著者
細谷 幸子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、西洋近代医療の一端を担う看護職をめぐる諸状況の分析から、イスラーム社会における西洋近代医療と宗教の関係性の理解を促すことにある。西洋近代医療においては、治療・看護を目的として、患者身体への直接的介入がおこなわれる。しかし、イスラームが異性身体への関わりを禁止行為とし、人間の排泄物等に触れることを不浄をしているがゆえに、イスラーム社会に住む人々は、西洋近代医療を受容しながらも、身体をめぐるさまざまな倫理的問題に直面せざるを得ない状況に置かれている。本研究では、イラン・イスラーム共和国をフィールドとし、患者身体への直接的な接触(ボディ・ケア)を主業務とする看護職に注目する。民族誌的手法による総合的アプローチをとることで、イスラーム社会における西洋近代医療と宗教の動態的関係性を捉えようとする。平成15年度の研究実績は、以下の通りである。平成15年4月から6月までは、日本国内で、これまでの現地調査で得た資料の整理・分析と、文献研究をおこなった。その後、平成15年7月には、ロンドンにおいて、イギリス在住イラン人慈善家たちの活動と、イラン国内の病院や介護施設における看護・介護実践との関連性について調査をおこなった。平成15年10月から12月には、イラン・イスラーム共和国、テヘランを拠点として、これまでの調査・研究で不足していた情報の収集と、インタビューのテープ起こしをおこなった。平成16年1月から3月には、日本国内で文献研究をおこなうと同時に、イランの看護、介護と医療をテーマとして、看護専門雑誌で連載を受け持ち、小論を発表した。(研究発表の欄を参照)
著者
岡本 亜紀 岡 宏美 杉本 幸枝 矢藤 誠慈郎 難波 正義
出版者
新見公立短期大学
雑誌
新見公立短期大学紀要 (ISSN:13453599)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.187-197, 2006

本学の学生が国際ボランティア活動について学ぶことができる研修制度の設立のため、我々は、2006年1月5日〜1月9日、カンボジアのシェムリアップ市においてボランティア活動を継続している岡山県に本部を置くNGOを視察した。その団体の活動は、孤児・地雷障害者・母子家庭・エイズ患者の支援プロジェクト、井戸掘り・ジャックフルーツ植樹プロジェクト、および職業訓練施設(子供レストラン技能学校)の運営などである。帰国後、「新見公立短大カンボジア会」を設立して学生メンバーを募った。現在、我々は、支援物資の調達などの国内ボランティア活動、定例ワークショップの開催、開発途上国とそれらの国に係わるNGO (nongovernmental organization:非政府組織)のこと、国際協力に関する啓発・学習などを行っている。本稿では、カンボジアでの現地研修の報告と共に、今後の「新見公立短大カンボジア会」活動について検討する。
著者
堀田 昌英
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,国際インフラストラクチャ整備におけるコンフリクト管理手法の構築を目的としている.本年度は,前年度に開発した集団支援システムを国際援助機関が直面している被援助国の利害調整に応用するため,本システムのプロトタイプの機能拡張を行った.実際に国際的なインフラストラクチャ整備をめぐるコンフリクト管理を担っている機関との協力関係を構築した.はじめに,本研究で開発した集団支援システムの適用可能性を検討するにあたり,前年度行った事例調査の結果を踏まえ,資源配分の利害調整に特化した情報共有システムの作成を行った.具体的には,スマトラ沖地震による津波で被災したタイ南部を対象に,救援物資・生活支援物資の配分の最適化モデルを構築した.現地の救済機関にこのシステムを実際に使用してもらい,実際の資源配分問題における有用性に対する評価が得られたとともに,汎用化に向けて改善すべき点が提示された.この結果を基に,社会基盤整備事業における交渉の関係国及び仲裁・調停機関が情報共有媒体として本システムを活用することを考慮し,前年度に作成した集団支援システムのプロトタイプの改良及び機能拡張を行った.具体的には,ジオコーディング精度の向上,議論内容に含まれる地点情報に基づき論点を地図上の該当位置に対応させる機能の付与である.今回のシステム改良により,主要な論点の空間的な分布と相互関係が視覚的に把握できるようになり,地理的文脈の強い国際コンフリクトへの活用に適したシステムとなった.また次年度より,本研究で開発した集団支援システムは国際協力機構と協力の上,バングラデシュ国パドマ橋建設事業及びインド国幹線貨物鉄道事業において環境社会配慮施策の策定支援に実際に用いられることが決定した.本研究を通じて,多国間の利害調整に貢献し得る問題構造化技術を提示し,新たなコンフリクト管理手法の枠組みを構築することができた.
著者
稲田 道彦
出版者
香川大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

この2年の研究期間に香川県西部の三豊郡詫間町・仁尾町・三野町・豊中町・高瀬町の一部・観音寺市の一部を調査地域に定め、全墓地を訪ねると共に特に両墓制墓地の崩壊過程を調査研究した。この地域で一般的であった土葬が火葬の導入により墓地制度の変更がうながされた。このことが墓地を含む人にとの生活空間にどのような影響を及ぼしたのかというのが、研究者の問題意識であった。両墓制は従前の習俗を維持するのが困難になっった。特に埋葬地の埋め墓は多様な形態を示している。このような墓地制度の変化は葬儀などの儀式に変化を及ぼし、ひいては人々の宗教的な考え方にまで変容のきっかけを与えていることがわかった。さらに人々の生活スタイルの近代化や合理的思考などという現代人のライフスタイルもこれら地域の墓地空間の変化に大きく影響を与えていることが聞き取り調査で明らかになった。これらの地域の墓地の変化と比較するために、京都市や名張市など各地の両墓制墓地の変化の状況を調査した。また都市的な墓地文化を知るため、各地の都市の墓地の変容過程も調査した。調査地域の墓地の変容は火葬の導入がきっかけであったが、死者の埋葬地、遺骨、石塔というモノにこだわる現代人の態度が根底にあった。死者供養も墓石を建てることや実際の墓参りという行動によって自己満足を得ている。死者供養が人々の心の問題であるとして片づけることはできなくなっている。もしそうなら多様な死者供養が有り得るのであるが、現在地方固有の文化が都市的な葬制墓制文化に統一されつつある。墓地利用も入り会い形式ではなく、個人に区画し管理することを望むなど個人主義の傾向が強くなっている。1991年12月に人文地理学会事務局で開かれた特別例会で『両墓制墓地の変容ー香川県西部に事例を中心にー』という発表をおこなった。この表発は今回の科学研究費による研究の成果の一つである。
著者
三井 さよ
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

特養ホームでの聞き取り調査、阪神・淡路大震災以後ボランティア活動を継続している団体での聞き取り調査、および知的障害者の支援団体における準参与観察と聞き取り調査を通して、生活上で他者の支援を必要とするという経験の内実について理論的に考察すると同時に、その中でもその人の生活をその人自身のものとしていくための手法について、それぞれにおかれた環境や状況に応じて存在することを確かめ、その理論化を試みた。

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著者
砂川 一郎
出版者
日本結晶成長学会
雑誌
日本結晶成長学会誌 (ISSN:03856275)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.207-208, 1990-03-25
著者
丹羽 美苗
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

覚せい剤や麻薬による薬物依存は大きな社会問題であるが,治療法がほとんど確立されていないのが現状である.治療薬の開発が遅れている理由として,依存形成の鍵となるタンパクが明らかになっていないことが挙げられる.そこで,PCR-select cDNAサブストラクション法を用いて,薬物依存形成の鍵となる新規機能分子の探索を試みた.その結果,覚せい剤メタンフェタミンを連続投与されたマウス脳側坐核から新規機能分子`shati'を同定した.昨年度までに、shatiが,メタンフェタミン誘発自発運動量亢進および場所嗜好性の形成に対して抑制的に働くことを明らかにした.さらに,shatiがメタンフェタミンによって引き起こされる細胞外ドパミン量の増加およびドパミン再取り込み能低下を抑制することを示した.本年度は,メタンフェタミン依存形成段階においてshatiが関与していることを検討するに留まらず,薬物依存抑制因子として報告されているTNF-αとの関連についても明らかにした.PC12細胞へshati発現ベクターをトランスフェクションすると,コントロール細胞と比較して,shatiおよびTNF-αmRNAの発現量の増加,ドパミン再取り込み能の促進,メタンフェタミン誘発ドパミン再取り込み能低下の抑制が観察された.これらshatiの作用は,可溶性TNF受容体およびTNF-α抗体を前処置しTNF-αを中和することよって抑制されたことから,shatiはTNF-αを介してドパミン再取り込みを促進していると考えられる.今後,shatiの依存形成メカニズムへの関与をさらに詳細に解明することが,薬物依存形成機構の解明と治療薬の開発に繋がると考えられる.
著者
齊藤 晋聖
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

光ファイバのクラッド領域に微細構造を有する微細構造光ファイバにはいくつかの種類が存在するが、本研究では、ソリッドコアフォトニックバンドギャップファイバの有する特異な光学特性に着目し、その複雑な構造パラメータと光学特性との関係を詳細に調査し、高度利用のための基盤技術を確立した。特に、コア径拡大と単一モード動作、および低曲げ損失特性の両立という観点から、複数のバンドギャップにおける光学特性を総合的に評価し、大コア径ファイバとしての最適な透過帯域(フォトニックバンドギャップの次数)を明らかにするとともに、ファイバ製造上の構造制御技術、およびファイバ使用時のコイル径等を考慮に入れたコア径拡大の理論的限界を特定した。
著者
佐藤 弘明 吉田 則信 宮永 喜一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.954-963, 2001-10-01
被引用文献数
22

フォトニック結晶は, ある波長帯の光を強く遮へいするストップバンド特性(フォトニックバンドギャップ:PBG)を有し, 光ファイバやスラブ導波路のような弱導波の導波路では実現できない波長程度の鋭い曲がり等を有する微細構造デバイスの製作の可能性が期待されている.しかし, それらの設計・製作には多くの困難が予想され, シミュレーションによる特性の把握と予測は必要不可欠であり, これまでFDTD法やBPM等で解析されてきている.特に, 機能的光回路デバイス製作のためには, 分散性や非線形効果を有する誘電体を含むフォトニック結晶光導波路構造の全体的解析が必要不可欠である.本論文では, 凝縮節点空間回路網における媒質条件の取扱いの特長を生かして, 種々の媒質を含んだフォトニック結晶光導波路構造の基本特性について明らかにする.
著者
茨木 博 橋本 巨
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.75, no.757, pp.2596-2603, 2009-09-25

This study is concerning the optimum design of a water nozzle for firefighting equipment used to protect large indoor spaces and high-rise buildings. Water nozzles for such use are required to have a long range of reach and/or a wide coverage. Such performance can be obtained by simply increasing the flow rate, but that is caused substantial pressure loss by the fluid friction within the nozzle and the pipe. The objective of this study is to obtain a water nozzle with minimum fluid friction by optimum design, as a result the size of piping, pump and water reservoir for firefighting equipment can be minimized. The conventional water nozzle used in firefighting is called the smooth bore nozzle, which have a wedge-shape profile whose diameter decreasing toward the exit. However, whether or not this shape is optimum have not been known. In this study, a method is presented to obtain a friction-minimum nozzle profile, while setting the inlet-and outlet-diameters and the length of the nozzle as fixed parameters. It was found that the half-spindle-type nozzle, whose diameter is almost constant along the length but quickly decreases at the exit, shows the smallest friction than the other profiles (i.e. smooth-bore, straight and concaved), therefore showing maximum arrival distance.
著者
三谷 泰浩 島谷 幸宏 江崎 哲郎 池見 洋明
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

近年,豪雨時に濁質物質がダム貯水池内に大量に流入し,下流河川における濁水の長期化が生じている。これは,貯水池への懸濁物質の供給が根本的な原因であり,懸濁物質の発生源の特定及び濁水発生要因を明らかにすることが求められている。本研究では,貯水池上流域の河川にて計測した懸濁物質の流出状況から懸濁物質の流出予測モデルを開発し,懸濁物質の流出特性を把握する。次に,その結果と地理情報システム(GIS)を用いて定量化された各種素因との相関分析により,濁水発生に影響を与える素因を特定し,特定された影響素因と懸濁物質流出特性の関連性及び影響素因の空間分布特から,貯水池上流域の潜在的な懸濁物質の流出危険度を評価する。
著者
糸井川 栄一 加藤 孝明
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,市街地火災安全基準の性能規定化を目指すために必要な基礎的条件を整理し,数理的アプローチによる防火性能評価手法の提案を行うことを目的とするものである.主たる研究成果としては,(1)市街地火災安全性の変遷とその要因を分析したこと,(2)市街地火災の根本的な原因の一つである地震時出火に対する対策効果に関して数理的に評価したこと,(3)地震時火災時の広域避難計画について現行の避難計画の改善を図る数理的計画手法を提案したこと,(4)広域避難安全性確保から見た市街地の延焼危険性に要請されるレベルを明らかにしたこと,などである.
著者
岡本 峰雄 野島 哲 古澤 昌彦
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

1.有性生殖を利用したサンゴ再生技術の研究開発セラミック製の着床具を開発して海域着生実験を行った。海域の水温と月齢の関係を調べつつ、石西礁湖各所でサンゴの成熟度調査を行って一斉産卵の予測を試みた。着床具は4月と5月の2回の満月前に海域に設置したが、前者で適切な着生結果が得られ、後者は少し遅すぎた。また、架台に密に配置した着床具の配置についても重要な知見が得られた。各着床具に光と流れが十分にあたるよう配置することの重要性が明らかになった。2.白化が頻発するなかでのサンゴ群集構造の変化についての研究石西礁湖のサンゴの健康度評価のため、92種のサンゴを対象に、クロロフィル蛍光を利用した光合成収率と光-ETR曲線を得た。この結果、健康なサンゴは暗順応状態で収率が0.66と、また100PAR時は27.8と共通であることを見出した。これを基準に白化状態のサンゴの健康度評価を行ったところ、熟練者が目視で判断した白化段階とほぼ一致する値を簡便に計測できるようになった。3.サンゴの受精卵・幼生の定量化のための基礎研究プランクトンなどの微細な海洋生物の定量的把握は海洋生物資源管理のうえで重要な課題である。現在実用化されている計量式魚群探知機の周波数の上限は400kHz程度であり、やや大型の動物プランクトン計測に用いられている。より微細な1mm程度以下の生物の計測を目的として、1.1MHzのスプリットビーム方式のTS測定システムを試作し、水槽実験で直径2mmの較正球を用いて探知範囲と計測精度の検討を行った。その結果小型動物プランクトンの計測が可能であるとの見通しが得られた。
著者
青木 三和子
出版者
上田女子短期大学
雑誌
学海 (ISSN:09114254)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.93-98, 1990-03
著者
田村 忠久
出版者
神奈川大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

本研究ではオーストラリアで稼働中の3.8m鏡のカメラに取り付ける集光器を開発した。まず集光器の形状をシミュレーションによって決めた。今回は反射面を曲面状にすることは考えずに、全面が平らなものを設計した。反射面の反射率を90%と仮定して、いろいろな形状についてシミュレーションを行った結果、1.8倍の光量を得られることが判った。はじめ、金属を打ち出して成形し反射面にアルミ蒸着を施すことを考えたが、打ち出し用の型代が予算に収まらないため、ABS樹脂を成形して表面に金属メッキを施すことにした。クロムをメッキしたABS樹脂の平板の反射率を測定したところ86%であり、シミュレーションの仮定をほぼ満たしていた。メッキ金属はクロム、ニッケル、スズ・コバルト合金が考えられたが、集光率はどれもほぼ同じであったので、生産の歩留まりや耐久性からスズ・コバルト合金を採用した。3/8インチ光電子増倍管に集光器を取り付けて光量を測定したところ単体での集光率は1.5倍であった。この集光器を16×16のマトリックス状に組み上げてオーストラリアの3.8mCANGAROO望遠鏡に取り付け、95年11月、12月にCrabの観測を行なった。Crabについては93、94年の観測で、エネルギー閾値7TeVでガンマ線を検出している。今回取り付けた集光器で光量が増加していれば、エネルギー閾値が下がってガンマ線の計数率が増えているはずである。95年の観測は天候状態が不安定であったため、Crab方向に雲がかかっている時間帯を除いた解析によって集光器の総合的な性能評価を行なわねばならず、現在その解析を行なっているところである。
著者
高井 博司 川村 宏
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.969-976, 2002-12-31
被引用文献数
1

ヤマセは,梅雨期に東北地方太平洋沿岸に吹きつける低温・湿潤な北東風である.古くから冷害の原因とされ,最近では,1993年の大冷害もこのヤマセによるものであった.近年の衛星観測データの蓄積は,局地的な現象を長期的・広域的にとらえることを可能にした.本研究では,衛星観測データと地上観測データを用い,ヤマセ日における「晴れ」・「曇」の出現確率に関する研究をおこなった.衛星観測データは,NOAA/AVHRRから作成されるJAIDASデータを利用し,ヤマセ日の特定にはアメダスデータを利用した.JAIDASよりアメダス地点周辺の気象状況(晴れ・曇等)を判別し,ヤマセ日との関係を考察したところ,ヤマセ時には,90%の割合で雲がかかっていることが示された.また,リアス式海岸である三陸地方の地形の影響が大きいことがわかった.
著者
柳澤 文孝
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

大気中に存在する物質は乾性沈着あるいは湿性沈着によって除去されて地上に沈着する。降雨が落下する間に大気中にある物質を取り込むウオッシュアウトを野外で実測する試みが国内外で様々なされてきたが、実測された例はなかった。そこで、中国四川省峨眉山に降雨採取容器を設置して降雨の試料を採取し、化学分析を行うと共に分析結果の解析を行った。降雨に含まれる成分は高度が下がるに伴って増加する。両者の関係を数式化した。
著者
湯浅 勲 小島 明子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

多くの研究者によって報告されている細胞レベルでの研究において用いられている食品成分からの抽出物の濃度は生理的な条件化における血中濃度より高い濃度を必要する場合が多い。生活習慣病の予防戦略として応用するためには有効濃度についての検討が必要である。本研究の目的は次の問題点((1)アロエ、茶、月見草およびタイショウガなどの食用植物抽出物のガン細胞に対する作用メカニズムの解明とそれぞれのメカニズムの違いを明確にする。(2)これらの作用メカニズムの違いを考慮し、複数抽出物の同時摂取することにより低濃度で有効となるシステムを検討する。)について明らかにすることである。平成16年度の研究においては、月見草抽出物は細胞内活性酸素を増加させることによりガン細胞のアポトーシスを起こすが、ガン細胞の増殖抑制には関与しないこと、また、月見草抽出物によるアポトーシスには細胞内ポリアミンが関与するが、細胞増殖には影響しないことを明らかにした。また、西洋ニンジンの葉抽出物がガン細胞の細胞周期をG2期で停止させることよりなど、アロエ、茶、月見草、タイショウガおよびニンジン葉抽出物はそれぞれ異なるメカニズムで抗ガン作用を示すことを明らかにした。また、平成17年度においては、食物繊維により腸管内で生成される酪酸の作用メカニズムについても調べた後、問題点(2)について作用メカニズムの異なる成分の同時投与の影響について検討した。その結果、緑茶抽出物は酪産と同時に添加することにより相乗的にヒト大腸ガン細胞の増殖を抑制すること、またカフェインは酪産と同時に添加することにより相加的にガン細胞の増殖を抑制することを明らかにした。今後さらに検討することが必要であるが、今回の研究により低濃度で有効なシステムの確立するための手がかりを得ることができた。
著者
鹿島 剛
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

SMN1遺伝子の発現が不活化されている脊髄性筋萎縮症SMA由来の線維芽細胞にRNA結合蛋白質hnRNP A2に対するRNA干渉を施すとSMNの産生量が減少する現象を見つけた。この作用機序は,SMN2遺伝子の翻訳レベルでの調節であることが解析できた。この事は,SMN2とA2による分子間相互作用が新たな分子標的として,創薬のターゲットとして今後の研究対象になることを示唆している。