4 0 0 0 OA 痛みと心理

著者
一色 俊行
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.99-103, 2000 (Released:2007-03-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1

痛みを理解するためには,単に身体的側面からの捉え方をするのではなく,心理学的側面からの理解が必要である。痛み知覚は情動との関連性が高く,身体的原因の全くない疼痛,いわゆる心因性疼痛も存在する。この心理的疼痛に関してICD-10とDSM-IVの分類について解説し,理学療法に関連の強い幻肢痛と慢性疼痛について主に心理面からの関係を述べた。
著者
高橋 佑輔 松江 右武 三輪 佳雅 平山 泰丈 奴田原 大輔 石井 健太郎 中村 洋典 高垣 信一 植田 健治 片上 利生 宮岡 正明
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.118-119, 2010-12-10 (Released:2013-07-25)
参考文献数
2

A 29-years old woman, who had a history of mental retardation and abnormal habit of eating tissue papers, was admitted to our hospital because of abdominal pain and vomiting. Abdominal X-ray and CT scan demonstrated much intestinal gas, and a colonoscopy revealed obstruction caused with tissue papers and large ulcers in the sigmoid colon. Therefore, we removed the tissue papers endoscopically using a grasper. After endoscopic treatment, her symptoms were immediately improved and a few longitudinal ulcer scars were seen, three month later. The endoscopic extraction was safe and effective in the colonic obstruction with tissue papers.
著者
小林 博志
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.61-85, 2021-02-15 (Released:2022-03-10)
参考文献数
21

本稿では、農協婦人部の機関誌的存在である雑誌『家の光』を通し、第一次ベビーブームの親世代に着目して、高度経済成長期の農村社会における学歴アスピレーションの高まりについて考察する。一九五〇年代からの生活改善運動の展開と、一九六〇年代のテレビ普及を背景に、家族計画を一つの契機として教育への関心が高められ、その関心は子どもの成長と共に学歴取得へと向けられる。兼業化の加速による農外収入の増加と、テレビ普及による近代家族的価値観の浸透によって、工業製品の普及だけでなく、高卒という学歴も都市と同様に取得され、農村の都市化が進展する。これにより、消費財という「モノ」だけでなく、学歴という「経歴」も一般化していく。それは、都市と農村が共有しうる、「人並み」という生活水準意識の一端が形成されていく過程でもある。
著者
林 哲也 酒井 智彦 塩崎 忠彦 廣瀬 智也 村井 勝 大浜 誠一郎 上田 宜克 越智 聖一 大西 光雄 嶋津 岳士
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.527-531, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
9

救急活動における傷病者の観察では,経皮的血中酸素飽和度(pulse oximetric saturation,以下SpO2)が測定不能な場合がある。救急現場における脳内局所酸素飽和度(regional saturation of oxygen,以下脳内rSO2)の有用性の検討を開始したところ,状態の悪化がとらえられたと考えられる1 例を経験したので報告する。症例は40代女性。救急隊接触時,意識レベルJapan Coma Scale(JCS)-3,心拍数160回/ 分,SpO2は測定不能であった。 しかし,脳内rSO2は64%と低値を示し,病院到着時までに意識レベルがJCS-10に低下し,脳内rSO2も病院到着までに59%へ低下するのが確認できた。救急現場においてSpO2による傷病者のヘモグロビンの酸素飽和度を評価できない場合,脳組織のヘモグロビンの酸素飽和度を評価することは有用であると考えられた。
著者
小島 智恵子
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.509-512, 2020-08-05 (Released:2020-11-14)
参考文献数
21

歴史の小径少数派物理学者としてのド・ブロイ
著者
田中 拓道 金子 唯 辛島 龍一 岩下 晋輔 入江 弘基 吉野 幸生 笠岡 俊志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.741-744, 2016-12-31 (Released:2016-12-31)
参考文献数
7

症例1:55歳,男性。主訴,意識障害。既往歴,2型糖尿病。早朝に唸り声を上げているのを家人が発見,呼びかけても返答がないため救急要請。救急隊血糖測定で51mg/dL。当院救急外来搬入時血糖測定を施行し35mg/dL。ブドウ糖投与し,意識レベル改善,経過観察の後,独歩帰宅となった。症例2:74歳,男性。主訴,意識障害。既往歴,2型糖尿病。就寝後の排尿介助時に意識が朦朧としており,3時間後の排尿介助時は呼びかけに反応がなく,救急要請。救急隊血糖測定で61mg/dL。当院救急外来搬入時血糖測定を施行し36mg/dL。ブドウ糖を投与し,意識レベル改善,経過観察の後,独歩帰宅となった。今回経験した2例は低血糖発作症例であったが,病院前ブドウ糖投与プロトコール適応とならなかった。
著者
倉田 忠男
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.207-213, 1983-12-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
23
被引用文献数
2
著者
森 俊文 松本 早代 井本 佳孝 四宮 寛彦 和田 哲 友成 哲 谷口 達哉 北村 晋志 六車 直樹 高山 哲治
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.254-258, 2014-05-20 (Released:2014-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

症例は21歳,フィリピン人女性.18歳までフィリピンにて生育,以降日本に在住.呼吸困難の精査目的で撮影したCT検査で肝臓内に網目状模様を認め,日本住血吸虫症を疑い血清抗体価を測定したところ高値であった.プラジカンテル40 mg/kg/日を投与し,6カ月後に抗体価は低下した.本邦では,新たな日本住血吸虫症はみられなくなったが,輸入症例や陳旧症例の報告が散見される.非流行地域において特徴的な肝画像所見を呈したことにより発見された本症の1例を報告する.
著者
天池 雅彦
出版者
産業・組織心理学会
雑誌
産業・組織心理学研究 (ISSN:09170391)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.153-166, 2019 (Released:2020-07-27)

This study investigated that the effects of self- growth and social support at the workplace on work engagement by focusing on the mediating effects of self-growth. A survey was conducted with 254 Japanese employees. According to results of previous studies, the self -growth was expected to mediate the relationship between social support at the workplace and work engagement, in turn, work engagement was expected to be associated positively with performance and negatively with strain. Furthermore, it was anticipated that self-growth would meditate the relationship between social support at work place and strain. In this study, Structural Equation Modeling (SEM) indicated that through the self-growth, social support at the workplace was positively associated with work engagement and negatively associated with strain. Moreover, work engagement was positively associated with performance, whereas it was not associated with strain. These results suggest the importance of enhancing self-growth through the social support at the workplace to work actively with improved performance.
著者
伏屋 雄紀 勝野 弘康
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.817-822, 2022-12-05 (Released:2022-12-05)
参考文献数
26
被引用文献数
1

コーヒーにミルクを入れると,最後には均質なカフェオレができる.拡散が系を均質化することは,誰もが日常生活を通してよく知っている.しかし1952年,数学者のアラン・チューリングは,この日常経験に反する驚くべき現象が起こりうることを示した.拡散によって系が“非”均質化し,パターンが形成されるのである.さらにチューリングは,生物における形態形成のメカニズムは,この拡散に誘発される非均質化にあると予測した.1970年代には生物学分野でチューリング・パターンの研究が加速し,キリンやヒョウ,熱帯魚など様々な生物の模様がチューリング・パターンとして説明された.1990年代には化学分野で溶液反応を用いて実験的にチューリング・パターンが確認された.ところ変わって現代の固体物理学では,トポロジカル物質の研究が大変熱心に進められている.ビスマス原子1つ分の厚さしか持たないビスマス単原子層は,スピンだけの流れを室温でも生成できるトポロジカル物質の有力な候補として注目されている.2018年,スタンフォード大のグループが均質なビスマス単原子層の作製を試みる中で,これまで見たこともない奇妙な模様が原子レベルで現れていることを発見した.原子が描く模様の幅はわずか1 nmで,なぜそのように奇妙な原子模様が現れるのか,その理由は全くの謎であった.ビスマス単原子層におけるナノスケールの奇妙な模様は,見た目の上では,熱帯魚の縞模様によく似ている.熱帯魚の模様はチューリング・パターンとしてよく説明できることが知られている.ならば,ビスマス単原子層の奇妙な模様も,チューリング・パターンとして説明できるのではないか? そう考えた我々は,原子層におけるパターン形成の理論研究を行った.熱帯魚とビスマスの模様の見た目が酷似しているとはいえ,材質はもちろん,そのスケールが決定的に異なる.かたや幅約1 cm,かたや1 nm.7桁も異なるスケールが単一のチューリング理論でともに説明できるかは全く自明でない.我々は試行錯誤の末,ビスマス単原子層に本質的な三種の原子間ポテンシャルからなる有効模型を構築した.そこから得た時間発展方程式の数値シミュレーションにより,ビスマス単原子層で観測された模様と非常によく一致するパターンが形成されることを示した.さらに解析を進め,我々の時間発展方程式がチューリング・パターンの方程式と本質的に等しいことを数理的に証明した.すなわち,ビスマス原子が描く奇妙な模様の正体は,熱帯魚と同じ,チューリング・パターンであったことが明らかとなった.実際に観測されたチューリング・パターンとしては,世界最小である.今回の結果は,チューリング理論がcmからnmまで極めて広いスケールで有効であることを示している.そればかりでなく,チューリング・パターンがソフトマターだけでなく,原子スケールのハードマター(固体)でもみられることが明らかになった.今回の発見は,これまで考えられてきたよりもずっと多くの対象でチューリング理論が有効であることを示唆している.さらに,固い単原子膜に傷をつけても,生物と同様に自然治癒する性質があることもシミュレーションによって示された.生命科学で見られる現象が,無生物の固体で見られたのは驚きである.本研究のほかにも,生命現象に類似した現象が無生物の固体で見出される可能性が高く,今後の展開に注目したい.
著者
古川 和男 加藤 義夫
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.467-475, 2002-07-05 (Released:2011-02-09)
参考文献数
22

再生型太陽エネルギーが主力となるのは世紀末であり, 化石燃料との中間は核分裂エネルギーで埋めざるをえない. その安全性・核廃棄物・プルトニウム問題等の決定的改善に向け, 照射損傷なく核反応・熱輸送・化学処理媒体を兼ねる7LiF-BeF2系熔融フッ化物塩を液体核燃料に利用して, トリウム増殖サイクルの熔融塩核エネルギー協働システムを世界に展開すべきである. これは, 黒鉛減速燃料自給自足型の公共施設的小型原発と, スポレーション反応利用で核転換増殖する加速器熔融塩増殖施設からなる. 世紀末の太陽エネルギーへの本格的交代期 (即ち, 核分裂エネルギーの終焉期) には, この協働システムから出る余剰中性子 (核燃料) を利用して経済的に核廃棄物を消滅しつつ, 地球環境・貧困解決のみでなく, 着実な核兵器完全廃絶を目指すことができよう.
著者
鈴木 大助
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会研究会資料 先進的学習科学と工学研究会 99回(2023/11) (ISSN:13494104)
巻号頁・発行日
pp.07-11, 2023-11-15 (Released:2023-11-15)

教務事項に関する学生からの問い合わせに回答するため、教務に関係する教職員は多くの時間と労力を費やしている。本研究では、この質問対応に要する時間と労力の軽減のため、ChatGPTを活用できるかどうか検討を行う。筆者の所属学部における教務文書を回答の根拠文書として与え、教務事項に関するいくつかの質問を提示して、得られた回答が実際の回答として使用できるかどうか、教務の観点から評価を行う。
著者
町田 拓自 飯塚 健治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.143, no.7, pp.599-606, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)
参考文献数
36

The nausea and vomiting that occur as a result of oral iron administration for the treatment of iron-deficiency anemia (IDA) can cause significant physical and emotional stress in patients. Because iron is absorbed from the intestine as ferrous iron, the most widely used treatment for IDA is oral ferrous agents. However, ferrous forms are more toxic than ferric forms because ferrous forms readily generate free radicals. A randomized, double-blind, active-controlled, multicenter non-inferiority study conducted in Japan showed that ferric citrate hydrate (FC) was just as effective as sodium ferrous citrate (SF) in the treatment of IDA, with a lower incidence of adverse reactions such as nausea and vomiting compared with SF. Animal studies have shown that chemotherapy-induced nausea and vomiting (CINV) involves the release of 5-hydroxytryptamine from enterochromaffin cells by free radicals, and that some chemotherapeutic agents cause hyperplasia of these cells. Enterochromaffin cells also contain substance P, which is known to be also closely related to CINV. We found that administration of SF to rats causes hyperplasia of enterochromaffin cells in the small intestine, whereas FC has no effect on enterochromaffin cells. Oral iron agents may induce nausea and vomiting via the effect of ferrous iron on reactive oxygen species production in the intestine and subsequent enterochromaffin cell hyperplasia. Further research to elucidate the detailed mechanism of enterochromaffin cell hyperplasia induced by ferrous iron preparations is needed to develop a treatment for iron deficiency anemia that causes less gastrointestinal damage.
著者
吉野 瑞恵
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.33-43, 2012-05-10 (Released:2017-11-02)

『源氏物語大成』に結実する『源氏物語』の文献学的な研究で知られる池田亀鑑は、『宮廷女流日記文学』においては、主情的な評論を試みており、両者は鮮やかな対照をなしている。彼のこのような二面性は、個人的な資質による面もあったが、さらに、池田が人間形成をした大正期に哲学・芸術・文学・社会運動などあらゆる領域を席巻した「生命主義」とも呼ばれる大きな潮流の影響を考える必要がある。池田という研究者は、大正期という時代の新しい流れに反応し、この時代に文学研究をめぐって浮上してきた問題を引き受けて、一生を送ったといえるのである。
著者
長廣 利崇
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

大学で得られた学びが職業にどのように活かされているのだろうか。比較的データを集めやすい「今」を対象とした研究は多いが、過去にさかのぼってこれを検討した研究は少ない。我々の生きる「今」は、過去の蓄積から成り立っているため、歴史的視点が重要になる。この研究は、第二次世界大戦以前における日本の高等教育(とくに文系の教育)を受けた学生・生徒の学びが職業にどのように結びついたかを検討するものである。この研究によって戦前期のイメージを掴み、「今」をより深く知ることができよう。
著者
丸山 来輝 山﨑 宏継 佐藤 之俊 井上 準人
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.650-654, 2023-11-15 (Released:2023-11-15)
参考文献数
9

自動縫合器は組織の安全な切離,閉鎖のために多用されている.今回,肺切除断端のステープルが大動脈外膜を損傷し術後出血をきたした症例を報告する.症例は63歳,女性.転移性肺腫瘍に対して胸腔鏡下左下葉部分切除術を施行した.術後1日目にドレーンを抜去,術後2日目に退院となった.術後4日目に呼吸苦を自覚し救急搬送となり,左胸腔内出血を認め緊急手術を施行した.左胸腔内には血腫が充満し下行大動脈の外膜が頭尾側方向に欠損し血餅が付着していた.同部位からの出血と判断し修復を行った.欠損部位に接する肺にステープルの突出を認め,大動脈の拍動と呼吸性変動による摩擦で大動脈外膜損傷に至ったと考えられた.自動縫合器のステープルによる大動脈外膜損傷の術後出血報告例はなく,肺部分切除後のステープルが大血管に接する症例では,ステープルを人工被覆材や脂肪組織等でカバーリングする必要性が考えられた.