著者
瀧井 一博 大久保 健晴 勝部 眞人 植村 和秀 永井 史男 谷川 穣 前田 勉 國分 典子 五百籏頭 薫 小川原 正道 松田 宏一郎 島田 幸典 佐野 真由子 塩出 浩之 福岡 万里子 中村 尚史 牛村 圭 今野 元 山田 央子 清水 唯一朗 岩谷 十郎 奈良岡 聰智 Breen John
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

明治維新から150年が経過した。日本は今、明治日本という西洋近代に対する稀有なキャッチアップを遂げた自らの歴史的経験を振り返り、その経験を学術的に分析して、その功罪を人類の歴史的遺産として今後似たような歩みをするかもしれない世界中の他の国々や地域に対して提供する使命を有しているといえる。本研究課題においては、明治日本の世界史的意義を学際的かつ内在的に把握するための研究ネットワークを構築することが掲げられた。そのために、海外の研究者とも積極的に連携して、明治史のグローバルな関心と日本の学界を接合することを促進した。
著者
山根 明子
出版者
岡山商科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究では、株式のキャッシュフローのタイミングを表す指標である株式デュレーションを用いることによって、日本の株式市場におけるバリュー・プレミアムの説明を試みた。分析の結果、バリュー株、グロース株の違いが株式デュレーションの長さの違いと対応していること、株式デュレーションに関するリスクファクターがHMLファクターと似た性質を持つこと、1996年以降の標本ではどちらのファクターも説明力を失うことが明らかにされた。
著者
石毛 勇介 吉岡 伸輔
出版者
国際武道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

アルペンスキーにおける膝前十字靱帯損傷発生のメカニズムについて、バイオメカニクス的手法を用いて力学的に考察をした。その結果、危険であると想定した2つの状況(後傾姿勢、膝関節外反・外旋位からのスキー板の切れ上がりによる膝関節外反・内旋位への急激な移行)において、それぞれ大きな張力が膝前十字靭帯に作用していることが明らかとなった。予防策としては、後傾時に上半身を出来る限り前に倒すこと、およびターンの外足に荷重をすることを極力避け、ターンの内足に荷重をして外足の荷重を内足に逃すことが重要である。
著者
鈴木 啓司
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故後の小児甲状腺超音波検査で、極めて高い頻度で甲状腺がんが報告されている。これらの甲状腺がんの放射線起因を判断する一助として、細胞に残る放射線痕跡の同定が極めて重要である。本研究では、甲状腺がんのdriver変異であるキナーゼ遺伝子融合変異が、放射線分子痕跡であるかどうかを検証するための、定量的遺伝子変異検出系の樹立を試みた。その結果、differential RT-PCRの実験条件を決定し、甲状腺乳頭がん細胞株に存在するRET/PTC1を高感度に検出し、本遺伝子変異検出系が、放射線照射による融合型遺伝子変異生成評価に有用である事を示した。
著者
矢野 環
出版者
同志社大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

連歌を中心として資料収集並びに研究を行った。進化学会においては、日本における写本文献学における成果という位置づけで、宗祇連歌句集「老葉」の写本間の関係を発表した。特に有注本(宗祇、または宗長などによる注記が記される写本)について、その注文の類似性を、単なる一致不一致による分類ではなく、文章としての類似度を考察することにより、精密な関係を見出すことができ、多変量解析による処理、また系統学的処理もより明確になることを発表した。系統樹作成手法として通常は単語や文字の異文比較による最節約的変化を問題とするが、このような注釈が付されているものは、宗祇の注と宗長の注を合併する場合もあり、それも全体を転写するのではなく、一部分のみ利用する複雑な合成が行われる。そのため、個々の差異をとりまとめたより大きな特徴を、基準を定めて数値評価すれば、大局的な考察に適していることがわかる。特に、通常宗長注本の一つとされている系統が、実は宗祇の注を大きく取り入れており、別の一群として取り扱うべきことが明かとなった。この方法は連歌注釈書と限らず、他の文献の系統学的考察にももちろん適用できるものであり、今後様々な発展が見込まれて重要である。
著者
神長 輝一
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、電離放射線が誘発するDNA損傷およびミトコンドリア損傷に起因する、ATP加水分解の亢進と、ミトコンドリア脱共役による温度およびpHの経時変化、そしてその生物学的意義の解明を目指すものである。本研究の特色は、細胞内の温度、pHという物理・化学的要因に着目し、その計測のため量子センサーの一種である蛍光ナノダイヤモンドを用いることである。本研究で得られる知見は、放射線を含む外部ストレスに対する温度、pH変化を介した細胞恒常性維持機構の解明に貢献できると期待される。
著者
岡川 梓 堀江 哲也 日引 聡
出版者
国立研究開発法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

農業の生産性・効率性上昇のためには、農業経営の大規模化を図ることと、高付加価値化が重要であることが従来から指摘され続けてきたが、いまだ実現できていない。本研究では、農家の効率性評価を行い、地域、出荷先、環境保全への取り組みと非効率性との間に統計的な関係がみられることを示した。とくに出荷先の選択は農家の経営技術が反映されていると考えられ、農協頼みでない農業経営が効率性の高さと相関することがわかった。また、作物選択と環境保全への取り組みについても統計的な関係が認められた。
著者
川上 純一
出版者
富山医科薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

【目的】緊急安全性情報や厚労省からの通達によって、インフルエンザ脳炎・脳症の発症とその重症化への一部の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の関与が指摘されている。本症の特徴は、脳内でウイルスが検出されないこと、血清・脳脊髄液中において高濃度の炎症性サイトカインが検出されること、脳血管の損傷が認められることであり、脳血管透過性の上昇や血液脳関門(BBB)の破綻と密接な関わりがあると考えられる。本研究では、in vitroのBBBモデルのtight性に対する炎症性サイトカインやprostaglandin E_2 (PGE_2)の作用とそれに及ぼすNSAIDsの影響について検討した。【方法】ウシ脳毛細血管内皮細胞とラットアストロサイトをTranswell^<TM>に共培養させたBBBモデルを作成した。IL-6を単独またはTNFα・IL-1βと併用添加し、経時的にTranscellular endothelial electric resistance (TEER)値を測定した。PGE_2を添加し、経時的にTEER値を測定した。ジクロフェナクナトリウム(DCF)またはSC-560(COX-1選択的阻害剤)の存在・非存在下においてTNFαまたはPGE_2の添加がTEER値に与える影響を検討した。【結果・考察】TEER値はIL-6により濃度依存的に低下し、TNFα・IL-1βの併用によりさらに低下した。PGE_2の添加によりTEER値は低下し、DCFの存在下ではその低下は増強された。しかし、SC-560の存在下ではその増強は観測されなかった。以上より、炎症性サイトカインとPGE_2はBBB透過性を上昇させる作用を有していること、また既にPGE_2が産生している炎症状態おいて後からDCFが投与された場合にはPGE_2のBBB透過性の上昇作用が増強される可能性があることが示唆された。
著者
吉永 龍起
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

イカナゴ属魚類は,沿岸生態系の食物連鎖を支え,水産資源としても重要な魚類である.一方,日本各地で資源が激減しており,禁漁措置がとられているにも関わらず回復の兆しが見られないことが深刻な問題となっている.そこで,イカナゴ属の特徴的な行動である潜砂に着目し,本属魚類の再生産を阻む要因を探ることを目的とした.まず(1)北海道南部から瀬戸内海までを網羅した複数の地点に分布するイカナゴ属を用いた飼育実験を行い,潜砂行動の制御機構を明らかにする.続いて,(2)夏季の数カ月間にわたって砂に潜る夏眠について,潜砂により獲得される高水温耐性の分子機構を解明する.
著者
西村 善博 山本 正嗣 小林 和幸 永野 達也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

粒径が0.1&micro;m以下のナノ粒子(PM0.1)は肺胞まで到達し、その影響は全身へと波及することから、健康への影響が懸念されている。しかし、PM0.1が喘息の増悪や難治化に及ぼす影響は分かっておらず、本研究ではそれを明らかにする。まず、粒子状物質の分級サンプリングが可能なナノサンプラーⅡ(Kanomax)を用い、2019年2月7日から2月12日の5日間、東京都新宿区において計640.5&micro;gのPM0.1を回収した。次に、マウス喘息モデルの作成およびPM0.1の経鼻投与実験を行った。すなわち、OVA(卵白アルブミン)10&micro;g/匹と水酸化アルミニウム1mg/匹をDay1とDay8に腹腔注射してOVAに感作させたマウスに、PM0.1 10&micro;g/匹とOVA 200&micro;g/匹をDay14,15,16に経鼻投与し、Day17に気管支肺胞洗浄液を採取した(PM0.1群)。OVA群、PBS群では、Day14,15,16にOVAのみ、ないしPBSのみを投与した。気道炎症の評価として気管支肺胞洗浄液の総細胞数、好酸球数の解析をしたところ、PM0.1群およびOVA群ではPBS群に比して有意な上昇を認めたが、PM0.1群とOVA群の間に差を認めなかった。また、上記のPM0.1群とOVA群に対して、Day14, 15, 16の経鼻投与1時間前にステロイド(デキサメタゾン20&micro;g/匹)を腹腔注射する治療実験も行った。ステロイド投与により、PM0.1群、OVA群ともに総細胞数、好酸球数の減少を認めたが、ステロイドへの反応性は2群間で有意な差を認めなかった。上記の結果、PM0.1と喘息の増悪や難治化には関係性がみられない可能性があるが、粒子径の違いにより気道炎症の程度に差が生じる可能性があり、引き続きPM2.5やPM10といった粒径のより大きな物質との比較検討を行う予定である。
著者
篠田 浩一 井上 中順 岩野 公司 宇都 有昭
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

音声に関する音声認識、音声合成、話者認識などの様々なタスクを担当するエージェントが互いに競争・協調・調整しながら個々のタスクを学習する、マルチエージェントによる深層学習基盤を構築する。個々のタスクに関わる音声因子の間の含有・排他・共有などの関係を用いて音声データを因子分解することにより、個々のタスクの性能を高める。マルチタスク学習に比べ、少量・非均一のデータでより高い性能を得ることを目標とする。
著者
島村 忠勝 胡 志青 大久保 幸枝 趙 維華 柳川 容子 山口 晃史
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

カテキンの抗微生物活性のメカニズムおよびカテキンの抗微生物薬との併用効果について研究を行った。1.エピガロカテキンガレート(EGCg)は細菌細胞膜や細胞壁傷害作用および細胞壁合成阻害作用を有し、β-ラクタム剤と併用すると、MRSAに対するβ-ラクタム剤の抗菌活性を復活させ、強い相乗効果が発現した。タンパク合成阻害剤、核酸合成阻害剤との併用では相乗効果は見られず、ペプチド系抗生物質では拮抗作用が見られた。この拮抗作用はEGCgとペプチドの結合によると考えられた。また、EGCgはβ-ラクタマーゼ活性を直接阻害することができ、β-ラクタマーゼ産生黄色ブドウ球菌およびMRSAに対して、EGCgとβ-ラクタム剤の併用は相乗効果を発揮した。β-ラクタマーゼが分泌されないグラム陰性桿菌に対して、効果は弱かった。2.ヘリコバクター・ピロリに対しては、EGCg単独で殺菌作用を示した。クラリスロマイシン高度耐性株に対してEGCgとクラリスロマイシンまたはプロトンポンプ阻害剤を併用すると相加効果が見られた。3.細胞内寄生菌サルモネラに関しては、EGCgはサルモネラ食食マウスマクロファージの細胞内殺菌能を亢進した。EGCg投与マウスのマクロファージはサルモネラ貧食能と細胞内殺菌能がともに増強した。4.HIVに関しては、HIVの細胞への吸着後から宿主細胞遺伝子への挿入までの過程においてEGCgの阻害作用が見られ、逆転写酵素やプロテアーゼの阻害が示唆された。また、EGCgは持続感染細胞からのHIV粒子の産生を抑制した。この抑制効果はリボソームに包埋したEGCgやLPSを併用すると増強した。しかし、このEGCgの効果は単球細胞系で特異的におこり、リンパ球では見られなかった。また、EGCgとAZTを併用すると弱いながら相乗効果が見られた。
著者
小野 勇一 伊澤 雅子 岩本 俊孝 土肥 昭夫 NEWSOME Alan KIKKAWA Jiro
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

代表者らのグル-プは,森林に起源を持つといわれている食肉目の社会進化を明らかにするために、これまでネコ科、特に小型種について研究を進めてきた。特に小型ネコ科の社会形態とその維持機構を、様々な環境で野生化したイエネコの研究によって明らかにしてきた。すなわち、小型ネコ科の社会の適応性は生息環境の資源量と強い関連性を持つことが示唆された。この適応性についての試論は国内では野生種の小型ネコ、イリオモテヤマネコとツシマヤマネコの調査によって、すでに検討を始めている。ネコ科の社会進化を論ずる上で、イエネコの人間社会と完全に隔離された自然状態での社会形態と、その起源種である野生種の小型ネコの社会形態と比較することは重要なポイントとなる。しかしながら、わが国において野生化したイエネコの生息域とその中の資源量は、ほとんどの地域で人間生活との関連が深く、完全に自然状態で野生化したイエネコの生息域はない。本研究では、オ-ストラリア大陸内部に人間社会の影響がほとんどない地域で野生化したイエネコを対象にして、その社会生態と環境資源利用の調査を実施した。オ-ストラリアには西洋人の入植以来200年間にイエネコが野生化し、現在では大陸のほとんどの地域に分布している。人間生活の影響をまったく受けない森林地帯・半乾燥地帯・砂漠などに生息している野生化したイエネコは、その始原種であるヤマネコと同様に、ハンティング(狩り)によって生活をしている。一方、この野生化したイエネコは、オ-ストラリア固有の貴重な動物相に重要な影響を及ぼしている。これらの固有種の保護のために、野生化したイエネコの生態学的調査も本研究の重要な課題のひとつである。調査は、ニュ-サウスウェルズ州のヤソン自然保護区で行った。この保護区内に調査地を設け、1988年と1989年の2年間に約12ヶ月間滞在して資料を収集した。調査地内のネコの大部分を補獲し、発信機あるいは耳環を装着して個体識別し、テレメトリ-法と直接観察によって行動が追跡された。この地域の野生化したイエネコは、年中ほとんどの餌を野生化したアナウサギに依存していることが明らかになった。このことから、2年目にはアナウサギの生態学的調査も行った。調査の結果は、完全な自然条件のもとで野生化したイエネコの社会形態の基本型は、小型ネコの野生種とほとんど変わらないこと、また生息地の資源量がその基本型の変異に強い影響を持つことが明らかとなり、研究グル-プの試論が証明される大きな成果が得られた。2年間に渡る継続した資料が得られたことから、調査地内のネコの定住性と分散過程の資料が得られ、哺乳類に頻繁に見られる「雄に偏よった分散」を実証でき、またその分散の要因が、定住雄の繁殖活動によることが観察によって明らかにされた。さらに分散が確められた個体の分散過程の資料も得られた。これらの結果は、ネコ科の社会形態の維持機構解明に重要な手がかりを与えるものである。次にこの地域の野生化したイエネコは年間の餌の大部分をアナウサギに依存していることから、単純な食う=食われる関係のもとに成り立っていた。このことからネコのホ-ムレンジの大きさは、餌資源の季節的な変化に対応して決定されること、またネコの繁殖も餌の利用しやすい時期と同調していることを用いて、食う=食われる関係のシュミレ-ションモデルが導かれた。また、保護区の鳥類相の調査も平行して行い、ネコによる被食の程度は、主な餌であるアナウサギの個体数が最も少なくなる厳冬季にはかなりの程度補食されていることが明かとなった。このことから、小型哺乳類の生息が少ない地域や季節には、野生化したネコのオ-ストラリア固有動相への影響は大きいことが示唆された。本研究で得られた研究結果は各分担者ごとにサブテ-マごとに論文として公表され、また全体的には報告書の形でまとめられた。この研究成果は、特にオ-ストラリアでこれまで大きな問題となっていた野生化したイエネコについて多くの新しい知見を与えるもので野生動物保護管理のうえで貢献するものと期待される。
著者
石橋 大輔
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、宿主の自然免疫機構に着目し、プリオン感染との関係について検討した。結果として転写因子IRF3がプリオン感染に重要な役割を果たしていることを明らかにした。本研究により、自然免疫機構をターゲットにしたプリオン病の予防・治療薬の開発が進むと考えられる。