著者
孫田 信一 小野 教夫 武藤 宣博 島田 厚良
出版者
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2000

相互転座などの均衡型染色体構造異常を有し、そのホモ接合体やヘテロ接合体で各種疾患、発生異常、器官形成異常などを呈する系統を多数開発し、各種異常にそれぞれ関与する切断点遺伝子を探索するシステムの確立を目指した。まず、4.5シーベルトのX線照射雄との交配で得られる子獣では29.8%に染色体構造異常が見られ、そのホモ(またはヘテロ)接合体の中からこれまで種々の症状(発育障害、四肢形成異常、腎異形成、痙撃発作、行動異常、高発癌、早発老化、学習記憶障害など)を呈する12系統を分離した。構造異常を有する他の系統の約20.8%はホモ接合体で致死となり、2〜8細胞期を含む初期段階での発生停止、着床後早期の発生異常、器官形成異常などを示した。一方、マウス(およびチャイニーズハムスター)のDNAを用いて、定法によりゲノムライブラリーを作製し、マウスおよびハムスターゲノム由来の500以上のBAC及びコスミドクローンをFISH法で染色体上にマッピングした。さらに、相互転座ホモ接合体で発育障害と学習記憶障害を示す2系統、及び染色体13と16の相互転座ホモ接合体で特有の発生異常、器官形成異常を示す1系統のマウスを用いて、切断点遺伝子の解析を試みた。後者の切断点におけるBAC contigのFISH解析の結果、特定クローンが染色体16の切断点を挟むことが判明したので、遺伝子の分離と解析を図った。ホモ接合体で発育障害と学習記憶障害を示す2系統の遺伝子はかなり狭い範囲に特定したが、遺伝子決定には至っていない。マウス遺伝子から相同性を利用して同一機能のヒト遺伝子を特定することが容易になっている。染色体構造異常と各種症状や発生異常等を伴う動物系統について胚バンクとして系統的に保存していくならば、未知の遺伝子を含む多数の遺伝子の構造・機能の解析の有用な研究材料になるものと考える。
著者
安浦 寛人 築添 明 平川 和之 伊東 望 中野 信哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.857-863, 2003-11-01
参考文献数
2
被引用文献数
2

福岡県においては,産業界,大学,行政の連携による「シリコンシーベルト福岡」プロジェクトを進め,システムLSIの研究開発力の向上や設計産業の育成と合わせて,技術者育成事業の一つとして「福岡システムLSIカレッジ」を設立した.本稿では「福岡システムLSIカレッジ」の設立理念を述べた後,それに沿ったカリキュラムや教材・講習環境を示す.そして,1年半のLSIカレッジ運営の評価を行い,今後の展望についてまとめる.
著者
生水 真紀夫 井上 正樹 小池 浩司 瀬川 智也 村上 弘一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究の成果は、以下の5点に集約される。1.子宮筋腫組織ではアロマターゼ発現が亢進しており、この亢進はGnRH analogueの投与により消失することを明らかにした。GnRH analogue投与は卵巣でのエストロゲン合成を低下させるが、今回の研究により子宮筋腫組織内でのエストロゲン(in situt estrogen)の合成を同時に低下させることを初めて明らかにした。GnRHanalogue投与では自然閉経に比較して子宮筋腫の縮小は急激かつ高度であるが、in situ estrogenの低下はこの理由を説明する可能性がある。2.子宮筋腫培養細胞にエストロゲン合成基質であるアンドロステンジオンを添加するとその増殖が促進される。この増殖促進効果はアロマターゼ阻害剤の添加により阻止することができる。3.ラットを用いた動物実験では、アロマターゼ阻害剤投与により無排卵状態が惹起されるが、投与中止により速やかに排卵周期が回復する。性周期回復後、妊孕性も速やかに回復しアロマターゼ阻害剤には長期効果はないことが確認された。4.学内倫理委員会の承認を得て、アロマターゼ阻害剤投与による子宮筋腫治療の臨床治験を開始した。閉経期に近いと考えられた患者では、子宮筋腫が著明に縮小して臨床症状が速やかに改善した。5.子宮内膜症細胞のアロマターゼは、転写因子SF-1/AD4BPにより局所的に発現が制御されているものと考えられた。その発現プロモーターPIIに結合するトランスエレメントは、顆粒膜細胞のそれとは異なるものであった。また、IL-1βにより制御される点で顆粒膜細胞における発現制御と異なっていた。Non steroidal anti-inframatory drugs(NSAIDs)やNF-kB阻害剤などによるプロモーター特異的発現抑制治療の可能性が示された。
著者
干場 秀雄 米田 浩泰 池滝 孝 新出 陽三 奥島 正 平山 森一 天池 伸三
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.53-60, 1996-10-11
参考文献数
8
被引用文献数
4

1993年12月に日本で初めて帯広畜産大学附属農場(以下大学農場と呼ぶ)にオランダのP社製自動搾乳システムが導入された。それ以来、これを使用して日本の酪農家向け自動搾乳システムの適用試験が開始され、その成果を踏まえて、その後さらに二個所にこのシステムが設置され稼働している、本研究はそのうちの二個所の自動搾乳システムの搾乳作業を調査し、搾乳能率、搾乳ロボットのティートカップの取り付け性能を明らかにした。調査は大学農場の二頭単列タンデム式とロボファームの三頭単列タンデム式自動搾乳システムで、一日3回搾乳時に行った。その結果は以下の通りである。1)朝搾乳作業は昼・夜搾乳作業と比較して、その作業時間が1時間〜1時間15分程長かった。昼・夜搾乳作業において、乳牛がスムーズに入室した場合の搾乳能率は二頭単列タンデム式で13〜14頭/時、三頭単列タンデム式で20〜22頭/時と室数に比例していた。2)搾乳ロボットによるティートカップ取り付け所要時間は乳頭の形状の揃った牛で30秒であったが、乳頭の形状が不揃いの牛では2分以上を要していて、その形状を揃える必要性が明らかになった。搾乳ロボットによるティートカップ装着率は大学農場では95%で、ロボファームでは98%であった。3)朝・昼・夜の搾乳開始時刻による搾乳時間間隔の違いは搾乳量に影響を及ぼし、朝(9時間)は昼・夜(75時間)よりも搾乳量で45%多かった。4)ロボファームでパーラヘの牛の進入の順位を調査すると、早い牛群(1位〜20位)と遅い牛群(41位〜60位)において、8頭が常にその群の中にいて、そのグループ分けがなされていた。日本家畜管理学会誌、32(2) : 53-60.1996.1996年5月21日受付1996年8月2日受理
著者
山村 義治 上田 茂信 伊谷 賢次 粉川 隆文 杉野 成 近藤 元治 浜田 春樹 園山 輝久 弘中 武 蒲田 洋二 芦原 司
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.956-962, 1988
被引用文献数
7 2

症例は29歳女性.上腹部痛を主訴として,昭和59年8月2日入院.血液学的検査で,中等度の貧血と血小板の減少,血清LDHの軽度上昇を認めた.出血時間,プロトロンビン時間共に延長していた.AFPは陰性.腹部血管造影では,肝・脾血管腫と診断され,さらに骨転移巣も認めた為,血管肉腫が強く示唆された.確定診断の目的で腹腔鏡下肝生検を試みたが,出血が激しく断念し,外科的肝切除にて血管肉腫と診断された.本例は,その後肝機能が悪化し,昭和60年3月22日に肝不全で死亡した.剖検では,肝臓,脾臓,骨髄に血管肉腫を認めたが,原発巣は不明であった.肝血管肉腫は生前診断が困難であり,特に肝血管腫や肝嚢胞性病変との鑑別が問題となる.疑いのある症例には,速やかに開腹下肝生検,あるいは肝切除術を行うことが必要と考えられた.
著者
室山 泰之 山田 彩 遠藤 美香
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

集落などの人為的な環境を利用する複数のニホンザル集団を追跡調査するとともに、その生息環境を環境省植生図などの既存の資料と現地調査から分析することにより、彼らの土地利用と環境選択、個体群パラメータなどを明らかにした。集落を利用するニホンザルにとって、集落に隣接する林は採食や休息などの多様な機能をもつ生息地であること、農作物採食によって出産率の上昇など個体数増加につながる変化が起こることなどを明らかにした。
著者
井原 基
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、タイ東北地方のウボン・ラーチャターニーにおけるハイパーマーケット進出が、地域経済、特に地域の消費者及び流通業者にどのような影響を及ぼしつつあるのかを調査した。人口約10 万人のウボン市街地におけるハイパーマーケット(類似業態であるC&C 含む)進出店舗数は3 店に上り、これらの同地域の市街、流通、消費に与えた影響は広い範囲に渡っている。流通業者の廃業は統計上では必ずしも明示されなかったが、アンケート調査やインタビュー、視察などの定性的調査から、一部では共存可能な状況にあるものの、個人商店の事業機会圧迫と中心市街の空洞化という影響を与えつつあることが示された。消費に関しては、必ずしも高所得ではない世帯月収5000 バーツ以上(年収約5400 ドル以上)のほとんど(85.7%)がハイパーマーケットでの購買を実際に行っており、ハイパーマーケットが同地域のボリュームゾーンの顧客層を捉えていること、さらに典型的な顧客のプロフィールとして子供のいる家族、若年層、耐久消費財の購入や自家用車の利用の進捗、住宅・医療等基盤インフラへの支出の少なさ等が明らかになった。
著者
大西 晃生 一井 貞明 大森 久光 永木 譲治
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.377-381, 1984-12-01

健康人(volunteers)8例の8腓腹神経の有髄および無髄神経線維の径と密度の定量的解析を, TGA-10 particle analyzer(Carl Zeiss社, West Germany)を用いて行った. 総有髄線維密度は, (7.4±1.3)×10^3/mm^2(平均値士標準偏差)であった. 小径有髄線維群と大径有髄線維群のborder diameterは5.4±0.5μmで, 小径有髄線維密度は(4.5±0.9)×10^3/mm^2, 大径有髄線維密度は(2.9±0.7)×10^3/mm^2であった.無髄線維密度は(27.9±5.8)×10^3/mm^2であった. 無髄線維直径分布のpeak diameterは0.88±0.15μmで, 線維直径の中間値は0.86±0.12μmであった. また8例の有髄線維および無髄線維の直径分布の平均直径分布ヒストグラムを明らかにした. これらの定量的解析所見は今後の末梢神経障害例の腓腹神経の組織定量的研究における比較対照所見として不可欠である.(1984年8月2日 受付)
著者
下東 勝博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp."SS-6", 2008-03-05

半導体の生産拠点が集積し、日本の半導体生産の約30%を担う九州において、半導体設計の重要性が認識され、福岡、北九州地域を中心にシステムLSI設計開発拠点を目指す産学官連携による研究開発型クラスタの形成が進んでいる。更に福岡に於いては、近隣東アジア(韓国、上海を経て香港、シンガポールに至る地域)との連携を目指した「シリコンシーベルト構想」が起案され、「シリコンシーベルトサミット」会議を中心に活動が進められてきた。半導体業界もこれに対応し、特にSTARCでは大学との共同研究、システムLSI設計講座、設計者教育、並びに「シリコンシーベルトサミット」への後援等を中心に積極的に支援を行ってきた。「シリコンシーベルト構想」は昨年で5年を経過し、基礎作りの段階から実質的成長期に入ったとの認識である。本稿では、新たな段階を迎えた「シリコンシーベルト構想」に対する半導体業界の期待を述べる。特に半導体R&Dのエコシステムの観点より議論することにしたい。
著者
赤川 安正 市川 洋一郎 久保 隆靖 相良 正明 永金 幸治 里見 圭一 橋本 正毅 津留 宏道
出版者
広島大学歯学会
雑誌
広島大学歯学雑誌 (ISSN:00467472)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.227-234, 1992-12-01
被引用文献数
2

本論文の要旨は平成4年8月2日日本口腔インプラント学会中国四国支部総会において発表した。本論文は,広島大学歯学部附属病院において行われた京セラ株式会社からの受託臨床研究における治験症例の観察結果をまとめたものである。
著者
秋山 哲雄 中本 安 三浦 亮
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.871-875, 1984

子宮頚癌により広範性子宮全摘術後,両側性水腎症,腎性尿崩症を呈し,間歇的自己導尿法により改善をみた1症例を経験したので報告する.症例は48才,女性. 43才の時,子宮頚癌(病期I)にて広範性子宮全摘術を受けた. 1982年6月頃から口渇,多飲および1日4~6<i>l</i>におよぶ多尿が出現し,精査のため1982年8月2日当科入院.身体的には皮膚はやや乾燥し,軽度の脱水傾向がみられる以外には異常所見なし.検査では尿糖陰性,尿比重1.004,血清Na 150mEq/<i>l</i>, K 3.4mEq/<i>l</i>, Cl 124mEq/<i>l</i>.耐糖能異常なし.眼底,視野異常なし.水制限試験では尿浸透圧の上昇はみられず高張食塩水負荷(Carter-Robins試験)でも尿量,自由水クリアランスの減少なし.ピトレシン5Uの投与でも尿量,尿浸透圧に変化はみられなかつた.血漿ADH 2.9pg/ml.トルコ鞍X線像異常なし.排泄性腎盂造影では両側性水腎症の所見を呈す. urodynamic studyでは多量の残尿がみられ, areflexic neurogenic bladderで両側IV度のvesicoureteral reflux (VUR)を認めた.以上よりneurogenic bladder, VUR,水腎症,腎性尿崩症と進展したものと診断した.治療は,サイアザイド剤の投与および間歇的自己導尿法を指導し, 1日6~7回の自己導尿を行ない残尿量は減少し,尿量は1日約2<i>l</i>と改善をみている.類似症例は国内外にみられず,その成因と病態についても言及した.
著者
築添 明 林田 隆則 安浦 寛人 平川 和之 伊藤 文章 村上 貴志 久住 憲嗣 中西 恒夫 福田 晃
出版者
Japanese Society for Engineering Education
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.38-42, 2006-09-20
参考文献数
4
被引用文献数
2 1

The Silicon Sea Belt Fukuoka Project was pushed forward in Fukuoka Prefecture in 2001 and has promoted human resource development of System LSI design engineers. Under liaising of industry, academia and government, "College of System LSI, Fukuoka" was founded and QUBE (Q-shu University hardware/software Borderless system design Education program) has been started aiming to establish education system for working engineers. In this paper, results of our challenge and future prospects are described.
著者
佐藤 菊雄
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報
巻号頁・発行日
vol.19, pp.17-18, 1984

1982年8月2日未明から早朝にかけて富山湾から能登半島を通過した台風10号は, 新潟県北蒲原郡の南西部に大きな被害をもたらした。最寄りの水原消防署等の観測によれば, 8月1日17時〜8月2日11時の平均風速は7.26m, 最大瞬間風速34m, 夜間気温29℃, 同湿度40%, 降水量1mmで, 長時間吹き荒れた熱乾風によって, 出穂期前後の早生種を中心に多くの白穂が発生した。その被害は古老も体験がないほどであったので, 白穂の程度が収量と米質に及ぼす影響を調査した。また現在被害推定のめやすとして用いられている「夏作減収推定尺度」が作成された時点と現今では, 稲作様式や収量構成型を異にしているので, 収量面で比較検討したので報告する。