著者
細川 義洋
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.176-183, 2014-01-15

年々増加の一途を辿る情報システム開発を巡る紛争例を元に,東京地方裁判所でIT専門の民事調停委員を務める筆者がシステム開発におけるユーザとベンダの責任の考え方,開発プロジェクトを円滑に進めるための注意点等を論じる.数多くのIT紛争に共通する問題であるシステム開発プロジェクトにおける『専門家責任』や『瑕疵』の考え方について,裁判所が出した判決を元に解決する他,補足として,不幸にも紛争に陥ってしまった場合の心構えについても記述する.
著者
岩本 拓也 小倉 加奈代 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.19, pp.1-8, 2013-03-06

恋人間の愛着行動 (いわゆる 「いちゃいちゃ」 ) は,幸福感を得るためや相手との関係をより良いものにするために重要な行為である.愛着行動はデリケートな行動のためプライバシが確保された場所で行うのが一般的であり,公共の場では行われない傾向にある.公共の場では,周囲の目が障壁となるため,カップルは愛着行動を行うことが困難になると考えられる.そこで我々は,公共空間内での対面状況において,周囲に不快感を与えることなく愛着行動を行えるメディアの研究開発を進めている.本稿では,裏腹的愛着行動を伝えあう対面コミュニケーションメディアである 「ちんかも」 を提案し,その有用性をユーザスタディによって検証する."Acting cozy" is important for lovers to feel happiness and to improve their relationships much better. Many lovers desire to always act cozy. However, it is actually difficult to act cozy in a public space although they are together there. Whereas the ordinary research efforts have attempted to mainly support long-distance lovers, there are also several issues to be solved even for short-distance lovers. Accordingly, we have been studying a medium that allows the short-distance lovers who stay together to convey cozy actions even in the public space without disgusting people around them. This paper investigates what kind of cozy actions should be transmitted between the lovers being together in the public space.
著者
峯松 信明 西村多寿子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.127, pp.211-216, 2005-12-22

音声コミュニケーションには,話者・環境・聴取者に起因する音響歪みが不可避的に混入する。これら静的な非言語的歪みを数学的にモデル化し,そのモデルの上で,音響歪みを表現する次元を完全に失った音声の物理表象を提案している[1]。個々の音声事象の絶対的な物理特性は一切捨象し,音声事象間の関係のみを,全ての二事象間差異(コントラスト)の集合,即ち,ある幾何学構造として抽出する。この新しい物理表象は,構造音韻論の物理的実装として解釈されている。事象間のコントラストのみを捉える処理は,音楽の相対音感に類似した処理と考えられるが,本稿ではその提案表象を,言語学,心理学,言語障害学,神経生理学,脳科学,及び音楽学の観点から再度考察,解釈する。その中で,音素を音響空間内で定位する従来の方法論の是非について検討する。In speech communication, acoustic distortions are inevitably involved by speakers, channels, and listeners. In our previous study, these distortions were mathematically modeled, and on that model, a novel speech representation was proposed where the distortions cannot be observed [1]. Absolute properties of speech events are completely discarded and only their interrelations are extracted as a full set of phonic differences or contrasts. The set is mathematically equal to a certain geometrical structure. This new representation is considered as physical implementation of structural phonology. Extraction of contrasts between two events is viewed as a process similar to hearing music, i.e., relative pitch. In this paper, the new representation is reconsidered from viewpoints of linguistics, psychology, language disabilities, neurophysiology, brain science, and musicology, Here, the conventional paradigm where a phoneme is localized absolutely at a certain point in an acoustic space is also reconsidered.
著者
遠藤 秀紀 林 良博 山際 大志郎 鯉江 洋 山谷 吉樹 木村 順平
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.67-76, 2000-03
被引用文献数
1

太平洋戦争中の東京都によるいわゆる猛獣処分によって, 3頭のアジアゾウが殺処分となったことは, よく知られている。これら3頭のゾウに関しては, 東京大学や国立科学博物館などに遺体の一部が残されている可能性が示唆されていた。本研究では, 3頭のアジアゾウの遺体に関し, 文献と聞き取り調査を行うとともに, 関連が疑われる東京大学農学部収蔵の下顎骨に関しては, X線撮影による年齢査定を進めて処分個体との異同を検討した。その結果, 東京大学農学部に残された下顎骨は他個体のものである可能性が強く, 戦後発掘され国立科学博物館に移送された部分骨は標本化されなかったことが明らかになった。したがって, 東京都恩賜上野動物園に残る雄の切歯を除き, 該当する3頭の遺体は後世に残されることがなかったと判断された。また遺体から残された形態学的研究成果は, 剖検現場の懸命の努力を物語っていたが, 研究水準はけっして高いとはいえず, 十分な歴史的評価を与えることはできなかった。
著者
玉木えみ著
出版者
ディスクユニオン
巻号頁・発行日
2012
著者
畑中 悦子 芳賀 みづえ
出版者
釧路短期大学
雑誌
釧路短期大学紀要 (ISSN:03858456)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.39-48, 1997-02

釧路市内の公・私立保育園児を対象に,昼食の喫食主食量や食生活状況の実態を知り,今後の栄養指導の基礎的資料とする目的で,喫食主食量秤量調査およびその父母にアンケート調査を実施した。得られた結果は以下の通りである。1)米飯摂取量は3歳〜5歳児全体で87.8gであり,基準量に対し約37%下回っていた。加齢により多くなる傾向があったものの個人差が大きかった。2)喫食主食量の減少に伴い,食品構成より算出された栄養量では,穀類エネルギー比の減少,たんぱく質および脂肪エネルギー比の上昇がみられた。特に脂肪エネルギー比は適正範囲を越えていた。3)起床就寝時刻の年齢による差はみられず,保育園による有意差がみられた。4)早く寝る園児は早く起き,遅く寝る園児は遅く起きる傾向が示唆された。5)兄弟無しおよび兄姉のみがいる園児は,弟妹のいる園児に比べ就寝時刻が遅い傾向があった。6)朝食の欠食は週1〜2回が約10%であった。7)朝起きてから朝食までの時間の最頻値は,10〜20分であった。また,起床時間が遅いと朝食までの時間が短く,食欲があまりない率が高かった。8) 6:30以前に起床する園児は「朝食まで」および「朝食後保育園まで」の間食頻度が高く,10:00以降に寝る園児は「夕食後」の間食頻度が高かった。9)朝食の食欲は,兄弟のいない園児にあまり食欲がない率が,兄姉のみの園児は食欲がある率が高く,兄弟の影響が示唆された。10)献立表に対する関心は高くよく見られていた。見る理由は「家庭での料理の重複を避ける」が最頻であった。
著者
小松 香織
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
no.5, pp.113-172, 1990-03-31

オスマン帝国軍艦エルトゥールル号は、スルタン。アブデュル・ハミト2世の命により1890年日本に来航したが、帰路熊野灘で暴風雨のため遭難し多数の犠牲者を出した。この悲劇的な事件は、これまで日土交渉史の文脈の中で繰り返し語られてきた。本稿は、この事件の百周年を契機に、従来とは別の視点から捉え直そうと試みたものである。第1章では、トルコ海軍文書館の史料に基づき、エルトゥールル号派遣計画の立案から遭難に至るまでの経緯を整理し、事実関係をできるだけ明らかにするとともに、いくつかの問題点を指摘した。第2章では、背景となった19世紀末のオスマン帝国をめぐる国際関係、特にアブデュル・ハミト2世の外交政策を分析し、その結果をふまえてエルトゥールル号派遣の持つ歴史的意味を考察した。なお、詳しくは拙稿「アブデュル・ハミト2世と19世紀末のオスマン帝国-エルトゥールル号事件を中心に-」(『史学雑誌』第98編第9号40-82頁)をご参照いただきたい。
著者
竹中 正巳 土肥 直美 中橋 孝博 中野 恭子 篠田 謙一 米田 穣 高宮 広土 中村 直子 新里 貴之
出版者
鹿児島女子短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

種子島における縄文時代人骨の資料数を増加させる目的で、鹿児島県熊毛郡南種子町一陣長崎鼻遺跡の発掘調査を行った。今回の発掘で新たな縄文時代人骨は発見されたが、頭蓋の小破片のみであり、保存良好な古人骨資料は得られなかった。種子島の弥生~古墳時代相当期の人々の短頭・低顔・低身長という特徴、中世人の長頭・低顔・高身長という特徴、近世人の長頭・高顔・高身長という特徴を明らかにできた。身体形質が、種子島においても時代を経るごとに小進化している。特に中世の日本列島各地で起こる長頭化は種子島でも起こっている。また、種子島における形質変化の大きな画期は、弥生~古墳時代相当期と中世との間の時期に認められる。これは、南九州以北の地よりの移住者による遺伝的影響に寄るところが大きいのではないかと思われる。広田遺跡から出土した人骨2体からミトコンドリアDNAを抽出され、これら2体は母系でつながる血縁関係は持たないこと、ハプログループはD4に属すると考えられ、現代日本人にもそれほど珍しくない頻度で出現するタイプであることが明らかにされたまた、広田人骨からコラーゲンを抽出し、炭素・窒素安定同位体比から食生活を検討し、広田人は海産物を含む3種類以上のタンパク質資源を利用していたことが明らかにされた。
著者
浅尾 努
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.83-88, 2013-06-30 (Released:2014-01-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1
著者
伊藤 友彦 大伴 潔 藤野 博 福田 真二
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

特異的言語発達障害(Specific Languag Impairment, SLI)とは、知的障害や聴覚障害、対人関係の障害など言語発達を遅滞させる明らかな問題が認められないにもかかわらず、言語発達に遅れや歪みがみられる障害をいう。欧米の研究者の間ではではよく知られた用語であるが、我が国ではあまり知られておらず、言語学的掘り下げた研究はほとんど行われていなかった。我々の研究の目的は日本語SLI例の特徴を明らかにするとともに、日本語SLIの評価法を提案することであった。今回の我々が行った日本語の典型的なSLI例と思われる子どもの縦断研究の結果、対象児は欧米の研究でG-SLIと呼ばれるタイプであることが明らかになった。欧米の研究ではG-SLIの子どもは時制、受動文などに困難を示すと言われているが、我々の対象児も同様な困難を示した。我々はさらに日本語SLI3例を対象として、文法格(grammatical case)に視点をあてた実験的研究を行った。その結果、SLI例は、年齢を対応させた正常発達の子どもに比して、格付与(case-assignment)の成績が悪いことが明らかになった。また、SLI群は、通常の語順と異なる、かきまぜ(scrambling)文の成績が著しく低いことが明らかになった。また、我々はアメリカ(アリゾナ州立大学)においてSLIの評価法に関する調査を行い、日本語SLIの評価法を提案する準備を行ったが、日本で行った難聴・言語障害学級を対象とした調査では、SLIの名称そのものの理解が得られないこともあり、日本語SLI例のデータ収集が十分にはできなかった。今回の我々の研究で日本語SLIの興味深い特徴がいくつか明らかになり、日本語のSLIの評価法に役立つと思われる基礎的知見が得られた。
出版者
陸軍省
巻号頁・発行日
vol.〔本編〕, 0000