著者
石郷 友之 下坪 達人 髙田 遼 中野 敬太 藤居 賢 北川 学 木明 智子 中田 浩雅 福土 将秀
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.141, no.2, pp.255-262, 2021-02-01 (Released:2021-02-01)
参考文献数
25
被引用文献数
2

The efficacy and safety of linaclotide in elderly patients are poorly understood. Herein, we aimed to assess the efficacy and safety of linaclotide in elderly patients in real-world setting. We retrospectively enrolled consecutive patients who started linaclotide therapy at Sapporo Medical University Hospital from October 1, 2017 to December 31, 2019. The efficacy and safety of linaclotide were examined in relation to various factors, including age (<65 or ≥65 years) and dose (0.25 or 0.5 mg/d). Fifty-two patients were enrolled, 60% of whom were over 65 years old and 40% were female. Thirty-six patients received a linaclotide dose of 0.25 mg/d. The most common side effect was diarrhea, but there was no difference in the incidence of diarrhea between the elderly (64.5%) and non-elderly patients (42.9%, p=0.130). No significant difference was observed with respect to improvement in constipation in the elderly (83.9%) and non-elderly patients (71.4%, p=0.318). Additionally, the difference in efficacy of linaclotide in patients who received a reduced dose (80.6%) vs. those who received the recommended dose (75.0%) was not statistically significant (p=0.719). Multivariate analysis revealed that age, gender, and dose were not associated with diarrhea induced by linaclotide treatment. However, concurrent treatment with constipation-inducing medications [odds ratio (OR) 5.79, p=0.047] and linaclotide monotherapy (OR 11.1, p=0.040) were both risk factors contributing to diarrhea. Linaclotide is effective and safe for use in elderly patients. The incidence of diarrhea may increase when linaclotide is administered alone or concurrently used with medications that cause constipation.
著者
郡 千寿子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Hirosaki University (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.123, pp.1-8, 2020-03

石川県立図書館の川口文庫に所蔵されている近世期版本の往来物資料について、書誌的な調査結果を含め、紹介する。石川県立図書館には、〈森田文庫〉〈饒石(にぎし)文庫〉〈李花亭文庫〉〈川口文庫〉といった特殊文庫があり、所蔵往来物資料の調査結果については、すでに公表1)している。本稿では、〈川口文庫〉所蔵の23本に焦点をあてて、画像を含め報告する。目的別に分類すると、教訓科往来0本、社会科往来2本、語彙科往来1本、消息科往来16本、地理科往来1本、歴史科往来3本、産業科往来、理数科往来、女子用往来は0本という結果であり、消息科往来の割合が大きかった。出版地域別では、京都が8本、江戸が7本、大坂が1本、不明が7本という結果であり、京都大坂を合わせた関西圏での出版が、江戸より若干上回るという傾向がみられた。 特殊文庫においては、本稿で紹介する〈川口文庫〉を含めて、総計34本の近世期版本往来物資料が確認できた。北陸地域という枠組みでみれば、新潟県立図書館所蔵の往来物資料は、江戸文化圏からの流入が多いという傾向がみられたが、石川県立図書館では、関西圏と江戸での差異がそれほど顕著でないことが明らかとなった。 往来物の分布を通して、地域の教育的背景の格差や文化伝播状況などを解明することを目的としているが、本稿は、他地域の状況と比較する上での基盤となる調査の一報であるといえよう。
著者
郡 史郎 Kori Shiro コオリ シロウ
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
言語文化共同研究プロジェクト
巻号頁・発行日
no.2019, pp.13-24, 2020-07-31

音声言語の研究(14)首都圏中央部で使われる助詞・助動詞類のアクセントの具体的な音形を実用性のある簡潔な形で提示するとともに, その音韻論的型を郡(2015)の基準で分類した結果にもとづき,アクセントの変異のありかたと時代変化の方向性について考察した。「さえ・すら・より」「と」「よ・ぞ」については変異が意味の違いに由来すると考えうること, 変化の方向性としてアクセントの独立性が弱い型から強い型へという指向があることを述べた。

4 0 0 0 OA 山陽詩鈔新釈

著者
中村徳助 著
出版者
日進堂
巻号頁・発行日
1911
著者
松下 貴惠 岩島 佑希 馬場 陽久 稲本 香織 三浦 和仁 岡田 和隆 渡邊 裕 山崎 裕
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.209-217, 2020-12-31 (Released:2021-01-28)
参考文献数
31

目的:味覚障害の多くを占めている高齢者における味覚障害の特徴を明らかにすること。 方法:2013年8月~2019年12月の6年5カ月間に味覚異常を主訴に当科を受診した101例を,65歳以上の高齢者群74例と,65歳未満の非高齢者群27例の2群に分けた。これらに対し,男女別の年齢分布,病悩期間,発症の契機,味覚の自覚症状,味覚異常以外の口腔内随伴症状,薬剤服用歴,内科的疾患,味覚障害の原因,初診時の味覚検査と血液検査,治療法,予後に関して比較検討した。 結果:高齢者群は非高齢者群に比べ,病悩期間が有意に長く(19.3±28.1月 vs. 8.9±16.8月),発症の契機率は有意に短く(46% vs. 74%),薬剤服用歴と内科的疾患の有病率はともに有意に高い結果であった(91% vs. 70%,93% vs. 59%)。味覚異常の原因では,両群ともおおむね同様の傾向を示したが,高齢者群は非高齢者群に比べ心因性が少なく,口腔疾患と亜鉛欠乏性の割合が多くなっていた。高齢者群の口腔疾患は,口腔カンジダ症が多く高齢者群全体の約2割を占め,臨床所見のみではカンジダ症が疑われない症例が約4割に認められた。高齢者群の改善率は非高齢者群と同様で約75%と良好であったが,治療期間は長い傾向にあった。両群ともに病悩期間の長いほうが改善率は低く,治療期間も長くなる傾向があった。 結論:高齢者における味覚障害では,口腔カンジダ症が多く認められるため,初診時のカンジダ検査の重要性が示唆された。また病悩期間が治療効果や治療期間と関係するため,早期発見と早期の適切な治療が必要であると思われた。
著者
黒野 伸子 大友 達也 岡崎女子短期大学 安田女子大学
雑誌
岡崎女子大学・岡崎女子短期大学 研究紀要 (ISSN:21882770)
巻号頁・発行日
no.52, pp.57-66, 2019-03-15

筆者らは、これまでに王朝文学に現れる「病」の扱いについて、「他者からの要求を回避する口実、自己の希望を叶えるための理由づけ、体験の特殊さを強調する効果など、対象者の願いをかなえる便利ツール」のような扱いがなされていることを明らかにした。しかし、筆者らは古代の人々が持つ疾病観、医療観を論じるには、多方面からのアプローチも重要だと感じていた。そこで本稿では、古代医療史に関する先行研究レビューを基礎として、山上憶良と大伴家持の作品にみる表現とメトニミー両面からのアプローチを試みた。その結果、少なくとも、奈良時代の知識人が持つ疾病観、医療観には重層性があることが示唆された。
著者
白根 靖大
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、院政期の貴族藤原頼長の日記である『台記』を史料学的な視座から研究し、中世古記録研究の進展に寄与することを目指すものである。『台記』は頼長の自筆本が現存せず、史料としては写本に頼らざるを得ない。その写本は近世に作成されたものが大半で、字句や記述に異同があるにもかかわらず、写本そのものの史料学的研究はほとんどない。そこで、本研究では、現存する諸写本の継承性などを精査して類型化・系統化を行い、各写本の特徴や活用するうえで踏まえるべき史料的性格を解明する。

4 0 0 0 OA サクラと農業

著者
山下 裕作
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.121-126, 2008 (Released:2011-01-20)

サクラとは、一般に、ウメ・モモ・アンズなどを除くバラ科サクラ属の植物の総称である。その名称の由来については、(1)「咲く」に複数を表す接尾語の「ら」を付したとする説、(2)稲の作神であるサの神が寄り憑く神鞍(クラ)からくるという説、そして(3)「木の花(サクラと思われる)」を象徴する木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)から「さくや」を取り転訛したという説、の三つに代表される諸説がある。大仰な目的意識などはないが、サクラは日本の国花であると意識されている。事実、日本文化とサクラとの縁は深い。春になり桜が咲けば、誰でも花見に出かけたくなるだろう。日本人の多くがサクラを好んでいるのである。そのサクラと農業という生業が密接に結びついていることを、ほんの少しでも明らかにすることが本稿の目的である。
著者
鈴木 幸一 御領 政信 品田 哲郎 寺山 靖夫 吉岡 芳親 高橋 智
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

カイコ冬虫夏草ハナサナギタケの熱水抽出物から同定した新規の生物活性分子は、マウス海馬に発生したアストログリオーシス(神経膠症)修復の最有力候補であり、その分子メカニズムを解明することでヒトへの応用開発を進めた。その結果、培養アストロサイトに新規生物活性因子を添加することで、神経成長因子と神経成長因子誘導体の遺伝子が発現し、さらに神経初代細胞への効果として神経突起形成を誘導した。このin vitroの分子機構に基づいて、老化促進マウスの脳機能は向上し、ヒトのアルツハイマー型認知症患者の前臨床試験でも改善効果が確認され、新しい機能性食品と医薬品候補を提案した。
著者
角田政治 著
出版者
隆文館図書
巻号頁・発行日
vol.續 交通名勝之部上巻, 1917
著者
野口 大斗
出版者
国立大学法人 東京医科歯科大学教養部
雑誌
東京医科歯科大学教養部研究紀要 (ISSN:03863492)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.50, pp.31-39, 2020 (Released:2020-05-09)

日本語の東京方言においては、句頭でピッチの上昇の起こることが広く知られている。ただし、この現象は句頭が重音節、あるいはアクセントのある音節であるときには、観察されない。そこで、本稿では、録音調査のデータにおける句頭の上昇に着目し、東京方言において、/ui/は二重母音を形成すると主張する。

4 0 0 0 OA 新撰字鏡

著者
昌住 [著]
巻号頁・発行日
vol.[1], 1000
著者
伊波 和正
出版者
沖縄国際大学外国語学会
雑誌
沖縄国際大学外国語研究 (ISSN:1343070X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.123-201, 1998-06
著者
濱野 千尋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

本発表の目的は、ドイツにおける動物性愛者の任意団体「ZETA(Zoophiles Engagement fur Toleranz und Aufklarung/ Zoophiles Commitment for Tolerance and Awareness/ 寛容と啓発を促す動物性愛者委員会)」に属するメンバー8名へのインタビュー・データをもとに、人間と動物の関係、特に獣姦(Bestiality)および動物性愛(Zoophilia, Zoosexuality)を考察することである。
著者
田中 雅一
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.55-80, 2016 (Released:2017-09-15)

本稿の目的は、侵犯的な宗教性について理解することである。ここで取り上げる供犠は、おおきく聖化と脱聖化の儀礼に分かれる。前者は神に近づき、聖なる力を獲得する道を提示するのに対し、後者は罪や不浄を取り除く。聖化では、神の力が充溢している供物の残滓を分配し、消費する。脱聖化では、残滓に罪や不浄が吸収され、家屋や寺院の外に放置される。しかし、儀礼の目的が脱聖化かどうか不明だが、残滓が摂取されない場合がある。それはヴェーダの神々や、憤怒の相を表す下級の神々を鎮めるための儀礼である。シヴァ神については、残滓はニルマーリヤと言い、これを受け取るのはチャンダとかチャンデーシュヴァラと呼ばれる聖人だけである。彼はシヴァの聖者の一人である。本来忌避すべきニルマーリヤを受け取るのは、侵犯的な信愛(バクティ)の表れの一つと言える。本稿では、供犠の残滓に注目することで規範の侵犯に認められる宗教的性格について考察する。
著者
大野 由夏 小長谷 光
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.93-100, 2019-06-25 (Released:2019-06-28)
参考文献数
37

遷延性術後痛の発症危険因子は明らかではないが,内因性鎮痛系の減弱も一部関与している可能性がある.生体に備わっている内因性鎮痛系の一種に,身体のある部位に与えた刺激により別の部位の痛みが抑制される現象があり,これは,動物においては広汎性侵害抑制調節(diffuse noxious inhibitory controls:DNIC),またヒトにおいてはconditioned pain modulation(CPM)と呼ばれる.DNIC/CPMは中枢性の抑制性修飾であり,セロトニン作動系やノルアドレナリン作動系などの内因性鎮痛系が関与する.健康成人を対象にCPM評価を行うとCPM効果の大きさに個人差が認められることから,CPM効果は内因性鎮痛系の評価法として応用できると考えられる.さらに,予定手術患者を対象に術前のCPMを評価した結果,術後痛とCPM効果の関連が示されたことから,CPMは遷延性術後痛発症危険因子スクリーニング検査として応用できる可能性がある.本総説では,DNIC/CPMの概要,CPM評価法について概説し,さらにCPMの遷延性術後痛発症危険因子スクリーニング検査としての可能性について,最新の知見を自験例とともに報告する.