著者
三島 万里
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.29-44, 2008-01

本論は企業広報誌の企業広報上の機能を考察することを目的とし,サントリー株式会社の『洋酒天国』『サントリー・クオータリー』の二誌の事例研究を行うものである。全体は5章から構成されており,本稿は昨年に続いて第4章,第5章をとりあげる。
著者
矢原 隆行 Yahara Takayuki ヤハラ タカユキ
出版者
日本家族研究・家族療法学会
雑誌
家族療法研究 (ISSN:09106022)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.70-77, 2011-04-30

The Reflecting team has drawn much attention from all over the world since Andersen introduced the process in 1987. Also in Japan some practices of reflecting teams have started recently,yet there are still only few studies to explore the theoretical implications of the reflecting processes. Andersen preferred to minimize the use of the term "reflecting team",because that term represents only one of almost infinite methods of organizing "reflecting processes"which means the shiftings between being engaged in talking about an issue and thinking about the talking about the issue. Therefore we must avoid the danger of its being reduced to just a technique,a novel"how to" in the manual of therapeutic practices.Such a reduction would be the loss of the philosophical richness of the ideas behind the concept, and the ways in which the ideas can be further developed.This paper attempts to examine the theoretical implications of the reflecting processes by applying Luhmann's theory of observation,as a theory of distinction. Luhmann has defined the concept of observation abstractly,so that it can be applied to psychic as well as to social operations. In addition,to explore the essence of reflecting processes we utilized three illuminations that glow by themselves while at the same time reflecting other lights. The first was the metaphor of mirror by Luhmann,that makes distinction to illuminate second-order observing systems. The second was "transversalite"by Guattari that makes distinction to indicate the concept of heterarchy. The third was the ancient Japanese linguistics by Sakabe that makesdistinction to indicate"hanashi".These illuminations enable effectively our exploration about the theoretical implications of the reflecting processes.
著者
高田 邦道 橋本 雅隆 塚口 博司 苦瀬 博仁 小早川 悟 黒後 久光
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

平成12年度の研究概要は、社会実験の準備を中心として、社会実験対象地区の絞込み、ポケット・ローディング・システムのシステム設計、社会実験対象地区の現況調査、実験装置の設置場所の検討、社会実験対象地区における事前調査、および社会実験対象地区における関係者との折衝を行った。社会実験対象地区の絞込みでは、平成10年度から平成11年度の科学研究補助金によって行われた東京都六本木地区における都心部商業務地区のポケット・ローディング・システム(以下、PLS)社会実験の結果を踏まえ、近隣商業地区におけるPLSの効果を把握するために東京都練馬区江古田地区を社会実験対象地区とした。また、PLSのシステム設計では、今回の対象地区である江古田地区に対応できるシステムの設計および実験装置の改良を行った。平成13年度は、昨年度より検討を行ってきた東京都練馬区江古田地区において、ポケット・ローディング・システムを利用した「貨物車専用荷さばき駐車場」社会実験の実施および実態調査を中心に行った。社会実験は平成13年3月から1年間の予定で実施した。社会実験中のポケット・ローディングの利用状況は、カード保有の会員利用が34台で、カード無しの一般利用が1309台であった。平成14年度は、社会実験対象地区における商店街のアンケートを実施し、社会実験の認知度および荷さばきに関する意識調査を行った。PLSを利用したいと考えているドライバーは82%、管理者は92%とその需要は高い。しかし、今回の社会実験の認知度は、商店街の店舗の47%と約半数であったが、商店街のポケット・ローディングの利用率はわずか3%であった。さらに、今回の社会実験により得られたデータの解析と補足調査の結果を加えて、用地管理、道路管理、交通管理、運輸管理の視点を含めた地区交通対策の方策を検討している。
著者
日浦 勉 陶山 佳久 彦坂 幸毅 熊谷 朝臣 内海 泰弘 陶山 佳久 彦坂 幸毅 熊谷 朝臣 内海 泰弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本列島に広く分布するブナは光合成窒素利用効率、窒素生産力、窒素滞留時間、夏場の蒸散速度、水利用効率、リター分解速度、摂食機能群ごとの葉の食害度など様々な機能的性質に地理的な変異を持つことが明らかとなった。これらの形質は遺伝的にも固定されていると考えられることから、現在のブナ林生態系は環境変動に対してある程度可塑的に応答するものの、温暖化など急速な変化に対しては脆弱な側面もあると考えられた。
著者
神田 学 森脇 亮 横山 仁
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.723-731, 1997-10-31
参考文献数
21
被引用文献数
10

明治神宮で行われた集中観測データを森林環境気象モデルに同化させ, 神宮の森の気候緩和機能と大気浄化機能が定量的に評価された. その結果以下の結論が得られた. 1) 数点のポロメーター計測データから未知パラメータを非線形回帰させた気孔コンダクタンスモデルは, 気象学的測定から得られた群落気孔コンダクタンスの傾向をよく表現した. 2 )この気孔特性を森林環境気象モデル (NEO-SPAM2) に同化させて熱収支計算を行ったところ, 実測値を良好に再現した. 3) 神宮の森の気候緩和機能を大きく左右する植物の活性度 (気孔コンダクタンス) は, 樹冠部ほど大きく, 下方へ向かうほど減少している. また植物の活性度は午前中の早い時間帯に最も盛んであることが示された. 4) 本モデルを用いて, 神宮の森における汚染物質吸収量 (鉛直下向きフラックス) を算定したところ, その日中の平均値は, 観測結果と定量的によく一致した. またピーク時のNO_2フラックスを神宮の森全体の面積に換算すると, 乗用車93台分が排出するNO_2量に相当することが明らかとなった. 5 ) また汚染物質吸収は早朝に効率的に行われること, 樹冠付近の葉への吸収が活発なことなど, 観測で得られなかった大気浄化の時空間変動特性が示された.
著者
長谷川 二郎 和田 清美
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.37-43, 1992-08-05
被引用文献数
2

On the basis of observation in 12 Japanese species of the Anthocerotae as well as of a comprehensive survey of literature, the genera of the Anthoceroate are found to have in a sporophytic cell ; (1) one chloroplast(Dendroceros, Folioceros, Notothylas and Phaeoceros), (2) two (Anthoceros) or (3) two or more (up to 12) chloroplasts (Megaceros).This fact requires correction of the generally accepted view that the Anthocerotae contain a single chloroplast in each cell of gametophytes and two chloroplasts in each cell of sporophytes. We further discuss the taxonomic significance of this character together with a distinctness of the genus Anthoceros in the Anthocerotae.
著者
松原 義継 大谷 誠 江藤 博文 渡辺 健次 只木 進一
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.1-6, 2011-07-08

電子メールサービスは,インターネット利用における基本的なサービスの 1 つである.その重要性から,電子メールサービスには,管理コストを削減しつつ安定性と十分な性能を要求される.このような要求に応えるための 1 つの方法としては,外注サービスを選択することがある.佐賀大学では,電子メールサービスを提供するためプライベートクラウドを使い始めた.本稿では,仕様の概要および外注化までの過程を議論する.併せて,外注化の評価および課題も報告する.Electronic mail (e-mail) services have been one of fundamental services in the Internet use. Their importance requires stability and sufficient performance with cost reduction. One of methods for responding such requirements is to select out-sourcing services. Saga university started to use a private-cloud service for providing e-mail service. This report discusses the outline of the specifications and the process of the out-sourcing. The evaluation and operational status are also reported.
著者
村上 栄一 菅野 晴夫 相澤 俊峰 奥野 洋史 野口 京子
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.197-203, 2007 (Released:2008-01-22)
参考文献数
20
被引用文献数
1

仙腸関節ブロックや骨盤ベルトなどの保存療法の効果が持続せず,日常生活や就労に著しい障害のある仙腸関節性疼痛例に対して仙腸関節前方固定術を行った.男6例,女9例の15例で,年齢は平均49歳(30~86歳),罹病期間は平均3.9年(1~7年),術後経過期間は平均2.3年(6カ月~5年)であった.片側前方固定術を14例に,両側固定術(骨盤輪固定術)を1例に施行した.これらの症例について,関節癒合をCTで,また臨床症状をJOAスコア,VASによる疼痛の変化,Roland-Morris disability questionnaire(RDQ)で評価した.関節癒合は15例全例で得られていた.JOAスコアが術前平均5.6点(4~9点)から術後平均18点(7~24点)に,VASが84(70~93)から40(10~75)に,RDQ得点が21.1(17~23)から6.9(1~14)に改善した.仙腸関節前方固定術の成績は良好であり,保存療法に抵抗する症例には有効な治療法と考えられる.
著者
フィリップ ボナシーチ 渡部 幹
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.33-52, 2003-03-31 (Released:2009-01-20)
参考文献数
22

個人の意思決定に関する、少数のシンプルかつ妥当な仮定から、負結合の交換ネットワークにおける権力の分布を予測するための構造的・代数的理論を示す。まず、示されたモデルから、複数の式が生成されることを論じる。そして、それらの式の解の特性から、交換ネットワークの類型化を示す。式の解には4つの可能性がある:(1)ネットワーク内のいくつかのポジションがすべての権力を持つような解が1つ存在する場合、(2)全てのポジションが同じ権力を持つような解が1つ存在する場合、(3)解が無限に存在し、構造的な分析では権力の分布を決定できない場合、(4)解がなく、権力が安定しない場合。 次に、通常、実験で検討されるような交換ネットワークよりもさらに多くの種類のネットワークに適用できるように、このモデルの様々な拡張を提唱する。提示されたモデルを、そのまま使用するか、わずかに変えるだけで、ネットワーク内の交換資源の価値が異なっている場合、ポジションによって行える交換の回数が異なる場合、交換が発生するためには3人またはそれ以上の参加者が必要な場合、の3つの状況において、権力の予測が可能となることを示す。
著者
渡辺 岳夫
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

代表的なマイクロ・プロフィットセンター・システムであるアメーバ経営システムの会計情報上の特性ならびに運営方法上の特性が,当該システム導入企業の従業員の自己効力感,チーム効力感,および自律的動機づけにポジティブな影響を及ぼし,それらの心理的構成概念を通じて,チーム内・チーム間のインタラクションを生起させしめ,最終的にチームのパフォーマンスを促進していることを明らかにした。
著者
新津 望 中田 正幸
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.545-550, 1994-09-25
被引用文献数
3

胸部X線写真上異常を認めた造血器悪性腫瘍30例に対し気管支鏡検査を施行し, その原因検索を行った。胸部異常陰影に対する原因の検出率は30例中26例(86.7%)で, びまん性間質性陰影, 限局性肺胞充実性陰影および結節性陰影で診断率が高かった。疾患別では急性白血病では出血が多く, 白血病細胞, 真菌および細菌がそれぞれ12例中2例であった。慢性骨髄性白血病では結核菌が66.7%と多くみられ, 悪性リンパ腫では真菌が46.2%(6/13), 結核菌15.4%(2/13), 細菌15.4%(2/13)であった。造血器悪性疾患は免疫不全を伴っており, 肺合併症を多く認め致死的なものも少なくない。そのため, 早期診断治療が予後を左右するが, 高度の血小板減少やDICの合併により気管支鏡検査が行いにくい症例もある。よって, 症例を選んで気管支鏡検査を行えば早期診断及び治療に有用であると考えられた。
著者
輿石 直樹 井出澤 剛直 井上 亜矢子 熊田 哲 柴 修吾 渡邊 美穂 瀧川 拓人 岡崎 護 木嶋 泰興 冨永 邦彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.45-50, 2004-01-01
参考文献数
12
被引用文献数
17

症例は77歳の男性.体重減少を主訴に入院となった.精査にて,Vater乳頭部の未分化型腺癌との診断になり,膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘍は露出腫瘤型で,深達度はOddi筋までであった.主座は小型腫瘍細胞がシート状に増殖し,粘膜側に腺癌構造伴っており,免疫組織学的検索においてNSEとchromogranin Aは陽性で,desminとS-100蛋白は陰性で,腺内分泌細胞癌と診断した.腺内分泌細胞癌は腺癌から分化を伴ったものとされており,その悪性度は高く,比較的小さな病変で診断・治療されても,予後不良とされている.本症例も術後14か月で多発性肝転移のため死亡した.十二指腸乳頭部原発の腺内分泌細胞癌の本邦での報告は自験例を含め14例とまれである.本邦報告例とともに文献的考察を加え報告する.
著者
相原 威 酒井 裕 藤井 聡 塚田 稔
出版者
玉川大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

脳内の外界モデル形成には, 外界からのボトムアップ(感覚)情報だけでなく, 注意や情動などによる広範囲調節系と呼ばれる内因性の情報も融合する必要がある。 海馬や皮質などの神経回路への調節系の信号は, 集中時などに内在性アセチルコリン(Ach)として放出され, 記憶に関与するとの報告がある。 そこで、本研究はボトムアップ入力の統合に対するAChによる修飾を細胞およびネットワークレベルの実験により検証を行った
著者
森 李 梶原 康博 大崎 紘 宗澤 良臣
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.37-45, 2001-04-15
被引用文献数
1

省人化工場内の安全確保のためにモニター画面上の画像から作業員を識別するための模様の認識, 姿勢の認識, および作業員が危険の程度を知らせるための画像処理による判別の容易な合図動作とその認識手法を提案する, まず, 省人化工場の出入口において入退室する作業員を認識するために, 作業着に付ける模様を提案し, 画像処理により模様を識別するための特徴量および判別規準を設定する.次に, 作業域内の作業員および搬送車等の対象物を差分処理により検出し, 移動または静止状態であるかを面積の変化率から, 作業員または他の設備であるかを領域の複雑度から判別する.作業員が静止している場合には, 姿勢および合図を認識する.姿勢は立位, 座位および臥位姿勢について, モニター画面上での作業員の外接長方形および面積に基づく特徴量を定義し, その判別規準を設定する.作業員からの合図としで"停止せよ", "危険", "助けを求む", "作業完了またはOK"等を画像処理による認識の容易な動作で表現し, その認識を行う方法を提案する.
著者
鈴木 義崇 東条 敏
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.57-67, 2004

Belief fusion, instead of AGM belief revision, was first proposed to solve the problem of inconsistency, that arised from repetitive application of the operation when agents' knowledge were amalgamated. In the preceding work of Maynard-Reid II and Shoham, the fusion operator is applied to belief states, which is total preorders over possible worlds which is based on the semantics of belief revision. Moreover, they introduced the pedigreed belief state, which represented multiple sources of belief states, ordered by a credibility ranking. However in the theory, all the sources must be totally ordered and thus applicable area is quite restrictive. In this paper, we realize the fusion operator of multiple agents for partially ordered sources. When we consider such a partial ranking over sources, there is no need to restrict that each agent has total preorders over possible worlds. The preferential model, based on the semantics on nonmonotonic reasoning, allows each agent to have strict partial orders over possible worlds. Especially, such an order is called a preferential relation, that prescribes a world is more plausible than the other. Therefore, we introduce an operation which combines multiple preferential relations of agents. In addition, we show that our operation can properly include the ordinary belief fusion.
著者
村井 均
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.114-115, 2004-02-15
被引用文献数
1

地球温暖化やエルニーニョといった地球規模の環境変動への関心は近年ますます高まり,それら現象の解明・予測が急務とされている.その鍵を握るのが,本特集で取り上げる「地球シミュレータ」である.観測困難・実験困難な現象を解明するにはコンピュータを用いた数値シミュレーションが有用かつ不可欠であるが,地球規模の現象のシミュレーションを行うのに必要な性能と,1996年当時のスーパーコンピュータの性能の間には巨大なギャップが存在した.このギャップを埋めるべく,1,000倍の性能を持つ世界最高速のスーパーコンピュータ-地球シミュレータ(ES: Earth Simulator)が開発されたのである.5年の歳月を掛け完成したESは,当時世界最高速であった米国のスーパーコンピュータASCI Whiteの5倍近い性能を達成した.この事実は米国に非常に大きな衝撃を与え,米Tennessee大のJack Dongarra教授は,かつて世界初の人工衛星打ち上げをソ連のスプートニクに先んじられたことになぞらえて,ESの出現を「コンピュートニク」と呼んだ.2002年3月の運用開始以後,多くの研究者がESを利用し,さまざまな有用な成果が続々と上がってきている.以下は,ESやESを利用した業績に対して国内外から贈られた賞である.・TOP500 ・Gordon Bell賞 ・米タイム誌「2002年最高の発明品」 ・照明普及賞 ・日本産業技術大賞内閣総理大臣賞 ・日経BP技術賞 ・21世紀の偉業賞 本特集では,ESという最も優れた「道具」の解説を行うとともに,その道具を使うことによって可能となった研究を紹介することをねらいとする.以下では,各記事に先立ち,開発の経緯とシステムの概要について簡単に述べておく.
著者
中松 満始
出版者
千葉県立現代産業科学館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

○研究目的:東京芸術大学所蔵の、国会議事堂正面他ブロンズ製扉製作に関する資料の基礎研究を行った。本扉は大蔵省営繕管財局から委嘱を受け東京美術学校(現東京芸術大学)が製作した。○研究方法:東京芸術大学所蔵の、国会議事堂正面扉に関する第一次資料をデジタルカメラで撮影しデジタルデータ化し、その全てについて精読後、特に重要な資料をタイプした。○研究成果:資料は全2冊に綴られ保存されていた。1冊目367枚、2冊目218枚、計585枚の資料を確認し、内容別に以下の4区分に大別整理した。1)大蔵省営繕管財局と東京美術学校との連絡記録2)東京美術学校と、ブロンズ扉地金鋳造会社である、住友伸銅鋼管との連絡記録3)東京美術学校内に設置した、扉製作工場に関する記録4)製作に伴う職員雇用等に関する記録1)の資料を整備し、大蔵省営繕管財局が委嘱先(東京美術学校)に提示した「仕様書」は、製作を請負った東京美術学校が事前に作成提出した「工作仕様書」を、ほぼそのまま転用していたことがわかった。また、扉製作は2回に分け学校へ依頼があり、1回目(正面玄関正面、側面、境界、衆議院玄関、参議院玄関の各扉)の工事のあと、2回目(総理大臣、大臣、秘書官室の各扉)の製作依頼・工事が実施されたことがわかった。つまり、東京美術学校による国会議事堂内ブロンズ製扉工事は、正面玄関正面扉(5組)、側面扉(2組)、境界扉(1組)、衆参両議員玄関扉(各院共3組)、総理大臣室テラス側扉(1組)、大臣室テラス側扉(2組)、秘書官室テラス側扉(1組)が、その全体であるとわかった。2)の資料を整備し、東京美術学校が住友伸銅鋼管から購入したブロンズ量(33t)とその発注回数(7回)がわかった。3)の資料を整備し、学校内に39坪の仮設工場を設置、次に担当教官であった津田信夫(つだしのぶ)の自宅工房を借用、さらに校内に3棟増築したことがわかった。また、仮設工場設置の記述文から立体図を作成し、各工場の外観図による復元を行った。4)の資料を整備し、製作に伴う雇用等については、学校教官2名を中心に、経理担当1名、製造技術担当1名のもとで、50名の雇用者が関わっていたことを確認した。さらに、本扉の図面製作(デザイン)は、学校教官であり製作責任者であった、津田信夫が行ったことがわかった。