著者
小島 明子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.12-21, 2006

『我身にたどる姫君」は、女帝の統治・今上帝の善政描写に特徴がある。それは机上の空論と見るべきではなく、鎌倉初期の九条兼実が実際に取り組んだ政策に一致する点が多いことが指摘できる。院近臣を排除し、天皇家を中心にその外戚たる藤氏摂関家がそれを補佐するという、兼実・慈円兄弟が理想とした御代を物語は実現しているのである。そこには、保元の乱以降、天皇家も摂関家も武家勢力によって分断された「危機の時代」を生きる物語作者の切なる執筆動機が読み取れる。
著者
濱口 清治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1995, 1995-09-05

ペンティアムの4進SRT法に基づく除算回路での設計誤りは、ルックアップ・テーブルの内容に書き間違いがあるというものであった。こうした設計誤りを通常のシミュレーションで網羅的に調べることは、膨大な時間を要するため、非現実的である。これに対して、BryantはOBDDによる組合せ回路の等価性判定の手法を用いて、網羅的な検証を試みており、SPARCstation10上で主記憶112MByte、CPU時間10分で検証に成功したと報告している。また、Bryantの手法の場合、等価性判定の比較対象として、ピットレベルの論理式を記述する必要があって、これは必ずしも容易ではないが、Zhaoらは、二分モーメントグラフ(Binary Moment Diagram)と呼ばれる新しいデータ構造を用いて、レジスタに対する加算や不等号などを許した仕様記述を、ビットレベルに変換せず、直接扱う検証手法を考案・実装して、検証に成功している。これらの手法は、算術演算回路の検証技術として現在盛んに研究されている。本チュートリアルでは、その最新の研究動向を報告する予定である。
著者
出口 拓彦
出版者
藤女子大学
雑誌
藤女子大学紀要. 第II部 (ISSN:13461389)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.45-51, 2007-03-31
被引用文献数
2

本研究は、「私語をすること」と「私語をされること」の相違や視点取得の高低に着目して、教室における座席位置と私語の頻度との関連について検討することを目的とした。東海地方・北海道における2大学の学生418名(男子108名,女子297名,不明13名)を対象に、質問紙調査を行った。その結果、視点取得が高い学生は、低い学生に比べて私語の頻度と被私語頻度の相関が高い傾向が示された。このことから、視点取得が高い学生は、他者ないし友人から私語をされた場合に、「私語をしないことで友人に不快感を生じさせる可能性」(出口・吉田,2005)を感じやすくなることが一因となっている可能性が考えられた。なお、座席位置については、教室後方ほど、「授業と無関係の私語」の頻度および被私語頻度が高い傾向が示された。また、友人の数についても教室後方ほど多い傾向が見られた。さらに、友人の数と私語の頻度・被私語頻度の間には、全般的に弱い正の相関が示された。
著者
伊藤 大雄 藤井 愼二 上原 秀幸 横山 光雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.194, pp.17-24, 1999-07-21
参考文献数
17
被引用文献数
4

詰め将棋の盤面をn×nにし、王将以外の駒を0(n)個の用意した、一般化詰め将棋問題の計算複雑さについて論じる。詰め将棋には見た目や詰め方などに面白みを出すため、駒の初期配置に工夫をしたり、正解の詰め手順に美しい趣向が隠されている様な、趣向詰めというものがある。本稿では、飛車と角を使用しない「小駒図式」、初期配置に成り駒が無い「成り駒無し」、王将が初期配置で居た場所に戻って詰む「還元玉」、王将が中央のマスで詰む「都詰め」の4つの趣向を同時に満たすものに限定しても一般化詰め将棋問題がNP困難であることを証明する。
著者
五十嵐 悠紀 五十嵐 健夫 鈴木 宏正
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.51-58, 2009-01-27
被引用文献数
1

"あみぐるみ"は毛糸を使って作るぬいぐるみであるが,毛糸の編み方によって形状をデザインしていくため,初心者にはデザインすることが困難である.我々は3次元モデリングプロセスにインタラクティブな物理シミュレーションを組み合わせることであみぐるみを効率的にデザインできるモデラーを作成した.本システムは自動で編み目を計算してあみぐるみモデルをシミュレーション結果として提示するため,初心者にでも直感的にデザインでき,編み図も容易に得ることができる.また,初めてあみぐるみに挑戦する初心者でも製作手順を容易に理解できるようにするために,製作手順を視覚的に提示する製作支援インタフェースも備えた.あみぐるみ初心者でも容易にオリジナルなあみぐるみを作成できることを確認したので報告する.
著者
朴 沙羅
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.275-293, 2013

近年, 敗戦直後の連合軍占領期 (1945年9月から52年4月) における人口移動が解明されるにつれて, 在日コリアンの一部が太平洋戦争後に日本へ移住してきたことも次第に明らかにされてきた. その移動は通常, 「密航」や「不法入国」と呼ばれ, 管理され阻止される対象となった. しかし, 「密航」という言葉のあからさまな「違法性」のためか, 「密航」を定義する法律がどのように執行されるようになったかは, 未だ問題にされていない.<br>本稿が問題とするのはこの点である. 出入国管理法が存在せず, 朝鮮半島からの「密航者」や日本国内の「朝鮮人」の国籍が不透明だった時期に, なぜ彼らの日本入国を「不法」と呼び得たのか. 「密航」はどのように問題化され「密航者」がどのように発見されていったのか. これらを探究することは, 誰かが「違法」な「外国人」だとカテゴリー化される過程を明らかにし, 「密航」をめぐる政治・制度・相互行為のそれぞれにおいて, 「合法」と「違法」, 「日本人」と「外国人」の境界が引かれていく過程を明らかにすることでもある.<br>したがって, 本稿は, 朝鮮人の「密航」を「不法入国」と定義した法律, その法律を必要とした政治的状況, その法律が運用された相互行為場面のそれぞれに分析の焦点を当て, それによって, 植民地放棄の過程において「日本人」と「外国人」の境界がどのように定義されたかを明らかにしようと試みる.
著者
舘野 泰一 大川内 隆朗 平野 智紀 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.241-254, 2013

本研究では,正課課程外におけるアカデミック・ライティングの指導を想定し,チューターによる学生の「執筆プロセスの理解」を支援するために,レポートの執筆プロセスを可視化することのできるシステム「レポレコ」を開発した.「執筆プロセスの理解」とは,チューターが,学生の文章生成過程を把握することである.開発したシステムの特徴は執筆プロセスの記録・可視化である.学生がレポートを執筆する過程を一字一句自動で記録し,可視化することができる.このシステムを使うことで,チューターの「執筆プロセスの理解」を促すことができる.実験の結果,システムを使用することで,チューターの「執筆プロセスの理解」につながることが示唆された.
著者
市橋 則明 吉田 正樹 篠原 英記 伊藤 浩充
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.487-490, 1992-08-01
被引用文献数
10

健常女性8名を対象に, スクワット動作時の下肢筋(内側広筋, 大腿直筋, 大腿二頭筋, 腓腹筋)の筋活動を測定し, スクワットが各筋に与える影響を検討した。その結果, 30度での片脚スクワットで腓腹筋が36.0%と他の筋に比較して大きな% IEMGを示したが, 他の3筋は10〜20%とほぼ同じ値を示していた。60度での片脚スクワットでは, 4つの筋の有意な差はみられなかった。また, 最大下肢伸展動作時の% IEMGは, 内側広筋と大腿直筋が他の筋に比較し大きな値を示した。さらに, 30度における最大下肢伸展においては内側広筋が大腿直筋よりも有意に大きな値を示した。closed kineic chainでの訓練においては, 各筋の活動状態を知ることが重要である。
著者
藤田 裕司
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第4部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.145-158, 2008-02

表題の著書について,その構成と展開を示した後,その主題を,「上昇と下降」,「魂と肉体」,「知性と感情」,「我と没我」といった観点から考察し,最終的にそれが(A↔Ā)=Aの世界に収まることを明らかにして,その意義を論じた。This paper aimed at clarifying the theme of"Flowers for Algernon"written by Daniel Keyes. After an outline of the novel was given, the theme was examined from such viewpoints as`ascent vs. descent',`spirit vs. body',`intellect vs. emotion'and`ego vs. effaced ego'. As a result, the theme came into a world of"(A↔Ā)=A", and the meaning of it was explained.
著者
竹内 康浩
出版者
公益財団法人史学会
雑誌
史學雜誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.115, no.1, pp.三五-五三, 2006-01-20

Suigongxu is a bronze vessel that has appeared in the research literature as of late and which many scholars believe dates back to the middle of the Western Zhou period. The vessel contains a long inscription of about 100 characters, the content of which has been rendered as unique. In particular, two aspects of the inscription stand out. One is the appearance of a mythological character Yu禹; the other, the use of the term tianxia天下(the world). Neither terms have appeared in the available source materials on the period to date and therefore have been lauded as new insights into Western Zhou thought and culture. However, we do not know the circumstances surrounding the archeological discovery of the vessel, and both its construct and inscription differ greatly from what has been identified to date as "Western Zhou" style bronzeware and prose. Based on such doubts, the author of the present article discusses the content of the vessel's inscription and comes to the conclusion that great caution should be taken in assuming that at face value the vessel will shed new light on the period in question. What has to be debated first is whether it is a genuine Western Zhou period bronze artifact or not.
著者
大蔵 親志
出版者
大東文化大学別科日本語研修課程
雑誌
別科論集
巻号頁・発行日
no.1, pp.59-74, 1999-03

フランス日本研究の先覚者レオン・ド・ロニーと明治の遣欧使節のメンバーであった若き日の福沢諭吉や福地桜痴などとの交流を論じたものである。