著者
中川 千帆
出版者
奈良女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

当該研究は20世紀への変わり目に書かれたニューイングランドの女性作家によるヴァンパイア物語に見られるジェンダーとセクシュアリティを探るものであると同時に、現代のヴァンパイア・ロマンス人気の背後に見られるジェンダー・ポリティックスも明らかにするものである。
著者
林 浩康
出版者
東洋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

家族参画実践を児童虐待領域において最初に導入したニュージーランドにおけるファミリーグループ・カンファレンスの評価について先行研究、ニュージーランド児童保護機関での職員インタビュー、ファミリグループ・カンファレンス国際会議への出席等により明らかにした。ニュージーランドおよび諸外国における家族参画実践に関する評価については、(1)文化的側面、(2)実践的側面、(3)政策的側面から分析した。(1)に関しては家族、親族、地域関係を尊重する先住民族の文化ストレングスの導入として捉え、それが文化を越え、普遍的価値を有した実践であることを明らかにした。(2)に関しては近年におけるソーシャルワーク実践動向との関連から社会構成主義に基づいたナラティブ・モデル、ストレングス視点、エンパワメント視点から評価を行った。(3)に関しては新自由主義との関連から家族・個人責任イデオロギーの観点から批判的に検討した。現在、欧米・オセアニア先進諸国では、家族参画の是非を論じる段階を経て、家族参画を促す方法や、子どもの参画に関する議論が活発に行われている。パターナリズム・モデルと参画モデルの統合が、それらの国々における課題となっている。またニュージーランドの家族参画実践啓発ビデオの翻訳および日本語吹き替えを行い、それを教材として活用し、児童相談所職員に対し、学習会を開催し、現場での活用の可能性に関して意識調査を行った。その後学習会参加者に対し、我が国における家族参画実践導入の1.意義、2.課題、3.取り組みについて聴き取り調査を行った。結果として1.意義は(1)ストレングス活用、(2)意思決定過程の活性化、(3)当事者意識・意欲の促進、(4)子どもの安全体制の確保・子どもの権利保障、2.導入に際しての課題は(1)当事者意識、(2)運営、(3)当事者の能力、(4)文化、(5)専門性、3.課題への取り組みは(1)法律改正・実施要綱等における規定、(2)司法の関与、(3)財政的支援、(4)FGC開催機関、(5)支援体制の保障、(6)研修の実施、が明らかとなり、さらに詳細な分析を行った。今後本研究に基づきさらにファミリグループ・カンファレンスの普及に努め、その実施状況について分析を行っていきたい。
著者
脇本 恭子
出版者
岡山大学教育学部
雑誌
岡山大学教育学部研究集録 (ISSN:04714008)
巻号頁・発行日
vol.133, no.1, pp.1-11, 2006

The Vicar of Wakefield, Goldsmith's only novel published in 1776, embodies a wide variety of lexical features which reflect the 18th century British hierarchical society. The present paper aims at exploring words in vogue in those days especially among 'people of fashion.' Words of historical significant in this novel, as well as in several other contemporary literary works, are examined from a philological point of view, each of their etymological origins being traced mainly with the aid of the Oxford English Dictionary. Through the discussion in this paper, we hope to illuminate some linguistic trends, along with some fashionable taste, in 18th century London.
著者
長田 和雄 持田 陸宏
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

大気エアロゾル粒子の水溶性成分含有率(ε)は、雲粒・氷晶形成のプロセスに関わる重要なパラメーターである。本研究では、個別粗大粒子のεを知るために、共焦点レーザー顕微鏡と水透析法を組みあわせた計測手法を開発した。この手法により、各種テストダストや黄砂時の粗大粒子の粒径別εを明らかにした。また、連続流型熱拡散チャンバを用いて氷晶化能力を測定するために、数値流体力学解析による検討、実機の整備、大気エアロゾルを対象とした試験を行った。
著者
相羽 元彦 山本 昌昭 久保 長生
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.290-290, 1995-03-25

第13回学内病理談話会 平成6年11月12日(土) 中央校舎1階会議室
著者
高田 将志 相馬 秀廣 豊田 新 竹村 恵二 横山 祐典
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

琵琶湖1400mボーリングコア試料のESR信号強度は、周期的な環境変化の影響を受けてきた可能性がある。またESR・TL信号特性から、約90万年前の堆積層は、それより上位の試料に比べ、コア掘削地点北~東~南方に分布する基盤岩類や野洲川掃流物質の影響を強く受けていたように見える。当該試料の^<10>Be濃度もかなり異なる値を示し、これは、堆積物供給源の浸食・堆積環境が時系列的にかなり変化してきたことを示唆する。
著者
横山 修 秋野 裕信 青木 芳隆 横田 義史 楠川 直也 伊藤 秀明 棚瀬 和弥
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

メタボリック症候群候補遺伝子の変異が下部尿路症状(lowerurinary tractsymptoms:LUTS)の発生と関連しているのか、ヒトあるいは病態モデルを用いて検討して以下の結果を得た。(1)過活動膀胱患者の血液サンプルを用いて、特にcycloxygenase-2(COX-2)遺伝子多型(JAMA291:2221,2004)について検討した。COX-2のプロモーター領域には-765番目のグアニンがシトシンに変異している一塩基多Single Nucleotide Polymorphism(SNP)が存在するが、その頻度は低く、これが直接過活動膀胱発生に関与しているとは考えにくかった。しかし、ヒトの症状スコアーと尿中パラメーター(PGE_2、PGF_<2a>、NGF、substance P)を用いて解析した結果、脳血管障害患者では、そのphenotypeとしての尿中PGE_2量は下部尿路症状、特に過活動膀胱(overactive bladder;OAB)症状と有意に関連し、他のメディエーターであるPGF_<2a>、NGF、substance Pよりも強い相関があった。脊髄疾患患者でもOAB症状と尿中PGE_2量とは有意の相関を示した。(2)福井県住民健康診査を受けた男女を対象に、夜間頻尿と下部尿路症状とメタボリック症候群のリスク因子との相関を検討した。その結果、夜間頻尿は肥満・高血圧・心疾患・不眠が独立したリスクで、メタボリック症候群の危険因子の数が多いほどオッズ比が大きかった。(3)なぜ上位脳血管障害患者で尿中PGE_2量が上昇するのか、動物モデルを用いた検討を行った。ラットに脳梗塞を起こさずに排尿反射のみを亢進させても尿中PGE_2量やATP量に変化はみられなかった。しかし脳梗塞を作成すると膀胱壁のATP量増加が認められ、知覚C線維をレジニフェラトキシンにて脱感作するとATP増加はみられなかった。したがって脳梗塞により膀胱の知覚C線維のupregulationが生じていると考えられた。PGE_2量は遅れて増加するものと推測される。(4)メタボリック症候群の病態モデルを用いて、排尿筋過活動の発生について実験を行った。その結果、高フルクトース食にて11ヶ月飼育したラットでは、高血圧・インスリン抵抗性が獲得され、排尿回数の増加とともに膀胱壁COX-2発現の上昇・尿中PGE_2の増加がみられた。
著者
谷(仙谷) 真弓 山崎 勝之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-10, 2004-09-30

Locus of Control(統制の位置;以下LOC)は,これまでに児童の健康や行動上の問題との関連が数多く見出されている.子どもにおけるその測度では,標準化された質問紙がいくつか見受けられるが,それらの質問紙は,この領域の研究結果を混乱させるいくつかの欠点を持っている.そこで本研究では,新しい児童用外的統制性質問紙(GEQC)の開発を試みた.調査Iでは,4〜6年生466名の児童を対象に,因子構造の検討を行った.その結果,一因子構造が明らかとなり,計16項目が採用された.調査IIでは,4〜6年生1,349名の児童を対象にこの質問紙を実施し,加えて,担任教師による,外的統制性を強くもつ児童の指名(ノミネート)調査と児童自身による同特性の仲間評定調査を実施した.さらに,4〜6年生の児童205名に,約5週間の間隔で質問紙を2回実施し,再検査法による質問紙結果の信頼性についても検討した.こうして,調査IIでは,信頼性と構成概念的妥当性が検討された.その結果,本質問紙が構成概念的妥当性と安定性,内的整合性を兼ね備えていることが明らかになった.
著者
曽根原 理 牧野 和夫 福原 敏男 佐藤 眞人 大島 薫 松本 公一 岸本 覚 山澤 学 大川 真 中川 仁喜 和田 有希子 万波 寿子 クラウタウ オリオン 青谷 美羽 杉山 俊介
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本の近世社会において、東照宮が果たした役割を考えるため、関係する史料を各地の所蔵機関などで調査した。また、近世初期に東照宮を設立する際に基盤となった、中世以来の天台宗の展開について、各地の天台宗寺院の史料を調査した。加えて、年に二回のペースで研究会を行い、各自の専門に関する報告を行い議論した。そうした成果として、日本各地の東照宮や天台宗寺院に関する著作と論文を公表することが出来た。
著者
村田 達彦 川下 満
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.149-150, 1995-03-15

データベース(DB)の設計の良否を判断するとき、これまで客観的な評価基準がないため、設計されたDBの性能や拡張の容易さ等の様々な要因について漠然とした判断がなされていた。筆者らは、DB設計方法の効果を客観的に判断することを目的に、DB設計の品質の評価方法を検討している。本報告ではDB設計の品質を決定する項目と、各項目について定量的に判断するための評価尺度を提案する。
著者
久保 長生 嶋田 幸恵 田鹿 安彦 日山 博文 高倉 公朋
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.291-292, 1995-03-25

第13回学内病理談話会 平成6年11月12日(土) 中央校舎1階会議室
著者
藤 秀樹
出版者
神戸大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は, 新規エキゾチック超伝導体や新しい層状およびカゴ状構造を有する物質系において発現する低温量子状態を核磁気共鳴を用いて解明を目的とした。本年度は籠状クラスレート化合物であるBa_8Ga_<16>Sn_<30>の研究を中心に、ラットリングに関して微視的観点からの機構解明を行った。加えて、新しい2元系の鉄系層状化合物FeSeについても研究を開始した。これまでの研究から以下のような結果を得た。1. Ba_8Ga_<16>Sn_<30>は2種類の籠状構造をとる1型(β相)と1種類の籠状構造をとる8型(α相)が知られており、籠形状の違いにより内包原子の大振幅原子振動(ラットリング)が異なることが指摘されている。本研究では主としてGa-NMR研究を行い、Type Iでは30K付近にラットリングによるスピン格子緩和率の増大を見いだした(2008年9月日本物理学会・分科会)。一方Type VIIIでは、Type Iとは異なりコリンハの関係式に従い、低温で緩和率に異常が見られないことを明らかにした。2. 新しい鉄系超伝導体FeSeについてSe-NMRを行い、低温の超伝導状態においてNMR緩和率の測定から、BCS超伝導体特有のコヒーレンスピークが見えないこと、緩和率の温度依存性がT3に従っていることを明らかにし、異方的超伝導の可能性を指摘した。また、類似化合物である反強磁性体SrBa_2As_2について圧力下電気抵抗実験を研究協力者の小手川等とともに行い、3.7GPa程度の圧力下での反強磁性が消失し、34K級の超伝導相が出現することを示した。平成20年11月12日をもって, 当初予定していた研究は遂行した。
著者
根岸 正光
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.412-418, 1994-08-01
被引用文献数
1

学術情報センタ-のデータベース・サービスNACSIS-IRについて,その歴史,現況および今後の展開を述べる。1987年のサービス開始以降,センターでは,わが国独自の学術情報データベースの編成を進めてNACSIS-IRの充実を図り,また検索システムの改善,アクセス経路の多様化等に努めてきた。また,民間の研究者への公開,JICSTとのゲートウェイ開設,海外利用の制度化など,利用者の拡大を図ってきた。今後は,インターネットのような高速の通信環境への的確な対応が重要な課題であろう。
著者
小谷 通泰 山中 英生 秋田 直也 田中 康仁
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、貨物車に搭載したプローブ機器(GPSとデータ記録用のロガー)から得られたデータをもとに、貨物車の基礎的な運行挙動を把握するとともに、これらの運行挙動を組み込んだ環境制約下における配送計画モデルを定式化する。そして、複数の運行形態の貨物車を対象として最適配送計画を提案し運行コストの削減と都市環境の改善の両面からその効果を評価することを目的としている。得られた主たる成果は以下の通りである。まず、貨物車の運行挙動については、取得したプローブデータにもとづき、貨物車の走行時間や荷さばき時間にみられる不確実性を考慮し、指定時間がある配送地点への出発時刻の決定行動や複数の配送先への巡回経路の選択行動をモデル化した。また同様にプローブデータをもとに、高速道路と一般道との間における大型貨物車(海上コンテナ輸送トラック)による走行経路の選択要因を抽出した上で、経路選択モデル(非集計行動モデル)の構築を行った。さらに明らかになった運行挙動を踏まえて、一般の貨物車(宅配貨物輸送トラック)と大型貨物車(海上コンテナ輸送トラック)の2通りを取り上げて、環境制約下における配送計画を作成した。宅配トラックについては、貨物輸送需要を与件としてデポ、集配拠点の最適配置計画を提案し、貨物車の運行効率の向上と環境改善効果の視点からそれらを評価した。また海上コンテナ輸送トラックについては、構築した貨物車の経路選択行動モデルを用いて、市街地の環境改善を図るため通行料金格差の導入や賦課金徴収を行った場合の、貨物車の市街地から湾岸部の高速道路への迂回誘導効果を評価した。
著者
本田 由紀
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、高校における「特色ある学科」、中でも「特色ある専門学科」の有効性を明らかにすることを目的とする。平成15年度には「特色ある学科」を開設している専門高校6校に対するインタビュー調査を実施した。翌16年度には「特色ある学科」を開設している全国74校の高校に対して質問紙調査を実施した結果、9401通という大量の回収調査票が得られた。平成17年度には調査データの入力・クリーニングを行うとともに、今回の調査データを東京大学社会科学研究所が前年に実施したほぼ同じ内容の高校生調査と合体させることにより、「特色ある学科」に在籍する生徒とそれ以外の生徒との比較を可能にするデータセットを作成した。この合体データの分析結果から、主に以下の諸点が明らかになった。1)「特色ある専門学科」に在籍する生徒には、同じ分野の従来型の学科に在籍する生徒と比較して、性別の偏りが是正されていること、進学志望が増大していること、将来の職業志望や学習動機が明確である傾向があることなど、いくつかの望ましい特徴が観察される。2)「特色ある専門学科」全体で見ると進路先の決定が従来型の学科と比べてよりスムーズになっているとは言えないが、分野別に見ると、特に農業・水産系の分野において、就職先の内定獲得や専門学校進学先決定に関して、従来型の学科よりも成功率が高まっている。3)ただし、生徒の登校回避行動(遅刻、授業をさぼるなど)は「特色ある専門学科」の方が従来型の専門学科よりもむしろ頻度が高く、また教育内容の面白さややりがい、教育内容と将来の職業が関連していると感じる度合いなどについては「特色」の有無による違いがほとんどみられないなど、「特色ある専門学科」の効果が明確に現れていない側面も見出される。ここから、専門学科における「特色」の導入は一定の有効性をもつが、その教育内容については改善の余地がまだ存在するといえる。