著者
岡 直美
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2016-08-26

ヒトヘルペスウイルス(HHV-)6が疲労やストレス依存的に再活性化する際に発現する潜伏感染タンパク質Small protein encoded by the intermediate stage transcript of HHV-6 (SITH-1) が、うつ病の発症に関与するメカニズムを解明するために、SITH-1発現マウス(SITH-1マウス)を作製したところ、うつ病様行動およびストレス脆弱性を示した。SITH-1の発現は細胞内Ca2+濃度を上昇させるため、嗅球でアポトーシスが誘導され、海馬の神経新生が阻害され、HPA axisが異常亢進し、ストレス応答反応に異常が生じたと考えられる。
著者
小沼 通二
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.7_10-7_17, 2017-07-01 (Released:2017-11-03)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1
著者
堀向 健太
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.87-92, 2023-03-20 (Released:2023-03-20)
参考文献数
35

日本において1~6歳に即時型症状で発症することが多い魚卵アレルギーは,重要なアレルゲンである.イクラアレルギーが全体の約95%を占め,タラコアレルギー,シシャモの魚卵アレルギーの報告が少数あるにとどまる.魚卵は卵黄タンパクの前駆体であるビテロジェニンを構成するβ'-コンポーネントが主要アレルゲンと考えられている.イクラアレルギーは特異的IgE抗体価により食物経口負荷試験の陽性を予測可能と報告されている.一方で,タラコアレルギーの陽性予測には,イクラ特異的IgE抗体価とタラコ特異的IgE抗体価の比率が有用であるという報告がある.イクラ・タラコ以外の魚卵アレルギー以外の魚卵アレルギーに対する研究は極めて限られており,学校給食でしばしば提供されるシシャモの卵に関する検討も少ない.海外からは,最近,キャビアアレルギーの報告が散見されており,摂取状況による地域差があると考えられる.概して魚卵アレルギーの検討は不十分であり,今後さらなる研究の進展が期待される.
著者
宮﨑 圭佑 山田 純栄 川崎 聡大
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3+4, pp.87-92, 2023 (Released:2023-07-06)
参考文献数
20

【要旨】 文字や図形の認知に課題を抱える児童の視覚認知過程の弱さが報告されている。このような視覚認知過程の問題に対して、触覚を利用した学習支援が試みられており、学術的な根拠に基づいた効果の検証が求められている。本研究では、視覚性記憶検査であるRey-Osterrieth複雑図形検査 (Rey-Osterrieth Complex Figure Test:以下ROCFT)に着目し、独自に加工した立体図版を作成して触覚学習実験を行った。触覚学習がROCFTの成績向上にどのような影響を与えるかを調べることで、視覚記憶への寄与について検討した。対象者はVision-Haptic群(V-H群)とVision群(V群)の2群に分けられた計52名の健常成人である。1回目再生課題を実施した直後に、V-H群は立体図版を「見ながら触れる」再学習を、V群は通常図版による「見る」再学習を行った。この再学習から24時間後に2回目の再生課題を実施した。ROCFTの得点を従属変数、学習方法の違いによる群と学習の事前事後を独立変数とし、二元配置分散分析を行った。さらにROCF総得点に加えて、図形を3つの下位ユニット(外部、部分、内部)に分けて、ユニットごとの得点も同じ手法で分析した。結果、2群間の交互作用が有意となりV-H群はV群よりROCFT再生成績の向上が大きいことが分かった。V-H群においては、視覚と触覚の2つの手がかりを利用することで、よりROCFの外部形状を中心とした精緻かつ具体的なイメージの形成と表出が可能になったと推測する。触覚-視覚情報の認知的統合が視覚性記憶を促進させる可能性を確かめられた。
著者
繁田 信一
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.77-98, 1995-06-10 (Released:2017-07-18)

本稿の目的は、医療および呪術の平安貴族社会における治療手段としてのあり方、および、平安貴族の治療の場面における医療と呪術との関係を把握することにある。この目的のため、平安貴族の漢文日記(古記録)を主要史料として用いるが、考察にあたっては近年の医療人類学的研究の成果をも利用し、次に示す諸点について明らかにする。(1)平安貴族社会において、医療および呪術は一定の専門知識にもとづく技術として認識されていたのであり、また、(2)平安貴族は医療と呪術とをそれぞれ別個の技術体系に属するものとして認識していた。したがって、(3)平安貴族社会における治療手段は、医療と呪術とによる二元的なものだったのであるが、(4)医療と呪術とは相互に排除し合う関係にあったわけではなく、そのいずれもが各々の資格において有効な治療手段として認識されていた。また、(5)呪術は医療の有効性および安全性を保障・保証するものと見做されてもいたのであり(6)総合的に見るならば、平安貴族社会における医療と呪術との関係は相互補完的なものであった。
著者
俵 浩三
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-15, 1993-08-27 (Released:2011-07-19)
参考文献数
12
被引用文献数
1

植物への理解を深めることは造園学の重要な基礎となるが, 植物情報源として大きな役割をはたす植物図鑑の発達史は, 造園史, 植物学史, 理科教育史の分野を含めて十分に研究されていない。そこで,(1) 明治以降に出版された一般野生植物を対象とする植物図鑑の発達史を展望して時代区分を行い, その特徴を明らかにするとともに,(2) とくに明治40年ころに近代的, 啓蒙的植物図鑑を出現させた原因には, 当時の初等理科教育における博物重視と, 画一的ではない「身近な自然」を教科書とする教育の方針があったこと,(3) さらに「牧野植物図鑑」の成立には, 牧野を敬愛す人々によってつくられた英雄伝説的な “誤伝” があること, を明らかにした。
著者
平山 亮
出版者
日本女性学会
雑誌
女性学 (ISSN:1343697X)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.42-56, 2020-04-15 (Released:2021-10-22)
参考文献数
18

This article proposes that masculinity scholars direct more considerable attention to when and how diverse notions of what men are like (i.e., masculinities) are utilized to stabilize and reproduce unequal gender relations. In doing so, I argue that the conceptual framework of hegemonic masculinity helps us to analyze how multiple masculinities are discursively organized and mobilized to cultivate and reinforce people's tolerant attitudes toward structural male supremacy. Although hegemonic masculinity has been typically understood/misunderstood as the most powerful, celebrated form of masculinity in a societal setting, which Messerschmidt (2016) termed as dominant masculinity, what characterizes hegemonic masculinity is its function for unequal gender relations; that is, a particular notion of what men are like can be described as hegemonic masculinity when it helps to legitimize men's privilege. Referring to the prevailing view of men as inhibited from engaging in family caregiving by the long-hour work culture in Japan, I discuss how such a view can function as hegemonic masculinity that makes people hesitant to openly criticizing men's little involvement with personal care work. This article also discusses how the framework of hegemonic masculinity helps masculinity scholars to reflect on their work such that they will not become inadvertently implicated in legitimizing unequal gender relations.
著者
立岩 真也
出版者
日本法哲学会
雑誌
法哲学年報 (ISSN:03872890)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.43-55,204, 2005-09-30 (Released:2008-11-17)

まず「報告要旨」として送った文章を再掲する。拙著『自由の平等』(岩波書店、二〇〇四年)に考えたことを書いた。第一章でリバタリアニズムに対する反駁を行っている。また、契約論的な理論構成からもリバタリアニズムが正当とする規則は導出されると限らず、導出されても規則の正当化に至らないことも述べた。また第二章では嫉妬や怨恨を持ち出して社会的分配を非難する論に対する反論を行い、そして第三章で私たちがどのような私たちであれば、分配はより積極的に支持されることになるのかを検討した。(第四章から第六章は社会的分配に肯定的なりベラリズムの議論の吟味なので、今回の議論には直接には関わらない。)この本は基本的には財の所有・分配について論じた本なのだが(それ以外のことを論じた本ではないのだが)、その範囲内については、基本的なところでは間違っていないことが述べられていると考えている。だから報告もその線に沿ったものになる。(関連情報はホームページhttp://www.arsvi.comをご覧いだだきたい。)「Aが作ったものをAが所持し処分することは認められるが、それをBがとることは認められないとされる。/しかしこれを自由の立場から正当化することはできない。『私が私のためのものをとる』という状態と自由とを等値する人、自由とつなげる人もいるが、それはただ単に誤解している。この状態で自由であるのはAであり、Bは自由ではない。Bはしたいことができない、自由を妨げられていると言いうる。この状態を是認する立場を「私有派」と呼ぶならそれは自由の立場ではない。」(pp. 40-41)つまり、所有・分配については、私の立場はリバタリアンの立場とはまったく異なっており、その立場は間違っていると考えている。ゆえに、以下に引用するその本の第一章の冒頭近くは、私としては比較的好意的な記述と言えるのかもしれない。「これは別に論ずることにするが、リバタリアンの主張にはおもしろい部分もある。おもしろいことも言う人たちがなぜこんなことを言うのか、不思議に思える。だから考えてみようとも思う。/まず、国家が行うことの性質を強制と捉えること自体はもちろん間違いではない。むしろ本質を捉えている。国家が他と異なるのは、それが強制力を持つことであり、リバタリアンはこのことにはっきりと焦点を当てている。だからその主張は検討するに値する。」(pp. 37-38)強制されることがさしあたり歓迎されざることであることを認めよう。また強制を介在させることに伴う厄介事が様々あることを認めよう-それをどのように軽減できるかを考えることは興味深く重要な主題である。しかし所有権を設定し保護する規則を設定するのであれば、それは強制であり、様々ありうる規則の違いは、強制の有無という違いではなく、どのような強制を行なうかの違いである。むろん、これと別に、ここに一切の規則を設定しないという選択肢 リバタリアンの中にもそれを支持する人は多くないように思うが-もある。しかしやはりこの場合でも、多くの人々は生きるに除去あるいは軽減することのできる制約を課せられることになる。それでよいかと考えると、やはり望ましくないと答えることになる。そして以下は、学会大会で私が述べたと記憶していることである。そこでなされたように思う議論の一部にもふれている。またすこし論点を補った部分もある。リバタリアンの言説は湿気ってなくて、それは私が好きなところだ。また、森村進の論などに存する一種の脱力感、妙な力が入っていないところも好きだ。このようにまず述べて、あるいは後で補足して、私は以下のようなことを述べたはずである。
著者
宮⽥ ⼀弘 岩本 紘樹 ⼩林 壮太
出版者
一般社団法人 日本運動器理学療法学会
雑誌
運動器理学療法学 (ISSN:24368075)
巻号頁・発行日
pp.202228, (Released:2023-06-12)
参考文献数
24

【⽬的】⼤腿⾻近位部⾻折患者における歩⾏⾃⽴の予測モデルの外的検証を⾏い,臨床活⽤可能か検討すること。【⽅法】対象は回復期リハビリテーション病棟へ⼊院した⾼齢の⼤腿⾻近位部⾻折患者163名とした。 ⼊院時の認知機能とバランス能⼒から退院時の歩⾏⾃⽴を予測するモデルにおいて検証コホートで識別能と較正を検討した。【結果】検証コホートは,開発コホートと⽐較して識別能として曲線下⾯積は同程度,感度は⾼く,特異度は低かった。較正にはCalibration plotを⽤い,歩⾏⾃⽴する確率が⾼い患者については予測確率と観測確率は⼀致していたが,歩⾏⾃⽴する確率が中程度〜低い患者については予測確率より観測確率の⾼い過⼩予測であった。【結論】⼤腿⾻近位部⾻折患者における歩⾏⾃⽴の予測モデルは,較正に⼀部問題があったものの識別能は良好であり,回復期リハビリテーション病棟へ⼊院する⼤腿⾻近位部⾻折患者に対して⼀般化できる可能性が⽰唆された。
著者
羽田野 直道
出版者
物性若手夏の学校準備局
雑誌
物性若手夏の学校テキスト 第67回物性若手夏の学校 (ISSN:27582159)
巻号頁・発行日
pp.321-331, 2023 (Released:2023-02-07)

ハミルトニアンを非エルミートにした量子系が盛んに議論されるようになりました。本ゼミでは、非エルミート性が(1)開放量子系の有効ハミルトニアンに現れる場合、(2)系全体に現れる場合、(3)他の模型を変換して現れる場合のそれぞれについて入門的な内容を概観します。(1)はエルミート系の一部分が有効的に非エルミートになる場合です。例として、量子細線が接続された量子ドットが挙げられます。量子細線との結合のために量子ドットのエネルギーが保存しないのが非エルミート性の原因です。実験では系に測定器を結合させるため、実験系は必ず非エルミート系です。(2)では実エネルギー固有値について考えます。系全体が非エルミートでも、PT 対称性のような物理的対称性のみを課すと実固有値が得られる場合があることを示します。(3)では (d + 1) 次元の古典統計力学系から d 次元の量子力学系への変換を例に、模型の変換により非エルミートハミルトニアンが得られることをみます。 多くの理論はエルミート系を対象としています。対応する実験系を実現するためには、(1)の理由で測定が系をできるだけ乱さないように特別な注意が必要です。一方、非エルミート量子力学では最初から測定系が注目系と強く結合している場合を扱うため、将来的に実験系の実現にも変革を起こすと期待しています。
著者
横尾 実
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.17-34, 2000-03-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
45

ここで言う都市の地域構造の移行とは, 江戸時代の城下町構造を旧構造, 現代の都市構造を新構造と区別した時, 時間的経過とともに旧構造が崩壊し, 新構造が成立していく過程を指す。その移行形態を実証するため, 江戸時代から第2次世界大戦期における東北地方の城下町起源11都市を事例にあげた。都市地域の形成過程を個別に復原した著者による先行研究に基づき, 帰納的立場から, 江戸時代, 明治前期, および明治後半から戦前期までの3時期における都市構造をモデル化した。都市地域構造の移行形態は明治後半以降,都市間で異なっている。それを旧構造残存型, 旧構造修正型, 新旧構造競合型, 新旧構造併存型, そして新構造誘導型の5つに整理した。これら5つの型相互間の関係から比較的単純な構造移行の順序系列が得られ, それは近代産業発展による影響を強く受けなかった東北地方の都市の性格を反映する。

26 0 0 0 OA 人形写真論

著者
菅 実花
出版者
東京藝術大学
巻号頁・発行日
2021-03-25

令和2年度
著者
岡本 五十雄
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.904-912, 2020-10-16 (Released:2020-12-05)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

「現在の障害のある状態,これが自分なのだ」と認められる(受容する)ようになるまでに,一定の経過をたどるが,すべての患者が同じ経過をたどるわけではない.また,聞くまでわからないことが多い.中にはまったく,苦悩を経験しない患者もいる.経済的に安定した豊かな人生は,障害受容の大きな要因であるが,苦悩を抱えている患者も多い.患者の人生との対話という視点はきわめて重要である.回復期リハビリテーション病棟の多くの患者は入院中に受容し,心理症状も抑うつ傾向も改善する.患者の話をよく聞き,ともに歩むチームの真摯な努力こそが患者が自らを受け入れ(受容し),障害とともに歩み,社会に適応していくうえでの大きな力となる.
著者
木元 侑菜 勝原 涼帆 馬場 友希 亘 悠哉
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.23-27, 2021 (Released:2021-03-10)
参考文献数
16

鹿児島県奄美群島の喜界島において,2頭のコウモリ類の死体が発見された.2019年8月31日に初めて発見された死体は雄で,前腕長34.9 mm,陰茎長11.5 mmであった.本死体はオオジョロウグモNephila pilipesの網に捕獲されており,内臓の大部分がクモに摂食されていた.2019年9月15日に発見された死体も雄であり,前腕長32.2 mm,陰茎長11.2 mmであった.この死体はゴルフ場の事務所内で発見された.外部形態や頭骨を用いた種同定の結果,2例ともこれまで喜界島に生息記録のなかったアブラコウモリPipistrellus abramusと判定された.またバットディテクターによる音声調査により,アブラコウモリと思われる音声が島全域から確認された.