著者
佐藤 淳也
出版者
岩手医科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

現在、医療従事者の尿中から抗癌剤が検出されたとする人的被曝や調製室、安全キャビネット内に抗癌剤が残留するとした環境被曝の報告が相次いでいる。医療従事者における職業的抗癌剤被曝は、微量であるが長期にわたるため生殖毒性や発癌のリスク増加につながる。そこで、光エネルギーを利用して活性酸素を生じ、あらゆる有機物を分解する特性を有した光触媒を利用して、医療環境に残留する抗癌剤を分解し、医療従事者の職業的抗癌剤被曝を低減することが本研究の目的である。これまでの研究において、安全キャビネット内のステンレス板上に抗癌剤(シクロポスファミド)を実際の飛散状況同様に塗布し、ブルッカイト型二酸化チタン水溶液を噴霧した。これに、近紫外線を12時間照射した結果、シクロポスファミドの分解(分解率83%)を認めていた(佐藤淳也他,医療薬学37(1)57-61,2011)。しかし、シクロポスファミド以外の抗癌剤についての分解能については、不明であった。そこで、23年芝の研究にて、複数種の抗癌剤(5-フルオロウラシル、メソトレキセート、パクリタキセルおよびイリノテカン)での分解特性を評価した。その結果、上記の各抗癌剤において、既報に準じた方法によって、それぞれ分解率は、86%,97%,99%以上(定量限界以下)および87%の分解率が得られた。以上より、光触媒は、シクロポスファミド以外のあらゆる抗癌剤についても普遍的に分解する可能性が高く、医療現場における抗癌剤分解の有用な方法になると考えられた。
著者
高森 昭光
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、地球上で用いる地震計や傾斜計、地球観測用人工衛星で用いる加速度計(重力計)などの観測機器で必要とされるフィードバックのために光の輻射圧を利用する「光アクチュエータ」についての研究開発を行った。具体的には、数ワット程度のレーザー光源を用いることによって磁気浮上支持した小型回転体の姿勢制御が可能であることを示し、光アクチュエータが地球観測装置の参照マス制御手段として有効であることを明らかにした。
著者
玄侑 宗久
出版者
新潮社
雑誌
新潮45
巻号頁・発行日
vol.30, no.9, pp.178-185, 2011-09
著者
西村 惠信
出版者
河原書店
雑誌
茶道雑誌 (ISSN:02890062)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.39-46, 2011-08
著者
竹貫 元勝
出版者
淡交社
雑誌
淡交 (ISSN:02893908)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.92-95, 2011-08
著者
田中 圭
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、「接着剤と棒状接合具を併用した木質構造接合法」とその類似の接合法において、既往の研究を整理した上で、樹種の違いや剛性の差異、使用する接合具の種類や径、使用する接着剤の強度特性の把握、縁距離や接合具間隔による強度性能への影響などについて、実験を行い、データを蓄積・整理を行った。また、接着剤依存型の接合法の性能評価方法及び設計用特性値の取り方について検討し、いくつかの新しい提案を行った。
著者
気谷 陽子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.103-121, 2007-06-20

「学術情報システム」の最終利用者による学術図書の需要を近似する要求タイトルにもとづいて,未所蔵/所蔵を従属変数,出版地・出版者・出版年・分野を独立変数とするロジスティック回帰分析を行ない,ここで求めた回帰係数を用いて「学術情報システム」の総体としての蔵書で未所蔵になりがちな図書群の性質を調べ,次の知見を得た。出版年では,1979年以前で未所蔵図書の発生の確率を高める効果がある。出版地では,日本<南・北アメリカ諸国・イギリス<欧州(イギリスを除く)<アジア・アフリカ・オセアニア諸国という順,出版者では,出版社<民間・学会<政府機関<大学という順,分野では,人文科学<理学<工学<社会科学<生命科学という順に,未所蔵図書の発生の確率を高める効果がある。なお,生命科学分野と工学分野では解説書,技法書の需要が多く,これらの資料タイプで未所蔵図書が発生していた。
著者
福田 敬子
出版者
神戸市立工業高等専門学校
雑誌
研究紀要 (ISSN:09101160)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.61-66, 1997-02-28

"Dainippon Jishin Shiryo" is one of the historical materials in pre-modern Japan. Settsu was badly damaged by the Great Hanshin Awaji Earthquake, so I made a list of the earthquakes which had happened in Settsu. The background of Minoru Tayama, the author of the book, has not been known. We knew he had a younger brother whose name was Katai Tayama. Katai was a great novelist of naturalism. Minoru lived an unhappy life because he was involved in a trouble.
著者
成瀬 治興 内田 季延 松本 泰尚 深田 宰史 塩田 正純 北村 泰壽 国松 直 伊藤 和也
出版者
愛知工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、平坦道路を対象とするエネルギーベースに準拠した道路交通振動予測式(INCE/J RTV-MODEL2003)の適用道路構造種別の拡大を目的として、3mプロフィル計に代わる路面平坦性の計測方法として、車載型IRI評価システムの適用を検証し、利用可能であることを確認した。次いで、試験車輛を用いた盛土・切土道路での実測調査により、平坦道路予測式を他の道路構造に適用するための基礎データを蓄積した。
著者
中島 明子 坂田 実花 鈴木 浩
出版者
和洋女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

予備調査を踏まえ、東京都墨田区内の高齢者730人のデータを解析。98%が墨田区内での居住継続希望であった。さらに自宅継続・区内転居・区外転居希望者別に住要求及び生活要求について分析し、居住継続要因と非継続要因を考察した。居住継続支援としては、民間借家対策、耐震・老朽化対策と併せ、経済及び健康対策が必要である。これに対し公的・民間セクターが相互に補完しあう"すみだ型地域居住支援システム"を構想した。
著者
山澤 一誠 鈴木 可奈 横矢 直和
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.9, pp.1561-1569, 2011-09-01

近年,付箋の直観性・操作性を模倣した電子的な付箋システムが開発されている.本研究では電子的な付箋の利点であるマルチメディアへの対応と,紙媒体の付箋の利点である一覧性や直観的な操作感を,拡張現実感(AR)を用いて融合するシステムを構築した.マルチメディア情報の管理はブログシステムを採用することにより,閲覧・編集を簡単に行えるようにし,紙の付箋にマーカとしてQRコードを描くことで,ブログデータベースへのアクセスを容易にする.これによりユーザは紙媒体の付箋と同じように実環境に付箋を貼り,PCを通して実環境に重畳表示されたマルチメディア情報を閲覧・編集することで,効率的にメモを残すことが可能となる.
著者
片山 貴文
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

災害時に混乱せずに活用できることを目指して、2つの看護記録シートを開発した。このシートを評価したところ、住民の92.7%が、自分の健康状態を伝えることに役立つと回答していた。また、看護職者の94.3%が、緊急に支援が必要な人を、および、96.2%が、継続的に支援が必要な人を、それぞれ把握することに役立つと回答していた。東日本大震災では、日本医師会の災害医療チームが、この看護記録シートを用いて避難所の支援活動を行った例がみられ、実際に被災者支援に役立てることができた。
著者
石隈 利紀
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
no.63, pp.59-62, 2003-11

私が筑波大学に赴任したのが1990年の9月ですから、今秋でちょうど12年になります。その間、第二学群人間学類、教育研究科(学校教育コース、カウンセリングコース)、心理学研究科、人間総合科学研究科(ヒューマンケア専攻)で、講義をしてきました。 …
著者
臼井 キミカ 上西 洋子 辻下 守弘 佐瀬 美恵子 白井 みどり 佐々木 八千代 兼田 美代 津村 智恵子 後藤 由美子 山本 美輪 山本 裕子 川井 太加子 鷹居 樹八子 柴田 幸子 杉山 百代 中村 里江 北沢 啓子 南部 純子 浅田 さゆり 才木 千恵 正田 美紀
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

研究目的は、重度認知症高齢者の基本的な生活支援技術を明らかにして、その研修プログラムを開発し、重度認知症高齢者のQOLの向上を図ることであり、目的達成のために重度認知症高齢者を対象とした2カ月間の小集団回想法、6カ月間の手織りプログラム、5週間の生活支援技術に関する介入、及び国内外の看護職等への面接調査を通じて重度認知症高齢者への日常生活支援技術研修プログラムを作成し、複数回の研修を実施しそのプログラムが有効であることを評価した。
著者
宮川 明子 清木 康 宮原 隆行 北川 高嗣
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1-10, 2000-02-15
被引用文献数
2

画像データなどのメディアデータを対象としたデータベースシステムの実現において,検索者が求めるメディアデータを適切かつ高速に抽出することは重要である.本論文では,意味の数学モデルを拡張した意味的画像連想検索を対象とした高速化アルゴリズムの実現方式を提案する.意味の数学モデルは,文脈あるいは状況に応じて動的に変化するデータ間の意味的な関係を計算するモデルである.本論文で提案するアルゴリズムは,指定された時間内の限られた計算回数で有効な検索結果を得ることを目的としたものである.このアルゴリズムによる意味的画像検索の実験を行い,実験の結果よりその有効性を明らかにした.In the database system design for multimedia database, it is important to develop a correct and fast retrieval method for media data(e.g. image, music). This paper proposes a fast algorithm and its implementation method for semantic associative image search based on our mathematical model of meaning. This model has been designed for computing semantic relation between data items dynamically accoding to context and situation. The objective of this algorithm is to obtain the available and correct retrieval results within the given limited time in the semantic associative search. This paper also shows some experimental results of semantic image search to clarify the feasibility and effectiveness of the proposed algorithm."
著者
小林 隆人 北原 正彦 中静 透
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.152-160, 2009-03-30

オオムラサキの個体群を保全する目的で餌植物の植林を行う際の効果的な植林方法を明らかにするため,本種の保護を目的としてクヌギとエノキが交互に列状に植林された場所とその周囲の天然林で,エノキとクヌギの密度・大きさ,オオムラサキ幼虫の木当たり密度を調べた.植林区林内では枯死したエノキがある程度見られたが,クヌギの枯死は見られなかった.植林区のエノキのdbh(胸高直径)は周囲の天然林のエノキよりも有意に小さかった.しかし,植林区の林縁のエノキに限っては,dbhは林内のエノキよりも大きく,周囲の天然林のエノキと差がなかった.周囲の天然林においても,林縁のエノキのdbhは林内のエノキよりも大きかった.植林区のエノキにおける木当たり幼虫数は天然林よりも有意に少なかった.植林区でも周囲の天然林でも木当たり幼虫数は林内よりも林縁で有意に多かった.ただし,植林区の林縁のエノキにおける木当たり幼虫数は天然林の木当たり幼虫数と有意に異ならなかった.本種を保護するには植林予定地の内部にクヌギを,林縁にエノキを植えるべきである.
著者
品川 優
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,統計資料および農村調査を通じて,韓国で企業・団体がマウル(集落)と交流し農業・農村の支援活動をおこなう1社1村運動の実践実態とそこでの成果,および問題・課題について明らかにした。2008 年までに1社1村運動は7,309件おこなわれ,全体の経済効果は290億ウォンに及ぶ。こうした一定の成果をあげているが,民間企業が1社1村運動に参加しやすい環境づくりやマウルサイドの意識改革などの問題も抱えていた。
著者
千葉 早苗 本多 牧生 笹井 義一 笹岡 晃征
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

(長期生態系変動)西部北太平洋における過去数十年の海洋環境と生態系変動の関係についてレビューした結果を論文にまとめ出版した(Chiba et al.2008&2009)。特に十年規模周期の水温偏差に応じた親潮域における生物生産タイミングの経年的変化や(温暖期:早い,寒冷期:遅い),温暖性種の分布の南北移動について報告した。(衛星データによる生物季節的変化の検知)1998-2007年の衛星海色データを用いて北太平洋の基礎生産の季節変動パターンを明らかにした。その結果、水温の上昇が基礎生産に正に働く海域(ベーリング海・親潮混合域)と負に働く海域(アラスカ湾・黒潮海域等)が見られた。また同じく海色衛星データを用いて、西部北太平洋亜寒帯域における植物プランクトンブルームのタイミングの経年変動を調べた結果,十年間でブルームのピークが約一ヶ月遅くなっていることが分った。海洋研究開発機構が同海域で実施している時系列観測の結果では,1998-2007年の間に水深5000mにおけるオパールのフラックスの割合が減少傾向に有り,表層のプランクトン群集組成の変化が示唆されている。本研究の結果から,経年的な環境変化に応じた表層生態系の生物季節的変化が,主要プランクトン種の変遷を招き,結果として海域の生物ポンプ機能に影響を与えていることが推測された。(動物プランクトンによる炭素の鉛直輸送)2006-2008年に調査船「みらい」により採集した表層の動物プランクトンの群集/サイズ組成から摂餌率/排泄率を求め,基礎生産量および亜表層への炭素の鉛直輸送効率との関係について調べた。しかし夏季の高生物生産季においては,それらの間に明確な関係は見られなかった。今後は低生産季について同様の見積をし,その季節変動について明らかにしていく。
著者
Chiaki KOBAYASHI Kiyotaka SHIBATA
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.363-376, 2011-08-25 (Released:2011-08-31)
参考文献数
35
被引用文献数
1 4

Dynamical contributions to past long-term changes in the lower stratospheric ozone over the northern mid-latitudes are evaluated using a chemical transport model (CTM) forced by the horizontal wind of the Japanese 25-year Reanalysis (JRA-25). Two simulations (i.e., one is a simulation that prescribes the time-dependent vertical profile of halogens and the other is a simulation which uses the fixed vertical profile of halogens at 1979.) were conducted to estimate chemical and dynamical contributions to the long-term changes in stratospheric ozone during the last three decades. Different from previous similar studies using meteorological data of ECMWF (European Centre for Medium Weather Forecast) 40-year re-analysis (ERA-40), our current simulation does not show a large positive anomaly of simulated total ozone over northern mid-latitudes in the late 1980s, which is consistent with the observation. Because the trend of the fixed halogen simulation amounts to about two-third of that of the time-dependent halogen simulation during 1980–1993 in the northern mid-latitudes, it is evaluated that about two-thirds of the negative trend in total ozone comes from dynamics in the northern mid-latitudes. Since the increasing ozone from 1994 to 1998 is also represented in the fixed halogen simulation, it is considered that the increase of ozone was mainly due to dynamics as pointed out in previous studies. However the dynamical contribution to the trend after 1994 could not be evaluated in our simulation because of simulated ozone gap in 1998. In the same manner, it is evaluated that about two-thirds of the negative ozone trend in the lower stratosphere comes from dynamics in the northern mid-latitudes from 1980 to the mid-1990s. The simulation results indicate that the effect of transport (dynamical influence) is predominant for the negative ozone trend in the lower stratosphere from 1980 to mid-1990s, while the upper stratospheric ozone trend is strongly influenced by long-term changes in halogens (chemical influence).