著者
松阪 崇久
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究
巻号頁・発行日
no.20, pp.17-31, 2013-08-31

産まれたばかりの新生児は、睡眠中にときおり「自発的微笑」と呼ばれる笑顔に似た表情を見せる。ヒトの胎児や、チンパンジーの新生児にもこの表情が見られることがわかっている。本稿では、この自発的微笑にとくに注目しながら、新生児と乳児の笑いの発達と進化について論じた。前半で、ヒトとチンパンジーの自発的微笑と社会的微笑の発達過程についてまとめた。後半ではいくつかの末解明の問題に焦点を当てて考察し、今後の研究の課題と展望を示した。(1)自発的微笑は快の表出なのかどうか、(2)自発的微笑と社会的微笑は発達上どのような関係にあるのか、(3)自発的微笑はなぜ進化したのか(どのような機能を持つのか)という問題について考察した。さらに、チンパンジーとの比較を元に、見つめ合いのコミュニケーションの発達が、ヒトの笑いの表出と他者の笑いへの反応性に大きな変化をもたらした可能性があるということについて論じた。
著者
岩佐 壯四郎
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.47-59, 1996

いわゆる<雅号>は、志賀直哉・谷崎潤一郎など<本名>を署名する文学者の登場した一九一〇年代以降次第に姿を消していった。<雅号>は、いずれは近代における文学という制度の負の領域に追いやられるべき運命にあったといっていいかもしれない。だがそれを、近代文学史の一つのエピソードとして片付けてしまっていいのだろうか。それは逆に、近代文学という制度の性格を照らしだしていはしないだろうか。
著者
八田 真理子 太田 郁子 家坂 清子 蓮尾 豊 北村 邦夫
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.629-636, 2010-01-01
参考文献数
18
被引用文献数
1

低用量経口避妊薬(以下「OC」)がわが国で発売されて10年になるが,いまだその普及率は低率である。一方で,OC服用により性感染症(以下「STI」)の拡大をまねくのではないかと危惧する考え方もある。今回,「OC服用で若者のSTIを拡大させているか」を知ることを目的に臨床現場で調査を行った。全国の避妊教育ネットワークに所属する25の産婦人科施設で受診し,クラミジア抗原検査を受けた29歳以下の女性1,630人に対して,OC服用の有無と性行動について詳細に問診した。その結果,OC服用・非服用間で,初交年齢,パートナー数,コンドーム使用状況などに有意差は認めず,クラミジア抗原陽性率もOC服用者で13.8%,OC非服用者で13.3%と有意差はなく,OC服用者の性行動が活発であるとはいえないことがわかった。OC服用者は,二重防御法の実践や不顕性感染発見のための検査などで定期的に産婦人科を受診していることから,むしろSTI予防や自身の健康管理に対する意識が高いことが示唆された。
著者
宮島 幸子 伏見 強 Sachiko MIYAJIMA Tsuyoshi FUSHIMI 京都文教短期大学非常勤 京都文教短期大学 Kyoto Bunkyo Junior College Kyoto Bunkyo Junior College
出版者
京都文教短期大学
雑誌
京都文教短期大学研究紀要 = The Kenkyu kiyo (ISSN:03895467)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.123-130, 2015-03-13

日本人なら誰でも知っている文部省唱歌『ふるさと』は尋常小学校で児童に歌われ始めて今年で100年になる。1914年(大正3年)という年になぜ文部省唱歌として尋常小学唱歌集6年生用に掲載されたのか。社会状況が目まぐるしく変化する中で100年経てもなおも歌い続けられる文部省唱歌『ふるさと』について、時代と『ふるさと』の変遷を辿り、文部省唱歌『ふるさと』を歌う意味、役割を考察した。
著者
西田 智子 黒川 俊二 柴田 昇平 北原 徳久
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.59-66, 1999-04-30
被引用文献数
5

現在, 草地・飼料畑で大きな問題になっている外来雑草の侵入経路の一つとして, 雑草種子の混入した輸入濃厚飼料が家畜に採食され, 糞が堆厩肥として圃場に還元される過程で, 生存したままの種子が圃場に散布されることがあげられている。家畜の消化作用ではすべての種子を死滅させることは不可能なため, 堆肥製造過程で雑草種子を死滅させることが, 外来雑草を蔓延させないために必要である。堆厩肥中の雑草種子は, 堆肥の最高温度が約60℃以上になれば, 発芽力を失うことが明らかにされているが, 温度の持続時間と種子の死滅率の詳細は不明である。そこで, 本実験は, 55及び60℃において, 雑草種子がそれらの温度にさらされる時間と死滅率との関係について調査した。10種類の畑雑草種子(ワルナスビ, アメリカイヌホオズキ, イチビ, ヨウシュヤマゴボウ, ハリビユ, ホソアオゲイトウ, オオイヌタデ, オオクサキビ, イヌビエ及びメヒシバ)を, 15℃暗条件で24時間吸水させた。種子の吸水率は6〜60%の範囲であった(Table 1)。これらの種子について, 55℃皮び60℃の処理で, 死滅率が100%となる時間を調査した。イチビを除く9種類の雑草は, 55℃で72時間, 60℃で24時間処理すれば全ての種子が死滅した。イチビ(休眠率80%)については, 55℃では120時間, 60℃では30時間の加熱が必要であった(Table 2)。調査した10種類の雑草の加熱耐性を, 短時間の熱処理に対する耐性(SDHT)と, 長時間の熱処理に対する耐性(LDHT)とを組み合わせて分類した。SDHTは60℃3時間処理での生存率により, 50%を境に低及び高耐性の2群に分けた。LDHTは, 60℃処理において1%の有意水準で生存率0%と差が無くなるまでにかかった処理時間により, 低, 中, 高耐性の3群に分類した。その結果, SDHT, LDHTともに低いオオイヌタデ, メヒシバ及びイヌビエ(第1群), SDHTが低くLDHTが中位のハリビユ及びオオクサキビ(第2群), SDHTが高くLDHTが中位のワルナスビ, アメリカイヌホオズキ, ヨウシュヤマゴボウ及びホソアオゲイトウ(第3群), SDHTが低いがLDHTの高いイチビ(第4群)の4群に分かれた(Table 3)。第1, 2及び4群は, 短時間の熱処理で高い死滅率を示すが, 100%の種子が死ぬまでにかかる時間はそれぞれ異なるといえる。また, 第3群は, 短時間の熱処理では生存率が高いが, 100%の種子が死ぬまでにかかる時間はそれほど長くない群である。調査した10種類の雑草種子を死滅させるための時間はイチビ種子の死滅を目安として設定すればよいと考えられたので, イチビについて, プロビット法によりLD_<90>となる時間の95%信頼区間を計算した。その結果, 55℃では42〜58時間, 60℃では10〜17時間となった(Fig. 1)。本実験の結果と既往の堆厩肥の発酵温度に関する報告とからみて, 堆厩肥が順調に発酵した場合は, イチビを含むすべての種子が死滅する温度と時間を確保できるといえる。
著者
鶴田 幸恵
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.21-36,157, 2004

The past studies on passing practice have accounted for the interaction about ones appearance and recognition of it. But these studies started their argument from the point that one already has a "normal appearance," and did not account for how it is accomplished that one has a "normal appearance" in the viewers recognition. The aim of this article is to argue that such a way of accounting of past studies can not adequately account for passing practices of transgenders who intend to accomplish being a "normal natural female," using the transcript data from interviews of Male-to-Female transgenders, because accomplishing that appearance is the most important problem for them. For this, I focus on "viewing" as an action. First, I discuss the logic used in Goffmans Stigma and Garfinkels famous paper on "Agnes," who is transgender. Through this work, it is found that the person who is passing is categorized in two ways. One is "categorization at a glance" which is an immediate and spontaneous practice. The other is "categorization from inductive judgment," which is conscious judgment by clues in ones appearance. Second, it is found from data that the person who is passing refer to "categorization from inductive judgment" to accomplish being categorized as "normal" with "categorization at a glance." Third, it is only when the question for instance, "Is that person is male or female?" is relevant that "categorization from inductive judgment" usually arises. So, for transgenders, to be categorized with the way of "categorization from inductive judgment" is to fail passing. This means that accounting for achievement or failure in passing must distinguish two ways of categorization. Through that consideration, I conclude that being categorized as a "normal natural female" with the way of "categorization at a glance" is necessary for transgenders to pass as normal. That is, on the one hand, the first step to passing, and on the other hand, the endless practice for transgender people.
著者
鳩山 由紀夫
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.224-242, 1980-09

確率的に故障する機械の取替問題は従来盛んに研究されているが、この論文では、取替時に故障部品の下取りが行なわれ、又交換部品をいくつかの種類の中から選択出来る場合に如何に取替部品の選択を行なうべきかを考察する。具体的には次の問題を考える。あるシステムと、そのシステムに欠くことの出来ない一部品を取り上げる。システムはある有限時間丁動作することを要求される。部品の故障はシステムの故障を導くので、残り時間t(t > 0)で部品が故障した場合、直ちに新都晶と取替えなければならない。ここで部品にはタイプがn種類存在し、どのタイプの部品に取替えるかが問題となる。簡単化の為に、各タイプの部品の故障は指数分布に従うものとする。この仮定は実際の故障分布の第一近似と見傲されよう。取替費用としては、タイプiの部品をjの部品に取替えるときC(i、j)かかるとする。部品の故障時に新部品を購入して取替を行なうが、購入時に故障部品を下取りするケースはしばしば存在する。このような場合、取替費用は新部品の購入費のみでなく、故障部品にも依存する。この設定の下で、期待費用を最小とする取替方式を決定したい。実例としては、車のタイヤやバッテリー等を取替える際の製品の選択とか、ステレオコンポネントのプレーヤー等を交換する際の製品の選択問題などを頭に描くと良いと思われる。一般の取替費用の場合に、いくつか解の性質が得られるが、特に劣モジュラー関数で与えられるとき、以下の性質が導かれる。残りt時間でタイプi(j)の部品が故障したとき、タイプi*(j*)が最適な取替部品であるとすると、i < jならばi* < j*となる。これは最適政策を計算する際に利用される。なお、劣モジュラー関数の仮定は、下取り価格が2部品問の互換性などで表わされる場合にはかなり妥当と思われる。その他、販売戦略等に依り全てのタイプが下取り可能とは限らない場合についても同様な議論がなされる。下取り価格が故障部品のタイプのみによって決定される場合には、最適な取替部品のタイプは故障部品に依存しない。更に、最適取替費用は残り時間tに関して区分的に線形な凹関数となることが示され、実際、陽に最適取替政策及び費用が導かれる。最後に、考察すべき部品が唯一つとは限らないケースを扱う。それらが直列、並列、直並列等につながっている場合、多くは単一部品の問題に帰着されることを示す。
著者
中嶋 奈津子
出版者
佛教大学総合研究所
雑誌
佛教大学総合研究所共同研究成果報告論文集 (ISSN:21896607)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.35-46, 2018-03-25

本稿は南部藩領内に特有の権現信仰に基づいて行われる神楽「墓獅子」の実態と現状を明らかにするものである。そのため,「墓獅子」を現行している(或いは,以前行っていた)地域10か所の神楽の調査を実施した。南部藩領内では,獅子頭を神仏の化身として「権現様」と呼び,地域の守り神として信仰している。神社例大祭ではこの「権現様」を奉じて舞わせる。この祈祷の「権現舞」が一部の地域では死者の供養にかわる「墓獅子」として機能していたことがわかった。また,「墓獅子」は一定の形式があって,般若心経を唱え,加えて魔を払い清める「七つ踊り」を行うなどの特徴を確認した。1950年代まで盛んに行われていた「墓獅子」は時代の流れとともに,墓と供養の形態の変化や信仰心の薄れに伴って依頼も減り,わずかな依頼や沿岸地域での廻村巡業で維持できている状況であることが今回の調査で明らかになった。墓獅子権現信仰獅子頭の権現様死者供養墓獅子の唄
著者
佐喜本 愛
出版者
九州大学
雑誌
飛梅論集 : 九州大学大学院教育学コース院生論文集
巻号頁・発行日
vol.3, pp.51-66, 2003-03-28

This paper will highlight the view of "jinbutuyousei" in a politics organization -Simeikai that was established in 1884. A large number of studies about history of secondary education have been made on the background of establish of Jinjo-Chugakko and the Area's view of Jinnjo-Chugakko. what seems to be lacking , however, is the actual of education of daily living in school. A general view of education in Simeikai reveals a significant characteristics. The education in Simeikai is to train their mind to overcome every hardship to attain your purpose. Absorbing in order to train it was dormitory and field trip and. Oegijuku was established by Soho Tokutomi in 1884 in kumamoto has political science class. Oegijuku is particularly good at teaching it. In competention with Oegijuku member of Simeikai attache great importance to group action and discipline than intellectual education. What aim of education did Simeikai have? It offers the kcy to an understanding Tomohusa Sasa and Seiiti Tuda who was key person of Simeikai's. It is aim of education for Sasa to grow a person who work for nation whatever may happen. Tuda insisted that Japanese's student should have the power in the arena of international competition. Toshihiko Saito studied the problem of student management in late Meiji. But we are now able to see the problem of student management in earlier Meiji