著者
松元 俊 佐々木 司 吉川 徹
出版者
公益財団法人労働科学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

看護師の労働負担の実態と軽減策について、16時間2交代勤務と8時間3交代勤務の違い、16時間2交代夜勤における仮眠の効果、8時間3交代勤務における日勤短縮の効果を調べた。その結果、16時間夜勤では日勤-深夜勤の組合わせのある8時間夜勤と比べて疲労感に差がみられず、生活の質も改善していなかった。また生体リズムが日勤志向型を維持する16時間夜勤は,どの時刻帯に仮眠を取っても夜勤後半の眠気の訴えが多く患者の安全に係る潜在的な問題をはらんでおり,とりわけ後仮眠条件で問題が突出していた。8時間3交代勤務における半日勤-深夜勤への変更は夜勤前の睡眠時間を延長し、夜勤中の疲労感を抑制した。
著者
椎名 紀久子 嶋津 格 南塚 信吾 森川 セーラ 寺井 正憲 只木 徹
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本科研は、母語としての日本語と外国語としての英語で「批判的に思考」し「論理的に発信」できる力を小中高大で系統的に育成する指導システムを構築し、具体的な教材開発と授業提案を行うことであった。批判的思考の定義や研究史を踏まえたうえで研究を行った結果、外国語教育の分野だけでなく、倫理哲学と歴史学においても、批判的思考力育成のための教育方法をある程度提起することができた。
著者
泉 吉紀
出版者
富山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度は,多数の遺跡探査(古墳や城郭を対象とした)に取り組み,文化財科学における電磁気調査の発展に力を入れた.まず,富山県砺波市に位置する安川城跡において,城郭の遺構や縄張りの様相を非破壊で探ることを目的に地中レーダ探査を実施した.その結果,主郭の旧地形は高台であり,それらを削平して,現在の平坦面を造成したと考えられる.また,石と見られる反射が得られており,礎石を捉えた可能性がある.三ノ曲輪では,曲輪の形状沿って,土塁状の高まりがあることがわかった.土塁の周囲は,空隙の多い土壌で構成されている可能性が高いことから,盛土を施して平坦面を造成したと考えられる.堀切では,現地形での横断方向,縦断方向それぞれの探査結果に堀と見られる反応が得られ,現地表面から約0.8mに築城時の堀の底があると考えられる.また,古池を対象とした探査では,水による多重反射が得られ,古池を捉えた可能性が高い.今後,分解能の高い500MHzアンテナを用いたレーダ探査や遺物の検知を目的とした磁気探査等の併用による詳細な探査が望まれる.また,雪氷学分野の研究では,融雪型火山泥流の発生機構について実験を行った.積雪地域にある火山が積雪期に噴火した場合,高温の火山噴出物によって融雪型火山泥流が発生する可能性がある.火山噴出物による融雪やその融雪水の積雪への浸透・流下過程は融雪型火山泥流のハザードマップ等を想定する上でも必要であるが,詳細には把握されていない.今回,地中レーダ探査を用いて,その基礎データを取得するため,熱源を積雪表面に置き,融雪過程を把握する実験を行った.実験結果では積雪内部での,融雪水の浸透域が,高精度で検出できた.今後,土壌への水分の移動について研究を進める予定である,
著者
広川 暁生 (2007) 廣川 暁生 (2005-2006)
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本年は、16世紀における風景と地図の密接な相関関係の一端を詳らかにすることを目的に研究を進めた。とりわけピーテル・ブリューゲル(父)の下絵(1558年)による銅版画《アントワープのシント・ヨーリス門前の氷滑り》は冬の情景とアントワープの都市像を結び付けた最も初期の図像と考えられる。8月と2月に行ったベルギー王立図書館、アントワープ市立図書館、ベルリン国立素描館における調査では、要塞の完成した1557年以降、以前の都市図を特徴付けていた河向こうの都市景観ではなく、新しく完成した都市の要塞の側からの都市景観図が著しく増加したことが明らかになった。ブリューゲルの図像はこれらの都市景観図と同様の地誌的な関心をわけあうことから、本版画を地誌的風景画の展開の中に位置づけることが可能となった。また本版画は16世紀後半、アントワープの画家たちに数多く描かれた「雪のアントワープの景観」のプロト・タイプとなる作品である。油彩による「雪のアントワープの景観」の登場は1575年以降というアントワープが事実上衰退していく時期と重なっている。これらの作品を図像的、背景となる歴史的事実から分析した結果、かつて繁栄していた都市の姿を懐かしむ同時代人のノスタルジックな感情の高まり、そしてブリューゲルが1565年以降、油彩において手がけた「雪景色」の流行を背景に生まれてきたことが推察された。さらにこれらの作例は、必ずしも景観の忠実な再現とはいえないが、「地誌的」な概念やその「地域」の時間的、空間的特性という「近代的」風景画の成立に不可欠な構成要素を含んでいるという点において、「ジャンル」としての風景画の成立過程におけるひとつの大きな転換点を示すことが明らかになった。以上の考察結果は、3月に開催された美術史学会東支部例会において口頭発表し、現在その内容を学会誌への論文(6月宋投稿締め切り)として執筆し、投稿を準備中である。
著者
大矢 俊明
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本奨励研究では,ドイツ語における能格構文(1a,b),中間構文(2),結果構文(3),非人称構文(4)の考察を通じ,ドイツ語では外界をどのように切りとって統語構造にとりいれているのか,具体的には外項ないし内項の選択の根底に潜む認知意味論的原理を明らかにしようと試みた.(1)a.Die Tur offnet sich.ドアが開く b.Das Eis schmilzt.氷がとける(2)Zur Front marschiert es sich noch schwieriger.前線に進軍する方がより困難である(3)Es schneit das Auto zu.雪が降って車が埋まる(4)Das Auto schneit zu.雪が雪に埋まるまず,自発的事態をあらわす(1)であるが,a.では再帰代名詞が用いられているのに,b.では自動詞が用いられている.この相違は事態が外部からのエネルギー(=動作主)がなくても生起可能であるかという点から捉えることができる.すなわち,氷は自然にとけていくことは容易に想定できるが,ドアは放っておいても開くとは考えにくい.すると,ドイツ語では「開ける」という他動詞が基本にあり,「開く」という自発的事態の表現に生起する再帰代名詞は,その主語である動作主の代わりとして具現していると想定できる.また,(2)で用いられている移動様態動詞には方向規定詞が付加されており,このような動詞は(1)と同様に非対格性を有すると指摘されることがある.しかし,一般に非対格動詞からは中間構文を形成することはできず,ドイツ語では移動様態動詞は非能格動詞であると考えられる.この根底には,事態を統御することができる実体は常に外項として,また事態に否応なく巻き込まれてしまう実体は内項として投射されるという規則があると仮定できる.そのため,(3)のような非人称動詞の主語は真の外項としての条件を満たさず,(4)のように非対格動詞に期待される結果構文の形成が可能になると考えられる.
著者
富樫 穎
出版者
大阪市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究の目的は、住空間デザインの志向性からみた住文化の典型的な型を抽出し、居住者の属性からみた各型の規定要因を明らかにすることにある。調査項目は、(1)住宅の外観デザインに対する志向性、(2)接客室の室内デザインに対する志向性、(3)住宅の内外空間構成要素に対する志向性、(4)居住空間の名称に対する志向性、(5)生活行事に対する志向性の5項目である。調査は、都市・農山村の女性を対象に実施し、901名の有効解答を得た。分析の結果、次の2つの典型的な型が抽出された。(1)「伝統和風志向」型……伝統和風の外観デザイン、伝統和風の室内デザイン、神棚、仏壇・床の間などの伝統的な室内空間構成要素や灯篭・庭石・築山などの伝統的な外部空間構成要素、続き間座敷・茶の間などの伝統的な空間名称、七草・月見・お盆・正月などの伝統的生活行事を志向する。(2)「現代洋風志向」型……現代的な「ペンション風」の外観デザイン、現代的な洋風の室内デザイン、吹抜け・大テーブル・フローリング・テラス・バルコニー・芝生などの現代的で洋風の内外空間構成要素、大きな居間・アトリエ・ホビールームなどの現代的な洋風の空間名称、誕生日・結婚記念日・聖バレンタインデー・クリスマスなどの現代的な洋風の生活行事を志向する。この2つの型は対立しあう関係にある。すなわち、「伝統和風志向」型は「現代洋風志向」型の要素を志向せず、「現代洋風志向」型は「伝統和風志向」型の要素を志向しない。この2つの型を規定する大きな要因は、年齢と都市・農山村という居住地の差異である。すなわち、若年層には「現代洋風志向」型が多く、高年層には「伝統和風志向」型が多い。また、都市居住者には「現代洋風志向」型が多く、農山村居住者には「伝統和風志向」型が多い。
著者
加納 千恵子 衣川 隆生 小林 典子 酒井 たか子 小野 正樹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

非漢字圏学習者の漢字語彙処理能力を字形識別力、意味理解力、読み処理能力、書き処理能力、用法処理能力、音声処理能力などの観点から測定するための標準テストを開発した。平成12年度は、筑波大学留学生センター及び米国カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)において予備テスト(第1版テスト)の実施・検討を行い、本テストに関する資料を準備し、次年度以降のテスト実施に協力してくれる機関、教育関係者に連絡を行った。平成13年度は、本テスト(第2版テスト)を完成し、筑波大及びUCSDにおいて実施、受験者のデータを収集した。また、テスト資料および実施マニュアルを作成し、本研究の協力校として米国ハワイ大学の日本語教育担当者に配布、3月に打合せと研究成果報告を行った。平成14年度は、第2版テストの結果の分析・考察を行って標準化を図り、その研究成果を米国カリフォルニア大学サンディエゴ校で7月11日〜14日に開催された第3回「日本語教育とコンピュータ」国際会議『CASTEL/J2002』において発表した。またその成果に基づいて、テスト問題の形式、内容を修正・改訂し、WEB上で受験可能な漢字語彙力測定テストのプロトタイプ版(第3版テスト)を完成した。そして筑波大の日本語コースにおいてこのWEB版テストを実施し、受験データを収集した。さらに、3月に韓国の慶熙大学校国際教育院を訪問し、現地の日本語教育関係者との意見交換および情報収集を行って、テスト受験者として想定している非漢字圏学習者の中に韓国人学習者を含めるかどうかを検討した。平成15年度は、WEB版テストの外部公開を目指し、筑波大においてさらに受験データを収集、テスト画面および内容の改善を行った。WEB版(プロトタイプ版)漢字語彙力測定テストは、海外の協力機関においては動作環境の確保が難しくまだ実施できていないが、最終年度に当たり、研究成果報告書および「受験のためのマニュアル」資料を作成して印刷した。
著者
國分 俊宏
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、20世紀前半のフランス文学において、言語実験的作品を書いた作家たちのうち何人かを取り上げて、その背景、特質、射程を検討することであった。具体的にはレーモン・ルーセル、ゲラシム・ルカ、ジョルジュ・ペレックの三人を取り上げた。初年度においては、秋に一度、フランスへの研究出張を行い、資料収集に努めた。特にゲラシム・ルカに関連して、ルーマニア・シュルレアリスム関係の古雑誌などのコピーを手に入れた。またその際、特異な文体で知られる現代フランスの作家フランソワ・ボン氏と面会し、インタビューを行った。ジョルジュ・ペレックの資料が所蔵されるアルスナル図書館を紹介していただいたのもボン氏である。第2年度は、ルーセル、ゲラシム・ルカに関する論文をそれぞれ一本ずっ執筆した。この2本の論考は、1年遅れで翌年せりか書房より『ドゥルーズ千の文学』(宇野邦一・堀千品・芳川泰久編著、2011年1月発行)の中の分担執筆分として刊行された。また夏に一度、フランスへの研究出張を行った。その際、フランスにおける若手のペレック研究の第一人者であるソルボンヌ大学教授のクリステル・レッジアー二氏と面会し、関連文献をコピーさせていただくなどした。最終年度には、「レーモン・ルーセル:言葉と物」のタイトルで学会ワークショップを開催したほか、シュルレアリスムの詩人ポール・エリュアールやレーモン・ラディゲらの翻訳をした日本のモダニズム詩人北園克衛を軸に、日仏の言語実験詩人の比較研究にも手をつけた。
著者
岡 佳子 岡村 喜史 岸本 香織 西口 順子 杣田 善雄
出版者
大手前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、日本の宗教とジェンダーを考えるうえで重要な尼門跡文書の分析を通じて、近世社会における尼僧と尼寺の役割を明らかにすることを目的に、(1)慈受院門跡所蔵の「総持院触留」の研究、(2)尼僧を中心とした女性ネットワークの研究(3)比丘尼御所、霊鑑寺門跡の工芸品の調査、以上の3点から研究活動を行った。4ヶ年の期間内に33回の尼寺研究会を開催し、元禄11年~享保21年までの「総持院触留」28冊を講読し、6回の霊鑑寺工芸品調査を実施して人形約170件・染織品約70件・陶磁器約100件の調査データを得ることができた。その成果を纏め、2013年3月に、研究論文6、「総持院触留史料集」を収載した研究報告書を刊行した。本研究によって尼寺を背負う立場にある尼僧たちが積極的に社会に関わっていく姿が明確になった。
著者
出渕 卓
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本年度は 新たに導入された BlueGene/Q (3.5 rack 700 TFLOPS peak)上で、自然界のクォーク質量に等しい物理点上の アップ、ダウン、ストレンジ の軽いクォークの関わる物理量の計算を、効率良く行うための研究を行った結果、5倍から40倍もの計算効率化を果たすことが出来た。 目的とする正確な物理量(高コスト)とその近似計算(低コスト)の両方を、後者の近似計算をより頻繁(正確な計算の~100倍程度の頻度)行うことによって統計誤差を下げ、なおかつ格子理論の対称性を使うことに計算結果にバイアスを入れない All-Mode Averaging (AMA) という 方法を提案した。物理量の骨組みとなるクォークの伝搬関数を計算する際に、長距離の伝搬を支配するクォークの低エネルギーモードを固有ベクトルを求めることにより正確に扱い、短距離伝搬を担う 高エネルギーモードは多項式近似を行う。新しい計算資源である BlueGene/Q や GPU 上で、それぞれの資源の特長を生かした固有ベクトル計算を高効率で行うためのアルゴリズム implicitly restarting Lanczos with Chebyshev acceleration を開発・実装した。BlueGene/Q 上での計算コードは 理論絶対ピークの 30%の速度を超えており、この世代のメニコア環境下では満足のいく効率だと思われる。現在の方法では、より大体積の格子計算では、より大きなメモリ容量が必要 (体積の2乗に比例)であり、ドメイン分割法などの方法で必要メモリを減らすことが現在の課題であるが、これに関しても今現在進展を得つつある。
著者
増井 志津代 大塚 寿郎 高柳 俊一 飯野 友幸 金山 勉 石井 紀子
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、17世紀植民地時代から21世紀に至るまでのアメリカ史におけるキリスト教の果たした歴史的、社会的、文化的役割を特に土着化(Contextuahzation;Americanization)の視点から通史的かつトピカルに分析研究することを目指した。従来の神学的キリスト教研究や教派研究というよりも、キリスト教の果たした役割を宗教史の狭い領域的研究の枠組みから解放し、より広い歴史的、地理的、社会的状況におけるダイナミズムの中で検証し、アメリカ的キリスト教の特性、さらにアメリカ化の過程を詳細に検討することとした。さらに、アメリカ人宣教師による日本における宣教活動を追うことにより、アメリカニズムとキリスト教との関係にも注目した。タイムスパンを長期に設定することで、通事的な研究を目指し、日米から多様な研究者を集めた。初年度には、初期アメリカ研究者David D.Hall教授を招聘し、植民地時代ピューリタニズムについての研究会を開催した。平成18年度は、Richard W.Fox教授を迎え、アメリカ文化とキリスト教についての研究会を開いた。両教授とも、専門研究者との交流だけでなく、ひろく一般、学生に向けた講演も行ない、本領域における学的関心を広く喚起できた。Mark A.Noll教授は来日は果たせなかったが、福音主義とアメリカ政治の関係についての論文を最終報告書に寄稿した。研究代表者、分担者共に、日本とアメリカを往復し、国内外での研究交流をはかると共に、リサーチを勢力的に行ない、学会発表、論文出版により成果を発表した。報告書は今後、研究書としてまとめ、出版を予定している。
著者
村松 俊夫
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

子どもたちが、教科書上の知識として別々にとらえている内容(動き・カタチ・重力)を、授業者が体験的に授業を行うことで、実践を通して理解させることができる遊具の開発をおこなった。これは、科学性と芸術性双方のうえに成り立っているデザインの考え方を、児童・生徒たちの中に芽生えさせるものとしてたいへん有意義であった。この研究により、「物理・数学・美術の一部内容は密接に関係している」ことに気づかせる教育遊具への展開が確認できた。
著者
大河内 信夫 藤澤 英昭 鈴木 隆司 大河内 信夫
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は伝統技能を教育学的な検証を経て学校教育の現場で活用できる題材として開発し、実践によって評価しようとしたものである。具体的には3つの代表的な取り組みを行った。第1に、伝統の刃物づくりの調査とそれを題材としたDVDの製作、第2に銅鏡の製造過程の調査と製作マニュアルとしてのCD製作、第3に伝統的な養蚕の実践とできた繭から絹糸を取り出し小型のランプシェードをつくる題材の開発と実践をおこなった。DVDとCDは千葉県下の市教育委員会へ配布し、その教育的評価を調査した。実践的な検証の取り組みでは、附属小学校において、銅鏡づくりは鋳型づくりと研磨を主に体験して製作し、ものをつくるにはいろいろな道具と時間がかかることを体得した感想が多かった。教員養成学部の授業実践として銅鏡づくりと行灯づくりに取り組み、教員資質にとってものづくりが重要であることを実証した。技能に裏付けられたものを作る能力を定着させる方法論が次の課題である。
著者
曽根 誠一
出版者
花園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

主要伝本のコピーに、書き入れ等の朱・青筆の区別を記入する作業を完了し、それを踏まえて、蘆庵本の特徴を判断する基礎データを24家集について収集した。その結果、伝本には臨模本と校訂本の2系統があることと、伝本間の親疎関係を解明した。また、入江昌喜所蔵家集が全て蘆庵本になった訳ではないことを、『俊頼集』を事例して証明した。
著者
佐野 明人 藤本 英雄 池俣 吉人
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

受動歩行の力学的原理に基づき, 13時間45分の連続歩行に成功し,ギネス世界記録に認定された.また,ヒトが必要最小限のアシストを加えることで,平地を含むヒトの生活空間での歩行が可能となった.さらに,ヒトに酷似した外装を施すと,ヒトの歩行と見間違えるほどであり気配さえ感じる.上体効果により歩行効率を高められることが実証され,腰関節トルクは脚および膝関節に有効に働くことが示され,膝折れやつまずきによる転倒を低減させた.また,高速移動として,時速10kmクラスの真にヒトのような走行を実現した.
著者
尼ヶ崎 彬 副島 博彦 貫 成人 石渕 聡 荒谷 大輔 島津 京 丹羽 晴美 岡見 さえ
出版者
学習院女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

コンテンポラリーダンスは、1990年前後に世界各地で生まれ、わが国もその中心のひとつである。本研究は、その公演規模(社会的ニーズ)、美的質、社会基盤(政府などによる支援など)について、過去25年分10万件におよぶ統計資料作成、各国政府資料調査、聞き取りなどをおこない、各国の状況を明らかにした。その結果、公的支援が貧弱なわが国においても、公演数/支援額比においては見るべきものがあることなどが明らかになった。
著者
能上 絢香
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

(1)研究背景・目的強相関電子系における光誘起ダイナミクスの研究では、電荷、スピン、軌道、格子の自由度と光誘起ダイナミクスの相関が注目されている。本研究では、軌道整列系V酸化物AV_<10>O_<1>5(A-Ba,Sr)に着目した。BaV_<10>O_<15>では、T_c=123Kで軌道整列しV三量体を形成する構造相転移が起こるが、SrV_<10>O_<15>は、そのような構造相転移は起こらない。これまでの研究で、BaV_<10>O_<15>では、三量体相から三量体のない相への光誘起相転移が起こったが、SrV_<10>O_<15>では、格子歪みと結合した電子の励起状態が弾性波でサンプルの奥行き方向へ進むことを明らかにした。この結果を踏まえ、本研究では、BaV_<10>O_<15>の壁開面における光誘起ダイナミクスの温度依存性を測定した。(2)研究方法フェムト秒反射型ポンププローブ分光測定を行った。光源はTi:sapphireレーザー(パルス幅:約130fs,エネルギー:1.56eV)で、プローブ光の反射率変化を観測した。プローブ光は循環水に集光して波長変換し、0.9eV-2.5eVで測定できる。(3)研究成果ポンプ光照射後の反射率変化は、T>T_cでは時間に対する振動が現れて、振動の周期はプローブ光の波長に依存するという時間依存性が観測された。これより、BaV_<10>O_<15>でも転移温度より高温では、格子歪みと結合した電子の励起状態がサンプルの奥行き方向へ進んでいると考えられる。また、振動の振幅は、高温から転移温度へ向かって温度を下げていくと、減少していくことが観測された。転移温度より高温においても局所的にV三量体が形成されているため、格子歪みと結合した電子の励起状態が進んでいくことが妨げられていると考えられる。
著者
加藤 淳子 CROYDON Silvia
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

裁判員裁判の事件の大多数において被害者参加人陳述が使われる中で、被害者参加精度のあり方やその有無の実証的評価を行うことにした。検討の対象は、被害者参加人陳述が豊富に採用されたある殺害事件とした。そこで述べられた被害者参加人陳述の効率を、歴史的に考慮された刑罰を与える目的として、もっとも影響力があったとされる3つ基準、「修復的司法」、「応報的正義」「更生司法」の促進効果に照らして評価した。「修復的司法」に関しては、検討対象の事件から言うならば、遺族陳述に遺族の心的回復のような精神治療効果がなかったとは言えない。しかし、「望んだ結果にならなかったことは大変残念で【ある】。裁判官・裁判員の方々には一定の理解をしていただけたと信じて【いる】が、それでも超えることのできない司法の壁を痛感してい【る】」という裁判後に新聞で発表された遺族の言葉からすると、彼らが期待した判決が下されなかったことで消えることの無いところの苦痛に制度への失望が加わったことを認めざるを得ない。遺族に、当事者が求めたのと異なる刑を判断者に要請するような陳述が認められたことで、彼らにその後下される刑への誤った・非現実的な希望を持たせ、修復的司法の可能性をむしろ損失させた。次に、量刑をより当犯行に匹敵するようなものにするというこの遺族陳述の応報的効果については、遺族陳述は確かに多くの情報を裁判官・裁判員に与え、法廷で流された涙からすると、少なくとも何人かの裁判員の心も動かせた。しかし、「感情を抑えて、法にのっとって判断した」、「遺族の悲痛な声に胸が痛くなったが、冷静さを保って判断するよう努めた」と裁判員2人が後に話したように、刑を決める際、遺族陳述から受けた影響を故意に抑えたならば、それらの陳述の量刑判決への貢献が妨害されたことになるであろう。最後に、「更生司法」に関しては、犯人を自分が犯した悪事の破壊的影響に立ち向かわせ、それを把握させることによって、当人の更生を助け、再犯防止をする、とされる遺族陳述の更生効果が存在するかどうかというのは、服役後の態度を長い期間見守らないと評価しかねる。しかし、当事件を一目見た限りで言えるのは、被告人が遺族から厳しい言葉を聞かされ、反省を示したからと言って、再犯に走らない確信は得られない。なぜなら、彼は今回の事件を起こすまで犯罪を2度も犯してきたが、そのたびに謝罪記録を残している。3度目の謝罪こそが誠実であるという保証は全くない。
著者
大城 浩子
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

11q23転座型急性リンパ性白血病(ALL)は強力な化学療法や、造血幹細胞移植を施行しても予後不良な疾患である。近年、移植後にドナーのNK細胞によるGVL効果(移植片対白血病効果)によって、一部の白血病で再発率が低下することが報告された。今回の研究では臍帯血由来のNK細胞が、KIR(NK細胞レセプター)リガンド不一致の11q23転座型ALL細胞に対して、細胞傷害活性が上昇することが示され、臍帯血移植においてKIRリガンド不一致ドナーを選択することでより強力なGVL効果が期待できると思われる。
著者
中村 信次
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

視覚刺激による自己運動知覚(ベクション)に及ぼす視覚刺激の3次元的布置の効果を心理実験を用いて検討し、(1)視覚刺激の奥行き知覚に変動がない条件においても、視野中心部に呈示された視覚刺激は、同一の面積をもつ周辺刺激と同等の強度を持つベクションを誘導可能であること、(2)静止背景によるベクション抑制には視野の周辺部が、静止前面によるベクション促進には視野の中心部がより大きな影響を持つこと、などを明らかとした。