著者
都木 恭一郎
出版者
東京農工大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究では光の圧力を用いるプロペラントレスのエネルギー直接変換型宇宙推進の研究を行っている。初歩的ではあるが,電源からエネルギーを準黒体輻射源に供給し、光束の形で運動量を放出させ、その推力を計測することから開始,準黒体輻射源としてタングステンフィラメントを用いた。エンジン内部のノズルで光を反射し平行光に近づけるいわゆる放物面ミラーを採用,その焦点位置にタングステンフィラメントを固定する。フィラメントは最高2,500Kまでとし,蒸発量を抑制した。推力計測は申請者等が独自に開発した微小推力測定用の「ねじり式推力スタンド」で行った。本実験では、ワイヤーでバランスしてアームの一方に金属箔を光圧力を受ける形で吊るし、ワイヤーのねじり復元力と釣り合う際のねじり回転変位をレーザー変位計によって計測できるように構成した。推力のキャリブレーションはこれも申請者等が独自に開発した帯電による金属箔の反発力を利用した方法で既知の微弱静電気の力を発生して行った。その結果、「ねじり式推力スタンド」は十分な分解能である0.1μNの測定精度を持つことが分かったが、タングステンフィラメントから発生する輻射熱の影響があってゼロ点ドリフトが問題となった。今年度は新たにシャッター開閉機購を有した計測系(熱の影響が出る前に短時間で推力測定を完了する)を構築することで問題の改善を図り,その結果得られた推力は300Wで0.2μN,パワー変換効率としては20%程度であることが判明した。一方、全く別の光源として、タングステンフィラメントの替わりに、最大出力100Wで波長0.9μmの半導体CWレーザーを製作した。その結果,半導体レーザーにて出力80Wまでを達成,今後はこれを用いてシャッター機構を有する改良型「ねじり式推力スタンド」にて推力を評価することになった。
著者
加藤 征史郎 土井 守 楠 比呂志
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

世界自然保護連合が危急種に指定し、ワシントン条約では付属書Iに記載されるチーター(Acinonyx jubatus)は、ネコ科の野生動物の中では飼育下での自然繁殖が難しいと言われている。本研究の目的は、家畜などで確立された種々の研究手技を用いてチーターの飼育下個体の繁殖生理を明らかにするとともに、その人工繁殖技術を開発することにある。姫路セントラルパーク、姫路市立動物園、群馬サファリバーク、アドベンチャーワールドおよび浜松市動物園などの協力のもと、雄19頭、雌19頭,合計38頭のチーターを材料に用いて、当該研究期間に得られた主な研究成果は以下の通りである。1. チーターの精液性状は劣悪で、特に形態異常精子率が高いことが判明した。2. 精子の先体染色法にはナフトールイエローS・エリスロシンB染色が適当であった。3. 精子の保存用希釈液には、TEST-yolk液が米国で使用されているラクトース液(PDV)よりも好適であった。4. 雌の血中プロジェステロンは、9〜12週間隔で周期的に変動することを明らかにした。5. 妊娠判定に、腟スメア検査が有用である可能性を示唆した。6. 卵胞発育と排卵の誘起に、PMSGとhCGの投与が有効であることを、腹腔鏡下での観察により明らかにした。7. 子宮角内への精子注入カテーテルの非外科的経腟挿入を試みたが、子宮頸管より奥への挿入は物理的に困難であった。8. 卵核胞期の未熟卵母細胞は、低率ながら第一成熟分裂終期まで体外成熟できる可能性が示唆された。
著者
岩崎 泰正
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

T3がエネルギー代謝全般を促進する分子機序解明のため,T3応答遺伝子の網羅的解析を行った。その結果解糖系/PPP(GK,PFK2,G6PD),ミドコンドリア(POLG1,NRF2,Tfam,CYC1,UCPs,ANTs),FFA合成(CS,ACLY,ACC,FAS,SCD),TG代謝(ME,THRP,GPD1,GPAT3,HSL)を同定した.特に新規標的遺伝子GPAT3を詳細に解析し,プロモーター上のTRE(DR4,-447/-432bp)を介したT3の直接効果を変異解析およびEMSAで確認した.T3は糖脂質ミトコンドリア代謝関連遺伝子を幅広く誘導しエネルギー代謝を促進することを明らかにした.
著者
庭野 晃子
出版者
白梅学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、保育者の離職を防止するための方策を提案することを目的に以下の調査を行った。①東海地区の認可保育園に勤務する新任保育者(2年未満)157名にアンケート調査を行い、新任保育者の離職意向に影響する要因を明らかにした。②日本の保育施設に勤務する保育従事者(新任からベテランまで)574名にWEBアンケート調査を行い、(1)保育従事者の離職意向を規定する要因、(2)保育園の組織風土と保育従事者の離職意向の関係、(3)保育園の組織風土と保育従事者の組織コミットメントの関係について、それぞれ明らかにした。①②の調査結果は、学術論文および学会・研究会で公表する予定(公表済を含む)である。
著者
木島 孝之
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

同じく旧族大名の出自を持ちながら、豊臣政権下の九州経営と朝鮮出兵という事業の中で政治的環境を大きく異にした大友氏と小早川氏。この大友氏の居城高崎山城と小早川氏の居城立花山城・名島城の縄張りの調査を行った。そして、これらの縄張りの構造の分析をとおして、一、九州における織豊系縄張りの受容の形態とその過程、二、豊臣大名としての両者の違いを解明した。これによって、城郭の縄張りという「物証」史料の面から、豊臣政権による九州経営とそれに続く朝鮮出兵の内実の一端を浮き彫りにした。
著者
倉員 正江
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成30年度は大河内秀元著『朝鮮物語』の写本・版本の諸本調査を基に、写本成立の背景と流布、版本成立前後の状況と流布を考察した。『朝鮮物語』は秀元が慶長の役(慶長二年〈一五九七〉~三年)に従軍した際の朝鮮における実体験と日記を基に、寛文期(一六六一~)になってから成稿した書である。従来も「続群書類従」「通俗日本全史」の二種類の活字翻刻があり、後年の回想による誇張や文飾も皆無ではないが、内容のリアリティについては相応の評価を得ている。今回の調査で、東京大学史料編纂所蔵押小路家蔵写本が古態を示す点、写本に嘉永二年版本(「通俗日本全史」底本)の系統と「続群書類従」の系統の二種があり、後者巻末に本文の省略がある点、従来ほぼ未紹介の宮内庁書陵部蔵本「武辺叢書」系統の写本は、内容の大概は版本型と一致しているが宛漢字・表記にやや特殊な語彙や傍訓が目立つ点、版本には嘉永二年の刊記を持つ初版本(大本)と再版本(半紙本)があり、ともに伝本は多いが後者は明治期の二代目和泉屋善兵衛の刊行とみなされる点、等の知見が新たに得られた。また版本の序を執筆した儒者藤森弘庵が起用された事情、版元となった江戸の書肆和泉屋善兵衛の初代・二代にわたる動向等、幕末から明治にかけての出版界の状況について考察した。版本の蔵版者となった糸魚川藩家老の佐治信については不明な点も多いが、和泉屋と縁戚関係にある可能性から積極的に出版に関わったとみられる点、早稲田大学図書館蔵『朝鮮物語』は依田学海旧蔵本で岩本贅庵の書入れがあり、知識人の間に外圧による海防意識が高まり、こうした時代風潮が『朝鮮物語』の好評につながった点も浮かび上がった。
著者
本屋 敏郎 河内 明夫 園田 純一郎 鳴海 恵子 冨重 恵利紗
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、それまでに当研究班の開発した2次元コードお薬手帳鑑査システムを保険薬局の薬剤業務へ試験的に導入し、他業務への不都合な影響のないことを確認した。またより円滑な運用のためにシステムのプログラムを一部修正し、2次元コードリーダーでの読み取りとお薬手帳運用に適切なQRコードの印字サイズを明らかにした。またお薬手帳記載薬剤と処方せん記載薬剤の薬剤鑑査に本システムを用いることにより、鑑査精度の向上と時間短縮のもたらされることを確認した。さらに本システムを保険薬局薬剤師へ紹介し、多くの保険薬局薬剤師に「試してみたい」と期待をもって受容されていることを確認した。
著者
増渕 隆史
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

平成30年度は研究の基礎固めとして、関連文献・資料の収集・分析および関連学会等における情報収集を行った。関連資料としては、金融分野における法的責務の分析のための金融商品取引法関連の研究書や、金融業における人工知能の利用に関する書籍を15冊(うち洋書3冊)を購入し、先行研究及び現状の把握を行った。関連学会での情報収集としては、平成30年6月開催の日本経営倫理学会および平成30年10月開催の日本倫理学会に参加して、関連情報の収集を行った。また、上記の活動を基に得られた研究成果について、平成30年12月22日開催の北海道大学哲学会研究発表会にて発表を行った(発表題目:契約行為における人工知能の地位 -「道具」からの脱却は可能か)。また、平成31年3月7日に開催された北海道大学大学院文学研究科応用倫理・応用哲学研究教育センター主催の平成30年度 第9回 応用倫理・応用哲学研究会においても研究発表を行った(研究題目:AIトレードと金融市場の倫理 ―AIがもたらす市場の混乱とモラル・ディレンマ―)本研究の意義であるが、まず研究発表「契約行為における人工知能の地位 -「道具」からの脱却は可能か」においては、ビジネスにおける基本的行為である契約における人工知能の行為主体性に関する法学分野に議論を分析し、人工知能に「代理人」として道具以上の人間類似の行使主体としての地位を認めうることを示した点にある。また「AIトレードと金融市場の倫理 ―AIがもたらす市場の混乱とモラル・ディレンマ―」においては、人工知能を活用した金融取引が金融市場の不安定化を引き起こす原因と、それが金融市場関係者の倫理に与える影響を分析し、人工知能を利用した金融取引の普及が金融市場の倫理的ディレンマを惹起していることを示し、そのディレンマの克服の方向性を示した点に意義があると考える。
著者
飛鳥井 望
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

被災者・被害者遺族や自死遺族における、外傷後ストレス障害(PTSD)を伴う遷延性(複雑性)悲嘆のための「外傷性悲嘆治療プログラム」の研修教材を作成し、指導法を確立した。研修修了者がスーパービジョンのもとに同プログラムを実施し、十分な治療成果を上げることができた。また東日本大震災の被災者調査において、遷延性悲嘆症状はPTSDや抑うつとは独立した症状因子であることを明らかにし、被災者・被害者遺族に対するトラウマと悲嘆の双方に焦点を当てた精神療法の妥当性を示唆した。
著者
長島 優
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-04-01

顕微鏡画像から画像特徴を抽出する試みは数多い。しかし、ノイズのある条件下で、観測者の主観に依らず、測定対象についての事前の知識なしに、元信号の定量性を保ったまま、特定の画像特徴に相関する信号成分を取り出す方法は、従来限られていた。生物の視覚情報処理の数学的モデルとして提唱されたスパースコーディングは広義の独立成分分析の一種であり、過完備な独立基底の推定に用いられる。我々はこれを用いた新規の画像解析法を考案した。顕微鏡画像を画素毎に波長の情報を持つ3次元配列(x, y, λ)と捉えて、スパースコーディングを用いて線形過完備な独立基底の推定を行った。一般に、このとき得られる独立基底は3次元の配列となる。次に、この3次元の独立基底をその特徴(色・テクスチャー・形など)に基いて分類・弁別し、特定の特徴に相関のある独立基底のみを抽出した。抽出した独立基底を、特徴群毎に加算して元画像のdimensionに再構成することで、もともとの顕微鏡画像の信号の線形性を保ったまま、特定の画像特徴に相関する信号成分のみを抽出することができた。polystyrene(PS), polymethyl methacrylate(PMMA), polyurethane(PU)ビーズをプレパラート上で混合し、自発ラマン分光顕微鏡でイメージングした。二次元のラマン分光画像は、空間的な一ピクセル毎に一つの波長方向のスペクトルを持つ3次元配列のデータ構造を持つ。このデータを非負スパースコーディングを用いて8個の独立基底に分解した。求めた8個の独立基底を、in vitroで測定しておいたPS, PMMA, PUの三種類の物質のラマンスペクトルと比較し、最も相関の高い独立基底をそれぞれ一つずつ選択した。選択された独立基底単独の空間分布を、元画像の二次元座標上に再構成してみると、ビーズの形状・空間分布を得ることができた。
著者
石出 忠輝 前野 一夫 劉 浩
出版者
木更津工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では,生物飛行の優位性を明らかにするために,主翼を柔軟な素材とし,ヒービング運動を付加した模型の空力特性を調査した.具体的には,ABS樹脂を造形剤とし三次元プリンタを用いて,翼幅及び翼弦方向にテーパを有する翼を種々製作し空気力測定を行った.その結果,翼幅及び翼弦方向共に,程良いテーパを与えると最大揚力係数が増加する事が確認できた.翼幅方向に適切なテーパを与えた場合,低迎角領域で揚抗比が大きくなることが見出された.空力特性と流体現象との関連性をPIVトリガー計測手法を用いて調査し,前縁剥離渦と後縁剥離渦との位置関係及びヒービング運動と空気力変動との位相差が重要である事が見出された.
著者
一戸 猛志 森山 美優
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

腸内細菌叢がインフルエンザウイルスに対する免疫応答の誘導に役立つ理由は不明である。今回、36℃で飼育したマウスは、22℃で飼育したマウスと比較して、インフルエンザウイルス、ジカウイルス、SFTSウイルスの感染後に誘導される免疫応答が低下することを見出した。36℃で飼育したマウスは摂食量が低下しており、この摂食量の低下が免疫応答の低下につながる要因のひとつであった。そこで36℃で飼育したマウスに腸内細菌由来代謝産物である酪酸、プロピオン酸、酢酸やグルコースを投与すると、低下していたウイルス特異的な免疫応答が部分的に回復することを見出した。
著者
津波古 澄子 中島 恵美子 三浦 友理子 藤野 ユリ子
出版者
清泉女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

看護教育者を対象に、変化への柔軟な対応力と看護実践力を育む領域横断的「概念基盤学習」の実践をとおして看護教育の質および指導力(学習コーチングと臨床コーチング)の向上を図るために、教育ネットワーク創りと実装支援研究を行う。具体的には、看護教育において高頻度で使用する概念をベンチマーク(先行研究, Giddens ら,2012)で抽出し、共通概念を基に学習支援に向けた指導用の教材を完成させ、新たな看護教育の選択肢の一つとして提供する。なお、作成した指導用教材は研究協力校および導入希望校(看護系大学と看護専門学校)に配布し、必要に応じて教育支援と評価を行う。
著者
福留 真紀
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成30年度も前年度と同じく、江戸時代後期の将軍側近と幕府官僚の分析のため、史料調査を行った。具体的には、大和郡山市教育委員会(奈良県)で、将軍側近柳沢家関係史料を、首都大学東京図書情報センター(東京都)で、当該期の「老中借写日記」を、茨城県立歴史館で、一橋家関係史料、前橋市立図書館(群馬県)で、酒井雅楽頭家関係史料、豊橋市美術博物館(愛知県)で、「吉田藩日記」、天理大学附属天理図書館(奈良県)で、松平定信の家老服部半蔵の日記「世々之姿」の調査を実施した。加えて、研究成果を自治体の企画で紹介する機会にも恵まれた。9月24日には、群馬県前橋市の主催した、第6回前橋四公教養講座(場所:酒井雅楽頭家菩提寺・龍海院本堂)で「前橋藩主 酒井忠挙 ―御曹司の挫折とプライド」という演題で講演した。また、山梨県甲府市のこうふ開府500年記念事業実行委員会主催の「こうふ開府500年記念事業リレーフォーラム2018 近世」において、基調講演「柳沢吉保とその時代」を行い、柳沢家にゆかりのある自治体の首長(山梨県北杜市・甲府市、埼玉県川越市、東京都文京区、奈良県大和郡山市)とともにパネルディスカッション「柳沢氏が築いた歴史と文化 ~各地に残る足跡~」のパネリストを務めた。ほかに、論考「名門・酒井雅楽頭を再興した凄腕家老」が、文芸春秋編『日本史の新常識』(文藝春秋、2018年11月20日)に掲載された。
著者
佐藤 和道
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

早稲田大学演劇博物館・法政大学能楽研究所・盛岡中央公民館・東京藝術大学附属図書館・土佐山内家宝物資料館・金沢市立玉川図書館等に所蔵される大鼓葛野流・小鼓幸流に関する資料を網羅的に収集し、近世から近代にかけての能楽囃子の一端を明らかにした。またその過程で、大鼓役者川崎九淵の旧蔵資料のうち従来未公開の資料を発掘することができた。これは近代における能楽囃子の様相を知る上で第一級の資料である。
著者
元 百合子
出版者
大阪女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

伝統的に多数の移民や先住民族を抱え、何らかの女性政策、移民政策、先住民族政策を策定・実施してきた五か国を訪れ、政府・地方公共団体の関連する機関、当事者団体、NGO、法律家、研究者等に聞き取り調査を行うことで、各国におけるマイノリティ女性に関係する政策、法的・行政的枠組み・制度、措置、その形成や変遷・発展の歴史的・社会的背景などについて多量の情報を収集し、共通性や独自性、実効性、成果と限界および課題を、複合差別概念を用いて分析することができた。その成果は、日本を含む、世界の多くの国にとって有用な教訓を含んでいる。
著者
高橋 英之
出版者
玉川大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

コミュニケーションは人間の社会性の基盤となるものである.コミュニケーションは情報交換であり,一般的にはそこに曖昧さは必要が無いと考えられる.本研究では,人間のコミュニケーションに含まれる曖昧さが,特に大きな規模の社会集団では非常に重要な機能を持つという仮説を提起し,それを検討するためのシミュレーションと心理実験を行った.その結果,曖昧な顔表情を用いることで他者とのコミュニケーションが円滑になることを示すデータを得た.
著者
室田 浩之
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2018年5月から長崎大学へ転出するに伴い、新たに当該施設でゲノム解析倫理申請、病理組織を使ったトランスクリプトーム解析研究の立ち上げを行い、次の進展が得られた。指定難病である特発性後天性全身性無汗症の病因解明を目的として、患者同一個体の有汗部と無汗部の皮膚病理組織残検体からマイクロダイセクションにより摘出した汗腺から微量のtotal RNAを抽出し、RNAシークエンシングを用いて病因に関わる遺伝子の発現を探索した。IPAソフトウェアを用いた発現遺伝子解析の結果、geneontology解析では免疫系や感覚受容に必要な遺伝子の発現が発汗機能の損なわれた汗腺では減少していることが確認された。特にリンパ球の性質を決める転写因子や、サイトカインが正常汗腺で発現していたことは大きな驚きであった。Pathway解析でもそれらの間に相関関係が見られ、汗腺は免疫臓器としての一面を有することが予想された。さらに汗腺にはある種の嗅覚受容体が発現していることがRNAシークエンシングで判明し、現在、それら遺伝子の発現をリアルタイムPCR、免疫染色、in situ hybridizationによって確認している。これら因子が特発性全身性無汗症の病因解明に繋がり、有効な治療の確立に貢献できるものと期待を寄せている。また診療カルテから年齢、性別、既往歴・家族歴、病歴、検査結果、治療内容とその効果に関する情報を得て、遺伝子発現レベルと患者の基礎データを照らし合わせている。これらのデータを総合的に解釈し、無汗症治療に光明をもたらし、その結果熱中症患者数の減少につなげることで国民にフィードバックする予定である。
著者
金子 周司
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

近年、危険ドラッグとして我が国で蔓延した合成カンナビノイドの一種5F-ADBはカンナビノイドCB1受容体に対する強い親和性を示す一方、パニックなどの精神神経症状、頻脈などの心血管系症状を起こす。本研究では5F-ADB がドパミン・セロトニン神経機構に与える影響について検討した。急性単離中脳冠状切片において5F-ADB(1μM) はドパミン神経の自発発火頻度を有意に増加させCB1受容体遮断薬の存在下ではその増加作用は消失した。一方で縫線核セロトニン神経の自発発火頻度に関しては5F-ADBは影響を与えなかった。以上より5F-ADBはセロトニン神経活動に対して直接的な影響を示さないことが示唆された。