著者
長尾 敬介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

我々が立ち上げた国内唯一のI-Xe 年代測定装置を用いて、太陽系初期の惑星形成史を解明するため、非平衡コンドライトや太陽風を含む角礫岩質コンドライトの年代を調べた。この結果、多くのコンドライトが炭素質コンドライトより2000-5000 万年後にリセットされたことを示しており、この間に母天体で水質変質などの変成作用が継続したことが分かって来た。また、中性子照射されたこれら試料に含まれる微量ハロゲンの定量も可能になってきた。
著者
阿部 英樹
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

高レベル廃棄物に高濃度に含まれる代表的な3種のイオン、Cs^+、Sr^<2+>、La^<3+>を、マトリックス材である酸化チタン(TiO_2)と共にモリブデン酸溶融塩に溶解後、電気分解することによって、それぞれ、チタン酸単結晶固化体Cs_xTi_8O_<16>、SrTiO3、La_<2/3>TiO_3の形態で電気分別固化することに成功した。高温・高圧水中でのリーチ耐性評価により、Cs_xTi_8O_<16>およびSrTiO_3単結晶固化体が、いずれも高い腐食耐性を示すことを明らかにした。現実の高レベル廃棄物に対する電気分別固化法の高い実効性が証明された。
著者
西本 右子 森下 裕子 貝塚 美保子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.701-706, 1996-07-05
被引用文献数
17 6

強酸性電解生成水溶液は, 消毒・殺菌効果やかいように対する治ゆ効果を有し, 病院内で水道水と機器により簡便に生成できるため医療分野で使用され, 効果が報告され始めている.生成条件を検討したところ電解電流値や電解助剤濃度の多少の変動では物性値に大きな変化は見られず, 使用する医療機関による水質の差異は少ないものと考える.又, 5日間程度は保存可能であることも分かった、排水としては, 同時に生成する強塩基性生成水溶液を混合することで緩和できることも確認できた.強酸性電解生成水溶液の特徴の一つである高い酸化還元電位には塩素が関与することが明らかとなった.pH・酸化還元電位・有効塩素濃度等に関しては電解によらず試薬の混合のみで同一レベルの水溶液が調製できた.又, ^<17>O-NMRによる測定でも特に変わった点は見いだせなかった.強酸性電解生成水溶液の示す特性の多くは電解操作自体ではなく, 電解によって生じた条件の再現で説明される.
著者
橋場 弦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.まず第1の課題として、古代ギリシア人の公共圏と民主政コードの歴史的形成を跡づける証拠を、碑文史料および古典史料の解読を通じて収集し、民主政コード全体の構造を把握することに努めた。その結果として、アテナイにおける民主政コードとは、近代的憲法とは異なり、首尾一貫した体系を持つものではなく、歴史的に形成された社会的諸規範、文化コードの複雑な連合体であることが判明した。いわば民主政とはアテナイ人にとって制度というよりは伝統文化であり、生活様式に他ならなかった。2.第2に、特に古典期のアテナイ社会において,常設された警察権力なしにどのようにして市民たちが日常の社会的紛争解決を実現していたかを,おもに前4世紀の法廷弁論に描かれた公私の紛争事件を素材として探究し,そこに超越的権力の介在なしに働いていた市民的公共性の理念を読み取ることに努めた。その結果として、市民同士の紛争解決にあたっては、当事者の親族友人、あるいは地縁共同体を同じくするメンバーが司法的な援助を行うのみならず、純粋に善意の第三者といってよい「通りすがりの人々(hoi parontes)」が不正を見かけた場合に、市民の公的な立場から助勢を申し出ることも重要であることが分かった。3,以上の考察から、アテナイ民主政の公共圏は、親族・友人・同年齢集団・同区民・フラトリアなどの中間団体を構成要素として多重的な構造を備えており、また各市民は、時にはそれぞれの帰属集団の利害を超えた公共心から行動することが期待されていたと結論できる。
著者
金子 純一 藤田 文行 本間 彰
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

今年度は前年度良い結果の出たリフトオフ法を北海道大学に導入することを第一目標として研究を行った。Ib型基板を使用して連携研究先である産業技術研究所と同一の合成条件でCVD単結晶の合成を行った。合成した試料をリフトオフ法により自立膜化した。さらに化学処理ならびに電極製作を行い、検出器とした。製作した検出器に対してI-V測定、α線応答測定を行った。十分な印加電圧がかかり、α線に対して16%程度ではあるがピークの立つ応答を示す検出器の製作に成功した。今後、高品質基板を使用し、合成条件の最適化を進め実用的な人工ダイヤモンド放射線検出器の実現を目指す。また合成した結晶中の電荷捕獲準位を同定するための積極的電荷捕獲を利用した光I-V測定法の改良をすすめ、ある程度信頼性のあるデータが取得できる状況に達した。
著者
山中 弘次
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.265-272, 2010 (Released:2010-05-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1

超純水の定義,性質,利用分野,製造方法を概観した後,ppq(pg/L)レベルに迫る超純水の超高純度化を可能にしたイオン吸着膜を紹介する.また,超純水製造システムにおける水の再利用,薬品使用量低減技術について述べ,更に,超純水の新しい可能性として,洗浄能力を高めた水,機能水についても紹介する.
著者
福島 康記 菊間 満 有永 明人 加藤 衛拡 赤羽 武 永田 信
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

林野所有権の特徴は、耕地のそれのロ-マ法的な単一絶対的性格に対して、過渡的性格を広く残しているところにある。地租改正・林野官民有区分とその後の林野政策において大面積の入会地の国公有化を図り、そのことが、各地に複雑な過渡的所有を生んでいったのである。国有林野においても、様々な地元利用の制度化にみられるように、部分的な利用権を認めたうえではじめて成立する所有権でしかなかった。山梨県有林もその例であり、入会団体の保護義務の代償に産物・土地売り払い代金と土地利用代金の一部交付など、現代に至るまで地元関係を存続させている。最近の共有地の観光開発に関して、開発の形態や利益の地元保留など所有形態が一定の影響を与えている。現代経済体制は資本がすべてに優越し、林野的土地問題は一国の資源・土地問題の一環に組み込まれているのだが、林業内部の矛盾は林野的所有の資本に対する優位として現れ、小規模所有者にあっては林業放棄を、大規模所有者にあっては伐採規模縮小と伐採の間断化をもたらしたが、そのことが素析生産に重くのしかかり、業者数の著しい減少が見られる。農家の林業について、農山村畑作地帯の複合経営農家において、間伐期を迎えて間伐木の自家生産が収益を生むようになり林業への積極性が生まれ、林業が農林家の再生産の安定的契機になろうとしている地域がある。諸外国においても、環境保護対策やレクリエ-ション需要の高まりに対応するため、森林所有権に対する制限が課せられる趨勢にある。アメリカ合衆国のいくつかの州において林業施業に対する制限が強化され、ドイツにおいて連邦森林法が制定されて、森林を国民休養の場として利用する休養林と入林権の規定が設けられた。
著者
豊見山 和行
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、2年間で近世琉球王国法制史料の基礎史料の収集・整備とそれに関連する論考の作成を目的とした。その結果、2つの論考(漂着処理をめぐる琉球の基本法=「宝永元年御条書」を新たに発掘した論考と市場における諸法令と女性の振り売り規制の論考)を作成した。さらに、以下の諸史料を収集し、翻刻しテキストデータとして処理した。(1)「職制秘覧」は、成立年は18世紀頃と目され、首里王府全体的の法制を規定し、官人への俸禄や諸制度等が列記されている。貿易資本の渡唐銀、海運関係、鹿児島の琉球館、黒糖等に関する多様な情報を含む史料である。(2)「首里王府評定所執務規定書」は、18世紀後半における王府の中枢機関である評定所の執務規定を規定したものであり、新出史料である。(3)「首里王府法制之部」は、明治初年に書写されたものであるが、法令の年代幅は1735年から1877年におよぶ。士族の禄制・家督相続の方法、道路・港湾・堤防・船改め・山林・家産・売買・医制・砂糖・鬱金・屠獣・墳墓・度量衡・祭典・葬儀・系図等に分類・編年された単行法令集である。(4)「仰渡写」は、最古の1713年から1826年までの年代幅をもち、全107文書からなる単行法令集である。内容は次のように多岐にわたる。諸物の買い占め禁止、櫨桐実の専売制化と脇売り禁令、八重山島への嬰児埋殺禁令、田舎間切から町方へ百姓の移住禁令、爬龍舟時のケンカ禁令、両先島での焼酎製造禁令、等々である。以上から近世琉球における法制史料の基礎的整備は、一定程度可能になったものと言えよう。
著者
三浦 勉 森本 隆夫 早野 和彦 岸本 武士
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.245-249, 2000-04-05
被引用文献数
9 29

キレートディスク(3M Empore^<TM> chelating resin disk)を用いた水試料中ウランの予備濃縮分離法を開発した. ウランを100 mM酢酸アンモニウム, 1 mM DCTA, pH 5.0, 流量100〜150 ml min^<-1>の条件でキレートディスクに選択的に捕集(回収率: 100±1.6%)し, 2 M硝酸7.5 mlで溶離する. 試料21を用いて200倍の濃縮が可能であり, 濃縮操作は約20分で終了する. 海水中のウランの定量では, 試料11当たり0.3 molの硫酸ナトリウムを添加することで回収率の低下を改善できた. 本法を用いて海水, ミネラルウォーター中のウランをICP-AESで定暈した. 海水中ウランの定量値は3.1±0.058 μg l^<-1> (n=3)であり, ICP-MS, α線スペクトロメトリーによる結果と一致した. ミネラルウォーター中のウラン濃度は<0.1-1.7 ug l^<-1>であった.