著者
橋爪 大三郎 志田 基与師 恒松 直幸
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.2-18,127, 1984-06-30 (Released:2009-11-11)
参考文献数
77
被引用文献数
4 1
著者
一方井 祐子 マッカイ ユアン 横山 広美
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.55-67, 2018-12

近年,インターネットで不特定多数の公衆から資金支援を募るクラウドファンディングが注目され,研究者も研究資金の獲得にクラウドファンディングを利用するようになった.予算の多元化が推奨される中,クラウドファンディングが新たな科学技術のパトロネッジ(第4のファンディング)として利用されていく可能性は高い.科学コミュニティにおけるクラウドファンディングを議論する上では,参加者の動機づけや問題意識の整理が欠かせない.しかし,これまで,研究者がどのような意識でクラウドファンディングに参加してきたかを調べた調査は少なかった.そこで本稿では,学術系クラウドファンディングに参加した日本の研究者を対象に意識調査を行った.その結果,研究者の主な参加動機は,第一に研究資金の獲得であり,ファンディングの側面が強かった.また,自身の研究のアピール,研究の面白さを伝えることが重視されていた.学術系クラウドファンディングには双方向コミュニケーションを促進させる場がいくつかあるが,現状としては,学術系クラウドファンディングは主に一方向的な情報伝達のコミュニケーションツールとして活用されている.
著者
工藤 龍太
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.71_2, 2018 (Released:2019-01-18)

講道館柔道創始者の嘉納治五郎は様々な武術を研究し、「武術としての柔道」を生涯にわたり探求し続けた。柔道が競技スポーツとして普及していく一方で、柔道の武術性が失われていくことを危惧した嘉納は、修行者に形と乱取稽古の併修を説いた。昭和2(1927)年までに嘉納が完成させた精力善用国民体育の形(以下「精力善用の形」)は、2人で行う相対動作に加えて1人で行う単独動作が含まれている点で、柔道の形としては画期的なものであり、集団体操としても採用されるなどの展開があった。先行研究では、この形が国民体育の実施と当身技の習得といった体育的・武術的観点から、柔道をより優れたものにするために嘉納が創案したものであり、嘉納にとって理想の柔道の形であったことが指摘されてきた。本発表では、嘉納の理想的な柔道を具現化した精力善用の形が戦前の体育や武道の世界に与えた影響や、様々なレベルの実践者たちの反応がどのようなものであったかを資料に基づき調査しながら、戦前の精力善用体育の形の展開過程を明らかにしたい。
著者
上杉 和央
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.457-476, 2018 (Released:2018-12-31)
参考文献数
43

景観に刻まれた過去の記憶をめぐる問題は,歴史と地理の2つの視点を必要とする論点であり,沖縄戦の舞台となった沖縄は,そうした議論の事例地の1つとして相応しいものである。ただし,これまでの研究のほとんどが激戦地のなかでも糸満市域を事例としたものであった。本稿はこうした状況をふまえ,糸満市と同じく激戦地として知られる八重瀬町を事例として選択し,1972年以前に建立された沖縄戦戦没者慰霊碑の建立経緯や変化をたどり,慰霊空間の形成された過程を論じることで,沖縄戦の死と追悼の景観のより多様な状況を提示することを目的とする。八重瀬町域には富盛地区と具志頭地区に慰霊空間が形成されているが,そうした慰霊空間の地理的偏差の生じた背景には,慰霊碑の建立や慰霊空間の整備に関わった地区住民,琉球政府や沖縄遺族連合会,また県外の遺族といった多様な主体の動きが重要であったことを明らかにした。また慰霊空間として明確に選択される場所には歴史的・地理的な要因があったことを指摘した。
著者
吉田 綾子 山縣 弘樹 吉田 敏章 鶴巻 峰夫 森田 弘昭
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究論文集 (ISSN:13459597)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.433-441, 2006

本研究では, ディスポーザー設置地区のごみ集積場におけるごみ調査及びディスポーザー使用者の意識調査を実施し, ディスポーザーの導入によりごみ処理システムから下水道システムに移行する厨芥の量及び組成の解析を行った.得られた結果を以下に示す.<BR>1) ディスポーザーを導入した場合でもごみ集積場に厨芥が100g/人・日程度残存し, 厨芥移行率は100%とならない.<BR>2) ディスポーザー導入地区でも, 日常的にディスポーザーを使用しない世帯が1割, 厨芥を全量ディスポーザーで処理しない世帯が3割程度存在する.<BR>3) 厨芥を分別収集しても, 分別しきれない厨芥が発生する.<BR>4) ディスポーザー設置地区と未設置地区では, 厨芥類のみを分別収集したごみ組成に相違はなかった. しかし, 可燃ごみに混入した厨芥やディスポーザーに投入される厨芥の組成については, 今後の課題といえる.
著者
窪田 貴文 吉村 剛 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-136, no.11, pp.1-10, 2016-02-22

ログは実行エラー時のシステムの挙動を理解するのに有効な情報源である.これはログの出力にはデバッグに必要な情報が含まれていたり,また実行パスの推定にも有効だからである.しかしながら,近年のマルチスレッド環境に対応したシステムソフトウェアでは単純なログのみではシステムの挙動を理解するのは難しい.なぜなら,マルチスレッド環境では複数スレッドで共有されるデータによりデータフローがスレッドをまたぎ,スレッド間で依存関係が発生するからである.さらに,このような複雑なデータフローを追跡するログを手動で挿入するのは,ソフトウェアの専門的な知識と開発コストが必要な作業である.そこで,本研究ではスレッド間の依存関係を追跡するログの自動挿入を行なうツールを提案する.提案手法では,型情報を考慮したデータフロー解析を行なうことでスレッドをまたいで依存関係が発生するデータフローのペアを特定し,そのデータフローを追跡するログの自動挿入を行なう.本研究では提案手法を Linux I/O に適用し,実際に Btrfs におけるバグのデバッグにおいて有用性が示している.また,提案手法におけるオーバヘッドはデータベースアプリケーションにおいて約 2%であった.
著者
塩谷 透
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.127-147, 2004-12-31

メールヒェンの最後にはいわゆる「結末句」が置かれることが多い。この句の機能をグリムの『子どもと家庭のメールヒェン集』を例にして考察する。他の物語には見られない,この結末句の働きは,語りの終了を告げることで,物語の世界と現実とを明確に区分することにある。結末句の中には,物語られたことの信憑性を否定するようなものも存在するが,これも聞き手を,時間と場所を特定することのできない虚構の世界から現実の世界へと連れ戻すためのものである。またこれには「語り手」の存在も関わっている。元来,メールヒェンは語られるものであり,語り手を必要とする。その語り手に要求されるのは,非現実的な内容を素直に信じ,共感してみせることである。つまりメールヒェンを語る者は,そのような本来の自分ではない者を演じなければならない。物語の信憑性を疑う結末句は,その虚構の役割を演じていた者が,現実の人間へと戻るための仕組みでもある。
著者
Ralph L. Rose
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.33-40, 2017-12-30 (Released:2018-04-27)
参考文献数
41

Filled pauses (FPs) in English can be either monophonemic ‘uh’ [ə] or polyphonemic ‘um’ [əm]. These differ temporally: shorter ‘uh’ is associated with shorter overall delay (including silent pauses). Japanese FPs are more varied, including both monophonemic ([ε], [ŋ]) and polyphonemic ([ε:to], [ɑno]) forms. This study compares the FPs of native Japanese speakers in a crosslinguistic speech corpus. Results show speakers use FPs with a lower F1 than native English speakers and strongly prefer the monophonemic form. Duration patterns are similar, but low proficiency speakers delay longer with monophonemic FPs. Results suggest possibilities for nonnative speech detection in speech applications.
著者
畑中 章生 立石 優美子 本田 圭司 鎌田 知子 田崎 彰久 岸根 有美 竹田 貴策 川島 慶之
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.2, pp.111-115, 2014-02-20 (Released:2014-03-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1 3

従来, 野生株によるムンプスウイルス再感染はまれとされていたが, 近年, 主に小児科領域において, ムンプスウイルス再感染の報告が散見されるようになった. 再感染の診断基準の一つとして, 初診時のムンプスウイルス血清IgM抗体価<2.5, かつ同IgG>25.8が提唱されている. 2010年7月から2011年6月までの12カ月間に, 土浦協同病院耳鼻咽喉科を受診した大唾液腺腫脹症例のうち感染によるものと考えられた45例に対して, 初診時にムンプスウイルス血清抗体価を測定した. ムンプスウイルス初感染と考えられた症例は10例, 上記診断基準からムンプスウイルス再感染と考えられた症例は7例であった. 今回の検討から, ムンプスウイルス再感染はありふれた病態である可能性が示唆された.
著者
Takumi Honda Shohei Takino Takemasa Miyoshi
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.7-11, 2019 (Released:2019-01-19)
参考文献数
23
被引用文献数
7

Tropical cyclones (TCs) and associated heavy precipitation have large impacts in Japan. This study aims to find how data assimilation (DA) of every-10-minute all-sky Himawari-8 radiances could improve the quantitative precipitation forecast (QPF) for TC cases. As the first step, this study performs a single case study of Typhoon Malakas (2016) using a regional atmospheric model from the Scalable Computing for Advanced Library and Environment (SCALE) coupled with the local ensemble Kalman filter (LETKF). The results show that the all-sky Himawari-8 radiance DA at 6-km resolution improves the representation of Malakas and may provide more accurate deterministic and probabilistic precipitation forecasts if the horizontal localization scale is chosen appropriately.
著者
Shu Gao
出版者
稚内北星学園大学
雑誌
稚内北星学園大学紀要 (ISSN:2189244X)
巻号頁・発行日
no.17, pp.171-186, 2017-03-31

この研究は、「ICT 教育及び研究シーズを活用した観光施設の多言語化の検討(黒木・佐賀, 2016)と連携した研究として、稚内のインバウンド観光における"おもてなし"のあり方を検討する。この研究は中国語圏の観光客に対象とし(台湾、香港、中国本土、その他)、稚内への観光動機を明確にすることを目的として、アンケート調査を行う。また、筆者も共同研究者として参画した「インバウンドを意識した観光施設づくり(黒木ほか, 2015)」の補足充実のため、ノシャップ水族館ガイドブックの中国版(繁体字と簡体字)を作成する。アンケート調査にて、15 件の有効回答が得られた。その中、台湾は最も多く(46%)、香港は36%を占め、中国本土は18%であった。回答者の73%は20 代と40 代であり、稚内へ訪れる観光客はより若い年齢層であることが分かった。80%の回答者は稚内の自然風景を目的に訪れているため、以前の買い物とは異なる動機と分かった。交通手段については北海道までは飛行機が圧倒的に多く(90%)、特に新千歳空港を利用する回答が多かったが、帯広や旭川空港を利用する回答者も少なくはないため、今後、地方から稚内へのアクセス情報を整える必要性が重要であると考えられる。稚内での交通手段についてはレンタカーが最も多かった(60%)。その中、中国本土の免許証は日本では通用できないと思われていたが、過半数はレンタカーで移動するという回答から、今後における中国本土の観光客もレンタカーの利用需求が増えていくと考えられる。稚内の情報入手についてはインターネットから知ったという回答が最も多かったが(36%)、中国本土と台湾、香港とは異なると分かった。中国本土の観光客は、SNS やサイトの口コミなどといった旅行情報に関する専門性の低いメディアから稚内の情報を入手したという回答が多く、台湾や香港の観光客は旅行雑誌やガイドブックなどいった旅行専門雑誌などにより、またはHP(観光協会)というオフィシャルサイトから情報を入手する傾向が見られた。この結果から、地域外の観光客に対して妥当な専門メディアを用い、情報発信した方が効果的であると分かった。特に、中国本土にはSNS などやサイトの口コミによる宣伝、台湾や香港には旅行会社や旅行雑誌などによる宣伝を行うのが効果的と思われる。この研究を通じて、自然風景は稚内の最も人気の要因であり、それを踏まえ、今後は多様なツアーを開発し、地域にあった適切なメディアで宣伝を行うことにより、稚内のインバウンド観光の発展につながると考えられる。