著者
引網 宏彰 柴原 直利
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

褥瘡モデルラットを用いて、漢方方剤・帰耆建中湯の褥瘡に対する効果を検討した結果、帰耆建中湯は炎症性サイトカインの産生を抑制し、線維芽細胞が筋線維芽細胞に形質転換することを促進し、皮膚潰瘍の経過の終盤には細胞外マトリックスの再構築を促進させる作用を有する可能性が考えられた。帰耆建中湯は褥瘡治療において、貴重な経口治療薬になりうることが示唆された。
著者
高橋 博之
出版者
中部大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

X線で非常に明るく輝く超高光度X線源はコンパクトな天体を起源とし、ガス降着によって重力エネルギーを解放することで明るく輝いていると考えられる。特筆すべきはその光度で、太陽質量程度の天体におけるエディントン光度を超えて明るく輝くいている。このコンパクトな天体の正体は太陽質量程度の恒星質量ブラックホールか、もしくは太陽質量の1000倍程度の質量を持つ中間質量ブラックホールであると考えられてきた。しかし近年になって明るく輝く超高光度X線源の一部は中性子星を起源に持つことが明らかになってきた。ブラックホールと異なり中性子星は強い磁場を持つために中性子星の磁場に沿ってガス降着が起こり、磁軸付近に堆積したガスが光る。さらに磁軸と回転軸が非平行なために周期的なX線光度変動を示す。観測によって中性子星を起源に持つことが明らかになった超高光度X線源はこのような特性を持つが、磁場が弱い場合や見込み角の違いにより、X線パルスが観測されていない超高光度X線源のリストの中にも中性子星を起源とするものが埋もれていると考えられる。従ってX線パルス以外の方法で超高光度X線源がブラックホールを起源とするか中性子星を起源とするかを判別する手法を構築することは急務である。そこで本研究では光度だけでなくX線スペクトルによる中心天体の同定方法を構築すべく、これまでにない新しい数値計算コード(振動数依存型一般相対論的輻射磁気流体コード)を構築した。この方法は一般相対性理論の枠組みで流体や電磁場を扱うのみならず、光も同時に扱う。そしてこの光は振動数の情報を持つため、光度だけでなくX線スペクトル、さらにそれらの時間変動についても情報を得ることができる。このコードは超高光度X線源のみならず、一般の高エネルギー天体現象に適用できる汎用的なコードである。
著者
大須賀 健 高橋 博之 川島 朋尚
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ブラックホールおよび中性子星周囲をターゲットとした大規模数値シミュレーションを実施し、超臨界円盤からは連続光による輻射力で、亜臨界円盤からは束縛ー束縛遷移吸収による輻射力で加速されたアウトフローが噴出することを解明した。また、発生したガス噴出流が流体不安定で小さなガス片に分裂することも突き止めた。強磁場中性子星の場合は、磁極からガスが降着することも示した。活動銀河核やX線連星で観測されるアウトフローや光度変動を説明できる新たな理論モデルを構築したのである。
著者
大江 悠樹 佐々木 洋平 菊池 志乃
出版者
杏林大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

過敏性腸症候群(IBS)に対する内部感覚曝露を用いた認知行動療法の集団版(集団版CBT-IE)を作成し、治療用の各種マテリアルを整備した。京都大学および高槻赤十字病院と共同でオープンラベルのパイロット試験を実施した。紹介された12名の患者のうち7名が組み入れとなり、介入を終了した。その結果、IBSに特異的な性格の質を測定するIBS-QOLは平均24ポイント、IBS症状の重症度を測定するIBSSIは平均101ポイントの改善を認め、それぞれの効果量はIBS-QOL=3.2、IBSSI=-3.1であった。現在、京都大学および高槻赤十字病院と共同で集団版CBT-IEのランダム化比較試験を実施中である。
著者
田辺 弘子
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2016-08-26

ファッションショーモデルおよびモデル経験のない女性に、普段通りの歩行運動と「美しく歩くことを意識した」歩行運動を行わせ、その際の歩行動作計測を行った。この実験課題により、どのような身体運動情報が動きの美しさを伝えるのに関わっているかを検討することを可能にした。モデル経験のない女性が綺麗さを意識して歩行を行うと、膝伸展・体幹部の後傾など全身の関節運動に変化が生じた。モデルの歩行運動はそうしたモデル経験のない被験者の美歩行運動の特徴をさらに強調したものであった。これにより、生物学的に綺麗とされる歩行運動を強調したものがモデルの歩様として確立されていることが示唆された。
著者
土田 滋 森口 恒一 山田 幸宏
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

(1)前年度に引き続き、小川資料に残るシラヤ語の資料を整理し、コンピュ-タに入力した。さらに原典・原ノ-トに遡って照合を行い、また中国語・日本語が読めない外国人研究者の便を考え、発音を漢字で表わした清朝時代の資料についてはロ-マ字翻字を付した。その結果シラヤ語資料とされているものが、実質的にはシラヤプロパ-・タイボアン・マカタオの3種の方言にわけることができることが判明した。(土田・山田)(2)浅井資料のうち、「平埔蕃 Basai」と標題をつけられたノ-トを整理しコンピュ-タに入力した。重複項目を除く異なり語数は約1000項目。英訳をつけ、バサイ語からも英語からも引けるようにした。(森口)(3)小川資料のうち、ケタガラン語に関わるノ-ト類を整理し、カ-ドにとり、コンピュ-タに入力したが、時間切れとなり、公表する段階には至っていない。(土田)(4)上記(1)と(2)の結果を印刷に付し、発表し得る形にまでまとめることができた。シラヤ語は17世紀における台湾のオランダ統治時代の聖書翻訳や語彙集、18ー9世紀における清朝時代の土地売買契約書などの資料しか存在せず、日本時代に収集し得た各方言の資料として貴重である。またバサイ語資料はこれまでまったく利用し得なかった資料である。それを見ると、祖語における*Lがtsで現われる点は、かつて台北付近に話されていたケタガラン語と同じであり、一方祖語の*sもtsで現われる点は、東海岸のアミ語と同じという、やや奇妙な音変化をみせることが判明した。また語彙的にはカバラン語と共通した部分も多く、いずれか一方から他方へ借用されたものかもしれないが、更に精密な研究が必要である。
著者
林 眞理
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

転座や欠失など種々の染色体構造異常の中でも、染色体融合は最も危険な異常の一つである。染色体融合がどのように染色体の異常を引き起こすかについては、様々なモデルが提唱されている。しかし、どの程度の種類と数の染色体融合が、どの程度の時間を経てどのような異常を引き起こすのかについては、よく分かっていない。そこで本研究計画では、1つの姉妹染色体分体の融合を可視化できる細胞系を構築し、細胞の運命を継時的に解析することを目的とした。前年度までに姉妹染色体分体融合を可視化できる細胞システム(Sister chromatid Fusion Visualization system: FuVis)の構築に成功し、FuVisを用いたライブセルイメージング観察によって姉妹染色体分体融合の運命を追跡した。その結果、1つの姉妹染色体分体融合によって、微小核という染色体異常が生じていることが示唆された。しかしながら、CRISPR/Cas9による染色体の切断、DNA修復、mCitrineの発現の効果など、複数のパラメータの中で、本当に姉妹染色分体こそが、微小核の形成に影響を与えているのかを解析する必要があった。そこで本年度は、動画から得られたデータをさらに詳細に解析するため、京都大学白眉センターの加賀谷白眉との共同研究を開始した。これまでの解析から、階層ベイズモデルを構築し動画データをあてはめることによって、細胞の個性、染色体切断、姉妹染色分体融合、時間経過による蓄積効果など種々のパラメータの中から、姉妹染色体分体融合こそが微小核の形成に寄与していることを突き止めた。本研究成果はbioRxivにアップロードし、論文投稿段階にある。
著者
西山 潤
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

宇宙や惑星探査のための通信機器と科学機器を搭載した探査機において、特に火星より遠くの惑星探査では太陽光が非常に弱く、これまでPu-238を熱源とする原子力電池が主電源として利用されてきた。しかしプルトニウムという特殊な同位体のため、世界で供給不足が懸念されている。そこでPu-238の代替放射性同位体として、Po-209に着目し、その製造方法について検証を行った。加速器を使用する①Bi-209(p,n)反応、原子炉を使用する②Bi-209(n,γ)Bi-210(β崩壊)Po-210(n,2n)反応の2経路の製造方法について数値解析を行い、製造効率を明らかとした。
著者
宇根 ユミ 共田 洋
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、両生類の新興病原体であるカエルツボカビ(Bd)が在来種に与える影響を宿主と寄生体の双方を解析・評価し「なぜ日本の両生類は死なないのか」その機序解明を目的とする。その結果、ITS-1領域の違い基づくBdハプロタイプごとに、その形状、増殖態度および病原性が異なり、国内では弱毒性Bdを主流とした多種類のハプロタイプのBdが自然界で維持されていることを明らかにした。免疫抑制モデルを用いた感染実験で、一過性の不顕性感染であったことから、在来種のBd抵抗性には免疫以外の生体防御機構も働いている可能性が示唆された。また、ツボカビ症でみられる電解質の変化は皮膚の水透過性異常に起因するものと推察した。
著者
津田 祥美
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

エボラウイルスの主要標的細胞はマクロファージや樹状細胞であるとされているが、エボラウイルスが感染した宿主体内で実際にマクロファージや樹状細胞でどのように増殖しているのか、また致死的病態にどのように関与しているのかは未だ不明である。本課題ではエボラウイルス病の病原性発現メカニズムを明らかにするために、エボラウイルスの初期標的細胞を同定し、病態形成に重要な宿主応答を解明することを目的とした。これまでの研究において作出したマクロファージや樹状細胞特異的に増殖が抑制された組換えウイルスと親株となるマウスに致死的病原性を示すマウス順化株をマウスに腹腔内感染した。感染初期における腹腔内細胞の解析により、感染1日後から少ないものの感染細胞が検出された。感染3日後、5日後には感染は腹腔内細胞から全身臓器に広がっていた。感染細胞をフローサイトメトリー等を用いて解析した結果、その多くがF4/80陽性のマクロファージ細胞であることがわかった。一方で、マクロファージや樹状細胞特異的に増殖が抑制された組換えウイルスの腹腔内でのウイルス増殖は親株に比較して増殖が抑制されていることが確認された。臓器におけるウイルス増殖を比較したところ、マクロファージや樹状細胞特異的に増殖が抑制された組換えウイルスは親株と比較して明らかに減弱したウイルス増殖が確認された。すなわち、エボラウイルスはマクロファージ系細胞に非常に感受性が高く、マウス腹腔内に摂取されたエボラウイルスは腹腔内でマクロファージで増殖することで効率よく全身臓器に伝播していくことが示唆された。
著者
田中 信之
出版者
日本医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々は、解糖系阻害剤2-Deoxy-D-glucose (2-DG)が、解糖系の阻害ではなく、マンノース代謝からタンパクの糖鎖修飾(N-結合型鎖)を抑制することで、炎症性サイトカイン受容体の糖鎖修飾を抑制し、そのことで炎症反応が抑えられるということを明らかにした。実際に、2-DGやtunicamycin等の糖鎖修飾阻害剤を投与することで、細胞及びマウス個体でのIL-6やTNF-αの受容体への結合と応答が阻害された。更に、炎症性腸疾患、敗血症、関節リウマチ等のマウスモデルの発症を抑制する結果を得た。よって、糖鎖修飾を標的として炎症性疾患を効果的に治療することが可能であると考えられた。
著者
太田 博樹 勝村 啓史 植田 信太郎 須田 亙 水野 文月 熊谷 真彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

【研究目的】先史時代の日本列島に住んでいた人々は2~3 千年ほど前に劇的な“食”の変化を経験した。すなわち狩猟採集が中心であった縄文時代から大規模農耕が始まった弥生時代にかけての食性の変化である。この変化が先史日本列島に与えた生物学的インパクトは大きかったと予想される。本研究では先史時代遺跡で見つかる糞石や歯石のメタゲノム解析をおこない、“食”の対象となっていた動植物の特定を実現する。【実施した計画の概要】長崎大学医歯(薬)学総合研究科・弦本敏行教授(連携研究者)が管理する弥生時代遺跡出土人骨から採取を行った歯石から、琉球大学・澤藤りかい(研究協力者)がDNA抽出を行った。また、福井県立若狭歴史博物館・主任(文化財調査員)鯵本眞友美(研究協力者)、若狭三方縄文博物館・小島秀彰主査、および茨城県・ひたちなか市埋蔵文化センター・稲田健一主査(研究協力者)が管理する縄文時代遺跡出土の糞石から、北里大学・若林賢(研究協力者)がDNA抽出を行った。それぞれの遺跡から10検体、1検体、1検体の合計12検体からDNA抽出をおこない、うち9試料から検出限界以上のDNA濃度が検出された。葉緑体DNAプライマーをもちいて、2検体3試料でPCR増幅が確認でき、これらについてPCRアンプリコンシークエンスをおこない植物性食物の解析をおこなった。吹上貝塚遺跡出土糞石からはヒトが食する植物のDNAがヒットした。一方、鳥浜貝塚遺跡出土糞石からは環境DNAと思われるDNAがヒットした。また、前者からはヒトのDNAだけでなくイヌのDNAも検出された。このことから、この糞石がヒトのものかイヌのものか、区別を付ける必要が生じ、現在、さらなる分析をし、検討中である。
著者
伊藤 嘉章 小泉 恵英 木川 りか 原田 あゆみ 白井 克也 志賀 智史 楠井 隆志 河野 一隆 早川 典子 大橋 有佳 渡辺 祐基 川村 佳男 望月 規史 川畑 憲子 森實 久美子 酒井田 千明
出版者
独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

初年度である今年度は、情報収集を兼ねて多角的に調査を開始した。タイでは、国立の伝統文化財部で現在行われている王室の御座船の修理方法や伝統的人形劇の人形、漆工品、色ガラスを多用した木製品、布製品、石造彫刻等の製作・修理技法のほか、寺院の壁画の修理技法について調査を実施した。インドネシアでは伝統的な影絵であるワヤン・クリの製作技法や機織りによるイカットの製作技法、伝統的な青銅製品(ゴング)の製作技法についての聴き取り調査を実施した。ミャンマーではこの地域に特有な性質をもつ漆工品の調査を行い、ベトナムでは伝統的木製品の修理のための調査のほか、藕糸の製作技法に関する調査を行った。また国内に存在するアジア地域に関連する文化財についても積極的に調査を進めた。中国式寺院の独特な様式をもつ仏像や金工品や、国内で保有しているアジア地域と関連する染織品(藕糸を使用したと考えられる絵画やインド更紗)、韓国の伝統的絵画(綿布に書かれた絵画)の修理方法についての調査、響銅(佐波理)の製作痕の調査、インドネシアのガムランの音色にかかわる構造などについての詳細調査を実施したほか、出土した茶入などの陶器についても製作技法を解明するためにCTによる詳細な構造調査を行った。このほか、修理技法と係る基礎研究としては、アジア地域で伝統的技法に多用されてきた灰汁について文書の修理への利用を念頭に、成分分析と修理対象となる紙に対する影響調査を行った。
著者
武田 英二
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

妊娠期の母親の栄養摂取状態は、子どもの成人期の健康状態に影響を及ぼす。母親のエネルギー摂取が不足すると血糖値およびコレステロール濃度が高値を示した。また、高脂肪食では低メチル化遺伝子が4%多く、肝臓の遺伝子発現は増加し、エネルギー制限では超高メチル化遺伝子が25%増加し、肝臓の遺伝子発現が低下していると考えられた。したがって、胎児の遺伝子発現に母親の栄養摂取が過剰であっても、また欠乏しても影響を与えることが明らかになった。
著者
杉浦 謙介
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

少数民族に関する東ドイツの地域的・思想的背景としてつぎの点を挙げることができる:・フーヘルが60歳で亡命するまで住んだブランデンブルク州のヴェンデン人は、ザクセン州に住む同じスラブ系のゾルベン人に対して共同意識と対立意識をもち、また、ドイツ民主共和国時代には社会主義的民族政策のなかでゾルベン人に包摂されたことで、ヴェンデン人としてのアイデンティティを強くもつようになった。・東ドイツのジプシー(Sinti/Roma)は、ナチス時代に迫害を受け、さらに、ドイツ民主共和国時代には少数民族保護政策からはずされた。・ドイツ民主共和国では、ナチス時代のユダヤ人迫害は西側の資本主義者の責任とされた。ユダヤ人は社会主義者とともに迫害され、戦い、社会主義国家を作った者とみなされたが、同時に、アメリカ合衆国やイスラエルとの結びつきから社会主義国家の敵ともみなされた。また、ユダヤ人は、社会主義的民族理論にしたがって、ユダヤ教を信じる宗教集団と位置づけられた。上の点がフーヘルの少数民族観および詩作品につぎのように反映している:・フーヘルはヴェンデン人を原風景の重要な形象としている。そして、ゾルベン人とは区別している。第2次世界大戦直後においては少数民族および民衆の象徴的存在と位置づけた。しかし、ドイツ民主共和国時代には体制に保護されたヴェンデン人(ゾルベン人)に背を向けた。・ジプシーはナチス時代ばかりではなく、ドイツ民主共和国時代も迫害されたが、同じように迫害されたフーヘルは、自分をジプシーに投影するようになった。・フーヘルは、ナチスによるユダヤ人迫害については言及していない。1度だけ自分の詩の注釈に「Auschwitz」を用いたことがあるが、この語もユダヤ人迫害問題とは関係ない。また、フーヘルは、現実世界のユダヤ人の形象ではなく、旧約聖書のユダヤ人の形象を詩に用いた。
著者
阿久津 達也 永持 仁 細川 浩
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

今年度は以下の研究を行った。(1) ニューラルネットワークについての原像問題に取り組み、学習した階層型ニューラルネットワークに対し、出力ベクトルから入力ベクトルを求める問題を混合整数線形問題(MILP)として定式化し、MILPソルバーを用いて入力ベクトルを計算する手法を開発した。この手法を実装し、Core i5 1.8GHz CPU上でCPLEXソルバーを用いた予備的な計算機実験を行った結果、入力層が200頂点、中間層(一層)が200頂点、出力層が1頂点の場合に2秒以内で計算結果を得ることができた。(2) ニューラルネットワークの応用面についても研究を行い、遺伝子発現データと他の情報を統合して解析するための2種類の手法を開発した。一つは遺伝子発現データとタンパク質相互作用ネットワークデータを統合して解析する手法であり、タンパク質相互作用ネットワークデータをグラフらプラシアンを用いて2次元点集合に変換し、遺伝子発現データを対応する点の強度とすることにより、各サンプルのデータを画像データとして扱えるようにし、それに対し深層学習による画像解析技法を適用することにより腫瘍細胞の分類を行う。もう一つは遺伝子発現データと遺伝子間の進化的距離を統合して解析する手法であり、進化的距離データに多次元尺度構成法を適用することにより各遺伝子を2次元点集合に変換し、前者と同様の手法を適用することにより、腫瘍細胞のサブタイプの分類を行う。いずれも公開データから取得した遺伝子発現データを用いた計算機実験により、その有用性を示した。(3) 木構造に対する離散原像問題に取り組む事前研究として、無順序木の包含問題(Unordered Tree Inclusion)問題の計算量改善に取り組み、最大次数に関する指数時間依存性を改良することに成功した。
著者
黒川 昌彦 渡辺 渡 吉田 裕樹
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ウイルス感染症に対して有効な汎用的経口アジュバントの開発を目指して、細胞性免疫を賦活化できる経口抗原を検討し、その免疫賦活化作用を明らかにすることを目的とした。本研究では、主な宿主免疫防御機構が遅延型過敏反応である単純ヘルペスウイルス(HSV)経皮感染マウス用いて、乳酸菌06CC2株やモリンガ葉水エキス(AqMOL)が、これまで報告したプロポリスAF-08と同様に、腸管免疫を介したTh1免疫誘導によりHSV感染マウスの感染病態を軽症化することを明らかにした。したがって、これら3種のサプリメントが、腸管免疫を介して細胞性免疫を賦活化できる汎用的経口アジュバントとして利用できる可能性を示唆した。
著者
横山 正俊 中尾 佳史 橋口 真理子
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、子宮頸癌およびその前癌状態である子宮頸部異形成における緑茶ポリフェノールEGCG(エピガロカテキンガレート)とPDE5阻害剤(vardenafil)を併用による治療の可能性を検討した。今回、HPV 16/18陽性の子宮頸部発癌モデルにおいて、PDE5阻害剤5μMを併用することでEGCG 10μMという低濃度でも90%程度の強い増殖抑制効果が認められた。また、子宮頸癌症例においてHPVタイピングにて40歳未満の若年者の子宮頸癌は、91.7%がHPV16あるいはHPV18陽性であることを確認した。この新規治療法はHPV16/18 陽性の若年子宮頸癌効果が期待できることが示唆された。
著者
木村 万里子
出版者
くらしき作陽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では、未利用海産藻類糖タンパク質に結合するアスパラギン結合型糖鎖の化学構造を明らかにするとともに、免疫活性等の生理活性についての解析を行った。まず、褐藻類、緑藻類および紅藻類をミキサーで破砕後、ペプシン消化を行い、その消化物からゲルろ過とイオン交換により糖ペプチドを調製した。糖鎖をヒドラジン分解によりペプチドから遊離させ、還元末端を蛍光標識した後に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって各々の化学構造を決定した。その結果、未利用海藻からは動植物に普遍的に存在するハイマンノース型糖鎖が多量に見出されたものの、陸生植物に特徴的なキシロース・フコース含有の糖鎖の存在は認められなかった。その一方、動植物由来の糖タンパク質糖鎖に対して作用する糖質分解酵素群に抵抗性を示す糖鎖の存在が示唆された。更に、ホンダワラから調製した糖ペプチド画分がヒト単球を活性化することが認められた。
著者
白水 貴大
出版者
帯広畜産大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

マラリアなどのベクター媒介性感染症の予防にはベクターコントロールが最重要である。しかし近年、既存の殺虫剤の環境や人体への悪影響、殺虫剤耐性蚊の出現などの問題から新たなベクターコントロールの開発が望まれている。そこで本研究では、次世代の殺虫分子として注目されている殺昆虫天然毒「ヴェノム」の利用に着目し、ステージ特異的ヴェノム発現原虫によるベクター媒介性感染症の制御法の開発を目指した。解析の結果、蚊に対して強い毒性効果を示すヴェノムが同定され、作製したヴェノム発現原虫のベクターステージへの伝播能が確認された。本研究により、ヴェノム発現原虫による新規ベクターコントロール法の開発が期待された。