著者
遠藤 泰生 荒木 純子 増井 志津代 中野 勝郎 松原 宏之 平井 康大 山田 史郎 佐々木 弘通 田辺 千景 森 丈夫 矢口 祐人 高橋 均 橋川 健竜 岡山 裕
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

領土の拡大と大量移民の流入を規定条件に建国後の国民構成が多元性を増したアメリカ合衆国においては、社会文化的に様々の背景を持つ新たな国民を公民に束ねる公共規範の必要性が高まり、政治・宗教・経済・ジェンダーなどの植民地時代以来の社会諸規範が、汎用性を高める方向にその内実を変えた。18世紀と19世紀を架橋するそうした新たな視野から、合衆国における市民社会涵養の歴史を研究する必要性が強調されねばならない。
著者
三王 昌代
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

蘇禄(スールー)は東南アジア島嶼部に位置し、入手可能な資料が極めて少ないとれるだけでなく、中国との交渉において「外国文字」を用いていた地域でもあり、これまで当時の文書の内容に関する研究はほとんど行われていない。申請者は、東アジア・東南アジア世界に関する相互交渉・相互認識の実態や独自性を明らかにする必要があると考え、18世紀においてスールーと中国のあいだに交わされた国書に着目して研究を進めた。ジャウィの文書解読のため、マレーシア国民大学・マラヤ大学などを訪れて諸情報・資料収集を行った。スールーから中国に届けられた現地語の文書、すなわちジャウィの文書の解読を進め、漢訳されて上奏された文書などをはじめとする漢文資料との比較検討を行った。その結果、おもにマレー(ムラユ)語のジャウィが用いられていたことや、漢文になる段階で文言の置き換え・書き換えが行われたり、ジャウィの文書にはなかった皇帝賛美の文言が加えられていたりしたことなどが分かってきた。現在、このスールーと中国とのあいだの文書往来に関し、研究成果を纏める作業を行っている。また、中国福建省泉州でのフィールドワークの成果は、2008年度日本社会科教育学会で、「泉州(中国福建省)に残る文化交流・交渉の跡を辿る」(滋賀大学教育学部、10月11日、二谷貞夫先生と)と題して発表した(発表要旨は、『日本社会科教育学会全国大会発表論文集』第4号、2008年10月、88-89頁に掲載)。
著者
沼辺 明博 井上 隆信 海老瀬 潜一
出版者
Japan Society on Water Environment
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.15, no.10, pp.662-671, 1992
被引用文献数
25 30

The runoff loadings and characteristics of pesticides applied to paddy fields after transplanting of rice plant were estimated by means of analysis of pesticides in drainage river water in weekly and at the rainfall events.<br>The largest loadings of herbicides were found between one and two weeks after transplanting of rice plant. On the other hand, the largest loadings of insecticides were found at about ten days later than that of herbicides.<br>The runoff loadings of herbicides during one rainfall event ranged 20 to 25% of total runoff amounts. Therefore, the runoff investigation of pesticides in river water at and after the rainfall are very important for estimation of pesticides runoff from agricultural fields to drainage river.<br>The runoff characteristics of insecticides and herbicides were differed, and it was recognized that the runoff loadings of insecticides were decreased more rapidly than herbicides at the rainfall event.<br>The runoff rates of pesticides were ranged from 25% for fenobucarb to 0.02% for fenitrothion.<br>From this results concerned in rainfall event, the runoff rates of pesticides from agricultural fields to river were more higher than that of the previous literature.
著者
吉永 安俊 酒井 一人 仲村渠 将 赤嶺 光
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ウッドチップを充填した浸透トレンチによる赤土流出防止対策を開発した.実験期間中の降雨条件下において圃場外への赤土流出量は70%以上削減され,高い対策効果が認められた.試験地の土壌条件下において浸透トレンチの貯水は速やかに地下浸透するため,浸透トレンチの貯水は作物栽培に影響しないと考えられた.浸透トレンチの維持管理や営農作業を考慮すると,圃場の末端部のみに大容量で設置する方がよいと考えられた.
著者
中野 和典 西村 修 野村 宗弘
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

水圏生態系への影響が懸念される道路・市街地・農地等からの表面流出水のパッシブトリートメントに有効なろ材としてハイドロタルサイトを見出した。次いで水環境での残留性が懸念されるペルフルオロオクタンスルホン酸の吸着特性を明らかにした。さら滋賀県草津市のファーストフラッシュ浄化施設の人工湿地ユニットを利用した実証実験により、本研究で提案するパッシブトリートメントの有効性を確認することができた。
著者
原 研二
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究においては,19世紀オーストリアの主要な小説の分析を通じて,この時期のオーストリア小説に描かれた個人が,はじめから安定した単位ではなく,むしろつねに不安を抱え込んでいたものであることが明らかにされた。シールズフィールドから,グリルパルツァー,シュティフタ-,アンツェングルーバー,エーブナ-=エッシェンバッハ,そしてさらに世紀転換期の作家の作品に至るまで,繰り返し人間の自我が実体を欠いている様子と,その欠落を暴力的に埋めようとする文学的な試みが行われたことが明らかにされた。これは特殊オーストリア的な問題として理解されるだけではなく,ゲーテ以来の近代ドイツ小説の展開それ自体と密接な関係を持つ問題である。特に,従来正当な評価を受けることのなかったシールズフィールドとエーブナ-=エッシェンバッハについて詳細な検討を試み,彼らの作品を抜きにして,近代オーストリア小説,またドイツ小説の歴史の正当な評価があり得ないことを論証した。成果の一部は,日本独文学会において口頭で発表され,日本語の論文としてまとめられただけではなく,海外の研究者との交流の便を考えドイツ語の二編の論文にまとめられた。世紀転換期にマッハによって端的に指摘されのちの近代オーストリア小説のきわめて重要な課題となる「救いがたい自我」の問題が,19世紀においてすでにきわめて変化に富んだかたちで顕在化したことが,これらの論文で明らかにされている。さらに今後,こうした成果に基づき,今世紀の前半に至る近代ドイツ小説の流れが,新しい視点から書き直されることが期待される。
著者
花村 周寛
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究で実施した海外調査事例を整理し、そこから都市の形成と個人の嗜好性についての関連を整理するとともに、大阪大学コミュニケーションデザイン・センターが、大阪の中心地中之島で実施した中之島コミュニケーションカフェについて、参与観察を行った。同時に調査で訪れた都市を比較考察している。ラスベガスのように、資本主義経済が発展していく段階で形成された都市が未だに都市景観の骨格がマクロな構造に支配されているのに比べて、サンタクルーズなどで見られるように物語復興として個人同士の対話をベースに町づくりが進められた事例や、ミュンスター、カッセル、ヴェネチアなどでもアートを媒介にした町づくりが見られるが、個人的な表現や個人同士の対話が都市を形成している事例が今後大阪で展開される事は追って調査する必要があることが明らかになった。アメリカや日本、欧州で多く見られるように既に都市の成熟期に入っている地域ではそうした個人の表現行為や対話が有効化し得るかもしれないことが明らかになってきたが、一方でアジアを中心にしたまだ開発途上の都市では国家レベルで行われる都市開発が多く見られ、その結果が都市景観の形成についてどのような影響を及ぼすのかということは、グローバルとローカルのスタンダードを探る本研究においては重要な視点であり、アジアの都市開発事例を現地調査し、その結果を研究成果に反映させるべく整理中である。
著者
上山 博也 前野 剛 平田 晃正 王 建青 藤原 修
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ, 環境電磁工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.371, pp.1-6, 2007-11-30
被引用文献数
21

車載電子機器のプリント回路基板(PCB)からワイヤハーネスへ流出する伝導雑音電流は,車載ラジオの妨害源となる.ワイヤハーネスへの伝導雑音電流を流出させにくいPCBグラウンド層のスリット効果の解明を目的として,スリットの入ったグラウンド層を共通とする直交配線パターンの簡易PCBを作成し,配線パターン間のクロストークのFDTD計算と測定を,FM周波数帯を含む300kHz〜1GHzの周波数範囲でスリット数との関係において行った.その結果,計算結果は測定結果を概ね表すこと,2スリットのクロメトークレベルは1スリットのそれに比して必ずしも大きいわけではなく,スリットの配置によってはクロストークレベルを低減し得ること,などが確認できた.
著者
馬場 健介 古原 和邦 岩村 恵市 鄭 玉良 今井 秀樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ
巻号頁・発行日
vol.98, no.48, pp.61-69, 1998-05-15

ディジタルコンテンツの著作権保護システムを実現する手段として、電子透かし技術が数多く研究されている。一般に、画像の販売者のみが購入者情報を生成し、電子透かしを用いてその埋め込みを行なうようなシステムでは、流出画像が購入者が流出させたものか、販売者から流出されたものかを厳密に区別することはできず、何らかの方法で販売者のコンピュータから、ある購入者情報が埋め込まれた画像が漏洩されれば、不正行為を行なっていない購入者が不正であるとみなされる可能性がある。そこで本稿では、購入者情報の埋め込みに購入者自身が参加し、販売者側から購入者情報が漏洩しても購入者が不正とみなされないプロトコルを提案する。このプロトコルはディジタル画像だけでなく、音声や動画像といったディジタルコンテンツにも応用できる。
著者
上原 清子
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

脾洞内皮細胞の血球通過機構を解明する一環として、内皮細胞の微細構造を透過型電子顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡、computerを用いて調べ、脾洞内皮の収縮機構を微細構造学的に検討した。脾洞内皮細胞の細胞間結合と透過性について、freeze fracture法、細胞質抽出法、細胞間標識tracer法を用いて透過型電子顕微鏡で調べた。細胞基底側にtight junctionが観察された。それらは不連続でreplica上でtight junctionのstrandsは数も少なく、頂部-基底方向に走り、閉鎖していなかった。トレーサーの硝酸ランタンは電子密度の高い物質として細胞間隙やtight junctionを通過した部位に観察される。脾洞内皮細胞間ではtight junctionのある膜の癒合部以外はどこの細胞間隙にも存在していた。脾洞内皮でのtight junctionのfence機能、gate機能は弱いと考えられた。脾洞内皮細胞内の開放小管系の存在を細胞外標識tracer法用いた微細構造の観察とその結果をcomputerで3次元的に証明した。これまで開放小管系は血小板にしか存在の報告がない。tracerを用いて内皮細胞内に見られる小胞系のあるものは細胞膜から連続した細い開放小管系であることを証明した。また、computerで3次元的解析を行い、開放小管系が細胞内を分岐吻合しながらnetworkを作り、stress fiberやキャベオラに密接して走っていることが解った。内皮細胞には数多くのcaveolaeが存在する。caveolaeを構成するcaveolinにはcaveolin-1,-2,-3があり、このうちcaveolin-3は筋に特異的に発現する事が解っている。脾洞内皮細胞にcaveolin-3が存在することを共焦点レーザー顕微鏡と免疫電子顕微鏡法を用いて明らかにした。caveolin-3は細胞質の頂部、側部、底部いづれにも観察された。細胞質内の小胞様の構造にも反応が見られた。
著者
岩瀬 弘敬 柄松 章司 呉山 泰進 桐山 昌伸 伊藤 由加志 葛島 達也 岩田 広治
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.95-98, 1990-01-01
被引用文献数
1

慢性膵炎に起因する膵性腹水の1例を報告した.患者は20年来アルコールを多飲していた39歳の男性で,急激な腹部膨満と上腹部激痛で受診した.臨床所見と諸検査によって,多量の膵性腹水とともに肝硬変と慢性膵炎が存在すると診断された.全身的療法の効果が乏しいことから,発症16日目より腹膜灌流を開始した.メシル酸ガベキサート200mg,アミカシン100mgおよびヘパリン2,000単位を含む21の等張腹膜灌流液を腹腔内に60分で注入し,引き続き120分で自然流出させた.この持続的腹膜灌流は3時間ごとに5日間連続しておこなった.この治療によって臨床症状,血清アミラーゼをはじめとする検査結果は著しく改善した.すなわち,蛋白分解酵素阻害剤を添加した等張の腹膜灌流液による連続的腹膜灌流が有用であった.しかし,腹膜灌流の時期と継続期間,蛋白分解酵素阻害剤の種類と量,などなお考慮すべき点が残されている.
著者
香川 明男 大貝 猛 水本 将之
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

積層造形法は当初プラスチックなどの成形用金型の模型を作製する迅速模型作製法(Rapid Prototyping)として幅広く研究されてきたが,近年,機械部品などの製品そのもののニアネットシェイプ製造法として脚光を浴びて来ている.RP技術の一つである溶融紡糸堆積(Fused Spinning Deposition)法は,プラスチックを対象とした技術として研究されてきたが,本研究課題は金属製品そのものの製造法としての応用を目指したものである.研究代表者らは1995年に米国,ドイツとほぼ機を同じくして積層造形法による金属製品の製造技術に関する研究をスタートさせ,本研究課題の基礎となる溶融紡糸堆積(FSD)法を用いてアルミニウム合金と銅合金の円筒,角筒,板,棒などの基本形状ならびにそれらの組み合わせ形状について,形状制御パラメータのデータベース化を進めてきた.本究課題では材料と形状の適用範囲の拡大を図るために,以下の3点の改良を加えた装置の試作を行った.1.基板駆動部を回転とX-Y-Zの3軸駆動を一体化したものに改良する.2.合金溶解部に予備溶解用高周波コイルと溶湯搬送システムを組込むことにより連続溶解ができるように改良する.3.溶湯流出部を2ノズルとし,異材複合構造体にも適用範囲を広げる.これらをもとにマルチノズルを用いた場合の金属部品の製造パラメータを整理し,より大型の金属部品製造へのFSD法の応用展開を図ることを目指した.得られた結果から,FSD法による精密かつ大型の金属部品の製作のために必要な試作機の開発および種々の合金系における積層条件に関する基礎的知見を十分に得ることができた.