の遺伝子を各要素ごとに探索する手段として育種事業に利用できるばかりでなく, 耐冷性の生理機構を解析するための手段としても利用できる.
著者
水越 文和 出島 健司 竹中 洋 齊藤 憲治 河田 了 高木 伸夫 安田 範夫 村上 泰 松岡 秀樹 日向 美知 立本 圭吾 任 書熹 大島 渉 寺薗 富朗 日向 誠 松本 真吏子 竹上 永佑 土井 玲子 三牧 三郎 西嶋 信雄 牛島 千久 伊達 敬一 園田 隆朗 大槻 晃直 木村 隆保 八木 正人 中井 茂 昌子 均 豊田 健司
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床. 補冊 = Practica otologica. Suppl. (ISSN:09121870)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.56-66, 1995-03-20
被引用文献数
6 2

The effect of Oxatomide in the initial treatment of Japanese cedar pollinosis was examined in 11facilities in Kyoto prefecture. This study examined the most appropriate starting time and period of administration for the highest effect of the initial treatment. The following results were confirmed by administre ring Oxatomide during the initial treatment for Japanese cedar pollinosis on 1991.<BR>The effect of Oxatomide was obtained after administering for one week or more, including the highest effect after two weeks for sneezing and three weeks for nasal discharge. However, no effect on sniffling. These results suggest that two to three weeks is the best administration period for Oxatomide in the treatment of Japanese cedar pollinosis.<BR>In addition, a close relation between pollen information facilities and practical medicine in the region, is necessary for the initial treatment of pollinosis.
著者
豊嶋勝
雑誌
耳展
巻号頁・発行日
vol.34, pp.655-671, 1991
被引用文献数
4
著者
上田 善弘
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.g15-g16, 1995-08-25

根管充填用シーラー(シーラーと略)には緊密な根管封鎖性と高い組織親和性が求められる. さらに, 根尖孔を硬組織で封鎖させる作用を有することが理想的とされている. 最近, リン酸カルシウムの硬組織誘導能と高い組織親和性が注目され, リン酸カルシウムを主成分とする新しいシーラーの研究, 開発が進められている. 今回, α-リン酸三カルシウム(α-TCP)とクエン酸/タンニン酸溶液を主な成分とする2種類と, リン酸四カルシウム・リン酸水素カルシウム等モル混合物(TeDCPD)と低濃度クエン酸溶液からなる1種類のシーラーを試作した. そして, これらの物性と組織刺激性を検索し, 臨床応用の可能性を検討したのでその結果を報告する. 実験材料および方法 試作シーラー-1 (NS-1)の粉剤は70% α-TCP/30% TiO_4で, 液剤は35%クエン酸/5%タンニン酸溶液, 試作シーラー-2 (NS-2)の粉剤は85% α-TCP/15% BaSO_4で液剤は35%クエン酸/5%タンニン酸溶液である. また, 試料シーラー-3 (NS-3)の成分はTeDCPDと増粘剤および防腐剤を含む2.1%クエン酸溶液である. 対照には市販の酸化亜鉛ユージノール系シーラー(ZOE)とリン酸カルシウム系シーラー(ARS)を用いた. 試料シーラー練和後のpH, 硬化時間, 崩壊率を測定して物性を検討するとともに, エックス線回折(XRD)による硬化体内反応物の同定を行った. また, 根管を拡大・形成(#70)したヒト抜去上顎中切歯40歯に各シーラーをレンツロで根管に填入し, 一部を液体窒素中で凍結, 割断し根管壁とシーラーの界面および硬化後のシーラー内部の観察のために走査型電子顕微鏡(SEM)の検索に供し, 残りは墨汁に浸漬したあとに根管封鎖性試験に用いた. さらに, 試作シーラーの組織刺激性試験を Sprague Dawleyラット背部皮下組織と根尖歯周組織で行った. すなわち, 30匹のラット背部皮下に各シーラーを埋入した1および4週後の, また, 別の75匹のラットで下顎左右側第一臼歯根管の抜髄と根管拡大・形成(#25)を行い, 各シーラーを充填した. その後, 1, 2, 3, 4および5週後の組織反応について, それぞれ通法に従って作製した6μmの連続切片(ヘマトキシリン・エオジン染色)にて病理組織学的に検索した. 結果・考察 液剤が練和後のpHに強く影響し, NS-1, NS-2およびARSは酸性を示し, NS-3のみが中性域にあった. また, 根管封鎖性は試作シーラー, なかでもNS-3が有意に優れていた. 硬化時間はすべてのシーラーで有意差が認められ, NS-2の硬化が最も早く, ARSが最も遅かった. 崩壊率はNS-1とNS-2は3%を超え, ARSも約3%であったが, NS-3は約0.9%で優れた結果を示した. TiO_2やBaSO_4の添加が硬化時間の遅延および崩壊率の増加に関係すると思われる. 練和後14時間のXRDでは, NS-1とNS-2にハイドロキシアパタイト(HAp)が検出されず, α-TCPとTiO_2あるいはBaSO_4が検出されたのみであった. NS-3では低結晶性がHApがおもに検出された. SEMでの観察の結果, NS-1とNS-2には貫通性の小孔が存在し, NS-3には板状と塊状の粒子で満たされた小孔が存在した. XRDとSEMの結果から, NS-3の優れた封鎖性が確認された. 組織刺激性はNS-2が最も強く, 高い酸性度とBaSO_4の影響が示唆される結果が得られた. 結論 1. NS-1は強い酸性を示したが組織刺激性は緩徐で, 新規シーラーとして応用できる可能性が認められた. 2. NS-2は強い組織刺激性を示し, 新規シーラーとして不適当であると結論された. 3. NS-3は凝結硬化するために初期にマクロファージ系細胞を誘導するが, 優れた生体親和性を有することが確認された. さらに, NS-3は崩壊率が小さく, pHも中性域にあることから, 新規シーラーとして有望であると判断された.
出版者
母語・継承語・パイリンガル教育(MHB)研究会記念大会事務局
巻号頁・発行日
pp.1-74, 2013-08-16

テーマ: 「母語・継承語・パイリンガル教育研究の軌跡と展望」
著者
西崎 伸子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100016, 2013 (Released:2014-03-14)

1.  はじめに 2011年3月の原子力災害によって、広範囲の自然環境が放射能によって汚染された。このことは、環境汚染とともに、原発労働者や一般公衆の被曝問題を長期にわたって考えなければならない社会が日本に誕生したことを意味している。本報告の目的は、原子力災害後の社会のあり方を考えるために、1)子どもの被ばくリスク軽減の観点から、これまで実施されてきた国、行政、原因企業および市民団体の施策や取り組みを整理すること、2)市民団体がとりくむ草の根の保養支援活動の実態と意義を明らかにすること、3)地理学が対象としてきた「人と自然のかかわりと断絶」を考察することとする。   2.  対象と方法 子どもを対象とするのは、若年者の放射線感受性が高いことが、広島、長崎の原爆被曝者やチェルノブイリの原子力災害の調査から明らかにされてきたからである。福島県内外に今も15万人が避難をし、県外避難者6万人の多くが、子どもとその保護者による避難であるといわれている。避難区域が解除されても、もとの自治体に戻らない/戻れない人々が数多く存在するのは、インフラの未整備や就労の問題だけでなく、放射線による子どもへの健康影響に対する不安が未だ消えないことが原因である。 本報告は、国・行政の施策や市民による支援の取り組みに関する資料、および、報告者による参与観察と聞き取り調査によって得られた資料にもとづく。   3.  結果と考察 ①   政府は、避難を指示する区域を政治的判断で限定的に設定し、被曝線量が年1ミリシーベルト以上になる地域では除染を優先する方針を打ち出した。しかし、除染は計画通りに進まず、一度の除染作業では放射線量が十分には下がらない場所が生じている。この間、若年層の被曝リスクの回避を目的とした公的な施策は十分ではなく、低線量被曝は、不安感を抱く側の「心の問題」とされる傾向にある。 ②   保養に関する支援活動の現状は、1)被曝の低減、子どもの遊び支援に加えて、移住支援、健康診断、学習支援など多様化している。2)これらの支援活動は市民団体が主におこない、行政は、福島県内での活動には予算をつけるが、県外での活動への財政的支援には消極的である。3)2)の背景には、放射線被曝についての構造的問題があると考えられる。 ③   人と自然のかかわりの断絶は、人々の選択ではなく、原子力災害による被害として位置づける必要がある。また、保養支援は、「かかわり」の再構築につながる可能性があるだろう。   西﨑伸子「原発災害の「見えない被害」と支援活動」『東北発・災害復興学入門―巨大災害と向き合う、あなたへ』清水・下平・松岡編著, 山形大学出版会, 2013年9月出版予定
著者
斎藤 隆弘 武尾 英哉 相澤 清晴 原島 博 宮川 洋
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.9, no.12, pp.105-112, 1985-07

Formerly we proposed a method for designing parallel gain/shape vector quantizers in the 8*8 DCT (Discrete Cosine Transform) domain [12]. This paper proposes a method for magnifying the block of this quantizer. In this method, the block is magnified by symmetrizing the structure of the shape code book. By magnifying the block to 16*16,at a fixed coding rate signal-to-noise ratio is increased by about 1 (dB), and this coding scheme yields a perfomance advantage of 1〜2 (dB) over the DCT coding scheme with scalor, Max-type quantizers.

1 0 0 0 OA 嫁入叢書

著者
山脇敏子 著
出版者
実業之日本社
巻号頁・発行日
vol.手芸篇, 1929
出版者
日経BP社
雑誌
日経ヘルスケア : 医療・介護の経営情報 (ISSN:18815707)
巻号頁・発行日
no.288, pp.63-69, 2013-10

2014年度診療報酬改定に向け、いよいよ本格的な議論が始まる。社会保障審議会の医療保険部会と医療部会は9月6日、社会保障・税一体改革に関連する改定の基本方針を公表。入院医療やDPC/PDPSについては、中央社会保険医療協議会の各分科会が中間報告を出し、具体…
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1722, pp.43-45, 2013-12-30

深刻化必至の三大課題安全・癒やしに一大商機 トヨタ自動車や日産自動車など世界最高水準の技術力を持つ企業が、なぜ何十年も、同じ問題を解決できないのか——。そう思っている人も多いかもしれない。増え続ける「ペダル踏み間違い事故」への対応についてで…