著者
小原 優貴
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

H30年度は高等教育(とりわけインドの高等教育)の国際化や質保証(教員の専門的能力の開発や教授学習)およびインドに留学生を送り出している南アジア諸国や中東諸国(ネパール、アフガニスタン、イラン等)とインドとの関係を考察した文献の収集・分析を行った。その中で、近年インドでは、アフガニスタンの復興支援の一環として、奨学金政策を通じた同国への高等教育協力を進め、留学生の受け入れを積極的に行っていることを確認した。H30年度は、育休による年度途中までの研究中断と育児等のため、予定していた研究が実施できず、補助事業期間の延長を行った。2019年度は、高等教育の国際化を積極的に進めるインドの大学(South Asian University、Symbiosis University等)およびこれらの大学に教員・学生を派遣する高等教育機関の国際化事業担当者・教員・学生等を対象に、オンラインでの聞き取り調査やアンケートを実施し、インドの高等教育の国際化(とりわけ外国人の教員・学生の受け入れ・送り出し)に関する情報収集と分析を進め、成果発表につなげる。インドの高等教育の国際化と質保証の現状と課題を、国際化を進める先駆的な事例の分析を通じて解明する本研究は、南アジアを中心に展開される高等教育の国際化の現状理解と、世界第二位の留学生送り出し大国であるインドが直面する「頭脳流出」問題の将来展望に役立つ研究であると言える。
著者
小林 康夫 小林 元雄 KOBAYASHI M.
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

前年度の研究を基に英文モノグラフの草稿作成を主とし、新たに下記のトピックを研究した。1.明治30年代小説が前景化した「社会」「家庭」とそれをめぐるドラマを国民国家生成に関連づけ、そこに固有の主体形成に関わる物語として分析した。近代文学史的枠を外し、尾崎紅葉、広津柳浪、川上眉山等、代表的文壇作家の小説を同じメディア空間に現れた、徳富蘆花、菊地幽芳、村井弦斎等の非文壇的「流行」小説と対比し、関連づけた。特に、弦斎の『日之出島』、蘆花の『黒潮』に注目した。2.20年代「美文」と近代紀行文成立との関係を、表象としての「自然」の生成過程として考察した。さらに、30年代の蘆花、子規の写生文との関連を探った。背景に明治初頭以来の近代地理学的知の移入、『日本風景論』に至る国粋保存的地政学言説の勃興、そして近代的「地誌」の「民俗誌」への変成という歴史過程がある。この背景も含めて「日本」というトポスがいかに形成され機能したかを考察した。『自然と人生』等の詩的自然風物誌に対象化された「自然」、そして同時代小説で他者として表象される「地方」はこの「日本」を共通の背景として生成する。3.出版資本の発達に伴う想像の共同体の成立は、知のパラダイム転換として理解されているが、文学がナショナリズムに関わるいま一つ重要な様式は、声、物語の共有に基づく情念の共同体の形成である。大衆小説の原型とされる講談落語そして歴史小説における、「実録物」的物語の再説話化は、活字化されても、声の共同体の記憶をひきずっており、そのことで大衆的道徳感情に訴える。明治20年代に勃興する新派劇、浪花節は、このメカニズムを内包しており、講談落語の速記出版、歴史小説の流行とも相関関係にある。この視角から、村上浪六、村井弦斎等の大衆歴史小説に焦点を当て、近世的世俗道徳理念を国民国家の情緒的共同性のエトスとして転位させる説話構造を探った。
著者
南石 晃明 土田 志郎 飯国 芳明 二宮 正士 山田 優 金岡 正樹 淡路 和則 内山 智裕 八木 洋憲 西 和盛 澤田 守 竹内 重吉 藤井 吉隆 木下 幸雄 松下 秀介 佐藤 正衛 星 岳彦 吉田 智一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

本研究の目的は、次世代農業経営革新の基礎となる人材育成システム構築に有益な知見を、学際的かつ国際的な視点から体系化することである。主な研究成果は以下の4つに区分できる。第1にスイス、フランス、ドイツ、デンマーク、イギリス、オランダ、スペイン等の欧州主要国の職業教育訓練の現状と課題について明らかにした。第2に、わが国の先進農業経営に人材育成の実態と課題を統計分析と事例分析を組合わせて明らかにした。第3に知識・情報マネジメントの視点から、情報通信技術ICT活用および農作業熟練ノウハウ継承について明らかにした。第4にこれらの知見の基礎的考察と含意を考察し、次世代農業人材育成の展望を行った。
著者
神田 祥子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

◇平成23年度は、(1)「科学」(2)「美術」を中心に、比較文学における先行研究の成果を参照しつつ、漱石自身や同時代における国内外の科学論・芸術論などを以下の手順により検証した。(1)「虞美人草」(明治四十年)を中心に、科学的客観性が近代社会の価値観に影響を与える中で、作中に描写された倫理観について検討し、またこうした内容を表現する上で、造形芸術との相互関係から抽出された美文的文体が選択されたことの意義を考え、活字論文として投稿した。また漱石の「文学論ノート」の精読を行い、漱石の科学観について検討した。東北大学図書館漱石文庫所蔵の漱石手沢本の書き入れ調査を基本とし、同時代ヨーロッパの科学観の把握や社会観に関わる文献調査を行った。具体的にはM.Nordau"Degeneration"、G.Allen"The Colour-Sense"など「文学論ノート」に散見される文献を中心とした。さらに受入研究者である慶應義塾大学・松村友視教授の専門的指導のもと、「近代文学における科学」をテーマとする同教授の博士課程演習に参加、同時代主要作品における科学観との比較検討を行った。(2)「三四郎」(明治四十一年)を中心に、造形芸術的な手法を言語表現に反映させる「断面的文学」の表現が、長編小説においてどのように作用するかを検討し、また作中で「美術」的要素を相対化するものとして取り入れられている「科学」的要素の意義について考察した。また、東北大学図書館漱石文庫所蔵の漱石手沢本の書き入れ調査を行い、漱石が「三四郎」構想に用いたと考えられる美術関連書の調査を行った。具体的にはJ.Ruskin"Modern Painters"全6巻の書き入れについて詳細に調査および記録を行った。◇以上の内容を元に、博士学位論文の内容をさらに再検証・発展させた著書原稿の準備を行い、また合わせて出版社(株式会社 青簡舎)と内容、目次案、ページ数、刊行時期などについて、具体的な打ち合わせを開始した.
著者
岸本 利彦
出版者
東邦大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

2018年度は下記の研究を実施し、その成果を得た。1.高温適応進化大腸菌の構築 2系統の大腸菌高温適応進化を継続実施し、2系統とも47.9℃への完全適応(適応度:>0.35 1/h)に成功した。現在も48.0℃への適応を実施している。2.高温適応進化大腸菌の解析 2017年度にゲノム解析を行った、高温適応進化系統1の大腸菌のうち47.3℃適応株、46.0℃適応株、高温適応進化系統2の大腸菌のうち47.4℃適応株、46.0℃適応株、およびそれぞれの先祖株であるAnc株、について15℃~50℃の増殖特性、細胞内タンパク質の熱安定性を解析した。その結果、両系統で46℃以上の高温への適応度上昇が見られ、増殖最適温度は、1系統 43~44℃、2系統 43~45℃ となっていた。2系統に関しては、43~45℃の適応度に有意差が無くなっており、ほぼ高温菌への進化ができていることが示唆された。また、15~20℃の低温では、高温適応に伴い適応度の低下が確認され、トレードオフが起こっていることが確認された。細胞内タンパク質の解析の結果、1系統においては、適応温度上昇に伴うGroEL発現亢進が見られ、系統2においては、適応温度上昇により細胞内タンパク質の熱安定性の上昇がみられ、系統毎に高温への適応様式が異なる可能性が示唆された。3.高温適応進化大腸菌の遺伝子解析 2017年度にゲノム解析した結果に関して、変異解析、GC含量、アミノ酸解析などを行い、2系統で全く異なる変異が導入されたが、アミノ酸レベルでは同じ傾向の変化を示すこと、GC含量は高温適応進化に伴い低下する傾向があることを確認した。上述のゲノム解析完了株について、最高適応温度でのRNAを回収し、次世代シークエンサーによるRNAseq解析を外注した。現在解析結果の報告待ちの状況である。
著者
小田 なら
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2016-08-26

本研究は、出産という私的な領域に、社会や国家権力の影響が及ぶ過程を明らかにするものである。フランス植民地期には助産の担い手であった「産婆」に近代西洋医学の研修を受けさせ、農村での出産に関与していた。しかし、植民地からの独立を経たのち、南北ベトナム分断期にはそれぞれ公的医療制度のもとで「助産師」を養成し助産院での出産を推奨してきた。一方、家庭内では妊産婦へ母親や女性親族が様々な養生法のような習慣を伝承してきていた。しかし、戦争や産児制限の導入という要因により、少なくとも都市部では、そのような習慣を厳格に継承していっているとは言いがたい。「出産」は、近代と伝統的価値観が混交しあう場なのである。
著者
田中 剛平
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

レザバーコンピューティングは、高速学習を可能とする機械学習の枠組みの一つである。本研究では、レザバーコンピューティングの数理的解析とレザバーの最適設計を行い、従来の問題点を解決するとともに、新たなモデルを提案して学習の高速化や計算性能向上を実現した。また、物理的レザバーの可能性を広く探究して数理モデリングを行い、その基本特性や基礎的タスクにおける計算性能を明らかにした。
著者
北村 圭吾 佐久間 博 ステイコフ アレクサンダー
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では汎密度関数計算(DFT)と分子動力学(MD)のハイブリッド計算(DFT-MD法)に基づいて高温条件下での粘土鉱物の電気伝導度を評価する手法の開発を行う.高温条件下での粘土鉱物の電気伝導度は地熱地域の熱水資源と粘土鉱物を主要構成鉱物とする帽岩層を比抵抗探査から区別する上で重要な情報になると期待されている.しかし実験的方法による高温条件下での粘土鉱物の電気伝導度の測定は多くの困難が伴い未だに成功していない.本研究のように計算科学的手法に基づくイオン伝導度評価手法の開発は地熱開発現場などの地球工学分野においても強く望まれており,開発に成功した際の波及効果は大きいと考えられる.
著者
佐久間 博
出版者
国立研究開発法人物質・材料研究機構
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-04-01

最近の断層掘削により、多くの断層で雲母・粘土鉱物の存在が明らかとなった。これまで雲母・粘土鉱物の摩擦物性は主としてガウジを模擬した摩擦実験で測定されてきたが、その背景にある物理に関しては理解が進んでいない。本研究では雲母・粘土鉱物の摩擦を支配する要因を明らかにするために、雲母・粘土鉱物の(001)面の性質に着目する。本年度は(1)原子スケールの摩擦力とセンチメートルスケールの摩擦力の関係を明らかにし、白雲母について巨視的な摩擦力の起源を明らかとすること、(2)低法線応力(<1 MPa)で湿度制御下における粘土鉱物の摩擦力を測定すること、を目的とした。(1)ミクロとマクロの摩擦現象を接続するためには、真実接触面積を見積もることが必要となる。過去の研究から、マイクロメートルスケールでは、物質のインデンテーション硬さの逆数が、荷重と接触面積の比例定数であることが経験的に知られている。そこでこの関係がナノメートルスケールまで外挿できると仮定し、白雲母のインデンテーション硬さを計測することとした。物質本来のインデンテーション硬さを計測するため、ナノインデンテーション試験を行い、白雲母の硬さを求めた。この硬さから、荷重に応じた真実接触面積を導出した。また白雲母表面の第一原理計算から微視的な摩擦力を求め、この力と真実接触面積から巨視的な摩擦力の理論値を導出したところ、巨視的な摩擦実験の結果と良い一致が見られた。このことは巨視的な摩擦力の起源が原子スケールの摩擦力に起因することを示唆している。本成果をScience Advances誌に報告した。(2)低法線応力下では摩擦面の粗さが摩擦力に大きく影響することがわかり、粗さが影響する法線応力の範囲今後明らかとし、その原因を探る必要がある。
著者
檜山 武史
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

Naxナトリウムチャンネルの個体における生理機能を解析し、体液ナトリウム濃度検出中枢を特定する目的で、野生型マウスとNax遺伝子ノックアウトマウスについて塩分摂取行動を調べた。通常状態と脱水状態それぞれのマウスに水と食塩水を同時に提示し、各摂取量を調べた。複数の濃度の食塩水について検討したところ、通常状態においてはいずれのマウスも0.3Mを超えると、水に対する食塩水摂取量の割合が減少した。脱水状態においては、野生型マウスは、より低濃度の食塩水に対しても回避行動を示したが、ノックアウトマウスは絶水前と同様に0.3M付近まで水と食塩水を区別無く摂取した。次にマウスの脳室へ高張食塩水を注入し、脳室周辺部の体液Na濃度を上昇させると、野生型マウスは脱水時と同様の塩分回避行動を示した。一方、ノックアウトマウスでは脱水時の塩分回避行動が失われており、Naxによる体液Naレベル検出は、脳室周囲器官の内のいずれかの部域において行われていることが明らかとなった。そこで、Nax遺伝子を組み込んだアデノウィルス発現ベクターを作成し、ノックアウトマウスの脳室周辺へ導入し、塩分摂取行動を観察した。その結果、CVOsの内、脳弓下器官(SFO)にウィルスが感染した場合にのみ野生型と同様の、脱水時における塩分回避行動が回復した。SFOは過去の脳部分破壊実験から体液Na濃度検出への関与が指摘されており、Naxが発現する部位である。同じく第三脳室前壁に位置する終板脈管器官(OVLT)も、これまで体液Na濃度検出に関与すると考えられていたが、本実験においてNax遺伝子を導入しても行動は回復しなかった。以上より、体液Na濃度検出及び水と塩分の摂取行動制御中枢はSFOであり、その機能にNaxが必須の役割を果たしていることが初めて証明された。
著者
浅野 憲一
出版者
目白大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成30年度においては、治療抵抗性うつ病の患者群を対象とした集団コンパッション・フォーカスト・セラピープログラムのランダム化比較試験を継続した。加えて、Compassion Engagement and Action Scaleの日本語版についての論文化が進行中である。集団コンパッション・フォーカスト・セラピーは全12回で構成されており、コンパッション・フォーカスト・セラピー開発者であるPaul Gilbert博士からスーパービジョンを受けながら進行した。これまでに予定されている被験者数の3分の2がエントリーし、治療を受けている。また、研究成果の報告にあたっては、コンパッション・フォーカスト・セラピーに関する事例研究として、Emotion Processing and the Role of Compassion in Psychotherapy from the Perspective of Multiple Selves and the Compassionate SelfとA Case Report of Compassion Focused Therapy (CFT) for a Japanese Patient with Recurrent Depressive Disorderを公表した。さらに日本認知療法・認知行動療法学会のシンポジウムにおいてコンパッション・フォーカスト・セラピーについての発表をした。また、認知療法研究において、コンパッション・フォーカスト・セラピーに関する総説論文を掲載した。その他、マインドフルネスを医学的にゼロから解説する本においてコンパッション・フォーカスト・セラピーに関する章を執筆し、認知行動療法事典においてもコンパッション・フォーカスト・セラピーについて執筆されたものが公開予定である。
著者
村田 拓也 松岡 達 成田 和巳
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、エストロジェンの心血管系の調節におけるオキシトシン(OT)およびビタミンD(VD)の役割を明らかにすることである。マウス心房筋由来細胞において、VDレセプター(VDR)の発現を抑制すると、Caトランジエントの異常が観察され、心機能に関わる数種類の遺伝子の発現が減少した。ラットの発情前期において、血圧は低下し、大動脈のOTレセプター(OTR)のmRNA発現が増加した。さらに、卵巣摘出した雌ラット右心房のVDRのmRNA発現が、エストロジェン投与により抑制された。以上のことから、エストロジェンの心血管作用において、OT作用とVD作用が補完的に働いている可能性が示唆された。
著者
渡邊 健
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

抗ウイルス薬、特に新たな抗インフルエンザウイルス薬開発の基となる化合物(シード化合物)を発見することを目的とした研究を行った。培養細胞と生きたウイルスを用いて様々な天然物や化合物の抗ウイルス活性を測定した。その結果核外輸送系を標的としたものに限らず、食品や植物の抽出液等、様々な天然物より様々な作用機序を持つ抗インフルエンザウイルス化合物を見出す事ができた。これらの化合物は新規抗ウイルス薬開発のシードとして今後が期待される。
著者
蒔苗 直道
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,数学教育における「数学的な考え方」に焦点をあてて,戦前から戦後への数学教育の連続性について考察を行っている。乗法の意味の拡張は,数学教育の指導の進展としてとらえられ,戦後の「数学的な考え方」をとらえる上での一つの視点とされている。この点について,戦前から戦後へと一貫する指導の改善を論点にまとめている。また,特徴的な教材を昭和22年の国定教科書『算数』から取り上げ,現在の数学教育への示唆として「算数的活動」の意義をまとめている。
著者
山崎 百合香
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

これまでの研究により、ミツバチの働き蜂の育児蜂から採餌蜂の行動変化において、エクダイステロイド(変態ホルモン)情報伝達経路に関わる核内受容体遺伝HR38が脳のキノコ体(高次中枢)で女王蜂、育児蜂よりも採餌蜂で強く発現する事を発見し、働き蜂の分業を変態ホルモンが調節する可能性を提示した。変態ホルモンは変態時には脱皮を促進し、成体では生殖に関わる事が知られているが、このような脳での機能については不明である。ところで、エクダイステロイドは前胸腺と卵巣がその合成器官として知られているが、不妊化されている働き蜂においては卵巣が退縮しており、前胸腺も見つかっていない。しかしながら、卵巣の発達している女王蜂と同程度のエクダイステロイドtiterが働き蜂においても検出される。申請者はまず、働き蜂におけるエクダイステロイド合成場所の決定を試みた。(1)エクダイステロイド合成酵素遺伝子群の発現解析昆虫は植物に含まれるコレステロールをphantom、disembodied、shadow、shadeによってコードされるエクダイステロイド合成酵素によってエクダイソンや20-hydroxyecdysoneに変換する。これらの遺伝子についてRT-PCRを行うと、体中のどの組織においても発現が確認された。他の昆虫種においては、これらの遺伝子は前胸腺や卵巣で局所的に発現している。今回のように、さまざまな領域で発現が確認された例は初めてであり、ミツバチにおいては体内でのエクダイステロイド合成の仕方が特殊なのかもしれない。(2)さまざまな組織培養による分泌エクダイステロイド量の定量摘出した脳、下咽頭腺、脂肪体組織について培養液中で30℃12時間ほどインキュベートし、培養液中に分泌されたエクダイステロイドを抗エクダイソン抗体を用いたRIA法によって検出したところ、抗エクダイソン抗体との反応がみられた。この結果は変態時に変態ホルモンとして働くエクダイステロイドが成虫では脳からも分泌されていることを示唆する初めてのデータとなる。分泌されたエクダイステロイドは働き蜂の行動変化や生理状態変化を制御しているかもしれない。
著者
宇田川 元一 黒澤 壮史 佐々木 将人
出版者
埼玉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究はナラティヴ・アプローチの視点を応用し、イノベーション・プロセスに対して新たな視座を提供し、その解明に寄与することにある。ナラティヴ・アプローチとは、語りに媒介されて現実が生成する過程を描き出す研究視座である。この知見は、医療や臨床心理の領域において展開されている。本研究を通じて、イノベーション・プロセスは、語りに媒介されていることが明らかになると同時に、媒介されることを通じて、次のプロセスがまた生成してくるというイノベーション・プロセスの連鎖的な過程が明らかになった。
著者
小泉 宏之 船瀬 龍 鷹尾 祥典 中野 正勝
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

本研究の目的は,推進剤として水を活用し3種類の高効率/大推力/多軸制御可能なスラスタを統合させたオールラウンド超小型推進系を実現させることである.この目的に向けて平成29年度の下記3つの柱の研究を進めた.1.水イオンスラスタ.本年度は下記4項目の実験および数値計算研究を実施した:1A:実験におけるイオン生成コストの低減,2B:電子電流増加のための基礎実験および作動モード確認,1C:3D-Full-PICプラズマ解析コードの発展(昨年度の多種イオンの強化および負イオン導入準備)および同コードを用いた推進剤流入位置検討,1D:全孔ビーム計算の確立.特に,1Aにおいてはイオン生成コストの143 W/Aまでの低減に成功し,1Dにおいては世界的にもイオンスラスタとして初となる全孔計算の成功とその必要性を示すことに成功した.2.水レジストジェットスラスタ.同スラスタの微小・希薄ノズルにおける低Re数の効果として,先行研究科から指摘されている境界層(粘性)の他に,背圧依存性が大きいことを見出した.また,水質量のリアルタイム測定方法を確立し精度の高い比推力評価方法を確立した.実応用面では気化室を統合したBBMおよびEMによりスラスタ作動の実証に成功した.3.排熱利用衛星設計.最終目的は,衛星システムの排熱を本スラスタへ利用するための最適な気化室設計とコンポーネント配置設計を行い,実機モデルを用いて実証することである.このために本年度は,昨年度に実施した6U CubeSatの水レジストジェットスラスタの熱設計結果を最適化するとともに,そこで得られた知見を,CubeSatの機器配置設計と熱設計の同時最適化手法としてまとめた.これにより,他機器の排熱を最大限活用した,衛星全体の電力使用量の最適化(最小化)が可能となった.
著者
田村 直良 後藤 敏行 島田 広
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1.データベースについて:プロトタイプを構築した。同一楽譜の異なる点訳に対応でき、五線譜から点字楽譜への変換機構も自動的に呼び出せる。ホームページ等により公開していく予定である。2.点字楽譜ビューア(統合環境)について:点字楽譜の構成要素ごとの色分けや点字プリンタへの出力機能を持つ。点訳作業の検証工程や、晴眼者の点字楽譜習得、視覚障害者教育での利用も可能である。3.点字楽譜XMLの仕様策定について:Contrapunctusプロジェクト(2006~2009)でBMMLと呼ばれるXMLが公開され、これを採用する。