著者
山野井 貴浩 佐藤 千晴 古屋 康則 大槻 朝
出版者
一般社団法人 日本環境教育学会
雑誌
環境教育 (ISSN:09172866)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.3_75-85, 2015 (Released:2017-10-18)
参考文献数
22

Current science textbooks used in Japanese junior high schools deal with contents about invasive species from foreign countries; however, contents about domestic invasive species are lacking. So, there are few chances for students to understand problems related to domestic invasive species. In this study, we developed a class activity where junior high school students think about biodiversity conservation focusing on the case of the Genji firefly (Luciola cruciata), which is one of the most serious problems among domestic invasion. Results of questionnaires before and after the class suggest two findings. First, the students understood that releasing the Genji firefly without consideration of its genotype led to degeneration of the native population, and that maintenance of the habitats appropriate for the growth phase was effective for conservation. Second, the students realized what they can do to reform or defend their local natural environments.
著者
村田 次郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.73, no.11, pp.762-770, 2018-11-05 (Released:2019-05-24)
参考文献数
12

万有引力の法則は近代科学の出発点に位置する物理学の金字塔であり,一般相対論による修正が必要となる極端な状況を除いて,現在でも観測と一致し続ける有効理論である.一方,重力の逆二乗則が高精度で検証されているのは惑星スケールであり,太陽系の外側あるいは近距離での検証状況は貧弱である.例えば地球と月の距離では検証精度は10-10にも達するが,センチメートル距離では10-4に悪化し,さらに10 μmでは精度が100%をはるかに超える.つまり重力の存在自身が未確認となる.誰も重力現象を10 μm以下の世界で観測したことがないのである.一方プランク長はLpl=√ħG/c3~1.6×10-35 mであり,万有引力定数Gを用いてこのとてつもなく小さな距離を算出している.これは,この距離まで万有引力定数が一定であること,すなわち逆二乗則が成立し続けることを仮定したもので,実験で確認されている領域からの実に30桁以上にものぼる大胆な外挿の結果であることには注意が必要である.逆に,逆二乗則が実験で確認されていないmmからμmスケールより短距離で変更を受けると考えることは理論的に自由である.簡単なのは質量をもった新しい粒子交換力を考えることで,コンプトン波長を到達距離にもつ湯川型となる.最も有名な例が1998年のアルカニハメドらによる「大きな余剰次元模型」であり,mmスケールまで拡がった4次元以上の空間次元(余剰次元)の存在により実験未検証の近距離で,べき乗則そのものがガウスの法則により変更を受けるというものである.4つの力のうち重力だけが極端に「弱い」謎を,本来は素粒子スケールでは同程度の強さだったものが余剰次元方向への薄まりによりmmスケール以降では現在観測されている「弱さ」になる,と自然に理解できる魅力的なアイディアである.その象徴的な予言は「0.1 mm程度で逆4乗に切り替わる」というもので,実験ですぐ手が届きそうな領域に大発見が待ち受けているかも知れず,工夫を凝らした実験が多く行われることとなった.筆者もその一人であり,加速器実験の検出器位置較正技術を応用した実験を進めてきた.筆者らの実験室実験では直接,小物体間にはたらく重力の強さを検証する.この予言の面白い点は,重力の強まりにより加速器実験でも探索が可能という点である.実際,衝突型加速器であるLHCにおいても検証が行われてきた.予言から既に20年が経過し,結果として0.1 mmでの破れは実験で否定された.だが,まだまだ10 μm以下では可能性は残されている.重力の逆二乗則は以前より検証のブームが繰り返し訪れ,精度が向上してきた.それらの経緯を踏まえて,実験検証は湯川型のパラメターで語られる.しかし大きな余剰次元模型はべき乗型であるから,直接の比較が難しい.どの実験が最も感度をもつのかがわかりにくい.とりわけLHCでの重力現象の探索も定性的には感度をもつが,実験室実験との関係が湯川型では定量的には不明瞭である.実験室実験とLHCの結果を同じパラメター空間で比較することで,べき乗型の模型に対してはLHCとmmスケールの実験の両者が拮抗し,他の領域に比べて最も強い感度をもつことが明らかとなった.余剰次元が2次元の場合,ねじれ秤による実験室実験の与える23 μmが最も強い,余剰次元空間の大きさの上限となっている.
著者
Takahiro Sugiyama Naoto Jimi Ryutaro Goto
出版者
The Plankton Society of Japan, The Japanese Association of Benthology
雑誌
Plankton and Benthos Research (ISSN:18808247)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.289-295, 2020-11-18 (Released:2020-11-12)
参考文献数
30
被引用文献数
6

The Polynoidae, commonly known as “scale-worms” due to the scale-like elytra on the dorsal surface, contains many species living in symbioses with other invertebrates. Most of these symbionts are host-specific, but some have a wide range of hosts. The genus Asterophilia includes two species living in shallow subtropical to tropical waters in the Pacific Ocean as ectosymbionts of asteroids and, more rarely, crinoids. Here, we recorded Asterophilia culcitae from asteroid hosts (Culcita novaeguineae, Linckia laevigata, L. guildingi, and Leiaster leachi) and, for the first time, from holothurian hosts [Stichopus chloronotus, Holothuria atra, H. (Stauropora) pervicax, and Bohadschia argus] along warm Japanese Pacific coasts. The cytochrome c oxidase subunit I sequences of the specimens from holothurians did not differ significantly from those on asteroid hosts, proving that A. culcitae has a wide host range across three different echinoderm classes: asteroids, holothurians, and crinoids. The general body color of A. culcitae was constantly reddish (female) or whitish (male), regardless of the host body color, although a previous study suggested that it differs in accordance with the host body color. However, we found that one individual from a holothurian host showed a different color pattern: A. culcitae typically shows three whitish or yellowish elytral mounds that have been suggested to mimic the tube foot of the asteroid hosts, whereas one individual from S. chloronotus had reddish brown translucent mounds, which we suggest might be cryptic on its holothurian host.
著者
武田 真太郎
出版者
Society of Environmental Conservation Engineering
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.48-54, 1979-01-18 (Released:2010-03-18)
参考文献数
25
被引用文献数
3 5
著者
米澤 陽子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.163, pp.64-78, 2016 (Released:2018-04-26)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本調査では,二人称代名詞「あなた」に関する日本語母語話者の使用意識を調べた。調査結果から,聞き手の社会的立場が上の場合は「あなた」はほとんど使用されず,対下位者・対同等者の場合でも,「まったく使わない」という回答の方が多いことがわかった。また,「あなた」の使用は,相手との社会的関係によってよりも,状況や場面によるところが大きいということが確認された。調査では「あなた」不使用の理由,またもし使用するなら,どのような場面でどのような相手に使用しうるのかも調べた。調査結果をもとに,現代日本語における「あなた」という言葉の本質的な機能,それが社会文化と切り離せないコンテクストとの関わりにおいて,どのような役割を持ち,どのように認識されるかというメカニズムを考察した。
著者
虎石 顕一 中村 規子 由井薗 陽一 森 真弓 山田 正紀 高橋 司 黒川 美智子
出版者
一般社団法人 日本医療薬学会
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.479-483, 1998-10-10 (Released:2011-08-11)
参考文献数
12
被引用文献数
12 9

In order to improve children's compliance in taking bitter medicine, a gel base confectionery, which immediately changes into a jelly from after adding a special liquid, was used to mask the characteristic taste of the medicament. In pre-clinical trials, this jelly was evaluated by six adult volunteers who all reported the bitter taste to distinctly disappear in the jelly-formed quinia compared to a the powder of this medicine. Furthermore, we confirmed no comparable changes to exist in the serum levels of acetaminophene between acetaminophene alone and the gelbasemedicament mixture by oral administration. A clinical trial in three pediatric patients, who usually refuse medication because the bitter taste of the drugs, resulted in a 100% drug compliance for these children.
著者
綾木 雅彦 森田 健 坪田 一男
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.85-95, 2016 (Released:2017-08-10)

生活環境内の自然光と人工照明中のブルーライト成分を試作した光センサーを使用して測定した。ブルーライトを発する光源を使用して眼の角膜上皮細胞への光毒性の培養実験を行って,眼障害の可能性と対策について考察した。ブルーライトならびにブルーライトの覚醒度への影響を検証した。新たに作成した網膜電位図記録装置により,ブルーライトに反応する内因性光感受性網膜神経節細胞の電気活性をヒトで記録することに成功し,住環境で曝露するブルーライトの生体反応の新たな検査法を開発することができた。以上の結果から,通常の視力や視野の確保以外にも眼と全身の健康に配慮した照明,遮光が使用されるべきであると結論した。
著者
丹野 貴行
出版者
三田哲學會
雑誌
哲學 = Philosophy (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.9-42, 2019-03

特集 : 坂上貴之教授 退職記念号#寄稿論文
著者
千葉 華月
出版者
北海学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

北欧5カ国では、医療事故が生じた場合に、医療者の過失を問わず、「損害がさけられたか否か」という基準に基づき、被害者への給付の有無や補償額が決定される。医療事故に関する補償制度は、医療者の責任を問うための制度と分離されており、医療者と被害者との信頼関係を損なわない形での被害者への救済が行われている。本研究では、北欧における医療事故に関する補償制度を検討することにより、我が国における医療事故の被害者に対する救済の在り方について考察した。
著者
吉川 勉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.2, pp.309-315, 2014-02-10 (Released:2015-02-10)
参考文献数
10
被引用文献数
4

たこつぼ型心筋症は一過性の特徴的な心機能障害を呈する新しい概念の心筋症である.心電図ではST上昇,T波陰転化,QT延長などを呈し,急性冠症候群との鑑別が重要となる.院内死亡は急性冠症候群と同程度であるが,背景となる疾患に大きく影響される.急性期に,致死的心室性不整脈,ポンプ失調,心破裂,全身塞栓症など多彩な心合併症を呈する.その発生機序はいまだ不明であるが,交感神経機能亢進が最も有力である.急性期治療の確立,心合併症の予測,再発の予防などが今後の課題である.
著者
小林 亮太 池内 淳
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2012-HCI-147, no.29, pp.1-7, 2012-03-14

本稿は,表示媒体と表示内容の相違が学習能率にもたらす影響を把握することを目的とする.36 名の被験者に対して,タブレット端末と紙媒体のそれぞれを用いて,文学的文章と説明的文章からなる 2 タイプの文章を読ませ,主観評価および読み速度,記憶テスト,理解テストの結果を比較した.その結果,第一に,主観的な読みやすさの面では,iPad はすでに紙と同等の性能を実現していることがわかった.iPad を支持する理由としては,文字表示の鮮明さやページめくりのしやすさが上位を占める一方,紙では読書時の疲労が少ないことや集中しやすさが上位となった.第二に,文字情報のみからなるコンテンツの場合,読み速度や逐語的記憶では,説明的文章において表示媒体による有意差が認められた.また,文章理解ではタブレット端末よりも紙媒体に優位性があることが明らかになった.
著者
吉野 伸哉 小塩 真司
出版者
日本環境心理学会
雑誌
環境心理学研究 (ISSN:21891427)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.19-33, 2021 (Released:2021-05-06)
参考文献数
45

本研究の目的は日本におけるパーソナリティの地域差をBig Five尺度を用いて検討することである。3つの大規模調査のデータセット (調査1: 4,469名,調査2: 5,619名,調査3: 4,330名) を用いて二次分析をおこなった。各Big Fiveパーソナリティにおける局所的な集積を日本地図上にマッピングし,さらに3つのデータセットを通して高い,あるいは低い傾向にある都道府県を確認したところ,結果は次のようになった。外向性は首都圏や沖縄県で高く,中国地方で低い傾向にあった。協調性は九州東部や沖縄県で高く,北陸地方で低い傾向にあった。勤勉性は東北地方で低い傾向にあった。神経症傾向は東北地方や中国地方で高く,沖縄県で低い傾向にあった。開放性は九州北部で高い傾向にあった。首都圏や沖縄県,北海道における傾向はおおむね仮説と一貫していた。また特徴の見られた地域や日本におけるパーソナリティ特性の地域差について考察をおこなった。
著者
石渡 涼子 榎木 裕紀 横山 雄太 田口 和明 木津 純子 松元 一明
出版者
一般社団法人 日本老年薬学会
雑誌
日本老年薬学会雑誌 (ISSN:24334065)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.19-26, 2019-09-30 (Released:2019-10-07)
参考文献数
8

We evaluated heparinoid-containing soft ointments and heparinoid-containing creams to develop information useful to select drugs. Spreadability, consistency and the water content of stratum corneum was measured. A selection table focusing on impression of the use was prepared. Spreadability of the semi-original soft ointment and cream were lower than those of all generic drugs. Regarding hardness, one generic soft ointment was softer than the semi-original drug, but the semi-original cream was harder than all generic creams. Regarding the impression of the use, a significant difference was noted in smell in soft ointments, and 6 items in creams. Correlation was found between the spreadability and consistency test results and impression of the use. A significant difference was noted in the water content of stratum corneum in creams. The selection table prepared based on the impression of the use may provide information that helps selection of preparations in clinical practice.