著者
藤田 尚文
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

曲面の違いの影響について調べた。また、図形の向き(上向きか下向きか右向きか左向きか)の違い、比べる曲面(同じ曲面か異なる曲面か)の違い、図形の置く位置(右と左か上と下か)の違いの影響についても調べた。3次元の曲面では他の要因の影響を受けやすいため、曲面を2次元のものに限定して実験を行った。実験において被験者はアイマスクをして机の前に座り、提示された刺激図形を右手の人さし指で触れる。被験者には1個の標準図形と1個の比較図形が提示される。被験者の課題はそれらの提示された図形を比べてより高い図形(より深い図形)を選ぶかあるいは両者が同じかを判断することである。極限法により主観的等価値(PSE)を測定した。実験で用いた標準図形と比較図形には山曲面を持つ図形と谷曲面を持つ図形の2種類がある。山曲面と谷曲面は、一山または一谷のsin曲線であった。標準図形の曲面の幅は5.1cmの1種類;高さ(深さ)は1.0cmの1種類。比較図形の曲面の幅は3.4cmの1種類;高さ(深さ)は0.1cmから1.5cmまで0.1cm刻みで15種類。実験1〜4において以下の4点が影響を及ぼしていることが分かった。この4点は、図形の位置(右と左か上と下か)に関係なく影響を及ぼしていた。図形の位置については、標準図形の位置が右(上)の時と左(下)の時の数値には差がないことから、影響はないと考えられる。(1)幅5.1cmと幅3.4cmでは幅3.4cmを高く(深く)知覚し、幅5.1cmを低く(浅く)知覚する。(2)標準図形の向きを下向きにした時に高く(深く)知覚し、標準図形の向きを左向きにした時、低く(浅く)知覚する。(3)幅3.4cmの山曲面と谷曲面では山曲面を高く(深く)知覚し、谷曲面を低く(浅く)知覚する。(4)比べる曲面、比べる曲面の幅が異なる時、比較図形を高く(深く)知覚する。(山曲面と谷曲面、幅3.4cmと幅5.1cmを比べた時、比較図形を高く(深く)知覚する。)比較図形(幅3.4cm)の山曲面、谷曲面の影響の原因については、山曲面の時は指が外側を通り、谷曲面の時は指が内側を通るためと思われる。標準図形(幅5.1cm)では影響がなかったことから、曲面の幅が広くなる程、影響力はなくなると推測される。向きの影響については、前後の平地の高さをずれて知覚するためだと思われる。上、下、右向きの時は、後ろの平地を低く感じるために高く知覚し、左向きの時は、後ろの平地を高く感じるために低く知覚すると考えられる。図形の触りやすさ、触りにくさも影響していると思われる。
著者
宮崎 泰典 岡田 規男 菅井 貴義 多田 仁史 宮原 利治 高木 和久 青柳 利隆 八田 竜夫 大村 悦司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPM, 電子部品・材料 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.34, pp.29-34, 2003-04-18

光送信機用変調光源には,広変調帯域幅,高出力光強度,高消光比,良好な出力光波形,低伝送ペナルティの両立を要求される`電界吸収型光変調器(EAM)は超高速光送信機の小型化に有用な半導体デバイスであるが,従来は40Gbpsにおいてこれらを両立した報告はなかった.今回,EAMに,(1)キャパシタンス低減に有利な半絶縁性基板,(2)高光出力時低チャープ動作が可能な伸張歪非対称量子井戸吸収層,を用いて40Gbpsにおける低チャープ・高光出力動作を初めて実現した.更に(3)EA変調器モジュールにドライバICを内蔵し,同軸ケーブルやコネクタによる高周波特性悪化を抑えた.その結果,EA変調器モジュールとしてITU-TG.693規格(出力光強度,アイマスク規定,消光比,伝送ペナルティ)を満たすことを確認した.
著者
岸 幹二 繁原 宏 若狭 亨 杉本 朋貞 窪木 拓男
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、第1に顎口腔領域における各種感覚刺激のfMRIに最適の撮像条件の設定、頭部の固定法、画像処理を確立することである。第2に味覚など体動や筋肉の動きを伴わない刺激および嚥下運動におけるfMRIの描出能について健全例について種々条件を変えて検討を加え、fMRIの顎口腔領域各種感覚刺激の研究、臨床応用の可能性を追及することである。平成12年度にまず撮像法の検討を行った。手指の運動に対し、gradient echo type EPI(GE-EPI)とspin echo typeEPI(SP-EPI)の2種類の撮像シーケンスを用いて、fMRI画像の比較検討を行った。その結果、SP-EPIが信号検出の特異性、正確度共に高いため、このシーケンスを用いることにした。頭部固定は、ヘッドコイルと頭部に対し、ヘアバンド、スポンジ等を組み合わせることにより施行し、アイマスクと耳栓で視覚、聴覚刺激を遮断した。画像処理は、Magnetom Visibn付属のソフトウエア-(Numaris)内のz-scoreを用いて行った。次に、味覚刺激は、濃度1Mの食塩水と3mMのサッカリンを被験者の口腔へ挿入したチューブより滴下することにより与え、fMRI撮像を行った。その結果、味覚刺激による脳賦活領域はpariental operculum、frontal operculumとinsulaに分布することが明らかになった。味覚刺激の種類による分布の差異は今回の研究では認められなかった。平成13年度は、主に嚥下運動によるfMRI studyを行った。すなわち、被験者の口腔に挿入したチューブより、蒸留水を3ml/秒注入し、断続的に嚥下してもらうことにより行った。その結果、primary motor cortex、primarys somatosensory cortexが主に賦活されることが明らかになった。
著者
橋本 典久
出版者
八戸工業大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

前年度の視覚障害者に対するインタビュウー調査結果により、建築音響の影響、すなわち空間の音の響きや壁面での音の反射性状が実際によく意識されており、屋内での歩行・行動のし易さに影響を与えているという結果が得られた。これらの具体的影響とその度合いを実際の歩行行動の中で確認し、その影響因子となる建築音響の物理量を究明するため、残響時間や空間の大きさ・形などの建築音響条件の異なる4つの空間において、視覚障害者と晴眼者(アイマスク着用)の歩行実験を行った。その結果、残響時間やSTI、IACC(両耳間相関係数)などの音響指標との直接の対応は確認されなかったものの、建築音響条件の影響が有意であること、また、細長く1次元的な音響空間では、広い空間より歩行時の方向感が良くなることが実験結果により確認された。更に、これらの結果は実験空間における実験結果であることから、実際の空間条件での実験検討として、空間ロビーやデパートなどの各種建物や施設内での歩行実験を行った。その結果でも、細長い空間と広い空間との識別、細長い空間での方向感の良さなどが実際に確認された。視覚障害者の歩行・行動に対する建築音響条件の影響については確認がなされたが、これを制御し,最適化を図って行くためには、具体的な影響因子の抽出が不可欠である。今後、さらに建築音響指標の範囲とその組み合わせの幅を拡げ、建築音響の影響メカニズムを明確化する予定である。
著者
西木 忠一 池田 良子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.232-223, 2002-03-06

平安末期または鎌倉初期に,『源氏物語』愛読者により,「夢の浮橋」の巻後日譚として創作されたのが,「山路の露」である。文章は至って流麗。『源氏物語』に精通した読者の筆になる作品であって,近時「世尊寺伊行」の女「建礼門院右京大夫」を,その作者とする説が提出されている。本注釈は流布本(『続群書類従』物語部所収)を底本にし,「補記」の頂にいささか重みを置いた。本稿に収めた各段の梗概は次ぎのごとくである。髪をおろした浮舟を前に,乳母子の右近は胸のうちを涙ながらに語り,いかなる折にも,決して姫君に遅れまいと心にきめていたものをと,尽きることのない深い悲しみに泣きくずれるのであった(二十八 五重)。右近から薫の愛情の深さに聞くにつけ,浮舟は薫・匂宮という二人の男性の間をゆれ動いたわが心のうちを思い見,これも前世からの報いであったのだと,しみじみ悟るのである(二十九 人目)。いよいよ下山するに至って,浮舟の母は娘を都に連れて帰ろうと言う。だが,浮舟は今更の思いがして帰京の話にのって来ない(三十 客人)。
著者
鈴木 伸一
出版者
岡山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.研究の目的視覚障害者の道路横断に生じる心身のストレス状態を明らかにするとともに,各種ストレスが歩行にどのような影響を及ぼすかを検討することを目的とした.2.対象全盲の視覚障害者6名.被験者の単独歩行歴は20年〜35年であった.3.手続き市街地域の音響式誘導設備が設置された横断歩道(道幅11.6m)を利用し,単独歩行時の生理的反応(心拍率,皮膚電気反射:トーヨーフィジカル社製),心理的反応(POMS不安・緊張尺度),騒音音圧(Rion社製騒音計),横断軌跡,方向見失い(内観)を測定した.各被験者の試行回数は11〜16回であり,総データ数は85であった.4.結果と考察各指標の変化を検討した結果,心拍,皮膚電気反射ともに騒音音圧が上昇する時期と同期して上昇するが,覚醒のピークは皮膚電気反射の方が早い傾向にあった.この結果は昨年度の結果を支持するものであった.また,歩行軌跡のパターンをクラスター分析によって検討すると,歩行軌跡は「離脱無し」,「離脱後復帰」,「離脱」,「後半離脱」の4パターンに分類可能であった.各群における各指標の差異を検討した結果,横断初期(0秒〜5秒)の騒音音圧に顕著な違いが認められ,離脱群の初期騒音は離脱無し群に比べて顕著に高かった.そこで,横断初期の騒音音圧のデータを基準として騒音高群(70db以上)と騒音低群(65db以下)を構成し,ストレス反応の差異を検討した.その結果,騒音高群における横断開始後7〜8秒後の皮膚電気反射は騒音低群にくらべて顕著に高く,横断開始後14〜15秒後の心拍率は騒音低群に比べて顕著に低いことが明らかにされた.これらの結果は,昨年度の研究において示唆された知見を支持していた.以上本研究の結果をまとめると,(1)横断歩道離脱度の高い試行は,初期騒音が高い,横断前半の皮膚電気反射が高い,横断後半の心拍率が低いという特徴がある,(2)横断中の皮膚電気反射の変化は騒音音圧の変化と類似したパターンを示す,(3)横断後半の心拍率は,離脱度の高い試行ほど低い,(4)皮膚電気活動は情緒的反応成分を反映し,心拍率は方向定位に伴う認知的反応成分を反映している,と言うことができる.これらのことから視覚障害者の単独歩行による横断歩道離脱に及ぼすストレスの影響性を考察すると,視覚障害者が横断初期に高い騒音を経験することによって情緒的なストレス反応が高まり,それによって方向定位に関連する認知的活動が妨害され,離脱が生じると考えることができる.
著者
盛山 和夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.2_1-2_23, 1992-11-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
48
被引用文献数
2

近年の合理的選択理論の隆盛は、それらが制度や秩序を説明しうる可能性に動機づけられている。合理的選択理論に対しては従来から種々の本質的ではない批判が加えられているが、制度や秩序の説明に関してはそれらとは異なる観点から合理的選択理論の意義と限界が画定されなければならない。 合理性の概念には、選好の合理性、強い合理性、弱い合理性、および創造的合理性という4種類のものがあるが、合理的選択理論において意味を有するのは弱い合理性だけである。合理的選択理論は、行為者の抱く主観的選好と主観的知識とから彼の行為を理論的に導出することによってそれを説明するが、これらの主観的なものは理論家によって推測的に仮定されるのである。行為者の主観的知識はそれを対象として位置づける理論家の理論と区別して「一次理論」と呼ばれる。 一方、制度と秩序は、単なる行為の集積ではなく、人々の主観的知識=一次理論に基礎をおいている。ところが、行為とちがって知識は合理的に選択されるものではない。したがって、制度と秩序は、究極的なところでは、合理的選択理論によっては説明されざるものとして残らざるをえないのである。
著者
曲谷 一成
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

視覚障害者が介助者なしで自由に歩行することができるような支援機器の開発が本研究の目的である。このために以下に示す3つの装置の開発を行った。1.DGPSを利用し、視覚障害者の位置を計測し、その位置情報と地図情報により目的地までの道案内を行う誘導装置。2.赤外線を利用した標識により場所の案内や道案内を行う屋内施設用道案内装置3.施設内の床に目的地までの経路に沿って貼られた色テープを検出し、これを視覚障害者にしらせることにより目的地までの誘導を行うインテリジェント白杖。1.はカーナビゲーションシステムのようにDGPSにて利用者の位置を調べ、地図データベースを参照することにより目的地までの道案内を行う装置である。現在までに小型ノートコンピュータ、DGPS装置、および自立測位装置よりなるハードウェアの開発が終了している。ソフトウェアについては道の安全を考慮した最適経路算出手法、地図データベースおよび音声誘導システムについて開発を行った。現在、健常者を対象とした実験を行っており、この結果を踏まえたシステムのブラッシュアップが今後の課題である。2.は屋内施設の天井に取り付けられた赤外線標識と、利用者が携帯するその受信機とからなり、赤外線標識の発信する位置情報により、音声を用いた場所および道案内を行おうとする装置である。ハードウェアを構成し、視覚障害者を被験者として誘導実験を行った。その結果白杖の使用に習熟している利用者には有効であるが、そうでない利用者は手掛かりのない場所で真っ直ぐ歩けないため必ずしも有効に機能しないことが確認された。この問題を解決するため誘導経路をトレースすることが可能な3.のインテリジェント白杖の開発を行った。この研究では病院等で使用されている誘導ラインに注目した。ここで誘導ラインとは赤、青、黄色等に色分けされ床に貼られたラインで、特定の色のラインを辿って行くことにより目的地に到達できるようなものである。開発した白杖は先端に取り付けたカラーセンサにより誘導ラインの色を識別し、目的の色のラインの上に白杖がくると、バイブレータが振動し、そのことを利用者に知らせる。アイマスクにより全盲状態にした健常者を被験者として実験を行ったが、被験者全員が目的地に到達でき、本システムの有効性が確認された。
著者
小谷 賢太郎 堀井 健 三浦 敏弘
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,ヒトの触覚の感覚特性を明らかにするために,空気圧制御による圧力刺激呈示システムを製作し,ヒトの手が知覚可能な最小の力の変化量を調べることを目的とするものであった.初年度は実験装置の作成から開始した.作成した実験装置は,エアコンプレッサからノズルまでの空気圧の流路と,空気圧の出力を制御するコントローラやスイッチ等の電気回路から構成される空気圧提示装置である.校正実験の結果,本装置により0.5gfまで小さな噴流出力を制御することが可能となった.そこで,示指先端に加わる力に対して,標準刺激を変化させたときの弁別閾の特性を調べるため,心理物理学的実験を行った.実験の結果,標準刺激が4.0〜7.0gfの範囲では,標準刺激が変化しても,Weber比は約0.1程度で一定であり,4.0〜2.0gfの範囲では標準刺激が減少するに伴って,Weber比が増加していることがわかった.2年目は構築した空気圧提示装置を用いて,刺激の立ち上がり時間を変化させた場合における力の弁別閾変化の傾向を調べることを目的として実験を行った.実験は標準刺激2秒提示,無刺激インターバル3秒,比較刺激2秒提示,無刺激回答時間7秒を1試行として,無刺激時間7秒の間に,被験者には「大きい」,「小さい」,「同じ」のいずれかを感じたかを回答してもらった.その結果,刺激の立ち上がり時間を長くするとWeber比と弁別閾は増加する傾向が見られた.また,Weber比は本実験での各刺激の立ち上がり時間において0.1程度に収束することが分かった.これは,昨年度の標準刺激4.0〜7.0gfの傾向と同様であった.また,初年度の結果では刺激の立ち上がり時間を0.3secと設定していたことから,この実験における刺激の立ち上がり時間0.3secの実験結果と比較すると約0.2の違いがあるが,これは提示時間の影響によることがわかった.
著者
青柳 利隆 高木 和久 白井 聡 大村 悦司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OPE, 光エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.524, pp.65-68, 2003-12-12

インターネットトラフィックに代表される通信需要の急増に答えるには,85℃を超える環境温度で10Gb/sアンクールド動作が可能なDFB-LDの提供が必須である.我々は,10Gb/s動作に必要な高い緩和振動周波数の得られる構造として,短共振器と高い結合係数を有するλ/4位相シフトDFB-LDを提案してきた.また,光結合損失が増大し易いパッシブアライメント実装に適した高スロープ効率のDFB-LD構造として非対称な結合係数を有する回折格子構造が適していることを実証した.更に,今回,高温動作に有利なAlGaInAs MQW DFB-LDを作製し,105℃でもOC-192のアイマスクをクリアでき,85℃での信頼性についても良好な結果が得られたので,上述のアクティビティと併せて報告する.
著者
内山 英昭
巻号頁・発行日
2007-03

Supervisor:鵜木 祐史
著者
亀谷 義浩
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度は、視覚障害者の基礎的な空間把握特性や探索歩行行動を明らかにするために、屋内に模擬実験空間を作製し、全盲の視覚障害者を主な対象として実験を行った。平成17年度では、16年度の結果を検証するために、実際の社会的空間での視覚障害者の空間把握や探索行動を明らかにする調査を行うとともにリクリエーションとしての空間利用が可能であるかを検証した。調査は、大阪市営定期観光バスの一日ツアーを利用し、さまざまな施設を訪問する。訪問施設は、海遊館、大阪ドーム、大阪城、水上バス、梅田スカイビルである。調査期間は、平成17年7月23日および10月23日である。調査内容は、各施設やツアー全体さらには、移動中について、空間把握だけでなくリクリエーション空間としての娯楽性や快適性、安全性について評価を行った。評価はアンケートにより行った。被験者は、全盲者5人(男性3人、女性2人)および健常者5人(比較対照群として男性3人、女性2人)の計10人である。結果、安全性、快適性、満足度など、多くの項目で、全盲者より健常者のほうが、よい評価になり、出入口の認識や自分の居場所の認識などは、健常者より全盲者はかなり低い評価結果となった。このような観光バスツアーでは、まず、バスから施設まで視覚障害者だけで到達することは困難で、介助者が必ず必要になる。模擬空間とは異なり、さまざまな情報が錯綜する実際の空間では、空間把握は難しい上に、施設内での設備や機材も不十分であり、さらには、施設職員の対応も十分ではないことから、低い評価になったと考えられる。しかし、梅田スカイビルの屋上展望では、光や風を受けることで被験者は楽しむことができ、また参加したいという評価をしている。改善しだいでは、視覚障害者が一人で参加することやリクリエーションとしてうまく利用できる空間の創造が可能であると考えられた。
著者
兼田 康宏 住吉 太幹 中込 和幸
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.913-917, 2008-09
被引用文献数
2
著者
大倉 元宏
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成16年から2カ年にわたって視覚障害者用道路横断帯の最適幅と横断帯を構成する新しい突起体形状,およびその配置について検討した.さらに,視覚情報の得られない歩行における基本特性を調べ,横断帯の必要性を裏付けた.横断帯の幅に関しては大学構内の道路に幅30,40,50,60cm横断帯を各20m敷設し,目隠しを施した21〜23歳の晴眼大学生17名(男14,女3)を被験者として,歩行実験を行った.踏み外し歩数と歩きやすさ等の主観的応答から,30cm幅では狭すぎ,40cmより広い幅が一つの目安となると考えられた.横断帯を構成する突起体に関して,車輪を有する乗り物や歩行者に対してストレスが少ない突起(高さ5mm,底面と上面の直径それぞれ23.5,6mm;以下トライアングル型)を開発した.そして,それに連携して,点状横線部の両側に点状縦線を配するパターンを提案した.点状縦線の存在で,白杖による横断帯と足裏による道路面との境界部の検知性が高まることが予測される.このことを確かめるフィールド実験を実施したところ,点状縦線の効果を示唆する結果が得られた.さらに,道路横断帯の必要性の裏づけをとるために,視覚遮断直進歩行における周囲音の影響を調べた.周囲音条件として進路左右のスピーカから音圧の異なるホワイトノイズ(70,50dB,なし)を設定した.被験者には指定された手がかりを使って出発方向を決めた後,設定された周囲音条件下で直進歩行を求めた.被験者は13名の目隠しをした晴眼者であった.周囲音は直進時の歩行軌跡に有意な影響をもち,軌跡を音源とは反対側に偏軌させる.さらに音圧が高いと偏軌程度が強まることがわかった.道路横断は一般に直進歩行を求められるが,例えば視覚障害者が横断歩道を渡ろうとして,すぐ脇にエンジンのアイドリング音の高いトラックなどが止まっていれば,それとは逆の側に偏軌し,走行車両との干渉が危惧される.横断帯は直進歩行を維持するための有効な方法と考えられよう.
著者
中村 源一郎
出版者
東京工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、障害者の歩行において、足裏荷重の変化を測定し診断できる機器の試作を行った。足裏荷重を検出するセンサとして、動的な力を加えると力の大きさと速度に比例して電圧が生じる圧電高分子フィルム、東京センサ製ピエゾフィルムFLDT1-028K(以下PVDFフィルム)を使用した。足裏荷重によってPVDFフィルムに良好な変形を生じるように、発泡ゴム製靴中敷きに接着し荷重の集中するつま先、かかとに重点的に配置、片足当り10箇所へ配置し、床面の凹凸の影響が少ない厚底の市販靴に挿入した。PVDFフィルムから出力された電圧は、バッテリー駆動が可能で両足20チャンネルの電圧出力を同時に記録出来るデータロガー(グラフテック株式会社midi LOGGER GL800)を用いて測定した。実験は体育館に設置した直線歩行レーン15mを歩行し、被験者背面に装着したデータロガーでフィルムからの電圧を記録、同時に歩行軌道・状態をビデオカメラで記録した。視覚情報から歩行状態を補正させないために、通常の歩行実験と併せて、アイマスク着用による無視界状態での歩行実験を行ない次のような結果を得た。1)歩行の基本的な動作の中で足裏各部の電圧(荷重)の大小の測定ができた。2)足裏各部の接地タイミングを測定できた。3)アイマスク着用によるデータ上の変化は見られなかったが、軌道の乱れをビデオカメラ記録した。これらの結果から、圧電高分子フィルム(PVDF)フィルムを利用して、自由に歩行しながらデータ採集の出来る足裏荷重測定具を試作し、試作装置を使いた各歩行実験において診断に必要な足裏の荷重の大小、時間的関係、歩行状態を測定・記録することが出来た。今後、本試作装置で測定した電圧を速度、加速度へ変換し歩行映像あわせた定量的評価が行える実用的な装置を目指す。
著者
徳田 克己
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、障害理解を促進するための教育内容、方法を明らかにするために視覚障害シミュレーション体験の効果に関する実験的検討を行ったものである。本研究の結果から、視覚障害歩行シミュレーション体験の内容や時間の長さについて、具体的な提案をすることができた。すなわち、目隠しをして歩く視覚障害歩行シミュレーション体験は、人通りの少ない、階段のない平地を30分程度歩くことが障害理解の促進には最も効果的であること、人通りの多い、起伏のあるルートを10分程度歩く体験が最も恐怖心と不安を生起させることが明らかになった。
著者
高橋 望
出版者
名城大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、ニュージーランドで展開される業務・業績管理システム(Performance Management Systems : PMS)、及び学校管理職の養成・研修制度に着目し、両者がいかに学校組織マネジメントに貢献しているのか明らかにすることであった。本研究の最終年度である本年度は、PMSに着目した1年目、学校管理職に着目した2年目を踏まえ、これまでの2年間の成果の整理・検討を包括的に行うこと、また不足点を補うことを第一の課題として設定した。そして、両者の関連性を検討し、本研究の主題である学校組織マネジメントの実態に迫ることを第二の課題とした。具体的には、現地訪問調査において、再度学校訪問を行い、学校が独自に作成しているPMS関連文書の収集や校長・教職員へのインタビュー調査を実施し、実態の更なる追究を行った。ニュージーランドは自律的な学校経営を推進しているため、PMSの取り組みは学校ごとに特色を有しているからである。一方、学校管理職に関しては、教育省の担当者、及び学校管理職研修を中心的に担っているオークランド大学担当者にインタビュー調査を実施した。加えて、不足資料を補うために、オークランド大学やヴィクトリア大学の図書館、及び国立図書館での資料収集を行った。その結果、学校管理職は養成・研修制度において組織マネジメントの素養を身につけ、PMSを活用することによって「人」の管理を行っている実態が見出された。学校組織マネジメントの全体像については、更なる研究の必要性が指摘される。