著者
中野 正子
出版者
札幌医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、65歳以上の一般高齢者に対しマインドフルネスに行い、認知機能への影響および血中エクソソームに含まれるmicro RNAの変化を検索する。マインドフルネスは、ボディースキャン・ヨガ・静座瞑想から構成される瞑想法で、認知症発症を抑制することが知られているが、そのメカニズムは明らかとなっていない。本研究によって、マインドフルネスによる認知機能向上とmicro RNAとの関連が証明できれば、エビデンスの確立した認知症予防法として提言できると考えられる。
著者
渡部 徹 三浦 尚之 西山 正晃
出版者
山形大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究では,ノロウイルスを蓄積しない性質を有する牡蠣を選んで養殖することで,絶対的に安心・安全な牡蠣を生産する新たな構想のもとで挑戦的研究を実施する。まず,胃腸炎患者由来のノロウイルス株による牡蠣の汚染実験を行い,「ウイルスを蓄積しない牡蠣」を選別する。ノロウイルスが牡蠣の消化組織に発現した糖鎖に特異的に結合する性質に着目し,汚染実験で選別された「ウイルスを蓄積しない牡蠣」に特有な糖鎖の発現様式や発現量を明らかにする。さらに,その糖鎖の発現に関わる遺伝子を特定する。将来的に,この遺伝子をマーカーに用いて「ウイルスを蓄積しない牡蠣」をあらかじめ判別することで,ウイルスフリーな牡蠣養殖を目指す。
著者
奥崎 穣 曽田 貞滋 齊藤 隆
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

オオルリオサムシとアイヌキンオサムシは北海道内で体色とその多型頻度を変化させながら系統分岐を繰り返してきたことが分子系統解析から明らかとなった.体色進化の地理的パターンは2種間で異なっていたが,2種の体色は北海道北部でよく似た赤い色であることが分光計測によって確かめられた.またDNAバーコーディングの結果,オサムシの捕食寄生者3種が確認され,北海道北部にはそのうちの1種,ヤドリバエ科Zaira cinereaのみが生息していた.2種のオサムシの赤い体色はこの寄生バエに対して隠蔽色として機能しているかもしれない.今後はZ. cinereaの成虫を捕獲して,オサムシの体色への選好性を調査していく.
著者
湯地 智紀
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2021-04-28

代数幾何学という分野において主に研究される対象は、スキームと呼ばれる対象である。スキームに課される条件Pに対して、「条件Pを満たすスキームたちと、それらの間の"関連"」というデータ(これをC(P)とおく)を考える。本研究では主に、条件PとデータC(P)の間の関係について調べる。例えば、本研究で問われる問題として、ふたつの条件P,Qに対して、C(P)とC(Q)がデータとして異なる場合に、PとQが条件として異なるだろうか、という問題が挙げられる。
著者
辻村 昇太
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

令和元年度は、数論的な体の絶対ガロア群の組み合わせ論的特徴付けについて、関連した次の2つの研究成果を得た。1.有理数体Qの絶対ガロア群G_Qの充分大きな閉部分群のグロタンディーク・タイヒミュラー群GTにおける通約化部分群からG_Qへの準同型であって、元の閉部分群に制限すれば、包含写像になっているものを構築した。G_Qの閉部分群はQのある代数拡大体に対応しているが、上述の充分大きなという条件は、「その代数拡大体の任意の有限次拡大体の乗法群の可除元のなす群が1のべき根のなす群に含まれる」といった体論的な条件である。これまでの遠アーベル幾何学の研究に現れる多くの体に加え、p進局所体の最大アーベル拡大のような円分指標が消えている体がこの条件を満たしていることも確認しており、そのような設定での遠アーベル幾何学の研究も今後の興味深い課題の一つに思われる。例えば、上述の準同型を構築する際に、J.Stix氏による数体の最大円分拡大上の種数0双曲的曲線に対する弱グロタンディーク予想型の結果の、上述の体論的な条件を満たす体上における設定への一般化を行った。前年度に投稿した論文に、これらの結果を書き加え、論文の再提出を行った。2.望月新一氏、星裕一郎氏との議論により、GTの部分群として、G_Qを組み合わせ論的に構築する研究の遠アーベル幾何学への応用を与えた。具体的には、数体の最大円分拡大体上の種数0双曲的曲線に付随する高次配置空間に対するグロタンディーク予想を証明した。このことに関する結果は、前年度より引き続き行っているBGT(G_Qの組み合わせ論的な候補)に関する研究をまとめた論文に書き加える予定で、現在投稿準備中である。また、前年度、及び、今年度に得た結果に関する講演を4回、中国科学技術大学、オックスフォード大学、ノッティンガム大学、ソルボンヌ大学で行った。
著者
大坪 紀之
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

数論的な多様体のL関数とモチーフ的コホモロジーとの関係、またその円分体論への応用を研究した。とくに、円分体のヘッケL関数の特殊値とフェルマー曲線のモチーフ的コホモロジーとの新たな関係を、一般超幾何関数を用いて示した。また、超幾何ファイブレーションという多様体族を新たに定義し、その周期に対するGross-Deligne予想を証明し、そのレギュレーターを一般超幾何関数を用いて表すことができた。さらに、フェルマー曲線塔の副有限ホモロジー群の構造を決定し、それを用いて、Ihara-AndersonによるJacobi和の普遍測度の、簡明な構成を与えた。
著者
大森 勇門
出版者
大阪工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

食品における結合態D-アミノ酸の存在と異性化を促進する要因について解析を行った。サプリメントとして販売されているコラーゲンペプチドには、結合態D-ValがD/D+L比20%程度の非常に高い割合で存在することを見出した。一方でダイズやホエー由来ペプチドでは結合態D-Valは検出されなかった。またAspジペプチドをモデルとして異性化を促進する加工処理を検討した。電子レンジでの加熱において、アルカリ条件では700 W、30秒で異性化が進行することを見出した。既知の条件よりもかなり低い温度と短時間で進行することが明らかになり、マイクロウェーブが結合態アミノ酸の異性化を促進することが示唆された。
著者
齊藤 高志
出版者
大阪医科薬科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

全身性強皮症は間質性肺炎などを主徴とする自己免疫疾患であり、有効な治療に乏しい難治性の疾患である。脂肪由来間葉系幹細胞 (ASCs) は脂肪組織に豊富に存在し、低侵襲かつ容易に採取可能な幹細胞である。ASCsは抗炎症性作用と免疫抑制作用を示すため、免疫疾患に対する細胞療法として有用である。血液抗凝固薬の低分子量ヘパリン (LMWH) をASCsに作用させると、抗炎症作用がより高くなる。本研究は、「LMWHで活性化させたASCs」を病態モデルマウスに投与し、LMWH活性化ASCsの免疫抑制・組織再生効果を確かめる。
著者
渡辺 優
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

「神秘主義」は、「宗教とは何か」を問う宗教学にとって、最重要テーマのひとつであり続けてきた。この神秘主義の理解について、本研究を貫く問いは、これまで支配的であった「神秘体験」中心のそれとは異なる、別様の理解がありえたのではないか、ということである。この「ありえた別様の神秘主義の可能性」を求めて、本研究は、一方では、中近世の神秘主義的「経験」概念と近代神秘主義論における「体験」概念の相違と、前者から後者への変容の歴史的要因を問う。他方では、近代的体験概念とは異質な経験概念を核とする近世神秘主義の系譜が、近現代に消失してしまったのではないとすれば、どこに・どのように見いだせるかを探る。
著者
松田 稔樹
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究は、応募者が提案する「問題解決の縦糸・横糸モデル」と、同じく政策評価を課題として「総合的な学習の時間」から教科のカリキュラムを設計する「新・逆向き設計手法」を活用して、「Neo教育工学の目的が達成可能か?」を問う。ここで言う「Neo教育工学」は、「あらゆる社会問題を教育手段で解決する学問」であり、その目的達成手段がカリキュラム開発手法だからである。具体的には、SDGsの複数課題を題材に、各教科で学ぶべき学習要素を明確化し、モデルに即したゲーミング教材やe-portfolioでコーチングすれば、転移を含めた目標達成が可能なことを事例として示す。
著者
古郡 鞆子 松浦 司 李 青雅
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

世界に広がる肥満化現象の実状、肥満の背景にある社会・経済的環境についての把握と考察をし、肥満が日常生活や仕事(雇用、賃金、その他の待遇)、医療費や社会保障などに与える影響を経済学の立場から分析した。肥満は、保健衛生面では汚名やいじめ、がんや生活習慣病の発症、短命、医療・医療費の増大、労働面では生産性の低下や採用・職種・賃金・昇進等での差別の問題を生んでいる。そのそれぞれを通し、肥満が社会に与える影響の分析を行い、健康な生活の維持、肥満予防・対策に関する考察と提言を行った。
著者
齋藤 秀司
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

ホッジ予想はクレイ研究所が提出したミレニアム問題のひとつである.変動的ホッジ予想は,ホッジ予想よりは弱い予想であるが,アーベル多様体にたいしては同値である.最近の進展によりこの問題は,形式的スキームの代数的K群にたいする代数化の問題に帰着された.これはGrothendieckの偉業である形式的存在定理を大きく一般化する難題でこれまで一般的アプローチは知られていなかった.本研究は,リジッド解析空間のK理論を新たに構築することにより, リジッド解析的手法を上記の問題に適用する新たな道筋を開いた.
著者
宮崎 弘安
出版者
日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

数論幾何では、整数や素数の性質を、代数多様体と呼ばれる図形(幾何学的対象)の性質に置き換えて研究する。多くの場合、代数多様体の構造は非常に複雑で、そのままでは調べるのが難しい。そこでコホモロジー理論を用いた「線形近似」を行うのが現代数学の常套手段である。数論幾何には様々な種類のコホモロジーが現れるが、それらは全てモチーフという理論によって結びつくと考えられている。これまでの研究では、モチーフ理論全体を一般化することにより、従来の理論が抱えていた原理的な制約を克服することに成功した。本研究ではこの新しいモチーフ理論を駆使し、従来の理論では捉えられなかった数論的現象を探求することを目指す。
著者
大倉 正敏
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

豚レンサ球菌は豚やヒトに重篤な疾病を引き起こす重要な人獣共通感染症起因菌であり、莢膜多糖の抗原性の違いにより30以上の多様な血清型に分類されている。本研究では現在、血清型別に使用されている全35血清型参照株の莢膜多糖合成に関わる遺伝子群[Capsular polysaccharide synthesis(cps)gene cluster]について比較・解析を行った。その結果、本菌の血清型は「cps gene clusterの交換による大規模な変異」及び「cps gene cluster内の少数の遺伝子の塩基配列置換や欠失・挿入などによる小規模な変異」の両方により多様性を創造していることが示唆された。さらに、解析により明らかとなった、複数血清型共通遺伝子及び血清型特異的遺伝子を利用し、2回のマルチプレックスPCRにより分離株の血清型を推定する型別法を開発した。
著者
五味 文 岡留 剛 荒木 敬士 福山 尚 角所 考 井村 誠孝 小椋 有貴
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)は元来予後良好な疾患とされていたが、病状が遷延し、重篤な視力低下に至ることもある。さらに近年ではCSCと加齢黄斑変性との関連が示唆されてきており、実際一部のCSC例は滲出型加齢黄斑変性に移行することがわかってきている。本研究の目的は、CSC症例における遷延・加齢黄斑変性移行例のリスク因子を見出し、早期の介入を促すことで更なる病状進展、視力低下を抑制することである。具体的には、①眼科画像検査、②身的・外的ストレス評価、③視覚異常のシミュレーション、の3つのアプローチで、ハイリスクCSC症例の早期発見を試みる。
著者
神保 秀一 林 実樹広 中路 貴彦 儀我 美一 森田 喜久 三上 敏夫 本多 尚文
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

平成9-11年度の期間,非線型偏微分方程式に現れる解の力学系の観点からの研究を行った.本研究組織の得た主たる研究成果は次の通りである.(i)ギンツブルグランダウ方程式の安定解の存在と領域依存性を様々な場合について研究した.また,ボルテックスをもつ安定解の存在についてトポロジカルに多様なものを得る方法を考案した.非一様状況の状況におけるパターンフォーメーションも研究した.(ii)非定常複素ギンツブルグランダウ方程式の周期解の安定性や領域依存性について研究した.(iii)非定常ギンツブルグランダウ方程式の特異極限問題において力学系が有限次元に還元され常微分方程式の有限システムによって表され,さらにその表現公式を得た.(iv)反応拡散方程式に現れるホモクリニック軌道のパラメータによる構造変化(力学系の分岐現象)を研究した.(v)平均曲率流,表面拡散方程式などの曲面発展方程式に現れる力学系を研究し,漸近挙動や幾何学的な特徴を解析した.(vi)システムの非線型波動方程式について成分ごとに伝播速度が異なる場合について大域解の存在を研究した.(vii)急拡散方程式の解の消滅現象を研究した.(viii)ランダム結晶のなす曲率流方程式の定性的な研究.(ix)領域が部分的に退化する特異摂動において,半線型楕円型方程式の解の挙動の特徴付けをおよびラプラシアンの固有値の摂動公式を研究し(ノイマン境界条件),従来から知られている結果を退化次元が一般の場合へと拡張した.
著者
田中 克典 加藤 鎌司 山本 悦代 大庭 重信
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では果実形質が選抜されていたことを検討するために,果肉色(CmOr)や果実の酸味(CmPH)に関連する遺伝子についてDNAマーカーを開発するとともに,それらのマーカーを用いてメロン種子遺存体を分析した.分析により,メロン種子遺存体の解析によって,近世の商業都市である大坂城・城下町ではメロン仲間の選択において酸味や果肉色に好みがあったこと,それらのメロン仲間が日本在来のマクワやシロウリと関連があることを示していたことがわかった.今後,作物への嗜好と選抜との対応,これに関わる社会や政治的背景を研究するため,これらDNAマーカーを幾つかの時代のメロン種子遺存体に適用する.
著者
金 炳学
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、学術的独自性として、韓国においても紛争解決手段として多用されている間接強制に焦点をあて、日本においてその理論的背景についての分析がなされていない現状から、韓国における間接強制の弾力的活用をめぐる法改正議論について検証をする。あわせて、本研究の創造性として、韓国の理論的状況の対比を通じて日本民事執行法上の間接強制が帯びている独自の可能性について、姉妹法たる韓国法との比較法的見地から理論的・実証的意義を再確認し、ドイツ・日本・韓国の比較民事手続法的考察をし、アジア法からヨーロッパ法への法の環流を促す新たな可能性をみいだす。
著者
永井 成美 坂根 直樹
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「働き方改革」により柔軟な働き方が広まりつつあるが、社会のインフラを支える24時間シフト制の職種は一定数存在する。体内時計とのズレにより生じるシフトワーカーの疾病や傷害を予防し、生産性と社会秩序を維持するためにも時間栄養学に基づく「食べ方改革」が望まれる。本研究では、1)食べる時刻(朝・昼・夕・夜間)や活動・睡眠時間帯を考慮した「食べ方改革レシピ」と「食べ方改革ルール」を開発し、2)夜間勤務のある事業所での介入研究により効果を検証する。最終目的は、一億総活躍社会をめざす「働き方改革」の中で勤務時間の変更が難しい夜間・シフト勤務者の健康を「食」で下支えし、活力ある社会の実現に貢献することである。