著者
弘田 義人 六車 耕平 今中 雄一
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.11-19, 2020-04-24 (Released:2020-04-28)
参考文献数
36

本研究の目的は,日本の医療制度下における費用を用いた費用効果分析(費用効用分析),費用便益分析を網羅的に収集し,その特徴を検討することである。5つの電子データベースを用い,日本の医療制度下における費用を用いた増分費用効果比,増分費用効用比,純金銭便益,純健康便益,増分純便益のいずれかを検討した文献を系統的レビューの手法に則り検索・選択した。その後必要項目を抽出し,文献の特徴を検討した。その結果,1983年から2018年に発表された325文献を採択した。2017年以降文献数は急増しており,ガイドライン等の推奨に沿っている研究は近年増加傾向だったが,欧米における費用効用分析のレビュー論文の結果と比較すると,推奨に沿っていない研究が多かった。より一層,費用効果分析・費用便益分析の質の向上を図るべきである。また医療経済評価の方法論の標準化の推進に資するため,日本における医療経済評価研究を集積したデータベースの構築が望まれる。
著者
松浦 祐介 川越 俊典 土岐 尚之 蜂須賀 徹 柏村 正道
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.181-193, 2009-06-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
3 3

細胞診による子宮頸がん検診はその有効性を証明する十分な証拠があるにもかかわらず. 日本のがん検診受診率は他の先進諸国と比較して格段に低い. 順調に低下してきた死亡率もここ数年上昇傾向にある. 子宮頸癌の発生にはヒトパピローマウイルス(HPV)が関与していることが明らかであり, 性意識の変革や性行動の多様化により若年層で子宮頸癌の発症率が特に増加していることは大きな社会的問題である. 細胞診による子宮がん検診には約10%の偽陰性率がありなかでも頸部腺癌症例に偽陰性が多い. 細胞診のみによるがん検診には限界があるため, わが国でもがん検診の精度を上げる目的で液状検体(liquid-based cytology: LBC)を使用したり, 細胞診検査にHPV検査を導入する動きがある. 細胞診によるがん検診は様々な問題を抱えているが, 子宮頸癌による死亡率を減らすためには国・地方自治体・医療機関・企業・教育の現場などが現状を正確に理解し, それぞれが課題に対して積極的に取り組む姿勢が必要である.
著者
杉原 隆太 松尾 浩志 平田 明生 柏瀬 一路 樋口 義治 安村 良男 上田 恭敬
出版者
特定非営利活動法人 日本冠疾患学会
雑誌
日本冠疾患学会雑誌 (ISSN:13417703)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.26-30, 2016 (Released:2017-03-24)
参考文献数
8

症例は74歳男性.2013年11月上旬に近医で腹部大動脈瘤を指摘されて当院へ紹介された.術前の冠動脈CTでは,左冠動脈から右冠動脈が分岐する単一左冠動脈症と,左冠動脈主幹部と前下行枝の石灰化を伴う高度狭窄が認められた.腹部大動脈瘤は瘤径の拡大傾向と胸背部痛が認められたため切迫破裂状態と考え,まず腹部大動脈瘤に対して開腹手術を行った.術後狭心症症状が増悪したため,陳旧性脳梗塞による右半身麻痺や肺気腫などの全身状態を考慮し,経皮的冠動脈形成術による血行再建術を行う方針とした.術中は,ノルアドレナリン,アトロピンの使用に加えて,大動脈バルーンパンピングでサポートを行いながら,冠動脈灌流型バルーンを用いて経皮的冠動脈形成術を合併症なく施行することができた.術後経過良好であり,療養型病院へ転院となった.単一左冠動脈症例の左冠動脈主幹部病変に対して冠動脈灌流型バルーンを用いて経皮的冠動脈形成術を施行し得た1症例を経験したので,文献的考察を踏まえて報告する.
著者
平井 真理
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.455-458, 2011 (Released:2015-06-10)
参考文献数
15
著者
小泉 武夫
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.835-839, 2013 (Released:2013-07-23)
被引用文献数
1
著者
福林 靖博 奥田 倫子 中川 紗央里
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.s1, pp.s80-s83, 2020 (Released:2020-10-09)
参考文献数
3

国立国会図書館は、2020年内に公開を予定している「EAST ASIA DIGITAL LIBRARY(EADL)」構築プロジェクトに参画している。EADLは、漢籍など東アジア諸言語で記されたパブリックドメインの書籍等のデジタル化データ(画像データ及びメタデータ等)のコンテンツの検索・閲覧を可能とするポータルサイトである。本プロジェクトは、2010年に国立国会図書館、韓国国立中央図書館及び中国国家図書館との間で締結された「日中韓電子図書館イニシアチブ」の下、3か国共同で開発を進めてきたものであるが、現在は日韓2か国でプロジェクトを進めている。本発表では、機能やコンテンツといった概要の紹介だけでなく、構築に至る背景や構築のプロセス、今後の展望等についても報告する。
著者
近藤 久 浅沼 由馬
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.G-I36_1-11, 2019-03-01 (Released:2019-03-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

Hyperparameters optimization for learning algorithms and feature selection from given data are key issues in machine learning, would greatly affect classification accuracy. Random forests and support vector machines are among some of the most popular learning algorithms. Random forests that have relatively few hyperparameters, can perform more accurate classification by optimizing these parameters without requirement of feature selection. Same as random forests, support vector machines also have a few hyperparameters. However, whether or not to perform feature selection at the same time as optimization of these parameters greatly affects classification accuracy. Usually, grid search method is used to optimize hyperparameters. However, since this search method is performed on predetermined grids, the detailed optimization cannot be realized. In this paper, we thus introduce an artificial bee colony (ABC) algorithm to optimize hyperparameters and to perform more accurate feature selection. ABC algorithm is one of the swarm intelligence algorithms used to solve optimization problems which is inspired by the foraging behaviour of the honey bees. Using KDD Cup 1999 Data that is a benchmark of network intrusion detection classification, experimental results demonstrate the effectiveness of our method. The proposed method is superior in classification accuracies to existing methods for the same data, where swarm intelligence is used to hyperparameters optimization and feature selection. Our method also shows better performance than classification accuracies of random forests and SVM that are learned using default parameters values provided by scikit-learn, an open source machine learning library for Python.
著者
長野 隆男
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成18年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.8, 2006 (Released:2006-09-07)

〔目的〕共焦点レーザー走査顕微鏡(以下,CLSM)には,厚みがある試料でもボケることなく観察できる特徴がある。そこで,CLSMを用いて,うどんの構造とデンプン粒の形状変化について観察をおこない,官能検査と力学物性測定結果との関係を検討した。〔方法〕小麦粉は,ホクシン,ASW,農林61号のもの3種類を使用して,うどん試料を作製した。官能検査は農林水産省食品総合研究所による小麦のめん適正評価法に基づいておこなった。力学物性測定は,5kgロードセルと測定ジグCooked Pasta Quality/Firmness Rig(A/LKB-F)を装着したTA-XT2iを用い,AACC Method 16-50に基づいておこなった。うどんとデンプン粒の観察はローダミンBで蛍光染色し,蛍光レーザー走査共焦点顕微鏡システム(デジタルエクリプスC1,ニコン)を使用して, 543nm(HeNeレーザー)励起で蛍光画像を取得した。〔結果〕CLSMを使用してうどん表面の観察をおこなったところ,うどん表面の網目構造が細かく万遍なく広がった構造をしているほど,官能検査で食感の評価が高くなること,力学物性測定で破断歪が高くなることが対応すると考えられた。次に,デンプン粒の加熱による変化をCLSMで観察したところ,デンプン粒の膨潤開始温度とデンプン粒の平均粒径変化の2つについて知見が得られた。さらに,デンプン粒の平均粒径が最大となるときの大きさを測定することで,デンプン粒が大きくなる程度を数値化できた。以上のことから,CLSMは,うどんの構造とデンプン粒の形状変化の観察に用いることでき,うどんの粘弾性特性の解明に有用な手法であると考えられた。
著者
河内山 義夫 山口 勝巳 橋本 周久 松浦 文雄
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.32, no.10, pp.867-872, 1966-10-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
21
被引用文献数
17 19

A blue-green chromoprotein was isolated from the eel serum and characterized for some physico-chemical properties. It behaved homogeneously both in ultra-centrifugation and in electrophoresis. Its absorption maxima appeared at 279, 383 ?? 4 and 704 ?? 5mμ in an aqueous solution, indicating presence of a biliverdin-like prosthetic group. The isoelectric point was at about pH 4.7 and the molecular weight (M8. D), 89, 100. It showed no toxicity to mice, suggesting that the pigment and the toxicsubstance in eel serum are different.
著者
Hiroshi Kajihara Atsushi Yamaguchi
出版者
The Plankton Society of Japan, The Japanese Association of Benthology
雑誌
Plankton and Benthos Research (ISSN:18808247)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.337-341, 2020-11-18 (Released:2020-11-12)
参考文献数
31

The three currently recognized species comprising the pelagic polystiliferous hoplonemertean genus Protopelagonemertes Brinkmann, 1917 are supposedly distinguishable chiefly with respect to the number of proboscis nerves: 29 (varying from 22 to 30) in P. hubrechti (Brinkmann, 1917); 19–21 (varying from 19 to 22) in P. beebei Coe, 1936; and 36 in P. joculatori Van der Spoel, 1988. A single specimen collected off the Pacific coast of Hokkaido, Japan, herein identified as P. beebei, was found to possess 19–23 primary proboscis nerves. In addition to the primary proboscis nerves, the material also possessed 12–16 secondary proboscis nerves, which are discernible from the primary nerves in that they coexist with putative glial cells. Although secondary proboscis nerves have been identified in some other species in the Pelagica, they have not previously been described for any members of the Protopelagonemertes. Our findings thus prompted us to question the validity of morphological species delimitation within this genus, given that the distinction between primary and secondary proboscis nerves has previously not been taken into consideration. Close examination of the specimen in the living state revealed that it is characterized by a pair of cephalic furrows, a structure commonly found in benthic representatives of the phylum, but herein confirmed for the first time among the Pelagica. A 658-bp partial sequence of the mitochondrial cytochrome c oxidase subunit I gene from the newly examined specimen was found to be identical to sequences derived from two other specimens previously collected in Sagami Bay, thereby indicating that P. beebei may occur commonly in Japanese meso- to bathypelagic waters.
著者
対馬 栄輝
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.181-187, 2002 (Released:2002-08-21)
参考文献数
15
被引用文献数
15 6

最近,理学療法における研究報告では,検査・測定に対する信頼性を検討する機会が増えてきた。それと同時に適用上の問題も出てきたと考える。信頼性係数として級内相関係数(ICC),クロンバックのα係数,Cohenの一致係数(κ係数),Kendallの一致係数(W係数)を挙げ,これら信頼性係数の特徴を個別に検討し,シミュレーションも行って正しい適用を見出すことが目的である。 ICCは適用範囲の広い信頼性係数であるが,検者または繰り返し測定間と被検者・測定のばらつきの比によって値が決まるため,SEMの併記が必要となる。κ係数は,3人以上の検者の場合はFleissによるκ係数が適用となるが,それと比較するときは検者が2人であってもFleissのκ係数を使う方が妥当である。また,W係数とκ係数を同時に用いて両者の欠点を補うような使用が望ましい。理学療法では順序・名義尺度のデータを扱う機会が多く,ICCよりもκ係数やKendallの一致係数が適用となるケースの方が多い。しかしどの係数も利点欠点があるため,いくつかの注意点を勘案して適用する必要がある。なによりも重要なのは,データをよく観察することであり,また係数やその有意性のみに固執しないことが挙げられる。
著者
佐藤 志彦
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.446-448, 2019 (Released:2020-04-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

福島第一原子力発電所事故では大量の放射性物質が環境中に放出したが,チェルノブイリ原発事故のような炉心が直に大気と触れるような事象は発生しなかったため,核燃料を主とした放射性粒子の放出はないものと考えられていた。しかし2013年以降,放射性セシウム(Cs)を取込んだケイ素が主成分の微粒子が報告され,Cs-bearing particle,不溶性セシウム粒子などの名称で放射性粒子の存在が認知されるようになった。この想定になかった未知の放射性粒子に対し,さまざまなバックグラウンドを持つ研究者が,日夜,発生原因の解明を試みている。本稿では不溶性セシウム粒子がなぜ不思議な存在であるか,そしてどうして福島第一原発の廃炉で重要かを紹介する。
著者
横山 昌幸
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.89-97, 2018-03-25 (Released:2018-06-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

EPR効果についての誤解と批判について解説する。1986年に論文発表されてから30年以上が経過し、現在ではEPR効果は日本DDS学会はいうに及ばず、医薬工の関連する学会でも説明なしに引用されるほど広く知られた概念となっている。そんな状況であるからこそ、EPR効果について基本的な誤解が起こり得ると、筆者は考えている。また、誤解はなくとも、どこまでの現象をEPR効果として定義するかについては、議論があるところである。本稿の前半部分では、EPR効果の歴史と定義について記述し、誤解されやすい点について解説を加えた。本稿の後半部分では、EPR効果に対する批判論文を引用し、その内容の要点をまとめて、筆者の意見を加える。筆者の意見の大半は、この批判に反対するものであるが、このような批判を通じて議論を起こすことは科学の発展に不可欠なことと考えている。
著者
中島 理恵
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.81-89, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
14

製薬企業が行うプロモーションのなかには虚偽や誤解を招く表現を用いているものも存在する. このような状況は最終的には医薬品を使用する患者の不利益につながるため, 第3者による製薬企業の新薬プロモーション活動の監視制度の確立が求められている. 本研究では, 我が国における製薬企業の医薬品プロモーション活動の監視制度の在り方を検討するため, すでに製薬企業の医薬品プロモーションの監視活動を行っている米国FDA (Food and Drug Administration) の取り組みを例示するとともに, 米国における医薬品広告違反の実態をFDAから発行されたwarning letterとuntitled letterを参考にして分析した. FDAでは, 疾病専門領域ごとの担当審査官を設置し, 膨大で専門的なプロモーション資材を効率良くレビューしている. また, 医局や講演会といったFDAの目が届きにくい現場でのプロモーション違反対策として, 現場の医療従事者に向け, 教育と報告窓口の両方の側面をもつBad Ad Programの制度を提供している. 米国においては, 近年電子媒体での違反が増加しており, 今後はFacebookなどのソーシャルメディアからの情報の監視が重要となる.