著者
門脇 正史
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-8, 2002-09-30
被引用文献数
1

ニホンアカガエルは,早春に水田の止水で繁殖する.しかし,近年多くの水田が圃場整備により乾田化し,ニホンアカガエルの繁殖場所である湿田は減少している.また,ニホンアカガエルは,止水であるにしても,ヨシのような植生に被われた湿地ではほとんど繁殖しないことが観察されている.すなわち,ニホンアカガエルとその繁殖場所を保全するためには,繁殖場所の環境条件(例えば,水温,植生被度,pH等)について明らかにしなければならない.水田と植生に被われた湿地の縁のような開けた水域の1日の平均水温は,植生に密に被われた湿地の水温よりも有意に高かった.一方,それらの調査地点間でPHおよびECにはほとんど違いはなかった.開けた浅い水域では,1日中水温が高いことにより,ニホンアカガエルの胚の発生が促進され,夜間や夜明けの低温を回避することが可能となる.湿田の存在はニホンアカガエルやその繁殖場所の保全のためには不可欠であることが示唆される.
著者
慶伊 富長
出版者
東京 北隆館=Hokuryukan Co., Ltd., Tokyo
雑誌
觸媒 (ISSN:05598958)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.40-62, 1950-02

綜説
著者
中谷 幸司 高山 慎一郎 河原 宏昭 堀川 雄太 村上 尚美 堀口 博司 平子 敬一 橋本 英一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.101, pp.35-40, 2009-06-18
被引用文献数
2

日本国内における宇宙開発活動の裾野を広げることを目的として,JAXAは,μ-Labsatで獲得した50kg級小型衛星技術を関西地区の中小企業や大学へ移転し,まいど1号(SOHLA-1)を開発した.本発表では,システム技術,製造技術,試験技術の移転内容やSOHLA-1の衛星システムについて述べるどともに,運用結果や軌道上で得られた実験データについて説明する.また,SOHLA-1の開発を通して得られた技術移転に関する知見に触れ,今後,同様な技術移転活動を実施する場合に,これを効果的に進めるための指針について考察する.
著者
徳田 恵一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.1005-1011, 2004-10-15
被引用文献数
5

音声認識の分野では,時系列の統計モデルである隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model: 以下HMM)が音声パラメータ系列のモデル化手法として有効なことが知られ,実用的なシステムにおいても広く用いられている.本稿では,HMMの定義および関連するアルゴリズムについて,概説した上で,音声認識および音声合成におけるHMMの利用について述べる.また,HMMの限界を指摘した上で,次世代音声モデルとして期待される手法についても触れる.
著者
夏目 誠 太田 義隆 藤本 修 南野 壽重 浅尾 博一 藤井 久和
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-15, 1985-01-20
被引用文献数
8

職場不適応症の病態生理学的特徴を明らかにするため,同症の代表的タイプといえる中核タイプ25名および脱落タイプ14名,計39名に眼球運動,脳波や顔面表情筋筋電図などの精神生理学的指標を用いて,ポリグラフの記録を行い,健康成人16名(対照群)のそれと比較検討するとともに,臨床的特徴との関連についても考察を加えた.得られた結果は以下のとおりである.1.職場不適応症の中核および脱落タイプは,対照群に比べ,安静時に低振幅急速眼球運動(r)の出現回数は少なく,シュウ眉筋筋放電振幅も低い値を示した.2.暗算刺激負荷により,中核タイプは安静時よりrの出現回数が増加している例数が,対照群に比べ多かった.シュウ眉筋においても同様の傾向を示した.一方,脱落タイプでは,両指標ともほとんど変化を示さなかった.3.暗算刺激終了後も,中核タイプは安静時より,rの出現回数の増加と両表情筋筋放電の高振幅が持続しているのに対し,脱落タイプでは,これらの特徴が認められなかった.以上の結果と同症両タイプの臨床的特徴との関連について,考察を加えるとともに,両タイプの発症機制解明に精神生理学的検索の有用性を明らかにした.
著者
柴田 義貞 ZHUNUSSOVA Tamara ZHUNUSSOVA T.
出版者
長崎大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

カザフスタン共和国のセミパラチンスク核実験場周辺地域住民における放射線被曝の影響を明らかにすることを目的として、乳がんの症例対照研究をセミパラチンスク市内にあるがんセンターとの共同研究として開始した。対象者は、1935年から1962年までに生まれ、核実験場周辺に在住する女性のうち、1980年から2005年までに原発性乳がんの診断された患者(症例)と、1症例に2人を年齢でマッチさせて選択した対照である。事前にがんセンターと緊密な連絡をとり、症例約100名と対照約200名のリストを作成し、2005年8月上旬に約1週間をかけて現地の診療所を回って面接調査をした結果、85人の症例と163人の対照から、居住歴、現在の生活状況、がんの家族歴、妊娠・出産歴、哺乳、食事、飲酒、喫煙、職業などの情報を得た。本年度は,これらの対象者の被曝線量推定のため、現地を訪問して居住歴の追加調査を行うとともに、対象者が居住していた村の緯度、経度、高度を測定した。これらのデータを日本に持ち帰り、国内研究者の協力を得て、対象者個人の被曝線量の推定を開始し、対象者の67%(166人)について被曝線量の推定が完了している。推定被曝線量は0-954.7mGyにわたっており、分布の25%点、50%点、75%点はそれぞれ0mGy、0.25mGy、30.7mGyであった。残りの対象者について、引き続き線量推定を行っている。
著者
並木 亮佑 谷口 香苗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.453, pp.1-4, 2011-02-25

アンケートなどの多変量データを用いてクラスター分析を行う場合、マルチコが発生し、クラスターが得られない場合がある.そこで、有意差の見られる高相関グループより、グループを代表する変量を残して他を削除し、有意差の見られない変量はそのまま採用する高相関代表化法および、変量ごとの確率分布の類似性に着目して分類する分布類似度検査法を提案する.そして、実際にマルチコが発生しているアンケート結果を用いて、従来法のward法および、提案する2つの手法を用いてクラスター分析を行った結果、いずれの手法でも3つのクラスターが抽出可能であり、同一のネーミングができた.特に、ward法はクラスター分割やネーミングに困難さがあるが、提案手法は容易に分割可能であった.
著者
逢坂 哲彌 門間 聰之 庄子 習一 杉山 敦史 中西 卓也 本間 敬之 松方 正彦 水野 潤 関口 哲志 吉野 正洋 冨中 悟史
出版者
早稲田大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2008

電気化学ナノテクノロジーに基づく「固液界面制御による新機能発現のための材料開発研究」と「界面構造や界面現象の実践的な活用によるデバイス開発研究」に総合的に取り組むことで、電気化学に立脚した材料およびデバイスの実用化研究の根源にあるものを事象ごとの経験論から抽出し、アウトプットとしてのデバイス(具体的にはエネルギーデバイス、センサデバイス、電子デバイス・磁気記録デバイス)を縦糸に、機能発現および界面設計の次元(3次元、2次元、0次元)を横糸に、「電気化学デバイス工学」という学理の構築を図った。
著者
竹内 郁雄
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

不完全にしか情報を共有し得ない多数の自律的なエージェントが,動的に変化する環境のもとで,実時間で協調的に振る舞って所定の目的を達成するシステムの研究を行なった.本研究は,この問題の論理的・ソフトウェア的側面に着目し,国際的協調研究が行なわれているロボカップサッカーとロボカップレスキューのシミュレーション部門をテストベッドとして,机上検討に留まらない実証的なシステム作成を進めた.本研究の成果の最も特筆すべき点は,実時間自律分散協調問題を,可能なかぎり人間に近い方法で解いたことである.すなわち,ロボカップという文脈で,個々のエージェントには人間と同等の認知限界や能力限界があるという制約を課した.チームプレイのために人間と同等の「かけ声」しか使わないことがその最たる特徴である.それにもかかわらず,本研究期間内に開催された公式国内競技会では30チーム程度の中で常に最上位の成績を修めることができた.また,マルチエージェントシステムとしてのロボカップでは,並行プログラミングそのものの難しさが課題となる.このため,我々は実時間分散協調システムのテスト・デバッグを可視化する支援環境の開発も行なった.これによって一般の並行プログラミング支援環境にも有用な知見が得られた.
著者
尾崎 弘明 丘 華
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.58, no.556, pp.3675-3680, 1992-12-25

In this paper, a solution for the two-point boundary value variational problem, whose basic algorithm was published earlier by us, is formalized completely and universally. The optimum solution of the variational problem is obtained as a uniform B-spline curve by parallel and iterative computation. The degree of the B-spline used can be selected to correspond to the specified problem, and the solution is derived as a set of the control points of the B-spline. The algorithm is very simple and easily applicable to various engineering problems. As an application, trajectory planning of a manipulator with redundant degrees of freedom and a specified end effector path is selected, and the objective function which takes account of both the smoothness of the trajectories and the accuracy of the end effector path is constructed using the relative weighting coefficients. The effectiveness of the algorithm is well confirmed by the numerical examples.
著者
寺崎 俊夫 北村 貴典 城戸田 巌 石村 知樹 浜島 志伸
出版者
一般社団法人 溶接学会
雑誌
溶接学会論文集 (ISSN:02884771)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.81-86, 2003 (Released:2004-06-30)
参考文献数
10
被引用文献数
8 12

This paper deals with experimental data and a predictive method of longitudinal shrinkage and bending distortion which are important in the development of the high accuracy production system of the large welding structures. The longitudinal shrinkage and bending distortion can be calculated from the inherent force, namely Tendon Force, which is related to the total of the inherent strain. First the experimental values of the longitudinal shrinkage, longitudinal bending distortion and the inherent strain were obtained under various welding conditions. Next, the theoretical equation was proposed to calculate the longitudinal shrinkage and bending distortion from the inherent strain. As the results, the validity of the theoretical equation on the longitudinal shrinkage and bending distortion is shown by the comparison between values predicted from inherent force and experimental values.
著者
上保 秀夫
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

過去や現在に関する情報に焦点を当ててきた従来の情報検索研究に対し、本研究では未来に関する情報の検索技術および検索行動に焦点を当て、その技術評価基盤の構築を行った。その結果、未来情報に関する検索行動が、過去や現在の検索行動と比較して、どのように異なるのか明らかになった。また、未来情報の検索技術を評価することが可能な研究用データセットを構築し公開した結果、米国、英国、フランス、ドイツ、インド、中国、日本の研究グループに活用され、技術開発に貢献した。
著者
河尻 耕太郎 TIMOTHY G. Gutowski
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011

本研究において、経済と環境の両側面から、最適な太陽電池産業のグローバルなサプライチェーンを明らかにし、それを実現するための政策について定量的に検討した。具体的に、コスト分析用データベースの開発、サプライチェーン最適化シミュレーターの開発、政策による CO2 排出量削減効果の評価を行った。成果は、学会発表、論文投稿を行うとともに、世界の太陽電池発電量、電気代削減金額、CO2 削減量を計算できるソフトを開発した。
著者
小田 竜樹
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

スピン軌道相互作用などほとんど全ての相対論効果を含む電子に対する擬ポテンシャルの開発を推進し、これらを既存の第一原理分子動力学法へ組み込む開発研究を行い、さらに開発された計算コードを用いて、スピントロニクス等で重要となる磁気異方性の電界効果や半導体のラシュバ効果といった新しい研究分野において計算科学的理論的研究を推進した。その結果、開発した計算コードがこれらの分野において重要な研究手段を提供することを実証した。