著者
迫野 虔徳
出版者
九州大学国語国文学会
雑誌
語文研究 (ISSN:04360982)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.39-46, 1974-08-31 (Released:2009-04-22)
著者
大園 享司
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.304-318, 2007
被引用文献数
2

冷温帯産樹木の落葉を材料として、その分解過程と分解に関わる菌類群集の役割を実証的に明らかにした。調査地は京都府の北東部に位置する冷温帯ブナ天然林である。35ヶ月間にわたる落葉分解実験の結果、14樹種の落葉のリグニン濃度と落葉分解の速度および落葉重量の減少の限界値との間に負の相関関係が認められた。また窒素・リンの不動化-無機化の動態がそれぞれリグニン-窒素(L/N)比、リグニン-リン(L/P)比の変化によく対応していた。実験に用いた落葉樹種のいずれにおいても、リグニン分解はホロセルロース分解より遅く、落葉中のリグニン濃度は分解にともなって相対的に増加する傾向が認められた。落葉に生息する微小菌類と大型菌類について調査を行い、29樹種の落葉から49属の微小菌類を、また林床において一生育期間を通して35種の落葉分解性の担子菌類を記録した。ブナとミズキの落葉において分解にともなう菌類遷移を比較調査した。リグニン濃度が低く分解の速いミズキ落葉では、リグニン濃度が高く分解の遅いブナ落葉に比べて、菌類種の回転率が高く、菌類遷移が速やかに進行した。担子菌類の菌糸量はミズキよりもブナで多く、またブナでは分解にともなって担子菌類の菌糸量の増加傾向が認められた。分離菌株を用いた培養系における落葉分解試験では、担子菌類とクロサイワイタケ科の子嚢菌類がリグニン分解活性を示し、落葉重量の大幅な減少を引き起こした。落葉のリグニン濃度が高いほど、菌類による落葉の分解速度が低下する傾向が培養系でも示された。同様に、先行定着者による選択的なセルロース分解によりリグニン濃度が相対的に増加した落葉においても、菌類による落葉の分解力の低下が認められたが、選択的なリグニン分解の活性を有する担子菌類の中には、そのような落葉を効率的に分解できる種が含まれた。これら選択的なリグニン分解菌類は野外においても強力なリグニン分解活性を示し、落葉の漂白を引き起こしていたが、林床におけるその定着密度は低かった。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1916年03月27日, 1916-03-27
著者
水野 知昭 下田 立行
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

平成11年度:北欧神話に登場する「馬に乗る神々」に焦点を絞り、オージンを筆頭とする「異境より来往する神々」の原態に探りを入れた。イェーアト国(スウェーデン南西)のベーオウルフは、デンマークにおける怪物退治の報酬として首飾りや胴鎧、その他の贈物を与えられて故国に帰参する勇者であるが、既存の秩序の混乱を招く「恐るべき異人」の側面を露呈している。と同時に、みずからが王に即位して長期の平和を確立し、「幸もたらすマレビト」としての特性を兼ね備えている。また、荒ぶる軍勢を統べ治める神オージンについて、「来訪する死霊神」と「豊饒をもたらすマレビト」という両義的な側面から、その本性を解明した。平成12年度:「海原を渡り来るおさな君」が士地の者に養育され、成長した後に、王に推挙され、平和と豊饒の時代を切り拓くという、北欧の類話を比較考察した。海上の島より来往するニョルズ神と豊饒神フレイにまつわる「古北欧のマレビト」の信仰基盤がその背景に横たわっている。また、中世北欧の教会建立の伝説について、「海からの異人」と「山からの異人」の対立抗争のテーマが隠されていることを、比較神話学・伝承学の見地から実証した。その根底には、アースガルズ塁壁造成神話のみならず、古代トロイアの城塞構築の伝説にも共通する「異人」(異神)来訪のモチーフがひそんでいる。平成13年度:フレイとバルドルは、「双生神」として密接不可分な関係にあり、「異族」の襲来から神界の境域を守護する戦士の役割りを負わせられていた、という新解釈を提示した。また、ヴォルスング王家のシグルズ、デンマークの王子ラグナル・ロズブローク、およびベーオウルフなどの勇者や雷神ソールの群像にスポットを定め、「異人」による「聖戦」(vig)として竜蛇退治の伝説を捉えなおした。また「北欧のマレビト」の代表格ともくされるニョルズの原姿に、航海・遠征からの生還をつかさどり、人々を危難から「救出する」神の側面を認めた。ニョルズの神観念の成立は後期青銅器時代にさかのぼるが、古代ギリシアのネストール(Nestor)の特性との共通性も見えてきた。これらの見地が、今後、異人・マレビト考を深化させてゆくための導きの糸になるであろうことは疑いもない。下田立行は、ギリシア喜劇断片の解読に従事し、ヘーリオドーロス『エティオピア物語』の翻訳を続行中である。前者のギリシア喜劇の中には、市民と非市民、あるいは市民と客人との地位の格差について触れた箇所がある。後者の『エティオピア物語』は、ギリシア・エジプト・エティオピアおよびペルシアなどの広範囲な地域におよぶ散文作品であり、異文化接触の記述が散見される。平成14年度中に刊行される予定である
著者
宇山 智彦 平野 千果子 秋田 茂 前川 一郎 河西 晃祐 小沼 孝博 水谷 智 長縄 宣博 天野 尚樹 中山 大将
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

近代帝国の植民地および脱植民地化の歴史を、比較と関係性の視角から研究した。帝国権力と周縁・植民地社会を結ぶ媒介者・協力者の役割、植民地の知識人による近代化の試み、諸帝国の競存体制と植民地同士の関係、帝国・植民地における移民の位置づけ、帝国の暴力と反乱、第一次世界大戦とロシア革命のインパクト、脱植民地化をめぐる国際関係などを研究し、帝国論・植民地論の知見を現在の国際問題の分析にも応用した。全体として、帝国権力が国内外に作り出す格差構造と、植民地の被統治者の主体性の両方に目を配りながら、植民地史の多面性と今日的意義を明らかにした。
著者
白井 忠功
出版者
立正大学
雑誌
立正大学文学部論叢 (ISSN:0485215X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.24-43, 1971-03-25
著者
仲間 勇栄
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

マングローブの方言名プシキはマングローブの方言の総称である。オヒルギは方言でビギプシ(古見)、マツァプシキ(祖納)、マダプシキ(星立)、ヤエヤマヒルギはミープシ(古見)、マヤプシキ(星立)、ビープシキ(星立)、ハマザクロはトゥ〓ダプシ(古見)、ヒルギモドキはカニャーキー(星立)などと呼ばれている。マングローブの利用一番多くは、オヒルギやヤエヤマヒルギの皮を煮詰めて帆船の木綿帆、魚網、ミンサー織物などの染料として利用していたことである。皮を剥いだマングローブは薪に、またメープシやビギプシを切ってきて自家用木炭を作った。ビギプシは家のタルキや桁や洗濯物の竿掛用などに使われる。マングローブ林と食生活ガサミ(カニの一種)はゆでて身を取り、油で炒めたり、そのまま水炊きにする。また身を取ってメリケン粉と混ぜ、ダンゴ状にして油にあげカマボコを作る。ギジャグ(シレナシジミ)は身をオオタニワタリの新芽と混ぜ、油で炒める。アンサンガヤー(カニ)はおつゆに、サクラエビはゆがいて乾燥させ、野菜と炒めて食べる。そのほかに魚やウナギなどを取って料理して食べた。マングローブ林の管理利用伐採方法は小規模の皆伐や適度の抜き切りが基本だったようである。必要な利用可能なものだけを切って使う。老木や枯れ木を優先的に切り、適当に母樹を残して間引きをする。これといった利用上の取り決めがあったわけではなく、各人が長年の伝統的な生活の知恵にもとづいて、資源の再生する範囲内でうまく管理し利用していた。
著者
岩動 孝一郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.1189-1212, 1994-08-20
被引用文献数
1 1

男性仮性半陰陽は性腺として精巣が分化していながら内外性器系の男性化が障害される先天異常で,極めて多彩な発生病理に基づく性分化異常症の一型である.従来,本症の分類は主として外性器の形態,女性内性器の分化の有無,および思春期における二次性徴の性差を中心に行われてきた.しかし発生機序に関する要因は殆ど不明であり,分類法での配慮は殆どなされていなかった.近年,性分化の機構に関する研究が大幅に進展し,Y染色体上に座位のある精巣決定因子 TDF も SRY 遺伝子として同定された.また胎生期精巣の分泌するミューラー管抑制ホルモン(AMH)に関する研究も進み,内性器分化とその異常に関する知見も一新された.Androgen Receptor(AR)についても遺伝子のクローニングの結果, ARとgenomic DNAとの相互作用についても重要な情報が蓄積されつつある.現在では,古来の臨床的な分類に加えて,MPHを発生機序の面から捉えた分類法を確立し,当面の患者に対しより適切な社会的な適応を目的とした性の決定を可能とし,その後の治療をも容易ならしめる基準を普及させる必要がある.最近の傾向では, MPH を SRY および性決定に関連する一定の遺伝子の異常を含めた機序に起因する性腺分化の障害 ; 胎生期精巣より分泌される androgen および AMH などの性器分化誘導物質生成の障害 ; そして androgen receptor(AR) の異常に伴う感受性障害 androgen insensitivityの3つの要因に大別して扱う報告が多い.このほか性腺腫瘍,腎腫瘍(Wilms'tumor)あるいは腎障害の合併などを示す症例の存在も注目され,その発生機序の解明は出生前診断,予防法さらには治療法の開発にもつながる重要な研究分野であると考えられる.
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.155-163, 2003

センター試験を利用する大学の数は年々増加の傾向にあり,受験者の数も増加している。センター試験の問題が大学入学試験に与える影響が増えてきていることを意味している。それがゆえに問題はよりしっかりと検討される必要がある。日本物理教育学会入試検討委員会では物理IA〈本試験〉の検討を近畿支部,北海道支部を中心に行い,物理IB(本試験)については,アンケート調査を実施し,その結果をもとにして入試検討委員会で検討をおこなった。今回のアンケート用紙は,昨年と同様「物理IB」の問題について全体的な意見と各問についての意晃を選択肢で答えていただくと同時に自由に記述していただく部分も用意した。会員の申から約400名を抽出し,問題とアンケート用紙を発送し,2月5日までに回答を求めた。回収数は109であった。以下物理IBについてはアンケートの集計結果と当委員会での議論に基づいた意見を,物理IAについては北海道,近畿両支部で検討した意見を報告する。議論は,大学志願者の「高等学校における基礎的な学習の達成度を判定する」という大学入試センター試験の目標が学習者に対してどのように実現されようとしているか,という観点にたって行われた。なお2003年度センター試験の問題と解答は日本物理教育学会ホームページ(http://www.soc.nii.ac.jp/pesj/)又は大学入試センターホームページ(http://www.dnc.ac.jp/)で見ることができるので参照してほしい。
著者
川村 利光
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.768-768, 2006 (Released:2007-06-05)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2
著者
青木 敏 竹村 彰通 日比 孝之 大杉 英史
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

多項式環のグレブナー基底の理論を,統計学の様々な問題の解決に応用するという研究分野(計算代数統計学)は,1990年代に誕生し,主に分割表の枠組みにおいて,研究が進められてきた.本研究は,統計学の重要な応用分野のひとつである,実験計画法において,計算代数手法を使った新たな統計手法を開発することを目標とした.従来,実験計画法では,正規性の仮定を前提にした直交表の利用などに主眼が置かれていたが,本研究では,非正規性を有する観測値に対する統計手法として,多項式環のイデアルの構造から得られる新たな統計モデルの提案や,統計モデルの代数的特徴づけなどの結果を得た.
著者
Ogasawara Haruhiko
出版者
日本行動計量学会
雑誌
Behaviormetrika (ISSN:03857417)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.9-28, 2005-01
被引用文献数
1

Formulas for the asymptotic biases of the estimators of the normal theory standard errors in factor analysis are given with and without the assumption of multivariate normality for observed variables. The biases are derived from the asymptotic variances of standard error estimators and the asymptotic biases of the estimated variances of parameter estimators. The latter biases are derived from the asymptotic variances/covariances and asymptotic biases of the parameter estimators. The formulas cover the cases for unstandardized and standardized variables. Numerical examples using factor analysis models show the accuracy of the formulas. The biases of standard error estimators are theoretically and empirically shown to be of the same order as that of the differences between the asymptotic standard errors neglecting higher-order terms and those considering them.