出版者
奈良教育大学自然環境教育センター
雑誌
自然と教育
巻号頁・発行日
vol.13, 2001-03-30

大和棟民家移築・再生構想―奈良実習園における地域開放型大学セミナーハウス―/竹トンボ飛距離伸長の工夫/定年後の田舎暮らし(1)動植物の観察/「馬」と「鹿」の分布考―「探偵ナイトスクープ」を論じて、自然科学者のあり方に及ぶ/私のマラソン/編集後記
著者
高梨 郁子 菅沼 優子 久永 聡 田中 敦 田中 聡
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告高度交通システム(ITS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.28, pp.71-78, 2007-03-16
被引用文献数
9

当社はアイキャッチ効果の高い大型映像表示機器と,操作が可能な携帯電話を連携したインタラクティブデジタルサイネージシステムを開発している.情報ポータルとしての大型映像表示機器の魅力的な広告コンテンツによって街を歩く人を集客し,更にそこから広告の店舗や会場に誘導することで街の様々なスポットに人の流れを作る街づくりプラットフォームとして提案している.しかし,携帯電話による歩行者誘導サービスを実現するためには屋内における様々な課題を解決した実現方式を検討する必要がある.今回,我々は屋内における携帯電話での歩行者誘導を実現するための方式について検討を行った.本稿では,この検討結果について述べる.Mitsubishi Electric Corp. has developed Interactive Digital Signage System, which enables interactivity between mobile phones and huge Displays, such as multi DLP (Digital Light Processing). We are proposing this system as a new platform for revitalization of local towns. The system is aiming to attract and gather the people, who walk the streets,by mesmerizing advertisement, and lead them to some specific location.However, there are many problems to realize indoor pedestrian navigation system using mobile phones. In this paper, we investigate those problems and propose a new mechanism which makes available to leads the peoplefrom information portal to some specific location, such as advertisingstores and/or event venue.
著者
黒田 景子
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学総合教育機構紀要
巻号頁・発行日
no.2, pp.17-40, 2019-03

マレーシアのクダーには歴史史料に登場しない情報を民衆が口承伝統として残している場合がある。近年クダーのマレー人ムスリムたちが自らの祖先の墓や歴史について古老の情報を残そうとし、それをマレー語のブログなどに公開する動きがある。特にタイ軍がクダーを攻撃占領した時期(1821-1842)は異教徒によるムスリムの支配時代の苦難と抵抗の時代としてクダーの村々で多くが伝承されている。本稿で扱うコタムンクアン村の伝承は 南タイから戦乱を逃れてきたマレームスリム王族の一団がこの村を築城し住み着いていたが、1821年のタイ軍の攻撃で一族がほぼ殺害されたというものである。しかし、残った長男の直系子孫によって伝えられたその王名がナコンシータマラート国主のタイ語の欽賜名を持っていること、マレー語ではなく「シャム語」と彼らが呼んでいるタイ語の南タイ方言に類似した言語を話していたことがわかった。クダーには現在はマレー語教育が浸透して数少なくなっているが、「シャム語」起源の地名は多く、また現実にシャム語を日常語としている村々が少数ながら存在していて、クダーとタイの長い歴史関係を物語る。ところが、この伝承がネットで公開されると熱心な支援者が現れ、独自の解釈をしてアユタヤ王朝は実はイスラーム王朝だった、その版図はインドの一部からマレー半島のマラッカ、ビルマの一部からフィリピンに至るという「奇説」に発展し、それを支持する人々が次々とネットで二次利用するようになった。マレーシアの歴史学会は歴史フォーラムを開いて独自の解釈をする情報提供者がよりどころとする歴史的資料である「クダー法」や「メロンマハーワンサ物語」から距離をおいて、「コタムンクアンの主」の「シャム語」話者ムスリム王についての発表を行ったが、現在も「アユタヤ朝最後の王はクダーに逃げてきてその子孫がいる。アユタヤ朝はイスラーム帝国だった」という言説がマレー語のWikipedia に乗るまでになった。なぜこのような説が熱心に支持されるのかを考察すると、歴史的に「シャム語」を話していた南タイからクダーに至る地域のムスリムが、1909年に英領マラヤに編入され分断されたことで、ムスリムの中のマイノリティとなり、かつて彼らが他者からサムサムと呼ばれ「敬虔ではないムスリム」と評された経験からマレー語話者ムスリムの中で「シャム語」を話すことを恥としたり、引け目を感じるアイデンティティの危機に陥っている現状が見えてきた。コタムンクアンの主アブ・バカール・シャーはクダーの歴史書に登場しない「シャム語」話者の「自らの歴史」に通じるものとして、過ちを検証されないまま民間での通説に成りかかっている。
著者
楊 六金
出版者
比較民俗研究会
雑誌
比較民俗研究 (ISSN:09157468)
巻号頁・発行日
no.33, pp.81-86, 2019-03
著者
海津 正倫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.53-59, 2019 (Released:2019-02-23)
参考文献数
7

平成30年西日本豪雨災害における岡山県倉敷市真備町の水害では小田川や支流の末政川,高馬川などが破堤し,洪水氾濫によって大きな被害が発生した.顕著な破堤が発生した末政川の700 m地点では,洪水流は破堤箇所から左岸側,右岸側共に堤防横の建物などを破壊し,さらに細長く伸びる押堀を形成して流れ,その先は障害となる建物をよけながら空き地や畑などの空閑地を流れた.下流側の破堤地点である400 m地点とこの700 m地点との間は顕著な天井川となっており,また,河道がS字状に屈曲していて,小田川との合流部からのバックウォーターに加えて,このような河川の特性が破堤に影響した可能性が考えられる.一方,高馬川・小田川の破堤地点では,破堤箇所からの洪水流が広がった地域でそれとは反対方向からの洪水流も存在し,破堤地点からの洪水流が流れたあとに末政川方向からの流水も到来し,浸水被害を増大させた可能性がある.
著者
挽地 康彦
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.12, pp.117-132, 2019-03

伊豆諸島ほど大洋に浮かぶ「船」を思わせる島々はないだろう。古来より飢饉、疫病、噴火、海難に見舞われ、また辺境ゆえに流刑地として指定された歴史をもつ伊豆諸島。島々の交通は容易でなく、外界から閉ざされた島嶼世界は死に満ちていた。それはあたかも、いつ難破してもおかしくない船のように佇んでいたのだ。伊豆の島々が危機と隣り合わせの船団ならば、島の民は潜在的な漂流者なのではないか。本稿の目的は、こうした問いをめぐって、近世伊豆諸島をめぐる海難、流刑、祭祀などの民族誌をたどりながら、黒潮の世界を彷徨う遍歴者の形象を明らかにしていくことである。海を走る船は思わぬ形で異国へ流され、ときに異界へと引き込まれる。そんな漂流船=島の歴史が亡霊となって現在に回帰し、島民に憑依するとき、土着の民として安住する意識は揺さぶられるだろう。そこに、漂流民としての自己が呼び起こされる可能性があることを指摘していく。
著者
川上 浩 朴 眩泰 朴 晟鎭 青栁 幸利
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.145-153, 2014 (Released:2014-12-21)
参考文献数
29
被引用文献数
1

牛乳・乳製品の摂取が高齢者の健康に及ぼす影響については,これまで骨粗鬆症や高血圧等の生活習慣病の予防の観点から多くの研究がなされてきた。また,サルコペニア予防を目的としたレジスタンス運動時の筋肉の維持向上において,乳清タンパク質等の摂取が有用であることも報告されている。しかしながら,通常の日常生活における身体活動と,牛乳・乳製品の摂取との関係を中心に解析した研究報告はほとんどみられない。そこで本研究では,健康な高齢者における牛乳の摂取と,日常生活での身体活動量,歩行速度,および体組成等との関連について調べ,牛乳摂取の有用性を明らかにすることを目的とした。 認知症や寝たきり等の症状を有さない65歳以上の高齢者179名(男性88名,女性91名)を対象に,食物摂取頻度調査票を用いて栄養状態および牛乳摂取量を把握した。身体活動については,一軸加速度センサー内蔵の身体活動量計を用いて,歩数,身体活動強度,および身体活動時間を毎日24時間計測した。歩行速度(平均値・最大値)は,全長11 m の水平歩行路上の移動時間から算出した。筋量,脂肪量,および水分量等は,マルチ周波数体組成計で全身および部位別に測定した。骨強度は,超音波骨評価装置で右踵骨を測定した変数から,音響的骨評価値を算出した。全対象者を低牛乳摂取グループ(200 mL 未満/日)85名,および高牛乳摂取グループ(200 mL 以上/日)94名に分けた。日常生活における身体活動量,歩行速度,筋量,骨強度,および血清アルブミン濃度に統計学的な有意差(p<0.05)がみられ,高牛乳摂取グループで高値を示した。特に,筋量は男性において,骨強度は女性において牛乳摂取量との相関が高かった。また,牛乳摂取量と身体活動の相乗効果を判定するために,多要因ロジスティック回帰分析でサルコペニア発症相対危険度のオッズ比を算出したところ,「低牛乳摂取+低身体活動」グループは,他の 3 グループ(「高牛乳摂取+高身体活動」「高牛乳摂取+低身体活動」「低牛乳摂取+高身体活動」)に比べ,危険度が有意に高かった。以上の結果から,高齢者における牛乳の摂取は,身体活動や体組成の向上に有用である可能性が示唆された。
著者
北川 純子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 人文社会科学・自然科学 (ISSN:24329622)
巻号頁・発行日
no.67, pp.93-112, 2019-02-28

東家楽浦(1898-1978)は,1920年代から70年代にかけて活動した浪曲師である。彼のキャリアについては,とりわけ三点の事柄が評価されている。一点目に,初代ならびに二代東家浦太郎の師匠であること,二点目に,浅草の木馬亭を浪曲定席の場としたこと,三点目に,野口甫堂のペンネームで多くの浪曲台本を執筆したことである。本稿は,浪曲台本作家としての楽浦に焦点を定め,〈良弁杉〉を素材として,楽浦が講談を土台にしつつ,どのように浪曲版をつくりあげていったかを分析する作業を通して,講談と浪曲の性格の違いの一端を明らかにする試みである。