著者
大場 正昭
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

今年度は、多孔性構造を利用したゲスト分子および機能性分子ユニット間の相互作用と電子状態の制御を目的として、多孔性錯体材料{Fe(pz)[Pt(CN)_4]G}(1;pz=pyrazine,G=guest molecule)を基軸化合物として研究を推進した。昨年度までに、化合物1をヨウ素蒸気に曝すと、ヨウ素がPt(II)に酸化的に付加したヨウ素付加体が得られ、ヨウ素含有量によりスピン転移温度を300-400Kの間で連続的に変化させることに成功した。今年度は、機能性分子ユニットであるピラー配位子pzの運動とスピン状態の相関を検討した。中性子準弾性散乱および固体^2H NMRスペクトルより、10^<-13>-10^<-3>sのタイムスケールでpzの回転運動の温度変化を追跡した結果、pzは高スピン状態の細孔中で4-fold jump motionをしているが、低スピン状態になると骨格構造とpz間の立体反発により、その回転速度が3桁以上遅くなることを確認した。このpzの回転による回転エントロピーがゲスト吸着によるスピン状態変換に寄与することも、理論的に説明された。また、Fe(II)をCo(II)に変えた類縁体{Co(pz)[Pt(CN)_4]G}では、Co(II)周りの対称性変化に伴って光吸収が変化し、特にアルコール類に対して特異的な応答が観測された。さらに、ピラー配位子をCholest-5-en-3-yl-4-pyridinecarboxylateに変えて疎水場を導入した化合物では、ハロゲン化アルキルに対して特異的に応答することを見出した。機能性分子ユニットを合理的に集積して相互作用空間を作り上げることで、ゲスト分子によるスピン状態の変換に成功し、詳細な構造解析と理論計算からその機構を解明した。これらの結果を基に、機能性分子ユニットを変換することで、より特異的なゲスト応答性の発現にも成功した。
著者
牧野 圭子
出版者
静岡県立大学
雑誌
経営と情報 : 静岡県立大学・経営情報学部/学報 (ISSN:09188215)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.117-133, 1995-12-20

本稿では、消費経験主義研究について検討を行った。まず、消費者行動研究全体における消費経験主義研究の位置づけが弱いことを述べた。次に、消費経験主義の主要概念として「快楽消費」と「消費の意味」の二つを取り上げ、それぞれの問題点を検討し、今後の方向性について提案を行った。「快楽消費」については、"快楽"の概念に注目し、1."効用"の概念との対比の非妥当性、2."属性"との関係の問題、3."快楽"以外の感情の研究の必要性、の3点に関する議論を展開した。一方、「消費の意味」については、1.消費の個人的意味と社会・文化的意味の区別の必要性、および2.社会・文化的意味の研究課題について論じた。最後に、実務サイドにおいても、消費経験主義と共通の関心があることを指摘し、今後は実務サイドの見解も消費経験主義研究に組み込んでいくべきであると論じた。
著者
佐久間 康之
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

公立小学校での英語活動のみが英語の刺激として純粋に(近く)作用する教育環境の学校を対象に3年間にわたり縦断的かつ横断的調査を行った。主な研究成果は以下の4点である : (1) 学年別の児童英検の比較において学年が上がるにつれてリスニング力は高かった。(2) 中学年及び高学年の1年間の変容において, 児童英検によるリスニング力は全学年ともに向上したが, 心理的要因の結果は多種多様であった。(3) 中学年及び高学年のリスニングカと相関があった心理的要因の項目は自己評価(自分自身をみつめなおす)及び記憶方法(効率的な覚え方)であった。(4) 英語活動の実施時数の多さは中学1年時の音絹認知に正の影響を及ぼす可能性が見出された。
著者
木原 直美
出版者
長崎外国語短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

擬似初心者21名を対象に1年間定期的に多読指導を行った結果、多読は擬似初心者の授業参加へのモチベーション向上、英語読書への興味・自信、英語読書量の蓄積という点において、リメディアル教育として大きな可能性を持っていることが確認された。また、一定の条件が揃った場合、擬似初心者は多読を通して未知語の学習を行うことも可能であり、その学習成果が多読終了後に定着し得ることも確認された。しかしながら、構文理解力、語彙力が低い擬似初心者は、困難を伴わず読める多読図書の難易度が限定されており、先行研究等で提唱されている「多」読の量を確保することは難しく、多く読むことで生じるとされている多読指導による英語力向上も期待することは難しいことが明らかになった。擬似初心者を対象とした多読指導では、多く読ませるための支援が不可欠であり、特に単語増強、構文理解のサポートが別途必要であることが示唆された。
著者
興野 登
出版者
Japanese Society for Engineering Education
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.18-21, 2010-05-20

Japanese English education has focused mainly on teaching passive skills such as reading and listening, whereas actual business activities in society require active skills such as writing and speaking in addition to the passive skills. This educational situation is estimated to be a reason Japanese engineers are less confident in writing and speaking than in reading and listening. This paper focuses on details of the English Technical Writing Test provided by the Japan Society of Technical Communication and emphasizes the importance of the active skills, mainly focusing on what skills should be taught in the future and how to develop these skills. This paper also stresses the necessity of learning rhetoric-related skills, concept of information words, as well as paragraph reading and writing skills based on the concept of the 3Cs (Correct, Clear, and Concise) as a means to develop technical writing skills for engineers.
著者
登美 博之
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

工科系の学生がコンピュータ支援による演習を行うことによって、英語の能力の向上を図ることのできる教材「英文構造理解のための3つのアプローチによるライティング教材」を研究開発し、CALLやLANシステムなどによって教材として運用できるようにした。この教材は、3つの分野の英語を用いて、そしてまた「英語の文構造に対応した日本語の語句配列」を表示することによって、日本語と英語の2つの言語からアプローチするものである。
著者
吉川 日出行
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.1424-1425, 2008-12-15

みずほ情報総研(株)は社員4 000人あまりを擁すみずほグループの情報戦略会社である.コンサルティング,システムインテグレーション,アウトソーシングを事業の3本柱にしている.このうちの主にコンサルティングを担当する部隊で企業内ソーシャルブックマークの試行導入を行っている.コンサルティングビジネスにおいては,コンサルタントが保有する知識や情報の質と量がビジネスの成否を大きく左右する.ところが,コンサルタントの情報収集スタイルというのは非常に属人的で社員の経験年数によって情報収集についての"格差"さえ生じている.概して若手は普段から収集している情報ソースの幅が狭く,また経験豊富な人間は新しい情報ソースを探すことを止めてしまい,同じソースに頼りがちになるのだ.一方で新しい,良質なソースはどんどんと出てきており,こうした情報を見落とすわけにはいかない.自分が専門としている分野での最新ニュースを顧客や取引先から知らされるというのはコンサルタントにとっては屈辱的なことであり,重要なニュースを読みこぼすというのは致命的なミスにも繋がりかねない.
著者
関 和広 上原 邦昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LOIS, ライフインテリジェンスとオフィス情報システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.42, pp.1-6, 2010-05-13

ブログやマイクロブログ(Twitterなど)といったソーシャルメディアの利用者の増加に従い,これら新しいメディアからの情報の抽出・利用についての研究が盛んに行われている.本研究では,ソーシャルメディアを実世界のオブジェクトのメタデータと捉え,これが従来の情報検索に及ぼす影響について議論する.特に本稿では,ソーシャルブックマークに注目し,熟練者による従来の統制語彙に基づく索引との比較を通して,情報検索におけるその有用性を検証する.より具体的には,生物医学分野の文献を題材とし,各論文に付与されたMeSH索引語(統制語彙に基づく索引)とソーシャルブックマークサービスの1つであるCiteULikeを利用して付与されたソーシャルタグを比較し,その特徴と有用性を様々な観点から実験的に調査する.実験の結果,情報検索においてソーシャルタグはMeSHと相補的に機能し,ソーシャルタグの網羅性が高まるほど検索精度が向上することが示された.
著者
印南 洋
出版者
神田外語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、「タスク(出題)形式」が「英語リスニングテスト得点」にどのような影響を与えるかを調べることである。2年計画の最終年度の目的は、多肢選択式と記述式の比較に焦点を当て、英語テスト得点へ与える影響を量的に調べることである。研究方法は、公刊・未公刊両方の先行研究を幅広く収集するため、以下3点の方法を用いた。第1に、ERICなどのデータベースを使用した。第2に、言語テスト、第2言語習得、教育測定の分野の本、ジャーナルを参照した。第3に、出題形式の影響を研究している研究者に連絡を取り、関連する先行研究についての情報を聞いた。収集した先行研究を、特徴ごと(例:L1の研究か、L2の研究か)にコーディングした。コーディングは、訓練を受たけ複数の研究者で行った。その後、各先行研究ごとに出題形式の影響の大きさを算出し、それらの値を研究間で統合した。研究の結果、以下の2点が分かった。第1に、多肢選択式が記述式よりも容易になるのは、L1リーディングの研究・L2リスニングの研究で見られた。一方、L2リーディングの研究において多肢選択式が記述式よりも容易になるのは、受験者間デザインを用いたとき、受験者をランダムに配置したデザインを用いたとき、出題形式間で設問が平行(stem equivalent)に作られているとき、受験者のL2レベルが高いときのいずれかを満たした場合であった。第2に、多肢選択式が記述式よりも容易になることには多くの要因が関わるが、L1リーディングの研究・L2リーディングの研究・L2リスニングの研究間で共通した要因として、受験者間デザインを用いたとき、受験者をランダムに配置したデザインを用いたとき、出題形式間で設問が平行に作られているときの3要因が見られた。
著者
米田 佐紀子 ギャビン リンチ クレイグ ウッズ クレイグ ウッズ
出版者
北陸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

小学校英語で培われる英語力について国際的標準テスト(ケンブリッジ英検)によって客観的データを得るという目的に沿って研究を行った。検証では6年生でCEFR Pre A1レベルに到達する一方、長期的検証ではCEFR A1~B1という学力差の拡大と技能では文章力が課題であると示された。世界が求める実用的な英語力は語彙・文型・論理的一貫性のある文章力であることから、日本の英語教育の質の改善が必要な事が分かった。一方、社会的要因・生活用語の影響も大きい事が示された。研究結果は世界的・長期的展望に立った小学校から大学までの英語教育制度の確立と教育内容の見直しの必要性を示唆している。
著者
川越 栄子 ステイーブン ライアン 笠井 隆一 鈴木 隆夫
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

医療系学部のためのeラーニング英語教材を研究開発した。(1)世界の医療事情(2)速読(3)医療英単語を各ユニットに入れ、50 ユニット作成した。阪大・神戸大・大阪市大の各医学科、神戸市看護大で使用した。その結果医学科で、wpm(一分間に読める語彙数)は、半期で30~40%伸び、医療英単語は1年間で約1200 語習得した。また世界で活躍中のトップレベルの医学者からのメッセージも組み入れ英語学習へのモチベーションを高める事が出来た。
著者
林 規生
出版者
一般社団法人大学英語教育学会
雑誌
JACET全国大会要綱
巻号頁・発行日
vol.35, pp.152-155, 1996-09-21

英語学習は生涯学習の観点でとらえると, 初期学習段階から年齢推移にともなう英語能力の変化は, 学習者はもとより, 英語教育に携わる者にとっては興味のある重要な問題である。財団法人日本英語検定協会が主催する実用英語技能検定試験と児童英検の被験者は, この問題に関する貴重なデータを供給する。項目反応理論(Item Response Theory) に基づく垂直等化(vertical equating) が1歳から70歳までの日本人受験者約46, 000名に応用された。項目反応理論に基づき作成された児童英検と, 異なる級それぞれ独立に標準化が行われている実用英語技能検定試験は, 項目反応モデルにより結合され, 同じ単位と原点を持つ統合された尺度が確立された。それぞれの被験者は, 児童英検と実用英語技能検定試験の成績により, この共通尺度上に位置づけることが可能となった。共通尺度上で評価された各被験者の成績は, 各年齢段階ごとに集計され, 年齢推移に伴う一つの英語能力成長曲線として描かれた。この曲線は日本人英語学習者の幼児期から高齢期までの, 平均的英語能力の変化の様子を示した。
著者
平田 晃正 塩沢 俊之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LQE, レーザ・量子エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.97, no.497, pp.7-12, 1998-01-22

解析のモデルとして, 方形導波管の下部導体に誘電体薄膜を装荷し, そこから一定距離離れたところを有限幅の電子ビームがドリフトしているチェレンコフレーザの3次元モデルを考える. 粒子シミュレーションの手法を用いて, 電子ビームの非線形性を考慮に入れ, 上記モデルにおける電磁波の増幅特性および電子ビームの運動エネルギーから電磁波へのエネルギー変換効率について論じている. 更に, 2次元モデルのチェレンコフレーザにおける解析結果と比較し, その相違について検討している.